ChatGPTはGoogleを参照していた?AI検索の真実をAleyda Solis氏が語る

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2025年、9月18日から21日まで、中国の深圳で開催されたSEOカンファレンスに弊社の執行役員・鈴木謙一が参加してきました。

※SEOカンファレンスとは、世界中のSEOの専門家が集まり、最新のSEO技術や研究成果、業界の動向について情報交換し、最新情報を学ぶイベントです。

そこで、国際SEOコンサルタントにしてOrainti創業者のアレイダ・ソリス氏に、AI検索についての最新情報を伺えたので、要点を絞って本記事にまとめます。

※本記事は、当社のYouTube動画「ChatGPTはGoogleを参照していた?Aleyda Solis氏が語るAI検索の真実」の内容を基に作成されています。

動画で見たい方はこちら▼

動画の出演者

aleyda
Aleyda Solis(アレイダ・ソリス)氏
国際SEOコンサルタント & Orainti創業者
鈴木謙一
鈴木 謙一
株式会社Faber Company 執行役員(Search Advocate)
Google 公式の検索セントラル ヘルプ コミュニティのダイヤモンド プロダクト エキスパート(日本第1号)

鈴木:
本日はお越しいただきありがとうございます。

Aleyda Solis:
呼んでいただいてありがとうございます。こうしてお話しできる機会をいただけてとても嬉しいです。

最近のAI検索の変化

鈴木:
今年3月にシンガポールのSEOカンファレンスでお話を伺いましたが、その後、特にAI検索の分野でどのような変化を感じていますか?

※関連記事:SEOは終わらない!AI時代における“信頼”と“ブランド”の力(アレイダ・ソリス氏にブランド強化についてインタビュー)

Aleyda Solis:
この数か月、特にここ数週間で本当に急速な変化が起きています。GoogleはAI機能、つまり「AIモード」を従来の検索結果(SERPs)に統合し続けています。ユーザーの好みに沿い、利用体験を妨げずスムーズに移行させたいという意図が明らかで、人々の検索方法に役立つ新しい機能として加えようとしています。

その変化のスピードは非常に早く、2日前(2025年9月上旬)にGoogleが米国で「Gemini」をChromeに統合していると発表しました。そして近い将来、Chromeの検索ブラウザにAI Mode(AIモード)を主要な検索方法として統合することも予告されています。つまり、この流れはさらに加速すると予想できます。

※関連記事:
Google検索「AI Overviews」とは?機能や影響・SGEとの違い
Google検索「AI Mode(AIモード)」の機能、SEOへの影響をわかりやすく解説

AI Modeの印象

鈴木:
AI Modeに対してはどんな印象ですか?

Aleyda Solis:
少し面白い話なのですが、私は普段スペインに拠点があり、そこはまだAI Modeがリリースされていません。※9月23日にスペイン語にもAI Modeがリリースされた

おそらくEU特有のプライバシーや追加規制が原因だと考えていますが、私は出張が多いのでその際に試したり実験したりしています。

Googleは可能な限り努力し、ユーザーの検索ニーズに直結するLLM(大規模言語モデル)を作ろうとしていると感じます。

※関連記事:LLMOとは? マーケに活かす5つの対策をわかりやすく解説

Aleyda Solis:
LLMはさまざまな用途に使われていますよね。2、3日前にOpenAIがChatGPTのさまざまな利用方法に関する調査結果を発表しました。それを見ると検索だけでなく作業のために使っていることがわかります。授業や学習向けの質問など従来の検索エンジンでは満たせなかったニーズを満たすために使われているのです。さらにアイデア出しやアドバイスを求める相棒のような存在としても使われています。

一方でGeminiではタスク指向のツールやアイデア創出の役割も果たしています。しかしAI Modeの回答形式や内容は、特定の機能やリンクをより目立たせ、トラフィックを流す方向に強く寄っていると感じます。つまり、ユーザーのニーズを完全に満たすかは別として、最初の答えを提示し、その後の多様な検索行動につなげる「橋渡し」のような役割を果たしているのです。そういう意味では、Googleの取り組みはとても優れていると思います。

もちろんChatGPTが最初に市場をを揺るがし、先行者優位を持ったという話もよく聞きますしそれは事実だと思います。ですが最終的に勝つのはGoogleだと思っています。それはGoogleが持つ膨大なプラットフォームとインデックスの統合力があるからです。

ChatGPTが実際にGoogleの検索結果や回答を利用するためにスクレイピングサービスを使っているという情報を目にしましたか?

※スクレイピングサービス:様々なwebサイトから取得した情報を、活用しやすい形に加工・整形するサービス

これは私だけでなく他のSEO担当者がすでに検証していたことでもあります。やはりGoogleが大きなアドバンテージを持っているとわかったのです。私たちはGoogle側にスパムの問題やインデックスに時間がかかるなど不満を言いがちですが実際のところ彼らは世界で最も高度な検索エンジンを持っています。それこそがユーザーの検索や発見のニーズを新しいインターフェースでより的確に満たせる大きな強みになっているのです。

ChatGPTはGoogle検索をスクレイピングしている?

鈴木:
ChatGPTがGoogleの検索結果をスクレイピングしているのではないかという憶測がありますが、実際にご自身のテストでそれを確認されたのですよね?具体的にどのようなことが起きたのか教えていただけますか?

Aleyda Solis:
まず、実際に新しいページを公開しました。そのページは最初、BingにもGoogleにもインデックス登録されていませんでした。だから、ChatGPTに質問してもそのページに関する情報は何も生成されなかったんです。

※関連記事:SEOの「インデックス」とは?Google等検索エンジンの仕組みと登録方法

その後少しずつGoogleやBingにページを送信しました。あるとき、私が新しく公開したページはBingには未登録でしたが、Googleにはインデックスされました。

そのタイミングでChatGPTはページに関する情報を出すようになったんです。

さらに重要なのはChatGPTが出した情報文は、私がページに入れたメタディスクリプションではなく、Googleが検索結果に表示していた説明文そのものでした。

つまり、ChatGPTはGoogle検索のスニペットから情報を取得していたことが明らかでした。

鈴木:
興味深いですね

AI Overviewsによって悪影響が出たケースは?

鈴木:
AI Overviewsによってクライアントに悪影響が出たケースはありますか?

Aleyda Solis:
残念ながら、特にSaaS業界のクライアントで影響を受けた方がいました。私は普段ECやマーケットプレイス、そしてSaaS事業者と仕事をしています。特にSaaSの中には、トップファネル向けに幅広いハウツー系や情報系コンテンツを多く活用していた企業があり、そこが影響を受けてしまいました。

面白いことに、影響は主にトラフィックの面のみであって、コンバージョンへの影響は少ないです。しかしパブリッシャー(出版社やニュースサイト)は深刻です。ユーザーからのインプレッションや訪問数そのものが収益になる産業ですので、ビジネスモデル上、収益面でも打撃を受けています。マーケットプレイスやECでもトラフィックに影響が出ることはありますが、それらのページは直接売り上げにつながるページではないので収益への影響は少ないと言えます。

最近ではAI Overviewsのせいで情報系コンテンツに投資する価値はもうないという人を見かけますがそれはコンテンツに独自性がない場合に当てはまるだけだと強調したいです。その情報コンテンツが自社の意志決定や商品・サービスの特長に直結していれば、十分に価値を生み出せます。 AI Overviews(検索結果上のAI要約)に引用される可能性も高くなります。直接的なトラフィックはなくても、その分野で信頼できる権威として示されていれば、購買に影響するのです。

鈴木:
つまり、ブランドを「権威ある存在」として確立することが非常に重要なんですね。

長期的にAIの検索結果から恩恵を受けるサイトとは

鈴木:
長期的にAIの検索結果から恩恵を受けるのはどんなタイプのサイトだと思いますか?

Aleyda Solis:
実際に顧客に直接提供できる実体のある製品やサービスを持つサイトです。一方で、すでに苦しんでいる、今後苦しむのは仲介的な立場のプレイヤーだと思います。アフィリエイトやパブリッシャーなどのトラフィックそのものを収益源とするビジネスモデルのメディアです。そうしたニーズの多くはAIの回答の中で直接的に満たされてしまうからです。

鈴木:
自社サービスをしっかり「製品」として持つことが重要ですね

Aleyda Solis:
さらにそれらを 「信頼できるエンティティ(権威ある存在)」としてブランドを確立することが今後ますます重要になります。

AEO、GEO、LLMOなどワードの乱立はなぜ?

鈴木:
最近AEO、GEO、LLMOなどいろいろな言葉がバズワードになっていますが、これは一体どういうことなのでしょうか?

Aleyda Solis:
「検索に使われるどんなプラットフォームに対しても最適化すること」がSEOである以上、なぜSEOという呼び方を変える必要があるのか?と思っています。

今までの YouTube向けSEOやTikTok向けSEOと同じで、プラットフォームが変わっても「検索の最適化」という原理は同じです。

ただし、経営層に納得してもらうためには差別化が必要だという点も理解しています。

企業の意思決定者はAI関連のニュースや情報を浴びているので、「AI Search Optimization(AIO)」と呼ぶことで注目を集めやすく、予算も出しやすいのです。

ですので、顧客や意思決定者が使う言葉に合わせて話すことが大切です。

私は、SEOの拡張版としてAIOを位置づけています。

基本原則は変わらずに、新しいプラットフォームに合わせてリソースを配分し、パフォーマンスを計測・改善していくべきです。つまりSEOの取り組みを拡張する形で機械やニーズ、成果を精査して優先順位を決めて進めればいいのです。

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