オウンドメディア活用で、リード獲得コストは半減・受注額は3倍!月間200万PVまで成長したBtoBオウンドメディアの3つの戦略とは?
株式会社カオナビ 2020.12.25 2023/4/4- 月間200万PVを達成し、オウンドメディアが主要なリード獲得手段に
- 「作業時間」や「深さ」に個人差が出てしまい、記事の質や制作時間にばらつきがあった。ミエルカを活用することで、質を担保しつつ効率化を実現。
- 「『SEOに詳しいプロ集団』に、相談をして疑問点を解消したり、最新情報をいただけたりするのは非常に大きな価値」。
社員情報を顔写真付きで登録し人材情報を可視化するサービスを運営している「株式会社カオナビ」は、2016年に「カオナビ人事用語集」を立ち上げ、月間200万PVのオウンドメディアに成長させました。
1件のリード獲得にかかる費用は半減したにもかかわらず、メディアからのリード数は以前の約100倍、受注額は3倍にまで増加したといいます。BtoBのオウンドメディアでリード獲得に寄与するオウンドメディアを立ち上げ、継続的に運営できている秘訣はどこにあるのでしょうか?
具体的な施策内容や方針などについて、同社マーケティング本部Webマーケティンググループの渡辺様と大江様に当社のエグゼクティブ・マーケティング・ディレクター月岡が伺いました。
動画で事例を見る
カオナビがオウンドメディアを始めた理由とは?
「広告や指名検索よりも、オウンドメディアは伸びしろがある」
―月岡:まず、カオナビ様がオウンドメディアに取り組み始めた理由について教えてください。
渡辺様:これまで弊社でのリード獲得は、 ①指名検索からサービスサイトでCV(コンバージョン)②リスティング広告 の2つが主力でした。今後リードを増やしていこうとした時、サービスサイトのCVを急増させることは難しく、広告では多額の広告費がかかってしまいます。それ以外の手段でリードを獲得していこうと考え、オウンドメディアの運営にたどり着きました。
―月岡:サービスサイトのCVをいきなり伸ばすことはなかなか難しいですよね。
渡辺様:サービスサイトのCVを増やすには、指名検索数やCVR(コンバージョン率)を上げることが必要ですが、どちらも事業者側が管理することは難しい部分も多いです。そのため施策を展開するにも不確実性が高く、CVを拡大させるための手段としては適切ではありません。 オウンドメディアであれば、我々の事業領域に関するキーワードは数多くあり、リード獲得の確率も高まります。例えば、弊社の事業と関連する「人事」や「マネジメント」に関する用語を調べているユーザーは、弊社サービスに興味を持つ人事担当者や経営層である可能性が高い。そうしたユーザーに直接情報を届けられるオウンドメディアの伸びしろに注目し、人事用語を解説するオウンドメディアをサービスサイト配下で立ち上げ、注力していきました。
―月岡:オウンドメディアの運営を始めて、課題はありましたか?
渡辺様:課題の一つが、コンテンツ制作の時間がかかりすぎていたことです。当時の担当は私1人。1コンテンツ仕上げるのに、1週間から2週間くらいかかってしまうこともあり、制作の効率化が急務でした。そこで、前職でも使用し、使い勝手の良さや効果を実感していたMIERUCA(ミエルカ)をカオナビでも導入し、コンテンツの生産性の向上を目指しました。
オウンドメディアが主要なリード獲得手段に
広告費を半減しても、CV数は5倍、受注額は3倍に増加
―月岡:メディアの立ち上げから4年が経ち、どのような成果に結びついていますか?
渡辺様:まず、オウンドメディアのPV数が大幅に増加しています。私が入社した2017年は月間3万PVほどでしたが、2020年には月間200万PVを達成し、順調に成長しています。
―月岡:BtoBのオウンドメディアで月200万PVはすごいですね。オウンドメディアがここまで成長したことで、マーケティング上どのような変化がありましたか?
渡辺様:まず、CVを獲得するチャネルが変化しましたね。 これまでCV獲得の経路は、2017年はリスティングが約5割、オウンドメディアが約2割でしたが、2019年にはオウンドメディアが約5割、リスティングが約3割に逆転。今ではオウンドメディアがCVを獲得する主力施策の一つで、リード獲得コストは当初の半分にまで削減することができました。
オウンドメディアを成功へと導いた3つの戦略
―月岡:ここまで成果を出すためにどのようなことを行ったのですか?
渡辺様:ただ無計画にコンテンツを制作して公開しているだけではなかなか成果には結びつきません。私は3つの戦略を意識してオウンドメディア運営を行ってきました。
戦略➀ 社内で協力体制を作り、足場を固める
渡辺様:まず、オウンドメディアを運営していく上で欠かせないのは、社内理解です。周囲の理解があれば格段にやりやすくなるので、足場固めとして重要と考えています。
(1)長期スパンのシミュレーションを作成し、予算・リソースを確保
渡辺様:コンテンツマーケティングやオウンドメディアを始めるのに、「費用対効果」は必ず問われると思います。まずは上司を説得するために2年以上のスパンでシミュレーションを作成し、費用対効果が既存の施策と同等以上になることを説明しました。以下の図が、シミュレーションのサンプルです。セッション数やCV数、制作予算や公開本数などを見積もった資料を作成し、短期ではなく2年くらいで成果に寄与するのだと、理解を得られるようにしました。
もし、2~3年でどう計算しても、既存施策に費用対効果が追いつかない、もしくは魅力的な施策にならないのであれば、オウンドメディアをやるべきなのか再検討をした方が賢明ではないでしょうか。
(2)勉強会やメディアレポートを作成し、社内へ啓蒙
渡辺様:マーケティングの部門は、他部署の人からは「何をしているかわからない」と見られてしまうことって多くありませんか?(笑)オウンドメディア施策も社内理解がなければメンバーの協力も得られません。
社内でSEOに関する勉強会を開催したり、月1回はオウンドメディアを運営する中で得た知識や情報をレポートにまとめて全社員に共有しています。徐々に社内での理解者が増え、現場からは様々な声が寄せられるようになりました。「業務で役立った」「営業先でお客さんから好反応だった」などの報告があると、私自身のモチベーションもとても上がりましたね。
戦略➁ 生産性(制作時間とコンテンツの質)を高める
渡辺様:次に生産性の向上にも力を入れました。コンテンツの制作時間を減らしつつも本数を増やし、CVや受注に貢献するために、 (1)分業 (2)構成力 を特に意識して行っています。
(1)徹底した分業体制に移行
渡辺様:弊社の場合、コンテンツ制作を6つの工程に分けています。「1企業(人)につき1役割」に特化して行ってもらうことで、作業レベルの内容であればコストを抑えて依頼できるため全体コストを削減できますし、その工程を突き詰めてもらえるのでスキル向上も見込めます。 また、分業にすることで「どの作業にボトルネックがあるのか」が見えやすくなり、どこに時間がかかっているのかわかりやすくなります。「この作業を〇日で終えられれば、本数が〇本増える」とPDCAが回しやすくなりました。
(2)検索意図を深くまで理解し、構成力を高める
渡辺様:ただ、分業体制にした時に難しいのが、コンテンツの質の担保です。いくら1記事あたりの制作スピードが上がっても、低品質コンテンツを量産していては成果にはつながりません。 弊社の場合、全てを外注に丸投げするのでなく、コンテンツの骨子を固めた「構成案」を作成して、外部に依頼しています。見出しや各パートの内容・文字数、参考文献まで示した構成案は「ライティング指示書」になります。このライティング指示書を作成するのに、ミエルカは非常に役立っています。
―月岡:では、ライティング指示書の作成を担当されている大江様に伺います。ミエルカのどの部分がライティング指示書に活かされていますか?
大江様:指示書のほとんどの部分に、ミエルカの調査データを活用しています。検索意図の読み解きは、SEOへの理解度とセンスが問われるため、ツール無しでやろうとすると、「作業時間」と「深さ」に個人差が出てしまいます。しかし、ミエルカを使えば、検索意図が誰でもわかるように可視化されるので、記事のクオリティを保ちつつ、制作時間を効率化することができています。
―月岡:検索意図の読み解きで苦労することは減りましたか?
大江様:これまでは似ているキーワードで、どう書きわけるか悩むこともありましたが、現在では苦労することが格段に減りました。例えば、「人事評価」と「人事評価制度」では、言葉もほとんど同じですので、ユーザーが知りたいことにどんな違いがあるか、ぱっと答えられる人は少ないと思います。これが、ミエルカの「サジェストインテンション機能」で調査すると、ニーズの違いが一発でわかるんです!
人事評価 | 「書き方のポイントややり方の実例、 上長のコメント例や書き方」を知りたい | →評価者が検索していると推測 |
人事評価制度 | 「制度の作り方や目的、 マニュアルや助成金」を知りたい | →人事担当者が検索していると推測 |
このように検索している言葉が少し違うだけでも、知りたい人や検索しているユーザーも異なっていると推測ができます。私自身もミエルカのおかげで、短時間で深くまで検索意図を理解できるようになりました。
戦略➂ 優先順位付けとWeb上の仕掛けで、CVの量と質が向上
―月岡:アクセスが増えてもCVアップに悩む会社さんも多いと思うのですが、カオナビさんではCVを増やしていくために、どのような施策を実施されていますか?
渡辺様:まず狙っていくキーワードの優先順位付けが重要です。当社サービスのターゲット層が興味を持ちそうなキーワードを、「検索ボリューム」「カテゴリー」「親和性」「ニーズ」の4項目でA~Eの優先度に分類。総合的なランクが高いものから優先的に制作することで、アクセスも稼ぎつつCVを増やすことにつながりました。
また、コンテンツからサービスLPやホワイトペーパーダウンロードページへの導線設計も重要です。リンク数や表示場所、文言のABテストを日々行っており、この施策を始めた当初(17年5月)に比べ、CTR 2.5倍・フォーム完了率 6倍の改善に成功しています。
「人事やマネジメントなら、『カオナビ』の人事用語集」と多くの人に思ってもらえるメディアに
―月岡:ミエルカを導入されて、どこに価値を感じていただけましたか?
渡辺様:ツールを提供しているだけにとどまらない点が価値だと思います。ミエルカ自体は、初心者にも分かりやすいUIなので、使い方で困ることはほとんどありませんでした。そして、Faber Companyさんは、「SEOに詳しいプロ集団」だと思っているので、SEOに関する相談をしたり、最新情報をいただけたりするのは非常にありがたいです。
また、定期的にユーザー会が行われ、ユーザー同士でつながることもできます。他社さんはどんなノウハウを持ち、どのような施策を実施しているかなど参考になることが多いです。孤独なことが多いオウンドメディア担当者にとって、横のつながりができるのは貴重なことだと思います。
―月岡:今後、オウンドメディアではどのようなことに取り組まれる予定ですか?
渡辺様:「人事やマネジメントについて知りたいなら、『カオナビ』の人事用語集」とより多くの方に思ってもらえるようにしていきたいですね。人事の方、特に新任・歴の浅い人事の方が弊社のコンテンツを見て、学びになるようなコンテンツを拡充させていくつもりです。
大江様:オウンドメディアは流入を増やし、CVを獲得するだけでなく、社内で多様な活用が広がっています。営業でお客様に対して、「こういうコンテンツがあるので人事のノウハウが学べます」とトークに使っているほか、弊社に人事未経験の方が入社された際には、オウンドメディアのコンテンツを使って勉強してもらうなど、予想外の使い方もでてきました。
しかし、コンテンツが体系づけられていないことが課題です。コンテンツが散在してしまっているので、ジャンルごとに分けたサイト構成に変更するなどして、ユーザーの興味ある分野をまとめて学びやすいような形にしてきたいですね。
―月岡:渡辺さん、大江さん、本日は貴重なお話ありがとうございました!
企業プロフィール
-
- 社名
- 株式会社カオナビ
-
- 事業内容
- クラウド人材マネジメントシステム「カオナビ」を運営
-
- 導入時期
- 2017年4月
-
- 担当
- マーケティング本部Webマーケティンググループ 渡辺 佳彦 様、大江 奈々子 様(※2020年6月取材)