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知の探索

「無理せず自然体でいる」という競争戦略。ベイジ枌谷力

更新日:2023.9.9 公開日:2022.12.13

知の探索 ベイジ枌谷さま編

株式会社GiftXいいたかゆうたさんがインタビュアーとなり、様々な領域の「知」を求めて、有識者の皆さんと対談する連載「 #知の探索 」。

今回のゲストは、株式会社ベイジの枌谷力さんです。枌谷さんは、デザイナーとしてのキャリアはもちろん、BtoBマーケティングやオウンドメディア制作・運営、SNSなど多方面で注目を集め続けています。ちょっと特別な和の空間で、枌谷さんに起業の経緯やWeb制作、コンテンツ・SNS、ベイジの戦略など、BtoB領域のことを余すことなく話していただきました。

(執筆:サトートモロー 進行・編集:いいたかゆうた 撮影:志賀友樹)

就職浪人の末、起業とデザインの道を選択

枌谷:
冒頭に言うことでもないんですが…。実は最近、私がメディアで話すことに対して、皆さんが飽きているんじゃないかなと感じているんです。「枌谷さん、またこういう話をするんだろうな」って。

いいたか:
そんなことないですよ(笑)

何度か対談などでご一緒していますが、枌谷さんに聞きたいことはまだまだたくさんあります。例えば枌谷さんのキャリアや起業の経緯とか、実は知らないことが多いんですよね。

対談風景1

枌谷:
確かにそのあたりのテーマは、キャリア系のイベントやメディア以外では、詳しく話す機会はなかったかもしれませんね。

私は埼玉の公立高校を卒業した後、一浪して都内の私立大学に入りました。文学部の史学科を選んだのは、単に歴史が好きだったというだけで、将来の展望があって選んだわけではありません。

私が就職活動をする頃は、“超”がつくほどの氷河期だったこともあり、300社受けたのに1社しか受からなくて…。まあ環境のせいというより、自分の世間知らず、力不足が一番の原因だったわけですが。ただ、就活終盤になって面接の攻略法がなんとなく見えてきたので、あえて1年留年し、就活をやり直し、結果、NTTデータ(当時はNTTデータ通信)から内定をいただき、入社しました。

いいたか:
面接の攻略法が分かったというのは、具体的にどう分かったのですか?

枌谷:
自分と相性がいい企業にターゲットを絞って、そこで自分の素を出した方が、面接の反応がいいことに気が付いたんです。

1年目の就活はマスコミや大手広告代理店、有名メーカーなど、とにかく名が知れた企業ばかりにエントリーし、面接本に書かれたテクニックをそのまま信じて自己PRしていました。そうすると全然受からないわけですよね。就活も終盤で残ってる企業も僅かになり、未だ内定もなく、就職浪人も覚悟した頃、半ば自暴自棄になって、何の準備もせず思ったことをそのまま話すようにしたら、むしろ最終面接まで進むことが増えたんです。

「正直に話した方がいい」というごく当たり前のことに、ここで気づきました。

また、面接が比較的通りやすい業態がIT系の会社が多かったことにも気が付きました。なので、2年目の就活では、SIerやシステム開発会社に絞りました。この年も氷河期で、さらに当時はまだ少なかった就職浪人、史学科というITとは無関係な学科であるにも関わらず、厳選してエントリーした8社のうち7社から内定をいただくことができました

いいたか:
すごい内定率ですね。枌谷さんは、コンテンツやBtoBマーケティングについて話す時、「そもそもこうあるべき」という本質を前提に話題を展開するじゃないですか。学生時代から、そうした本質について思考する人だったんですね。

対談風景2

枌谷:
マーケティングの仕事って、「対象とする顧客が何を求めているか」を考えて、それに適用するコミュニケーションの手法を選ぶことだったりしますよね。

今思えば、面接もマーケティングだったんだと思います。就活1年目の私は、「顧客=面接官」を見ていませんでした。途中で、「面接官は取り繕った学生ではなく、正直で裏表の少ない人を求めている」と気づけたわけですね。

こうして入社したNTTデータは優秀な先輩や同期も多く、みんな優しくて、今思い出してもとてもいい会社でした。ただ、私自身は、そんなに恵まれた環境の中で、楽しさややりがいをなかなか見出せなかったんです。

私は昔から、悩みや課題に直面すると、「引退した時、死ぬ時にどう思うか」という視点に立って、考える癖があります。その時の私は「自分がやりたいことは分からない。ただ、自分の働く場所は自分で作りたい」と思い至りました。

ただ、「自分の会社を作りたい」と思ったものの、正直なところ、特に何かをしたい強い気持ちがあったわけでもありません。その時点で自分が一番興味のあることは何だろうと考えた時にデザインだなと思い、まずはデザインを学ぼうと決めました。その後、会社勤めをしながら、2年間デザインの学校に通い、転職の準備を進めていきました。

いいたか:
独立が先で、デザインは後からの発想だったんですね。

枌谷:
はい。ただ、いきなり起業するのはハードルが高いと感じたので、先にデザイナーになって、それから起業しようというプランを描きました。まず28歳で未経験のデザイナーになり、その後にもう一社、別のウェブ制作会社へ転職した後、35歳でフリーランスになり、その約2年後の37歳の時に、今のベイジを設立しました。

こんな感じなんですが、実は私には「熱い創業ストーリー」は特にないんですよね。見方によっては、消去法で選んできたとも言えます。

今年11月、ベイジはサイトリニューアルとともにリブランディングを実施しました。その時にミッションを考えたのですが、「社会を変えたい」という内なる欲求は私自身にも、そして社員にも、とても希薄なことを実感しました。悪い言い方をすると、ベイジという会社は「自分たちがどう楽しく健やかに生きるか」という目的を満たすための手段であり、ある意味、エゴの産物なんです。

baigie
▲2022年11月、リニューアルされたベイジのWebサイト。ロゴも新しくなった。(https://baigie.me/)

もちろん、自分本位なだけでは生きられません。自分のやりたいことで、他者にどう貢献するかを考える、という大前提はあった上でのことですが。

いいたか:
枌谷さんがギラギラ経営者じゃないのは、そういう創業エピソードが関係しているのかもしれませんね。

2年間の人生訓で見つけた「勝てる領域」

いいたか:
今となっては、ベイジは「お客様を選べる状況」にあるほど好調じゃないですか。創業初期は、どんなことに苦労しましたか?

枌谷:
私のキャリアもそうなんですが、会社に関しても、ハードシングス系の話がないんですよ。もちろん苦労が全くないわけではなく、創業から成長するまでの各フェーズでそれなりに困ったことはあるものの、人にお話しできるようなドラマチックなことは何もなく、順調にここまで来れたと思っています。

いいたか:
すごい…。とはいえ、創業期はどうやってお客様を見つけたんですか?

枌谷:
フリーランスになった時点での私には、仕事のツテはまったくありませんでした。前職が外部との繋がりがほとんどない会社だったので、そうなることは予想していました。そこで、会社員時代に2年かけて、自分のポートフォリオサイトを準備したんです。同時に、パートナーを募集している広告代理店や制作会社を300〜400社ほどリストアップしました。そして独立してすぐ、まずは自分のポートフォリオを送りました。

そのなかでいくつかの会社さんに声をかけていただきました。中でもネットイヤーさんとFICCさんにはよくしていただいて、フリーランス時代や創業期はすごく助けられました。今でのこの2社さんにはとても感謝しています。

いいたか:
枌谷さんは、転職・起業など大切な決断の前に、必ず準備期間を設けているんですね。

枌谷:
そうですね。私には、何かを新しいことを始める時、2年間の準備やトライアンドエラーの期間を設ける、というパターンがありますね。

いいたか:
石橋を叩いて渡るように、小さなトライアンドエラーを繰り返しているからこそ、ハードシングが起こりにくいのかもしれませんね。

枌谷:
そうだと思います。私が経営者として優秀だからハードシングスを経験してこなかったのではなく、何事も無理をしないスタイルだったから、これまでハードシングスを経験せずにたまたま済んだだけだと思っています。

対談風景3

いいたか:
なるほど。ところで、ベイジは「BtoB企業のためのWeb制作会社」として広く知られていますが、いつからこのポジションを狙っていったんですか?

枌谷:
ベイジを創業したのは2010年で、自社サイトで「BtoB企業のためのWebサイト制作」を打ち出したのは、2012年頃からですね。私はフリーランス時代から、「自分には独自性がない」と感じていて、Web制作市場における自分のポジショニングや独自性を模索し続けていました。

考え方としてヒントにしたのが、ブランドの権威であるディビッド A.アーカー教授の著書『カテゴリー・イノベーション』です。この本には、市場をセグメンテーションして、自分が勝てる独自性の高い領域を創造すべきだと書かれていました。

そこでWeb制作業界を見渡した時に、BtoBが強みだと言い切ってる人がいなかったんです。私はずっとBtoB領域で働いてきたし、身近な人たち=クライアントに直接貢献できる法人向けビジネスが楽しいと思っていました。「BtoBに強いWeb制作なら自分にも勝ち筋が作れるのでは」と、ここで思ったんです。そこからは、とにかくBtoBについて勉強しました。

いいたか:
具体的に、どうやって勉強したんですか?

枌谷:
BtoBに関する書籍を読む座学はもちろん、「BtoB」の名が付くイベントにもすべて参加して、名刺交換をしてFacebookで繋がり、人脈を広げていきました。それは知り合いになることより、タイムラインに流れてくる情報が欲しかったといえます。そこで紹介されたおすすめの書籍も、片っ端からチェックしました。また、当時は海外のほうが情報が豊富だったので、海外のGoogle Newsを「BtoB」でフィルタリングをかけて、毎日届くニュースを翻訳ツールで翻訳して読んでいました。

こうしたことを続けた結果、BtoBに詳しいWeb制作会社になっていきました。詳しくなるだけでなく、実務面ではBtoBに関して学んだことを、Web制作の制作フローに落とし込んでいきました。「BtoBマーケティングのセオリー×ウェブ制作」というサービスを、丹念に作り続けていったんです。

また、2010年頃はデザイン領域でUX(User eXperience の略。ユーザー体験)という概念が注目され、カスタマージャーニーやペルソナを重視する考えが形成されていきました。UXデザインの手法を取り入れて、BtoBマーケティングとUXのメソッドをミックスしたWeb制作が、ベイジの売れ筋商材になっていきました。

対談風景4

Web制作の「表層の問題」と「大局的な問題」

いいたか:
ベイジはこれまで、多くの企業のWebサイト制作に関わってきたと思います。多くの企業に共通する「Webサイト制作の問題点」を教えてください。

枌谷:
表層の問題でもっとも多いのは、企業側の「こう表現したい」という思いが優先されてしまい、ユーザーに何も情報が伝わらないというものです。

BtoBは無形だったり、SaaSだったら単なる画面だったりすることも多く、言葉で価値を表現して伝えないといけないことがほとんどです。それなのに「御社の価値をトータルソリューションで…」といった、抽象的で曖昧なコピーを載せてしまいがちです。

ブランド力のある企業なら、抽象的なコピーでも勝負できるかもしれません。ですが、あまり知られていない実績もない新興企業が、こういうコピーを載せても、そのサービスには関心を持ってもらえないでしょう。

対談風景5

いいたか:
この問題、すごく分かります。Webサイトの抽象的なコピーを見て「結局どういうこと?」となってしまうことは多いです。

枌谷:
そして、構造的な視点で多いのは、「マーケティング戦略とWebサイトがつながっていない」という問題です。Webサイトをリニューアルしたいと相談いただく段階で、明確なマーケティング戦略があるケースは少数です。

マーケティング戦略全体を俯瞰してみた時に、どんなボトルネックがあって、何のためにWebサイトを変える必要があるのか。この視点がなく、「古くなったから」「ブランドを上手に伝えたい」という理由でサイトをリニューアルしたいと考える企業が多いです。そんな状況で、「リニューアルでコンバージョンを2倍にしたい」と考えても、うまく実現できる確率は低いです。そもそもその目的は妥当なのか、ということも考えらえていなかったりします。

いいたか:
確かに「作ってから2〜3年経ったし、なんとなくだけどサイトリニューアルするか」と考える企業は多いですね。

枌谷:
また、サービスサイトやプロダクトサイトと違い、コーポレートサイトとなると、独特の難しさが出てきます。コーポレートサイトは、採用やIRなど、いわゆるマーケティング以外の別の目的も満たさないといけないからです。

いいたか:
私の前職ホットリンクのサイトリニューアルを、ベイジさんにお願いした時も、同様のお話がありました。当時は、「ホットリンクに仕事を依頼したい人と、投資家としてIRを見に来た人とで、入口を分けた方がいい」と言われました。実際、リニューアル後のWebサイトでは、それぞれの入口が明確に分かれています。
ホットリンクのWebサイトリニューアル事例:https://baigie.me/work/detail/hottolink/

枌谷:
例えば、ミエルカだと、Faber Companyという社名ではなく、商品名で認知されていますよね。こういう場合は、コーポレートサイトと分けて、ミエルカのサービスサイトを作るのが正攻法になります。

一方でホットリンクさんやベイジは社名で認知されているので、コーポレートサイトとサービスサイトが別だと、ややこしくなってしまいます。こうした市場認知の状態と、Webサイトの構造は、切っても切り離せない関係にあるんです。ベイジはこうした、マーケティング戦略とサイト制作における「交通整理」の役割も担っているんです。

BtoBとコンテンツ、BtoBとSNS

いいたか:
ベイジのマーケティング戦略についても、ぜひ教えてください。

枌谷:
ベイジはWeb制作会社であり、全員が広い意味で制作者です。そのため、こちらから積極的に働きかけなくても自然と顧客がやってくるインバウンドマーケティングを基本としています。営業やマーケティングの専任担当者がいないため、仕事をしていれば自然と引き合いが来る状態を理想としています。

そのため、広告やDM、展示会などアウトバウンド型の施策はこれまで行ってきませんでした。逆に、コンテンツ発信やオウンドメディア、SNSなどインバウンド型の施策は、積極的に行ってきました。

いいたか:
分かりやすい。しかし多くの企業は、今の話を聞いて「本当にコンテンツ発信とSNSで引き合いが来るのか」と疑問を抱くと思うんですよね。

今や多くの企業が、コンテンツを作ったりオウンドメディアを立ち上げたりしていますが、ただ発信するだけではうまくいきません。インバウンド型の施策を実践する上で、押さえておくべきポイントはありますか?

対談風景6

枌谷:
インバウンドマーケティングがうまく行くかは、市場環境と競合との関係性が、大きく影響するのではないかと思います。

例えば、競合が既にコンテンツを大量に発信している状況なら、後発でオウンドメディアを作って勝つことの難易度は高いでしょう。そういう場合でインバウンドマーケティングを成立させたいのなら、オウンドメディア以外の戦略を取った方がいい、ということになります。

ベイジの場合だと、自分たちが所属するWeb制作市場において、コンテンツ発信やSNSが得意な会社はほとんどいませんでした。競争相手が同じセグメントに少なかったので、こうした手段が成功したんだと思います。

あと、市場環境だけでなく、そもそも商材が、SNSやオウンドメディアで顧客獲得しやすい、ということも大きいです。

いいたか:
商材特性はとても重要ですね。前職のホットリンクは、まさに「SNS発信で顧客を獲得するのに向いている商材」でした。

とはいえ、マーケティングにおいて「コンテンツを作ろう」「SNSを活用しよう」というのは、どちらも重要な戦略として注目され続けています。枌谷さんは、それぞれの重要性や活用について、どんな考えを持っていますか?

枌谷:
コンテンツは、GoogleやTwitterなどのプラットフォームのアルゴリズムに好かれるためではなく、人の心を動かすために作るというのが基本だと思います

私にとっての人の心を動かすコンテンツというのは、書き手の熱量がこもった良質なコンテンツです。だからこそ、ベイジの情報発信は「弾数は少ないが一発が重いコンテンツ」にこだわっています。

一方で、こうしたコンテンツは大量生産できません。コンテンツ量が重要な商材、市場環境下では、私たちのような方針ではなく、質より量の方針の方がいい、ということもありえると思います。

いいたか:
クエリ(検索語句)数が多い企業は、質より量を取った戦略がいいケースもありますね。逆にWeb制作などは、クエリ数が少ないので質を重視した方がいいと感じます。結局は対象とするマーケットに対して、質も量も最大限やっていくってことなんですけどね。

BtoBにおけるSNS活用については、どう思いますか?

枌谷:
どちらかといえば顧客獲得よりも、若い方や未経験の方を対象にしたポテンシャル採用の方に、可能性を感じています。ミドル層の方々は、採用市場に出る前段階で転職先が決まっている印象があり、SNSを使ったソーシャルリクルーティングがやや不向きな印象もあります。

あと大事な視点として、SNSにはマイクロコンテンツとデリバリー手段というふたつの性質がありますが、このうち、マイクロコンテンツでの顧客獲得というのは、あまり機能しない気がしますね。

マーケティング観点では、私は、デリバリー手段としてのSNSの有効性に注目しています。例えば、ブログを公開したり何かのイベントを告知したりする時に、8万フォロワーと300フォロワーでは、初速が大きく異なります。このように、他のマーケティング施策とかけ合わせた増幅装置としての価値は高いと思います

いいたか:
同じSNSでも、何をしたいかで役割は変わるわけですね。

枌谷:
でも、SNSの一番の価値は、そこじゃない気もしますね。

例えば私はフォロワーが多いおかげで、いいたかさんや他のメディアの方々によく声をかけていただけます。ですが普通、Web制作会社の人間に、Web制作業界以外の人は興味なんて持たないじゃないですか(笑)。

私はSNSのおかげで、仕事では知り合うことのない業界の方々と交流し、そこでさまざまなお話を聞くことができるようになりました。特にTwitterを使い始めてからは、明らかに付き合う人の属性が変わりました。

このように、普通に暮らしてると接点を持てない人と交わり、そこから何らかの知識を得られるというのは、経営者としてものすごく大きなメリットです。このメリットを享受できるという理由だけでも、SNSは十分やる価値があると思います

ベイジの次のステージ

いいたか:
ベイジは2022年10月に、『速攻オウンドメディア』をリリースしましたよね。

『速攻オウンドメディア』:https://baigie.me/sokko_owned_media/
 Twitter:https://twitter.com/sogitani_baigie/status/1582188245026078720

枌谷:
『速攻オウンドメディア』をリリースした理由は、大きく三つあります。

一つ目は、自社でプロダクトを作る経験を積みたかったから。二つ目は、オウンドメディア制作の手間を省きたかったから。ベイジでは多くのオウンドメディア制作を支援してきましたが、どのオウンドメディアも、基本仕様ややることはあまり変わらないんですよね。それならパッケージ化してしまった方が、色々な手間を省けるなと考えました。

そして三つ目の理由が、パッケージ化した商品をバラ売りしたいと思ったからです

対談風景6

いいたか:
フォーマット化してバラ売りできれば、いいものを安価に届けられますね。

枌谷:
まあ、まだ全然売れていないんですけどね(笑)
実は速攻オウンドメディアを売る中で面白い学びがあって。

例えば、どのオウンドメディアも、仕様検討をした末の結論はおおよそ同じです。

「オウンドメディアの見た目よりコンテンツの中身が重要」
「個別のカスタマイズ性よりもコンテンツの投稿のしやすさが重要」
「UIの独自性や会社らしいトンマナはユーザーはほとんど見てない」

いつもこういう結論に至るなら、サイト自体のカスタマイズ性は極力排除して、安価に仕上げて、その分のコストをコンテンツに投資した方がいい。こういう思想で生まれたのが、『速攻オウンドメディア』なんです。

でも、いざ商談に入ると、お客様からはデザイン性・カスタマイズ性について、よく相談されます。担当者さんには、私たちの考えはご理解いただけるんです。でも、「デザインの自由度がないツールに、50万円以上も出さないといけないの?」という社内から湧き上がりがちな疑問に、応えることができないのです。担当者がシンプルにそのことを説得できない、ともいえるかもしれません。

私たち自身が、「“買う時に必要なモノ”と“買った後で必要になるもの”は違う」という、商売の基本的な落とし穴にキレイにハマってしまいました。このことが、客観的に見ると「面白いな」と思って。

いいたか:
私も昔、『速攻オウンドメディア』と似たコンセプトのツールを販売した時、全く同じ問題に直面しましたね…。

枌谷:
完成したプロダクトという「結論」を見せるだけでなく、そこに至るまでの「議論」も交わす必要があるのでしょう

逆に言うと、ベイジをよく知っているお客様は『速攻オウンドメディア』のコンセプトをすぐ理解していただけるんじゃないでしょうか。もちろん、ここで『速攻オウンドメディア』を諦める気はありません。お客様の声を聞きながら改善していって、売れる商材に育てていきたいです。

いいたか:
これからの成長が楽しみです。最後に、枌谷さんは今後、ベイジをどんな会社にしていきたいか聞かせてください。

枌谷:
目の前の困っている人達を、私たちができることで助けてあげたい、というスタンスは、今後も変わりません。

ただその先に何があるのかというと、究極的には、私や社員が人生を振り返った時に、「ベイジに関わってよかったな」と思える会社にしたいな、と思っています。というか、それくらいのビジョンしか持っていないんですよね(笑)。

ベイジには、お客様に「ありがとう」と言われ、お客様から飲み会に誘っていただくことが幸せだと思える社員が集まっています。今後も、同じ想いや志を持つ人に、入社してほしいです。

その結果、社員が80人になるのか100人になるのかは、流れに任せて決めていきたいですね。私が経営者をしている間で、最終的にどれくらいの規模の組織になるかは、私自身の経営者としての器次第といったところでしょうか。

細かいところでは、サービスメニューを変えたいと思っています。私たちはこれまで、1,000万円超のサイト制作を丸ごと請け負ってきました。そのための予算をください。ないのなら請けません。私たちのサービスを分解しては提供しません。そんな殿様商売を続けてきたんです(笑)

ただ、そういう案件の取り方をしていると、人が増える中で、次第に、メンバーの稼働にバラツキが出てくるようになりました。

私はこの状況を、「メニュー改変をすべきタイミングが来た」と捉えました。そして社員に、2023年を「ベイジ大改革の年」として、カルチャーはそのままに仕事のやり方を変えていこうと伝えています

この期間をうまく活用して、Webサイトの自動化やノーコード化が進み、Web制作の価値が下がるであろう未来に繋がる価値を、模索していきたいとも考えています。

いいたか:
Web制作を丸ごと請けるだけでなく、Web制作の周辺領域も細かくカバーできる会社になっていくわけですね。

枌谷:
ベイジはサイトリニューアルと同時に、「BtoBに強いWeb制作会社」から「顧客の成功を共に考えるWeb制作会社」へ、タグラインの抽象度を高くしました

最近、ベイジは採用サイトの需要がすごく増えているし、私たちの仕事の約4割は業務システムのUIデザインだったりします。これらの分野の強みを押し出す上でも「BtoBに強いWeb制作会社」がタグラインだと都合が悪くなってきてるんです。

いいたか:
サイトリニューアルやリブランディングを経て、ベイジは次のステージに向かおうとしているんですね。枌谷さん、本日は貴重な話ありがとうございました!

対談風景7

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