世界的に有名なローカルSEOコンサルタントのGreg Gifford(グレッグ・ギフォード)氏に、弊社役員の鈴木謙一がインタビュー!LLM時代のローカルSEOについて、貴重なお話をたくさん伺うことができました。
※この動画は、2025年5月に投稿されたものです。
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新潟県上越市出身。新潟大学教育学部英語科卒業後、就職のため上京。ITトレーナーや情報システム管理者、ヒューマンスキル系社内講師などの会社員を経て独立。2007年に開設した「海外SEO情報ブログ」は、SEOに特化したブログとしては国内で最も多い記事数とアクセス数を誇る。2008年、当社入社。最新SEOの情報収集・情報発信、セミナー講師・イベントスピーカーが主たる職務。講演・寄稿実績多数。
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鈴木:こんにちは。今日は、イギリスのブライトンで開催されているbrightonSEOというカンファレンスに来ています。
今回は、大の仲良しであるグレッグに、ローカルSEOについて色々聞いてみようと思います。
グレッグさん、本日はお越しいただきありがとうございます。
Greg Gifford:お招きいただきありがとうございます。
鈴木:お越しいただけて嬉しいです。そういえば、私があなたにインタビューするのは今回が初めてですね。
Greg Gifford:そうだと思います。
鈴木:どうしてでしょうね?笑
Greg Gifford:何度もご一緒しているのに、不思議ですね。笑
鈴木:さて今日は、ローカルSEOについてお伺いします。グレッグはその分野の専門家なので。笑
Greg Gifford:もちろんです。笑
ここ数年でローカルSEOはどう進化したか?
鈴木:では最初の質問です。ここ数年でローカルSEOはどのように進化してきたのでしょうか?そして、競争力を保つために、地域の企業が注目すべき重要なトレンドは何でしょうか?
Greg Gifford:かなり変わった面もありますが、実は全く変わっていない部分も多いです。
先日もお話ししましたが、私は多くのカンファレンスで講演をしています。たとえば10年前のbrightonSEOで話した内容を振り返って見てみると、おそらく、当時話していたことの80〜85%は、今でも通用する内容なんです。基本的な部分は実はほとんど変わっていないんですよ。むしろ細かな要素、たとえばGoogleビジネスプロフィールやレビュー周りでの追加変更がある程度です。
ただ、私が思うに多くの人が誤解しているのは、ローカルSEOとは従来のSEOに加えて、Googleビジネスプロフィールを少しいじる程度だと考えていることです。実際は全く異なるアプローチであることに気づいていないのです。
コンテンツの面では、それほど大きな変化はないと考えています。
一方で、リンクについてはローカルSEOでは以前ほど重要ではなくなってきています。
Googleは現在、たとえば10年前と比較すると、単なるコンテンツやリンクよりも、レビューや検索者との距離(近接性)に価値を置くようになっています。つまり、検索者と検索結果の距離ですね。この要素は今後さらに重要になると思います。
この動画をご覧の方々が私のことをご存じかどうかは分かりませんが、Kenichiも知っている通り、私は長年にわたってカーディーラーと仕事をしてきました。可視範囲の話になりますが、たとえば、ある都市で「フォードのディーラー」と検索するとします。昔は表示される範囲がもっと広かったのですが、今ではどんどん狭くなってきています。
これに対して多くのビジネスオーナーは驚いて混乱していますが、彼らが理解しなければならないのは、Googleの動作はコントロールできないということです。Googleはビジネスオーナーを助けるためにあるわけではありません。つまり、Googleのルールの中でうまくやるしかないのです。そのため、私たちはクライアントに対して、「4〜5年前に遠方でも表示されていたからといって、今も同じとは限らない」ということを繰り返し説明しています。
多くの企業が競争力を維持しようとしていますが、問題は、一般のビジネスオーナーたちがSEOを理解していないことです。だからこそ、代理店やフリーランスと協力する必要があるのです。そして多くの人が、昔からやってきた方法にこだわりすぎていて、今の状況に合わせた改善ができていないのだと思います。レビューが非常に重要なシグナルになっている以上、これからはカスタマーレビューについてもっと重視すべきです。特にGoogleマップのパック表示においては顕著です。
そして、多くの人がコンテンツの作り方について誤解しているように思います。
ジョイ・ホーキンスさんは非常に有名な方で、ローカルSEOに関わっている方であれば、きっと彼女の名前を聞いたことがあると思います。
彼女が最近、新しく担当することになった、水道業者のようないわゆるホームサービス業のクライアントについての話をシェアしていたのですが、そのクライアントは、ジョイと仕事を始める前に、独自にChatGPTを使って、20万ページを自動生成することを決めていました。つまり、何十万もの都市ごとに異なる「水道修理サービス」のページを作っていたのです。それで順位が上がると思っていたのですが、結果的には順位が大きく下がってしまいました。
それでジョイと仕事を始めたところ、彼女は「これはゴミです」と言ったのだそうです。
第一に、これは役に立たないゴミのようなコンテンツだと。第二に、明らかにAIで書かれたものなので、さらに悪いと。結果として、それらすべてのページを削除し、サービス提供地域に限定してページを作り直したところ、急に検索順位が回復したのです。
ビジネスオーナーは常に「魔法のような解決策」を探しているように思います。何か1つのことをすれば検索結果のトップに上がれる、という方法を探しているように見えます。でもそれは幻想であって、地道な積み重ねの中にこそ本質があります。質の高いコンテンツを継続的に作り続け、今まで取り組んできた基本的なことを、きちんとやり続ける必要があるのです。「これをやれば一発でうまくいく」といった新しい施策は、正直あまり存在しないと思います。
唯一変わるべきは優先順位のつけ方です。特にLLM(大規模言語モデル)が台頭している現在においては、考え方を変えることが大切です。大事なのは、お客様が実際に抱くであろう質問に答えるコンテンツがあるかどうかです。それが本当に最も重要なことだと思います。
企業にとって最も効果的なコンテンツ戦略は?
鈴木:サービスや製品を提供する企業にとって、最も効果的なコンテンツ戦略とはどのようなものでしょうか?
Greg Gifford:まさに今、その質問に繋がる話をしていたところでしたね。
実は多くの人が誤解しているのですが、情報を出しすぎるのを恐れているのです。私たちのクライアントでも「そんなに詳しい情報は出したくない」と言う方が多くいます。彼らは「電話をかけさせたい」、つまり電話口にさえ引き込めば、「そのまま成約につながる」と思っているんです。
しかし今の顧客は、購入を決めるまで電話をしたくないのです。つまり10年前と比べて、遥かに多くの情報を事前に提供する必要があります。
私は週刊のビデオシリーズをやっているのですが、最近その中で取り上げたテーマのひとつに「症状から買い物する」という概念があります。これは医療系企業と仕事をしている中で感じたものです。
例として、年配の方が美容整形を受けようとするケースを挙げましょう。年を取るとまぶたがたるんできますよね。このたるんだまぶたを整える整形手術の正式名称は「眼瞼形成術(ブレファロプラスティ)」といいます。でもその専門用語は、医師以外にはほとんど知られていません。
にも関わらず、美容整形外科の多くは「ブレファロプラスティ」のページばかり作っているんです。そして代理店は「あなたの地域で“ブレファロプラスティ”で1位です」と報告します。しかし電話は全く鳴りません。なぜなら、ユーザーはそんな単語で検索していないからです。ユーザーは「まぶたがたるんでる」「どうやって直す?」「整形で治せる?」という検索をしているのです。専門用語で検索しているわけではありません。
大きな誤解があるのは、ビジネスオーナーや多くのマーケターが「このキーワードをページに入れればいい」と考えている点です。重要なのは「お客様がどのようにあなたの“解決策”を探しているのか」という視点で考えることです。しかし業種にかかわらず、多くの人がこの視点を忘れてしまいます。
商品やサービスを提供している理由は、お客様の“問題を解決する手段”を売っているからです。けれども、お客様はその「解決策」で検索するとは限りません。
お客様は、たとえば「症状ベース」で検索することが少なくありません。そもそも手術が必要だという自覚がない人もいます。病気かどうかも分からず、病院に行く必要があることすら気づいていないかもしれません。だからこそ、人は自分の「症状」を検索するのです。そして、その症状に関連するコンテンツにたどり着きます。
そこで理想的なのは、そのコンテンツが「この症状には整形手術が有効ですよ」と導いてくれることです。「この症状には“眼瞼形成術(ブレファロプラスティ)”が適しています」といった具合ですね。こうした考え方は医療業界だけでなく、すべてのビジネスに当てはまります。
私たちは多くの自動車ディーラーとも仕事をしていますが、たとえば3人目、4人目の子どもが生まれた家庭が、ミニバンや大型SUVへの買い替えを考えているとしましょう。そんなときに「ホンダ オデッセイが欲しい」と検索するわけではありません。「3人目が生まれて、スポーツ用品も積める3列シートの車が欲しい」といった形で検索するのです。
そこで、「お子さんが増えて車の買い替えを考えているなら、この車がおすすめです」といった内容を用意しているディーラーのページが、「こちらの車種がぴったりですよ」と案内していれば、反応を得やすくなります。
だからこそ、コンテンツに対する考え方を根本から変える必要があるのです。
従来のように「まずキーワードを5つ出して、それぞれのために記事を書く」という手法ではありません。そういった手法はもう時代遅れです。
それよりも大事なのは「自分たちが提供している商品やサービスが何か」という軸から出発し、「その前段階でユーザーが最初に疑問に思うことは何か?」を把握することです。まだ購入の準備はできていないけれど、いずれ買うであろうタイミングに向けて、その“購入前段階”の疑問に寄り添ったコンテンツを用意して、見込み客を取り込む必要があります。
この考え方は、ChatGPTやPerplexityなどの対話型AIが普及する今の時代にも非常にマッチしています。なぜなら、人々がLLMに対して、どんどん長くて会話的な質問をするようになっているからです。
昔のように「キーワード+地名」をひたすら詰め込むようなコンテンツでは、LLMにはうまく通用しません。なぜなら、ユーザーがそのような聞き方をしていないからです。
ですから、ユーザーが購入を決断する5歩、10歩、あるいは15歩前の段階を想定して、そうした早い段階の疑問に答えるコンテンツを、いまこそ準備しておくべきなのです。見込み顧客が知りたがる情報は、すべてウェブサイトに載せておくべきです。
鈴木:なるほど。つまり、私たちは知識を隠す必要はないということですね。
Greg Gifford:そのとおりです。出し惜しみせず、できる限りの情報をシェアすることが大切です。
特に今は、AI検索エンジンやAIエージェントのようなものにシフトしつつありますので、ユーザーは検索の前に、AIに質問して答えを得ようとしています。そんな中で、情報を小出しにして引きつけようという“門番的な考え方”では、少しだけ情報を出して「続きを知りたければ来てください」というやり方は、もはや通用しません。
逆に、あなたがその市場で最初に“すべての情報”を公開した存在になれば、顧客から見つけてもらえて、信頼され、購入にもつながりますし、 LLM(大規模言語モデル)もその情報を喜んで取り込み、 AI検索でもしっかり表示されるようになります。
つまりこれは未来を見据えた取り組みでもあるのです。
現時点でもローカル検索に効果的ですし、将来的にユーザーがLLM主導の検索に移行しても、そのまま通用するはずです。
鈴木:その戦略は確立しておくべきですね。
Greg Gifford:はい、そのとおりです。
Google ビジネス プロフィールでよくあるミスは?
鈴木:では次の質問です。
企業がGoogleビジネスプロフィールでよく犯してしまう一般的なミスにはどのようなものがありますか?また、それを避けるにはどうすれば良いでしょうか?
Greg Gifford:最近、業界ではちょっとした冗談が広まっています。
Googleは現在、偽のリスティングやスパム対策に非常に力を入れていて、その対応があまりにも厳しすぎるため、多くの“誤検出”が起きています。実際には正当なビジネスであっても、アカウント停止になってしまうケースが多いのです。
そのため、最近私たちの間でよく言われているのが、「キーボードに息を吹きかけただけでアカウント停止になる」という冗談です。実際、何も変更しなくても、ただログインしただけで、Googleビジネスプロフィールにログインしたら、「はい、停止です」となることすらあります。実際はそこまで極端ではありませんが、それに近い状態です。
真っ当なビジネスで、たとえば営業時間が変更になったので、毎朝1時間早く開店するようになったとしましょう。それで営業時間を更新すると、Googleにアカウントを停止される可能性があります。
何かミスをしたからではありません。Googleが、偽のビジネスリスティングを徹底的に排除しようとしているために起こるのです。偽情報が検索結果に出るのは、ユーザーにとって好ましくないからです。たとえば、検索して出てくるマップ上のビジネスがすべて偽物だったら、困りますよね。ですから、Googleの方針は理解できます。
つまり、「何も触らない方がいい」というのが本当の間違いではありません。ビジネスオーナーが犯す最大のミスは、停止されたときに「復旧プロセス」への備えができていないことなのです。
先日、新しい停止解除の仕組みが全ての地域を対象として導入されていましたね。
たとえば、あなたのビジネスプロフィールで何かを変更したとします。しかもそれはGoogleのガイドラインに違反しているわけではありません。営業時間や電話番号を変えただけかもしれません。ところが、何も問題のない正当な変更だったとしても、Googleに停止される可能性があります。
停止通知メールを受け取っても、その内容は非常にあいまいです。「営業時間を変更したから停止されました」とはっきり書かれているわけではありません。「不正確なコンテンツのため停止されました」といった曖昧な表現がされているのです。それが具体的に何を意味するのか、分からないですよね。
停止通知メールには「再開を申請する」「異議申し立てをする」というボタンがついています。そのボタンをクリックすると、再開手続きが始まります。手続きを開始すると、60分間のタイマーが動き始めます。その60分以内に必要書類をすべて提出できなければ、それが唯一のチャンスだったため、ビジネスプロフィールは失われます。
鈴木:つまり、もう完全に消えてしまうということですね。
Greg Gifford:はい、永久的に停止され、削除されることになります。
実際には1回だけ再審査のチャンスがありますが、回復のチャンスは合計2回だけです。
そこで大事なのは、Googleサポートチームに「これは正当なビジネスプロフィールで、誤って停止されたものだ」と理解してもらえる証拠を提出することです。正当な情報であることをしっかり証明しなければなりません。提出しなければならないのは、営業許可証や公共料金の請求書などの公的書類ですが、Googleはそういった情報をあらかじめビジネスオーナーに知らせてはくれません。
多くの場合、会社の正式な法人名は、店頭看板の名前とは違っているものですし、Googleビジネスプロフィールには、看板と同じ名前が登録されていることが多いです。しかし、提出するビジネス書類が法人名になっていて、ビジネスプロフィールの表示名と一致していないと、Google側から「これはあなたのビジネスとは確認できません」と拒否される可能性があります。
動画による認証では、まず周囲の道路などを映して、ビジネスの場所を確認できるようにする必要があります。続いて、常設の看板や出入り口も映します。さらに、一般の人がアクセスできない場所にもアクセスできることを証明する必要があります。たとえば、正面のドアに鍵がかかっていて、それを自分で解錠できるところを見せる、というような内容です。また、もしドアに鍵がかかっていないタイプ、たとえばバーやレストランなどの場合は、店の裏に回って、事務所や一般客が触れないコンピューターシステムにアクセスできるところを見せるのです。
問題は、このボタンをクリックすると60分間のタイマーが作動する点です。
たとえば、あなたが東京の都心に住んでいるとしましょう。で、あなたのビジネスは郊外にあるとします。自宅から店舗まで移動に1時間かかるとしましょう。動画を撮りに行く必要があります。でも、1時間以内に現地に到着して撮影を終えるのは現実的ではありません。
しかしGoogleはそれを考慮してくれません。タイマーは一時停止できないのです。
あるいは、あなたの代理店がクライアントのアカウント管理をしていて、そのクライアントが停止されたとしましょう。あなたがGoogleビジネスプロフィール周りの対応をしていても、クライアントが5時間も離れた場所にいて、忙しくて動画を撮れなければ、もう手出しができません。
最近よくある大きなミスは、その「再開プロセス」に対する準備が全くできていないことです。「申請ボタン」をクリックした瞬間から60分間しか猶予がないと知らない人が多いのです。会社設立書類や営業許可証、納税書類などを、常に手元に用意している人がどれだけいるでしょうか?必要書類を探し出さなければならず、しかも何を提出すべきかもよく分かっていないケースが多いのです。
私はGoogleビジネスプロフィールのコミュニティフォーラムでもサポートをしていますが、停止された方が来て「こういうのを送りました」と言ってくるんです。「名刺の写真を送ったけど、それでは不十分だと言われました」と。
結局のところ、最大のミスは「アカウント停止に備えていないこと」なのです。ですから、あらかじめ停止される可能性を見越して準備しておくことが必要です。
私たちはクライアント全員にこう伝えています。「もしアカウントが停止されたら、何もクリックせず、まず私たちに連絡してください」と。対応準備を手伝えるからです。
それとは別に、ローカル検索に関してビジネス側が犯す最大のミスは、「一度設定したら、そのままでいい」という考え方にあります。
ビジネスプロフィールを設定する多くの中小企業は、代理店やフリーランサーとは契約していません。SEOを専門にやってくれる人もいない中で、とりあえずビジネスプロフィールだけは必要だと分かっているわけです。それで設定したまま、何年も全く触れずに放置してしまいます。実際に何年も更新されていないケースが多いのです。
アルゴリズムに「更新頻度」が直接含まれているかは分かりませんが、プロフィールを7〜10年前に作ったまま放置しているビジネスが本当に多いです。
そしてコロナパンデミックの時、ほとんどのビジネスが一時閉鎖されました。今ではコロナ制限も解除されましたが、当時は「一時的に閉店」とプロフィールに記載していたのです。実際に営業はしていませんでした。「臨時休業」にしたり、営業時間を変更したりしたわけです。コロナ前は9時から17時営業だったものが、コロナ後には10時から18時に変えたかもしれません。しかしマーケターがついていないため、ビジネスプロフィールの存在自体を忘れてしまい、営業時間が間違ったままになっていることがあります。
よく見かけるのは、10年前に実店舗のプロフィールを設定したままの方です。そして4年前に店舗をリニューアルしたにもかかわらず、ビジネスプロフィールに掲載されている写真は、すべてリニューアル前の古い店内のままというケースが多いのです。そのため、お客様がネット上の写真を見て来店したときに、「あれ?この店じゃなかったかも」と違和感を覚えることもあります。
このように、もっと根本的な話として、ビジネスオーナーはGoogleビジネスプロフィールがどれほど重要かを、きちんと理解していないのです。そしてそのまま放置して、形骸化させてしまうのです。
鈴木:つまり、Googleビジネスプロフィールは常に最新の状態に保つことが極めて重要なんですね。
Greg Gifford:本当にそのとおりですね。
AIによるローカルビジネスへの影響は?
鈴木:次の質問です。GoogleのAI OverviewsやChatGPT検索など、検索結果へのAI活用が進む中で、ローカルビジネスへの影響はどのようなものでしょうか?そして今、何に注力すべきでしょうか?
Greg Gifford:正直に言って、現時点では特別に何かに注力する必要はないと思います。
AI Overviewは、ローカル検索に導入され始めたばかりです。というのも、ローカル検索は検索意図が他とは大きく異なるため、まだ本格的な影響は出ていないのです。
ローカル検索をする人は、その地域のビジネスから実際に何かを買おうとしている場合がほとんどです。しかも、今のところAIにはハルシネーション(事実でない出力)が多く存在します。
数週間前、X(旧Twitter)でこんな投稿がありました。
ChatGPTかClaudeかは定かではありませんが、ある大規模言語モデル(LLM)に「この街で一番のピザ店」などと尋ねたところ、提示された5軒のうち、4軒が実在しない店舗だったのです。このように、AI検索は信頼性の面でまだ大きな課題があります。
私たちマーケティング業界の人間は、AI OverviewsやSearchGPT、Perplexity、DeepSeekといったツールの登場に慌てています。「ああ、もうトラフィックが全部奪われてしまう!」と騒いでいるわけです。10年前にリッチスニペットが登場したときと同じですね。でも、一般の人たちはそこまで頻繁に使ってはいません。
私は数週間前にSMXミュンヘンに行ったのですが、そこで語られていたのは、「レシピブログはもう終わったも同然だ」という話でした。
いまや、どこかの国から移住してきたおばあちゃんの話が1000文字も続いた後に、ようやくレシピが出てくるブログなんて読みませんよね。「これが一番本格的なレシピです」といったストーリーが延々と続いたあとで、一番知りたかったレシピにたどり着く、そんな構成です。
いまはChatGPTに「スパゲッティのレシピを教えて」と聞けば、すぐに適切なレシピを出してくれます。一方で、ローカル検索では「情報がほしい」というよりも、「このビジネスから実際に買いたい」という意図が強いです。AI検索はまだそのニーズに対応できる段階にはないと思います。
現時点でAI概要表示やChatGPT検索などを利用している人たちは、そこまで明確なユースケースが存在しているとは思えません。ゼロではありませんが、数がごくわずかで、極めて限定的です。
ドイツでの講演の中で、こんな資料が紹介されていました。Perplexity、SearchGPT、ChatGPT、Claudeなど、複数のAI検索を合わせた利用状況と、それらの月間利用数をグラフにすると、ほんの小さな線にしかならなかったのですが、その横にGoogleの月間検索数を示した棒グラフが出て、それは圧倒的にグラフの高さが高かったのです。
私たちは皆、この変化がやってくることを理解しているので、前もって準備を整えようと必死になっています。ですが実際のところ、私たちの現場ではそれほど大きな変化は起きていないと思います。
鈴木:つまり、検索やローカルSEOに関しては、特別な対策を講じる必要はないということですか?
Greg Gifford:特別な対応をする必要はありません。私たちはクライアントからよく聞かれますが、「AIに表示されるには、どう最適化すればいいのですか?」という質問に対して、現時点では、特別に何か変わったことをする必要は本当にないと思います。
そして私は「SEOをGEO(Generative Engine Optimization)と呼ぶべき」とか、「SEOではなくSO(Search Optimization)と呼ぼう」といった議論をしたいわけでもありません。そういった呼び方にはこだわりません。好きに呼んでください。
10〜12年前の「音声検索」と同じようなものです。当時も「音声検索にどう最適化すればいいの?」と聞かれていました。でも、結局はSEOとほぼ同じことをすれば良かったのです。
唯一変わる可能性があるとすれば、スキーマ(構造化データマークアップ)が、これまで以上に重要になる可能性が高いという点です。
スキーマは、AIに対して「あなたが何者なのか」「何を扱っているのか」を理解させる助けになります。
これまでスキーママークアップがよく使われていたのは、「検索結果にFAQスニペットが出るようになったから、うちのサイトにも入れよう」という理由からです。その結果、FAQスキーマを導入したという流れですね。顧客のためとか、サイトの改善のためというよりは、「検索結果に装飾がつくから」という理由でやっていたわけです。
ですが今後は、スキーマがより広く使われるようになると思います。すべてのAIシステムのためにスキーマを導入する必要があり、スニペット表示のような装飾や、検索順位の向上のためではなく、AIへの理解促進という意味で、それがAIに正しく認識されるために役立つものであると理解されてくるからです。
鈴木:実は、マーティン氏が「構造化データはLLMにも効果がある(コンテンツ理解の手助けになる)」と、このインタビューの直前に私に話してくれました。
Greg Gifford:おそらく、それが最も大きな変化になるでしょう。従来型の検索では違う可能性もありますが、ローカル検索に関しては、すぐに大きく変化するとは思っていません。
今後、ローカルビジネスはどう変化する?
鈴木:では最後の質問です。今後数年を見据えて、ローカル検索における最も大きな変化や影響は何だと予想しますか?
Greg Gifford:少なくとも、誰かが新たな手法を確立するまでは、現在のローカル検索の大きな動機は、ユーザーが地元エリアで問題解決の手段を探す、ということです。
その検索の末に起きることは何かというと、ユーザーは「何を買うか」「どこで買うか」を決めます。そして購入先の店舗も決まるのです。あとは、店舗への行き方を調べるだけです。
LLM(大規模言語モデル)も一応、道順を案内してくれますが、実際のナビアプリのように、リアルタイムで曲がる場所やルートを案内してくれるわけではありません。
業界では「トラフィックがなくなる」と不安の声もあります。たしかに将来的には、Webサイトへのトラフィックが減っていく可能性はあります。オーガニック検索から得られるトラフィックは、ほぼ「ブランド名検索」ばかりになるでしょう。なぜなら、ユーザーはすでに「何を」「どこで」買うかを決めてしまっているからです。あとは企業名で検索するだけです。企業のサイトが表示されて、そこで購入が完了します。ECサイトなどでは、これは理にかなっています。
しかしローカルビジネスでは、「検討段階の初期トラフィック」は得られなくなるかもしれません。つまり、先ほど私が述べた「ファネルの初期段階」についても、今後はそこからのトラフィックも少なくなる可能性があります。そのプロセスは、AI検索の中で完結してしまうからです。
ただ現時点では、人々はAI検索を使って調べたあとに、最終的にはGoogle検索で企業名を調べて、Webサイトへアクセスし、取引を完了させています。この流れは、ローカルビジネスでもしばらくは続くと思います。
これまでのところ、より良い解決策を提示した人は誰もいません。ですから、今後人々はAIで検索を行うようになるでしょう。そして検索の最後には、Googleでウェブサイトを検索する代わりに、GoogleマップやAppleマップ、Wazeなど、使っている地図アプリで目的地までの道順を調べるようになります。
ですから、これから先を見据えて、トラフィックが減少することを覚悟する必要があると思います。今が、おそらくトラフィックが最も多い時期かもしれません。正確には「今日」というよりも、6か月後か、それくらいの時点でピークを迎える可能性があります。近い将来、その時点が最も多いトラフィック量となるでしょう。そしてそれ以降は徐々に減っていくと思います。なぜなら人々はGoogle検索から離れていき、情報を得るためにウェブサイトを訪れることも少なくなるからです。
ユーザーは、最終的な確認として「どの店か」を調べるために訪れるだけになります。ですから、その変化に備える必要があると思います。ただ、ローカル検索においては、ウェブサイトへのトラフィックは減っても、地図アプリでのルート検索や「道順クリック」は依然として続くでしょう。私自身、こうしたアクションをトラッキングして、クライアントにROI(費用対効果)を証明できるようになることを願っています。単に「もうトラフィックは来ていませんが、AIには表示されていますよ」「リード数は減っていませんし、売上も維持できています」「だから私たちの施策は効果があるんです…」と言うだけにならないようにしたいですね。そんな曖昧な説明は、ビジネスオーナーにとっては納得しづらいですから。
以前は、PPC広告に投資すれば明確な成果が見えましたし、SEOでも結果が数字で確認できました。しかし今はSEOに投資しても、成果は「売上が上がったか下がっていないか」だけであり、トラフィックやCV(コンバージョン)をKPIにできなくなる可能性があります。
鈴木:近い将来、ローカルSEOは今よりも難しくなると思いますか?
Greg Gifford:「近い将来」とは、どのくらいの期間を想定していますか? 来年くらい?
鈴木:2〜3年後です。
Greg Gifford:少なくとも1年以内に、今より難しくなることはないと思います。2〜3年というスパンでも、今より極端に難しくなることはないと考えています。
もちろん、Googleが何らかの大きな仕様変更をして、停止処分が激増するようなことがあれば話は別です。でもGoogleがそうした奇抜な変更をしなければ、ローカルSEOが急激に変化するとは思いません。私が間違っているかもしれませんし、将来のことは誰にも分かりませんが。
とはいえ、私たちマーケターはすぐに騒ぎすぎる傾向があります。AIの波が来るたびに、業界全体がパニックになります。でも、一般のユーザーたちはまだそこまで来ていないのです。
今朝、BlueSky(SNS)で見かけた投稿では、Chromeプラグインの検索をしている人がいました。すると、現在公開されている膨大な数のChromeプラグインの中には、GoogleのAI概要表示(AI Overview)を非表示にするためだけのプラグインがたくさんあったのです。一般のユーザーたちはAI概要表示に対してかなり苛立っていて、見たくないと思っているのです。おそらく、まだ新しくて慣れていないというのも原因の一つでしょう。
でも、15〜20個以上もそうしたプラグインが存在しているということは、それだけ多くの開発者が作っているということは、確実に需要があるということです。つまり、「AI概要表示を見たくない」という人がたくさんいるということです。
私たちマーケターは、そういう一般層の感覚を見落としがちです。今、マーケターたちが「すべてが変わってしまう」と大騒ぎしていますが、「来週にはすべて変わってしまうぞ」と騒いでいるのは、少し過剰反応だと思います。実際には、もっとゆっくりとした変化になると思います。
鈴木:では、今の戦略をしばらく継続しても問題ないということですね?
Greg Gifford:そのとおりです、安心して継続してください。
鈴木:では、これで終了です。たくさんの貴重なお話をありがとうございました。とても参考になりました。
Greg Gifford:こちらこそ、ありがとうございました。お話できて嬉しかったです。
鈴木:私もです。ありがとうございました。 それでは、次回の動画でお会いしましょう。
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