2020年1月にGoogleは、ChromeにおけるサードパーティCookieのサポートを廃止する予定と発表しました。これまでCookieの恩恵を受けていたWeb管理者やユーザーにとってはデメリットがあるかもしれません。ここでは、GoogleがCookieを廃止した問題点や、そもそもCookieとは?を踏まえ、広告主・サイト運営者への影響などについて解説します。※動画は2021年6月時点/内容は2022年2月時点での情報をもとにしています。
目次
なぜGoogleはChromeでのサポートを廃止するの?
▶︎Google ChromeにおけるサードパーティCookieを廃止する理由と影響について
※この動画は2021年6月時点での情報を元にしています。
最近多くのウェブページで、「Cookieを許可しますか?」というポップアップをよく見るようになりました。これは「CMP(同意管理プラットフォーム/Consent Management Platform)」と呼ばれる表示です。EUにおけるGDPR(EU一般データ保護規則/General Data Protection Regulation)など、近年さまざまな法律・規則で個人情報保護が厳格化しています。これに伴い、Cookieによる追跡をブロック(オプトアウト)する、あるいは受け入れるかどうかをユーザーの任意で選べるようにCMPを設置しているサイトが増えてきています。
Googleもこのプライバシー保護の流れを組んで、2020年〜2022年までに段階的にサードパーティCookieのサポートを廃止する方針を公表しました。さらに2021年6月、「2023 年後半の3カ月間で、ChromeはサードパーティCookieサポートを段階的に廃止する」とより細かくタイムラインを公表しています。 第三者のサイト間をまたいでユーザーのアクセス情報を追跡(トラッキング)できるサードパーティCookieに対し、「プライバシー保護の観点から規制をかけるべきだ」との批判が上がり、これに対応を迫られたかたちです。
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Cookieとは?
一度訪れたサイトに再訪時、再びIDやパスワードを入力する手間が省けたり、ECサイトを一度離れても買い物かごに入れた商品がそのまま残っていたりすることはありませんか?これは一時的にブラウザ(ChromeやSafariなど)に保存されるユーザーの行動履歴データ=Cookieが可能にした仕組みです。
広告運用企業側ではこのCookieを、ユーザーがどの経路から流入したか、閲覧したページや買い物情報などを活用したユーザーの行動追跡・データ収集と、それに合わせた広告配信に活用してきました。
Cookieの種類
Cookieには、大きく分けると3種類あります。
ファーストパーティCookie
自社サイトのドメイン内で発行されたCookieです。サイト運営社は、当該サイト内でのユーザー行動のトラッキングが可能です。
セカンドパーティCookie
他社サイトのドメイン内で発行されたCookieです。たとえば中古車サイトで車を買い、クレジットカードで決済したユーザーのローン残高情報は、その中古車事業者にとってはセカンドパーティデータです。中古車事業者は自社が持つファーストパーティCookieと組み合わせて、購入したセカンドパーティデータをもとに、ちょうどローンが終わる頃に次の車への買い替えをすすめるDMや広告を打つことができます。
このように、自社のファーストパーティCookieをセカンドパーティデータとして提携先の他社に販売する企業間取引は、近年増えています。
サードパーティーCookie
自社サイト以外の第三者のサイト運営社のドメインに発行されたCookieです。ユーザーが自社サイトを離れた後、サイトA、サイトBと別サイト間をまたいだトラッキングが可能です。
一度買い物かごに入れたことのある商品の広告が、関連のない別のサイトを見ている時に出てくる現象はサードパーティCookieを活用していることが考えられます。
サードパーティCookie規制の影響は?
マーケターや企業側から見て、サードパーティCookieの規制はどのような影響があるのでしょうか?
広告配信にCookieが使えなくなる
ユーザーが閲覧したジャンルやコンテンツに応じた広告を表示するリターゲティング(追従型)広告配信に、Cookieが利用できなくなります。また性別・年齢・興味カテゴリを推定し、広告出稿社が要望する属性のユーザーに向けた広告の配信(オーディエンスターゲティング)にも利用できなくなります。
Cookieを使わない代替技術も開発中
Cookieを使わないで似たようなことができる技術をGoogleが開発しています。 まず開発された代替技術はFLoC(フロック/=Federated Learning of Cohorts)です。個人でなく集団(Cohort)に属する人としてユーザーを扱い、嗜好ベースの広告を有効にできるようにする技術として開発されました。 Googleは「テストではサードパーティCookieとほとんど変わらない広告成果をあげられる」と公表していました。
▶︎Google、サードパーティCookieの代替技術としてFLoCのオリジントライアルを日本でも開始
ところが、このFLoCも「ユーザーを特定できてしまう可能性がある」「独禁法に違反する可能性がある」といった批判の対象になりました。そこでGoogleはFLoCの開発を中止。2022年1月現在、これに代わる「Topics API」という技術のテストを進めると公表しました。
「Topics API」では「個人」を追跡せずプライバシーに配慮した広告を表示するため、まずユーザーの閲覧履歴に基づいて、「フィットネス」「マンガ」「旅行」など一人一人が関心を持ちそうな話題(Topics)を推定します。次にChromeがこの話題のリストから毎週5つを選定し、一部をサイト運営企業に提供、表示すべき広告の種類の選定に活用できるようにする仕組みです。Googleは選定した話題の保存期間は3週間に限り、その間にユーザー自身が確認をしたり、消すこともできるようにして、透明性を担保するとしています。
▶︎GoogleのPrivacy SandboxによるTopics APIの説明
CV(コンバージョン)の計測は難しくなる?
広告からそのページに流入したユーザーのCVを計測するのは、サードパーティCookieを使わずとも、ファーストパーティCookieのみで可能です。Cookie自体を使わないCV計測の方法もGoogleが開発中です。今後は後者が主流となる可能性があります。
アフィリエイトには影響がある?
今回のChromeにおける変更は、アフィリエイトサイトの運営には影響がありません。アフィリエイトの効果計測はクリックに基づくものなので、サードパーティCookieを使っていないからです。
Chrome以外のプライバシー保護の状況は?
Chromeと別のブラウザの状況はどうでしょうか。iOSに標準装備されているAppleのブラウザ「Safari」は、2020年3月、有効期限をごく短く設定する「Intelligent Tracking Prevention(ITP)」の更新を境に、サードパーティーCookieを完全にブロックした初のブラウザとなりました。
さらにiPhone自体のプライバシー保護にも変化がありました。AppleのCMでもあったように、2021年4月末に配信されたiOS14.5以降、ATT(アプリトラッキング透明性/App Tracking Transparency)が導入されました。これによりユーザーが使用中のアプリが別のWebサイトやアプリ間をまたいでユーザーを追跡しようとする際に、ユーザー側の許可を明確に得ることが義務化されました。
分析会社FlurryによるATT導入後の調査では、iOS14.5に更新したiPhoneユーザーのうち、アメリカでは96%、全世界でも88%が「アプリ追跡を無効」としたとも言われています。
このような潮流でもわかるように、今後はより一層「個人」を追跡する広告手法は難しくなると見られています。しかし企業側も規制強化をただ黙認しているわけではありません。
日本政府は近く、Cookieを含むオンライン上の利用履歴を保護する「電気通信事業法」の成立を目指しています。しかしIT関連企業が多く加入する新経済連盟では、総務省が募集したパブリックコメントに対し、過剰規制への懸念を呈しました(意見)。世界的なプライバシー保護の流れと、ユーザーの行動データを活用したい企業側の攻防は2022年以降も続くと見られています。
Cookie関連の別動画もぜひ参照ください
▶︎【今さら聞けない】ファーストパーティCookieとサードパーティCookieの違い
動画出演者PROFILE
SFA導入コンサルからCRMベンダーのセールスに転身し、営業マネージャーに。その後Faber Company営業部長を経て、マーケティングを担うIMC部を設立。現在は執行役員として、営業・マーケティング部の統括やセミナー登壇などの活動をメインに行っている。
■ 講演実績:マーケティングアジェンダ/日経クロストレンドForum 他■Twitter:@tsuuky09