
お米ギフトや大手コンビニのご飯監修など、お米の新たな付加価値を提案する株式会社八代目儀兵衛(はちだいめぎへえ)。
2006年にお米ギフトの専門ECを立ち上げ、成長を続けてきた同社だったが、AI検索の普及とともに新たな壁に直面していた。
「Googleでは上位表示されているのに、AI検索の回答に自社名が出てこない」。この危機をきっかけに、Faber CompanyのミエルカGEOを活用したGEO(通称LLMO/AIO)対策に取り組んでいる。
施策開始から半年、アンケートに「AI検索で知った」という声が届き始め、AI検索でも露出が増加。Googleなどの検索順位にも好影響が現れているという。GEO対策の具体的な取り組みについて、同社のCMO神徳昭裕氏と、GEOコンサルティングを担当したFaber Company 執行役員の月岡克博がふりかえった。
- AI検索(AI Overviews・ChatGPT・Gemini)に自社名がほぼ表示されない
- 自社コンテンツの情報がAIに参照されているのに、自社ブランドが表示されない
- AI検索での露出状況を網羅的に把握する手段がなかった
- 自社ブランドのAI露出状況が可視化され、社内でGEO対策の共通認識が持てた
- AI検索時の露出量が増加
- 購入後アンケートに「AIで検索して見つけた」という声が登場
- キーワード「結婚内祝い」「出産内祝い」関連のGoogle順位が上昇(GEOの副次効果)
※関連記事:
・LLMOとは? マーケに活かす5つの対策をわかりやすく解説
・GEOとは? AI検索時代のSEO戦略と実践4ステップ
・AIO(AI検索最適化)とは?やるべきこと・SEOやLLMOとの違い
「AI検索でブランド名が出てこない」という危機感
江戸時代から続くお米屋にルーツを持つ八代目儀兵衛は、2006年にお米をギフトとして贈るEC事業を開始。
現在の事業構成は、通販・飲食店向け卸・直営飲食店舗・中食・海外・ソリューションなどと多岐にわたるが、売上・利益の柱は通販だ。通販売上の約9割をギフトが占める。

お米をギフトに贈るニーズは、大きく2つ。結婚・出産の内祝いと、葬祭時の香典返しだ。どちらも購入機会が限られており、ユーザーのニーズが顕在化したときに、いかに選んでもらえるかが重要だ。
八代目儀兵衛は、とくに内祝いに強みを持ち、かねてよりリスティング広告やコンテンツSEOに力を入れてきた。「出産内祝い おしゃれ 五千円」といった複合キーワードで検索上位を取り、安定した集客基盤を築いてきたという。

そんな同社が、GEO対策に動き出したきっかけは、Googleなど検索エンジンの上部にあるAI Overviews(AIによる概要)やChatGPTを始めとした生成AIの本格普及だった。コンテンツ経由のセッションが約10%減少。さらに、深刻な問題が浮かび上がった。
神徳氏:
「Googleでは上位に掲載されているにも関わらず、AIの検索結果に八代目儀兵衛の名前が出てこないのです。つまり、AI検索が普及していくなか、このままではブランドが存在しないことになってしまうという危機感を持ちました」
さらに悩ましかったのは、自社コンテンツの扱われ方だ。八代目儀兵衛は、「お米以外のさまざまなギフト情報も紹介する」という方針のもと、幅広い記事コンテンツを制作していた。その記事がAIの情報源として参照された際、他社の商品が紹介されているのに、同社の商品は言及されないという状況だった。
200件の計測プロンプトを作成、露出状況を分析
AI検索に出てこないとわかっても、何をどう改善すればよいのか。
GEO対策において、『これだけを行えば良い』という手法は、現時点で確立されてはいない。重要なのは、計測・分析・改善のサイクルを繰り返すことだ。
- 計測
- AI検索での見え方を数値で見える化
- 分析
- 競合との差分を明確化
- 改善
- コンテンツの改善施策を企画・実施

神徳氏からGEOコンサルティングの相談を受けたFaber Companyでは、まずサイクルの基点となる「計測」から着手した。神徳氏が感じていた「八代目儀兵衛のブランド名が出ていない」を、ミエルカGEOでデータ化していく。

GEOツール「ミエルカGEO」https://mieru-ca.com/geo/
具体的には、次のステップで調査・分析を行った。
- 調査対象の生成AIを選定
- 計測プロンプトを200件作成
- 調査対象でのブランド出現率と、競合ブランドの出現率を計測
月岡:
「八代目儀兵衛さんは、コンテンツマーケティングに注力されているので、Google Search Console上に、多くの検索クエリが蓄積されています。そこから潜在顧客が使うであろうプロンプトを予測し、設計しました。たとえば『出産祝いに10万円もらったんだけど、おしゃれないいお返しはないか』のようなプロンプトです」
▼GEO対策の計測プロセス例

調査結果は、神徳氏の感覚通り厳しいものだった。しかし、客観的な現状把握ができたことで、社内が本格的にGEO対策をはじめるきっかけになったという。
神徳氏:
「GEOレポートがわかりやすかったです。『ChatGPTではこれしか出ていない』『カタログギフトはこんなに出ている』がデータでわかる。社長に共有したところ、すぐにGEO対策を進めよう、となりました」
ブランド認知を高める3つのGEO施策
続いてFaber Companyでは、AI検索結果の調査・分析と、ブランドが置かれている状況を総合的に判断し、八代目儀兵衛にブランド認知形成へつながる施策を提案した。
神徳氏らが優先的に取り組んだのは、以下の3つだ。
施策1.エンティティの整備
エンティティとは「存在」を意味する。AIが自社ブランドを「どういう存在か」と認識するためには、オンライン上で存在感を高めるエンティティ整備が重要だ。
これまで八代目儀兵衛では、「八代目儀兵衛」というブランド名を前面に出す戦略を展開していた。対して、AIに向けてのエンティティを高めるため、「お米のギフト専門家」「内祝いのプロ」の確立を目指し、サイト上での表現を見直した。
具体的には、「ギフト」への言及・トピックの追加、トップページへの「内祝いの贈り物が送れるサイト」という明示的な説明の追記などが挙げられる。
神徳氏:
「実は、ECサイトにもコーポレートサイトにも、『内祝いの贈り物が送れるサイト』とはどこにも表現されていなかった。自分たちには当たり前すぎたんです。月岡さんから、AIにどう認識させるのかの視点をアドバイスいただき、初めて気づきました」
施策2.外部評価の獲得(サイテーション強化)
2つ目の施策は、外部評価の獲得だ。AIは公式サイトの情報だけでなく、第三者による言及(外部メディア・レビューサイト、SNSの口コミなど)も重視する。この「第三者による言及」を、サイテーションと呼ぶ。
そこで取り組んだのが、自社データを使った調査レポートの外部発信だ。自社しか持たない一次情報は、AIからも参照されやすい。
神徳氏は、これまで自社のマーケティングにのみ活用していたアンケートデータを、調査レポートとして公開。また、「物価が高騰するなか、お米がギフトとして喜ばれている」という調査をプレスリリースで発信した。
「米不足」「高騰」により、レビューでの言及率が2年で15倍に急増。お米ギフトは「気持ちを伝える贈答品」から「家計を助ける実用品」へ
さらに、第三者が運営するオウンドメディアに、自社ギフトの紹介記事を掲載してもらう取り組みも進めている。
サイテーション強化はSEOにおいても重要だが、GEOではリンクを伴わないテキスト言及も有効と考えられる。より多くのメディアで言及されることが、「お米」と「ギフト」の紐づきを強めるのだ。
神徳氏:
「お米のことを語る機会が増えることは、専門家としての発信にもつながります。取り組みが積み重なることで、AIが参照しやすい状態に近づいていくのだと思います」
施策3.サイト構造の最適化(レビューの露出強化)
3つ目の施策は、サイト構造の最適化だ。GEOでは、AIが参照しやすい情報設計が重要となる。
具体的には、レビューの露出強化を行った。これまで八代目儀兵衛のECサイトでは、全レビューが1つのページにまとめられていた。それを、「出産内祝い」「結婚内祝い」「香典返し」などのニーズ別に分割。さらに、TOPページから、それぞれのレビューページへの内部リンクも設置した。

月岡:
「トップページから分かりやすい位置へのリンク掲載は、SEO施策として有効なだけではなく、AIからも認識されやすくなる。人にとっての使いやすさと、AIへの情報伝達は、実はほぼ同じ設計原理なんです」
GEO対策でAI検索への露出増が実現。SEOに好影響も
GEO対策を開始し、約6か月。いくつかの変化が現れている。
まず、AI検索上への露出増だ。調査・分析時期よりも、ブランド名の出現率が高まった。
その影響は、購入後アンケートにも現れている。八代目儀兵衛を知った理由として、「AI検索」という声が挙がるようになったという。さらに、「結婚内祝い」や「出産内祝い」といったキーワードの検索順位も上昇した。
GEOによるSEOへの好影響という副次効果は、月岡が当初から意図していたことでもあった。
月岡:
「GEOはSEOの延長線上にあるため、GEO単独の対策では効果が出ない、または限定的になります。SEO対策を万全に行いながら、GEOにも効果を波及させることが、一番投資対効果が高いんです」
ゼロクリックによるセッション減少は、売上に直結しない
GEO対策のきっかけの一つとして、神徳氏は「AI Overviewsの普及によるセッションの減少」を挙げていた。しかし、その減少分を分析すると、おもに「How To(ハウツー)」や「〜とは」系のコンテンツへの流入だったという。
月岡:
「HowTo系のコンテンツは、AI検索で事足りてしまうのでサイト流入につながらなくなるでしょう。ただ、そのようなセッションは、もともとコンバージョンにつながりにくいものです。当社の他のクライアントでも同じ傾向があり、セッションは減っていても売上や問い合わせ数は変わらないケースがほとんどです」
つまり、ゼロクリックによって失われるセッションの多くは、購買に直結しない可能性が高い。過度に恐れるのではなく、「どのセッションが減っているのか」の正確な把握が重要といえる。

長年のSEO投資がGEO対策の土台に
八代目儀兵衛がGEO対策を実行し、露出状況の改善につなげた背景には、長年積み上げてきたSEO施策の基盤がある。
コンテンツSEOとキーワード戦略
八代目儀兵衛は、ギフト専門の競合企業に比べ、SKU(商品数)が少ない。「結婚内祝い」「出産内祝い」といったビッグワードは大規模プレイヤーが占有している状況がある。
そこで同社は、「出産内祝い センスがいい」「出産内祝い 失敗したくない」といった、複合キーワードの取り込みに注力してきた。
神徳氏:
「Google Search Consoleを見ていると、お客さまのインサイトが見えてくるんです。『五十万円 祝儀 お返し 困る』のようなキーワードで検索する人が多いことがわかり、ニーズに合わせた記事を公開したところ、集客や売上につながっています。さらに、そこから着想を得て開発した高単価ギフトが、ヒット商品になりました」
購入後アンケートや顧客インタビューではなかなか見られない、顧客の課題やインサイトが、検索クエリから発見できている。

ミエルカヒートマップによるコンテンツ改善
コンテンツSEOの基盤をさらに強化しているのが、ミエルカヒートマップだ。
八代目儀兵衛では、ミエルカヒートマップをコンテンツ記事の分析に活用しており、ユーザーがどこまで読んでいるか、どこで離脱しているかを定期的に確認し、改善へとつなげている。「記事を作ったら終わり」ではなく、継続的に磨き続ける運用が定着している。
月岡:
「こうしたSEOへの長期投資が、GEO対策の土台となっていますよね。GEO対策はSEOとは別の施策ではなく、SEOへの投資をAI検索時代に拡張するものです。八代目儀兵衛さんがGEO対策に素早く動けたのも、この土台があったからだと思います」
「検索される」から「想起される」ブランドへ
今後の展望として神徳氏は、検索領域の対策だけでなく、ブランド形成・認知への強化に言及した。
神徳氏:
「これまでSEOが中心でしたが、戦略を大きく見直さないといけないタイミングだと捉えています。AI検索の登場により、手法ではなく自社ブランドをどう発信していくかという原点に立ち戻りました。
ギフトを贈ろうと思ったら、八代目儀兵衛の商品が思い浮かぶようなブランド形成に力を入れ、お米がギフトの定番になる文化を作っていきたいです」
Faber Companyでも、SEO・LPO・CRO領域と幅広い支援実績をもとに、AI検索にも強い八代目儀兵衛のブランド形成を引き続き支えていく。
企業プロフィール