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偶然の出会いから始まったSEOコンサルタントの道。アユダンテ・江沢真紀に聞く日本のSEOの課題

更新日:2024.5.23 公開日:2024.05.22

偶然の出会いから始まったSEOコンサルタントの道。アユダンテ・江沢真紀に聞く日本のSEOの課題

様々な領域の「知」を求めて、有識者の皆さんと対談する連載「 #知の探索 」。インタビュアーは、当社の本田卓也が務めます。今回のゲストは、国内におけるSEOコンサルティングの先駆的存在である、アユダンテ株式会社のSEOコンサルタント、江沢真紀さんです。

アユダンテ社の創業メンバーでもあり、2001年よりSEOに携わり続けている江沢さん。これまでに手がけた100サイト以上のプロジェクトで、多くの成果を出してきました。また、SEOを学ぶ定番書『いちばんやさしい新しいSEOの教本』の著者としても活躍しています。

そんな江沢さんとSEOとの出会いは、まさかの偶然によるものでした。過去のエピソードを紐解きつつ、江沢さんが思うSEOの面白さ、現在のSEOが抱える課題などを伺いました。

(執筆・撮影:サトートモロー 進行・編集:本田卓也)

Webデザイナー志望からのSEOとの出会い

本田:
江沢さんとは以前から知り合いではあるものの、知らないことも多いです。今日はぜひ、いろいろと教えてください。まずは、江沢さんのご出身や学生時代について教えていただけますか?

江沢:
生まれは東京です。両親は公務員で家におらず、小さい頃は家でずっと一人で過ごすような、ちょっと暗い子でした。そのころからずっと本ばかり読んでいて、今も活字中毒です。

中学高校は埼玉で過ごしていて、中学校時代はバスケ部だったんですが、高校時代は帰宅部で特になにもしていなかったと思います。その後、大学に進学してから女性ファッション誌の『CanCam(キャンキャン)』で雑誌編集のアルバイトをしていたんです。

アユダンテ株式会社 江沢様

本田:
本好きな江沢さんらしいアルバイト先ですね。

江沢:
そのままこの仕事に就こうとも思ったんですが……。ハードかつ不規則な雑誌編集の働き方を、一生続けられるかなと悩んでしまって。

それに、私の家族は両親も弟も公務員で、「公務員になったほうがいい」とずっと言われていたんです。それで、大学4年生の時に公務員の専門学校に通い、ある財団法人の経理職に就きました。

本田:
江沢さんが経理!?失礼ですが、全然イメージができません。

江沢:
結局、お金の計算が全然好きじゃなかったので、「これはダメだ」とすぐ思いました。
3年ほど働いて、やっぱり雑誌編集の仕事に戻ろうと考えていたとき、友人に「これからは紙じゃなくてWebの時代だよ」と言われました。

それを聞いた私は「そうか」と思い、働きながらデジタルハリウッドのWebデザイナー養成コースに通い始めたんです。肝心なWebデザインのセンスは、まったくなかったんですけどね(笑)。
その時、デジタルハリウッドで同じコースを受講していた人が、ジェフ・ルートのいたイージャパンでSEOのアルバイトをしていました。その人に声をかけられたことをきっかけに、2001年からジェフの下でSEOについて学び始めたんです。

※ジェフ・ルート氏
アメリカ出身で、北米、中央アメリカなどで数々のサイトのSEOを成功させる。イージャパンを通じて、日本のSEO黎明期を支えたプロフェッショナルの一人。2005年にはジャーナリスト・佐々木俊尚氏と『検索エンジン戦争』を出版し、ビジネス的な観点におけるSEOの重要性について解説した。

本田:
まさかのタイミングで、当時のSEOの最前線を走るジェフ氏と出会ったのでね。それをきっかけに、江沢さんの人生は大きく変わったわけですか。

江沢:
そうですね。この頃はGoogleのことも知らず、面接では「ゴーグル」と発音していたレベルでした(笑)。ジェフも英語しか話せないなか、なんとか少しずつSEOについて教わってはいたものの、最初のころはまったく仕事を取れなくて。ジェフには毎日のように「このままいくと君はクビだ」と言われていました……。

本田:
当時の日本では、まだSEOの重要性が理解されていなかったですからね。その状況で少しずつ案件を獲得していったと思うのですが、具体的にどのような仕事を担当していたのですか?

江沢:
当時のイージャパンは、WordPressのようなCMSを開発していました。そこで静的サイトを作りSEO対策を支援することが多かったです。私は比較的初期から、ECサイトを運営する企業様をよく担当していました。カタログ通販サイトと聞いて皆さんが思い浮かぶ大手企業様は、すべて支援したと思います。

アユダンテ株式会社 江沢様

本田:
すごいですね!それもあって、「江沢さんといえばEC」というイメージが強いのかもしれません。

推理小説的に問題に取り組む面白さ

本田:
それにしても、2001年にジェフ氏と出会って以来、20年以上SEOに関わり続けているのですよね。私が知る限り、日本で一番SEOコンサルタント歴の長い女性だと思います。たまたま知っただけのSEOの仕事を、なぜここまで長く続けていられるのですか?

江沢:
なんだかんだ、やっぱり面白いんだと思います。

本田:
「面白い」ですか。でも、続けていて飽きないものですか?

江沢:
サイトによってやるべきことがまったく違うので、意外と飽きません。私はアユダンテに入ってからユーザビリティやアナリティクス、コンバージョン最適化などSEO以外の業務もやってみたことがありますが、やっぱりSEOが一番面白いと思っています。

SEOは明確な答えが一つではない中で、アクセスが落ちた要因などを解明する必要があるじゃないですか。それでいて、やったことが明確な成果として現れます。私は推理小説が大好きなんですが、謎を解き明かしていくプロセスとSEOはすごく似ているんですよね。それが、SEOを面白いと感じる理由なのかもしれません。

本田:
確かにSEOのプロセスは推理小説的かもしれませんね。では、これまでのキャリアを通じて、SEOをやっていてよかったと思う瞬間はありましたか?

江沢:
やっぱり成果が出たときでしょうか。SEOは結果がすべてですから。
アユダンテ株式会社 江沢様

本田:
なるほど。とはいえ、これまでの仕事で大変だったときもたくさんあったと思います。内部施策やテクニカルSEOの提案をしても、お客様側のリソースの問題でそれを実行できないこともあります。
それで成果が出ないことによって、歯がゆい想いもたくさんされたのではないでしょうか。そうした苦労を、江沢さんはどのように乗り切ったのですか?

江沢:
私はとにかく粘り強く、「やってください」と言い続けました。私、すごくしつこいんです。時には「なぜやらないんですか」と迫ってお客様が激怒されたこともあります。先方の上司に「担当者さんが非協力的で困っています」と告げ口してプロジェクトを動かすときもありました(笑)。

この姿勢は、『CanCam』時代に仕事を教わった女性編集者さんから教わりました。この人は本当に厳しくて、少しでも変な文章を書くと「全然考えて書いてない」ときつくダメ出しをされたんです。ライティングだけじゃなく、仕事のあらゆる面で厳しく接していただきました。どんな状態であれ、仕事を最後までやり遂げるという覚悟は、その人から学びましたね。

本田:
素晴らしいプロ意識ですね。若いうちに、そうした厳しい人に出会うのはよい経験になると思います。

SEO=コンテンツではない

本田:
現状のSEOについて、江沢さんが感じている問題点や課題はなんですか?

江沢:
今問題だなと感じているのは、支援側もお客様側もSEO=コンテンツSEOという認識がかなり一般化していることです。

もちろん、私たちもコンテンツSEOには取り組みますし、コンテンツは非常に重要です。一方で、内部施策やテクニカルSEOに取り込んだ方が、よい成果につながるサイトはたくさんあります。

本田:
よく分かります。私は若いマーケターとよく交流しているのですが、「SEOできます!」という人の話を聞くと、コンテンツSEOしか経験がない人が非常に多い印象です。中には、「テクニカルって何をやるんですか?」というケースも珍しくありません。

とはいえ、テクニカルSEOや内部施策に取り組めるのは、インハウスで大規模なサイトを運営している会社のSEO担当者くらいだと思うんです。もしくは、アユダンテ社のようなSEOコンサルティングを行う会社で経験するしかないのかなと。

弊社 本田

江沢:
そうかもしれません。特にここ数年でSEOを始めた方は、スマートフォンでWebサイトを見るのが当たり前で、Webサイトの構造について学んだことがない気がします。SEOに詳しくなりたいのなら、記事を含むWebサイト全体の知識を身に着けた方がいいと思いますね。

SEOの勉強をすると、その過程でサイト設計やテンプレート作成など、Webサイトを作るための必須の知識を幅広く学べます。そこで得た知識は、今後のキャリアでも絶対に役立つと思うんです。

本田:
私も、アユダンテ社が手がけたECサイトを見ながら、SEOについて必死に勉強したものです。「このECサイトはどんなカテゴリ設計なのか?」とか。それでいうと、SEOは生成AIや※SGEによって変化のきざしが見られます。江沢さんは、今後のGoogleの動向をどのように予想していますか?

SGE(Search Generative Experience)
ユーザーの質問に対して、生成AIが回答を生成し検索結果の一番上に表示する機能。
SGEについて知りたい方はミエルカチャンネルをご覧ください。

江沢:
本当にSGEが全面に出てきて、多くの人々がそれを利用するようになれば、ゼロクリック検索が増えてインフォメーショナルクエリに基づくSEO対策が成り立たなくなるでしょう。

一方で、ECサイトのようなトランザクショナルクエリも、広告などの増加によって難しくなってきていると思います。

ゼロクリック検索
ユーザーの求める回答が検索結果ページのトップに表示され、他のページをクリックすることなく終了する検索のこと

インフォメーショナルクエリ
「情報収集型」のクエリで、情報を探しているユーザーの検索ワードのこと

トランザクショナルクエリ
「取引型」のクエリで、ユーザーの「購入したい」といったアクションを起こす意図が含まれた検索ワードのこと

そのため、今後GoogleにおけるSEOは非常に難易度が高まる気がします。個人的には、Google一強の状態は変わったほうがいいなと思うので、Microsoft Bingには頑張ってほしいですね。

とはいえ、そもそもiPhone比率の多い日本においては、モバイルの環境が変わらなければ、検索を取り巻く環境はドラスティックに変わらないと思います。そういう意味では、Apple社の動向も気になるところです。

本田:
確かに、Microsoft社とApple社の今後には注目ですね。

江沢:
また、日本語圏でのSEOは飽和状態なので、アユダンテはグローバルに目を向けています。特に、アジア圏で検索エンジンに向けてきちんと対策できているサイトは、まだまだ少ないのが現状です。実際、いくつかのグローバル案件では、大きな成果が現れています。

アユダンテ株式会社 江沢様

本田:
グローバルですか!確かにその領域はまだまだ開拓しがいがありそうですね。

多岐にわたるSEOの面白さをぜひ学んでほしい

本田:
江沢さんから見て、SEOに向いている人の共通点は何だと思いますか?

江沢:
SEOで成果を出している人は、諦めない粘り強さがあります。それと、SEOはコンテンツだけでなく、見るべき点が多岐にわたるので、網羅的に細かく見る視点も必要ですよね。

SEOでは、検索ニーズへの理解が必要です。コンテンツSEOにしても内部施策にしても、キーワードやその背景にあるニーズを知ろうとする姿勢がないと、SEOには向いていないと思います。

本田:
検索ニーズを理解するうえでは、基本的に知的好奇心が求められますね。あとは人の気持ちに寄り添って考える力を養わないと、そもそもキーワード自体が思い浮かばない気がします。

最近、SEOに取り組む若い世代の人々と会食をすると、「何を学べばいいのですか?」とよく聞かれるのです。江沢さんであれば、どのような答えを返しますか?

弊社 本田

江沢:
例えば、コンテンツSEOだけじゃなくWebの構造やテクニカルSEOを知るのが大事ですよね。それに加えて、サイトのUXやヒートマップの勉強や、あとはGoogle Analyticsの勉強をおすすめしたいです。

本田:
Google Analyticsを見る習慣はぜひ身につけてほしいですね。サイトのUXについては、どう学べばいいと思いますか?

江沢:
本田さんがおっしゃるように、UXを独学で理解するのは大変だと思います。お世辞抜きで伝えるなら、貴社が提供している『ミエルカヒートマップ』を導入して、利用ユーザーに提供されている勉強会に参加するのが一番だと思います。

弊社でもミエルカヒートマップを導入していて、先日ちょうど御社との勉強会があったんです。そこではあるサイトの記事を実際に分析していただきましたが、これまで知らなかった知見が得られて、チームメンバーも私もすごく勉強になりました。

本田:
アユダンテ社の皆さんをうならせることができたのは、すごく誇らしいです。

じっくり時間をかけてSEOの人材を育てたい

本田:
今後、江沢さんはどのようなキャリアを描いていきたいですか?

江沢:
私には8歳の子供がいるんですが、妊娠・出産をきっかけに働くペースを大きく落としたんです。これからも子育てを大切にしながら、今の仕事を長く続けつつ、人を育てていきたいなと思っています。

弊社の代表取締役である安川洋はよく人生では最初にメンターになる人が一番重要だと口にしています。SEOも同じで、最初に教わるのが誰かというのは、すごく大事だと思うんです。

本田:
そうですね。過去に取材したSEOのプロフェッショナルも、その道の超一流から学んだ過去がありました。

江沢:
弊社では積極的に採用を進めているのですが、応募者の方から「入社1ヵ月で現場に出ていました」という話をよく耳にするんです。それでなんとかなっていると言うのですが、実はうまくいっていないケースも多いのではないかと思います。

本田:
入社したSEO会社次第では、何も成果や学びを得られずに時間だけが過ぎてしまうことになりかねないですね。

江沢:
私は、SEOを本当にいちから学ぶのであれば、最低でも1年〜1年半は必要だと考えています。
辻正浩さんは「5年は必要」と言っていますが(笑)。

本田:
辻さんは求めるレベルがものすごく高いですからね(笑)。日本では、SEO人材が決定的に不足しています。江沢さんが育成に力を入れてくださるのは大賛成です。ぜひこれから、積極的に募集をかけてください。アユダンテ社が人材を求めていると知れば、多くの人が興味を持つと思います。

※辻さんには過去、知の探索でもインタビューしているのでそちらもご覧ください。
https://mieru-ca.com/blog/special/exploration/tsuji-masahiro/

江沢:
ぜひこの記事で宣伝してください(笑)。皆さんのご応募をお待ちしています!

アユダンテ株式会社 採用にご興味がある方はこちらをご覧ください。

アユダンテ株式会社 江沢様と弊社 本田デスクをはさんで会話している様子

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