Webライティングとは?プロの技と読者の意外な「読み方」を紹介 市川莉緒 2021.07.29 2023/1/19 UI/UXWEBデザイン実例 UIUXサイト改善ヒートマップ Webライティングとは? ~ただ文章を書くだけではない!~ Webライティングを始める前にユーザー行動を知ろう プロのWebライターのテクニックを紹介 Webライティングとは ~ただ文章を書くだけではない!~ Webライティングとは、Web上で配信する記事コンテンツ(以降、Webコンテンツと表記)の執筆と広く解釈されます。 近年、Webライティングは企業のオウンドメディアから個人ブログまで広く普及しています。その影響からか1本数千円で発注している案件が存在するなど、簡単な作業であるかのように扱われる場面が多く見受けられます。 しかし、ただ文章を書くだけでは「必要とする人に必要な情報を正確に届ける」というWebコンテンツの本来の意義や目的を果たせません。今回は、プロのWebライターが実践している、ユーザー心理をおさえたWebライティングのテクニックをご紹介します。 その前に… まずは、ユーザーがどのようにWebコンテンツを読んでいるのか、実データから行動を読み解いていきましょう。 Webライティングを始める前にユーザー行動を知ろう Webライティングの際に、記事やサイトに対してユーザーがどのような印象をいだき、どのように行動しているか理解することはとても重要です。 なぜなら、そのテーマに精通したライターが価値のある詳しい内容をライティングしても、「ほとんどが読まれなかった」ということが頻繁に起こるためです。 次章で紹介する具体的な行動例をもとに、それを理解する重要性を紐解いていきましょう。 ユーザーはじっくりと文字を読まない Webコンテンツを書く側は、ユーザーにじっくり読んでもらえていると期待しますが、実際は多くの場合、1文字ずつ丁寧には読まれません。 では、ユーザーはどのように記事を読んでいるのでしょうか? 弊社がヒートマップ*で取得した2つのデータから、次のことがわかりました。 ・文章が続く箇所よりも画像の方がアテンション(熟読度合い)が高い ・文字だけが単調に並ぶと読了率(ページの下部まで読まれる割合)が下がる 詳しく説明していきます。 *ヒートマップとは、ページ内のユーザー行動を可視化するツール。熟読、離脱、クリック箇所がひと目でわかる。 まずは、ページ内の熟読エリアが分かるアテンションヒートマップによる検証結果を見てみましょう。 文章が続く箇所よりも、ポイントを端的にまとめた画像の方がアテンション(熟読度合い)が高くなっています。 次に、ページ内の離脱状況が分かるスクロールヒートマップのデータを見てみましょう。 画像や箇条書きのリストがなく文字だけが単調に並ぶと、読了率(ページの下部まで読まれる割合)が下がり、冒頭で離脱する割合が高まります。 Webコンテンツは、書籍や新聞のように1文字ずつ丁寧には読まれません。ユーザーは主に見出しや画像などの視覚的に認識しやすい要素を読み取っていることが分かります。手軽に情報収集できるため、ユーザーは欲しい内容が書かれているか直感的に認識し、読み進める判断をしていると考えられます。 では、ユーザーは記事の最後まで流し読みしているのでしょうか? 読了率を示したデータを2つ紹介します。 無料のヒートマップを使う ユーザーは最後まで記事を読まない ユーザーの多くはページの最下部まで読みません。最下部までどのくらいのユーザーが読んでいるか、その割合がひと目でわかるデータを見てみましょう。 弊社が運営するミエルカブログの記事をスクロールヒートマップで検証したところ、記事の最後まで残ったユーザーの割合はたったの20%でした。 過去1か月のデータでCVR(コンバージョンレート)が約1%あり、月間検索数が2万件を超えるキーワードで1位表示している記事にも関わらず、最下部まで読まなかったユーザーが80%いたことが判明しました。 次に、アメリカ発のアクセス解析ツール「Chartbeat」の研究結果を紹介します。約20億のアクセスを1か月間解析したところ、約55%のユーザーが15秒未満でページを離脱しており、記事を読んでいないことが分かりました。 ※参照:Chartbeat CEO Tony Haile: What You Get Wrong about the Internet | Time 記事を1文字ずつ丁寧に、そして最後まで読んでいるユーザーはほとんどいない、と結論づけられます。 では、これらの事実を踏まえてどのようにWebライティングを行えばいいのでしょうか? ユーザビリティを意識したプロのライティングテクニックを紹介します。 プロのWebライターのテクニックを紹介 今回はプロのWebライターとして活動するこちらの3名に普段実践しているテクニックを伺いました。 以下の3つがポイントです。 視覚的なメリハリをつける 読みやすい文章と理解しやすい表現にする ユーザーの感情を動かす 今回紹介するテクニックはこちらです 1.視覚的なメリハリをつける ユーザーの注目を引き、読んでもらうためには文字だけでなく、画像などで視覚的なメリハリをつけましょう。 先ほどのデータのように、視覚的に注目を引く箇所は熟読度合いが高まる傾向にあり、視認性(パッと見た瞬間の認識のしやすさ)の向上に効果的です。 プロのWebライターは具体的に以下のことを実践しています。 ・可能な限り、表やリスト化する・1スクロールに1回は、何らかの画(え)を入れる 「画」とは、表やリスト、図解や写真、イラストなどの文字以外の情報を指します。文章だけでなく、記事全体で見た目にメリハリのある構成になっているか常に気を付けています。 特に重要で伝えたいポイントは表や箇条書きのリスト、または図解化して視覚的に認識しやすくしましょう。 2.読みやすい文章と理解しやすい表現にする 詰まらずに読める文章や、初心者でも理解できる表現を常に目指しましょう。 ユーザーの注目を引いてから読んでもらうためには、テキストの読みやすさ(可読性)や文章の意味の分かりやすさ(判読性)を上げることが重要です。 たとえば、見出しが気になって読み始めても、内容が難しかったり、理解しがたい表現だと読み進める気を失い、離脱に繋がるでしょう。 可読性と判読性を上げるために、執筆時と執筆後で実践している具体的なプロのテクニックを紹介します。 執筆時のWebライティングテクニック ・一文を短くする 特にスマホの場合、長文は読みづらいため短文の連続の方がリズムよく読めます。 ・意図的でない表記のゆれをなくす 「ください」と「下さい」や、「1つ」「一つ」「ひとつ」などを混ぜることは避けましょう。特に複数のライターが在籍する場合は、このワードはこの表現で統一するというリストを作ると確認しやすくなります。 ・漢字表記を適度に減らす 「此の度は、弊社製品を御購入頂きまして有難う御座います」たとえばこの文章、とても読みづらいと感じませんか? これは一文にすぎませんが、ずっと続くと読む負荷がかかってしまいます。漢字でなくても違和感のないものはひらきましょう*。特に、語尾をひらくと一層読みやすくなります(「致します」から「いたします」など)。 *ひらく=漢字からひらがなにすること ・専門用語はできるだけ避けて、誰でも理解できるシンプルな言葉を使う どうしても専門用語を出す必要がある場合は、補足や脚注を入れて説明を加えると良いでしょう。 執筆後のWebライティングテクニック ・本番環境に出力して文字校正する・スマホの画面幅で原稿を読む 最終的な校正で可読性は大きく改善できます。本番環境に出力して校正することで文の幅やテーマカラーとのなじみ方など、文章の校正だけよりも、多くの気づきがあります。 スマホで読まれることが多い場合は、Wordなどをスマホ画面の幅にし「ここは改行入れたほうが読みやすいかも」とジャッジします。 何回か読み返すことが最も大切です。読んで詰まる部分や、頭を使わないと理解できない、直感的に分からない箇所は表現を調整します。 ・図解はスマホでも見やすいように最適化されているか確認する 記事全体のデザインに違和感がないか、図解内の文字が小さくなっていないかなどをチェックします。 可読性・判読性を担保できるように、実際の本番環境を活用しながら、何度も読み返して調整しましょう。 3.ユーザーの感情を動かす ユーザーの共感を得たり、発見を与えられるような内容や表現にしましょう。Webコンテンツの大きな意義は、「共感・気づき・発見」をユーザーに与えて課題解決につなげることです。 もしあなたが「Webライティング」と検索してこの記事に訪れた、あるいは他の記事を読んでいてこの記事を見つけたとしましょう。「Webライティングって何だろう?」「Webライティングのコツとは?」という疑問や興味を持たれていたのはないでしょうか? Webコンテンツに訪れるユーザーは何らかの興味や知りたいこと、疑問や解決したい悩みなどを抱えています。そのような疑問に寄り添い、答えや気づきを与え、時には解決できるよう行動を促すことが求められます。 プロのWebライターはユーザーの心理や感情まで考え、文章を読んでもらうことだけでなく、どうすれば悩みを解決できるかを目的として記事を書いています。 主に以下の2つが感情を動かすためのポイントです。 ユーザーの共感を引き出す 誰もがすぐ実践できる、したいと思わせる それぞれの具体的なテクニックを紹介します。 ユーザーの共感を引き出す ・ユーザーへの問いかけを入れる・「そうそう!」と思われるような共感を引き出す 「あなたは●●と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?」のように、読者に質問を投げかけます。また、感情がからむテーマなら「仕事で失敗続きだと、気分が落ち込んでしまって、自分の好きなことも楽しめなくなってしまいますよね……。」などと、読者が「そうなんだよね…」と思うような例を入れます。 誰もがすぐ実践できる、したいと思わせる ・信頼できるソースをもつ専門家の発言を含めたり、監修をつける・みんなが知りたいと思う情報をリサーチする・初心者でも実践できる具体的な表現で、手順を明確にする。 特にライターが専門家だと専門的な内容に偏り、ユーザーが求める内容とずれてしまうケースがあります。たとえばレシピは、初めて作る人でも手順が分かるような書き方や写真で、すぐに実践しやすいと思いませんか? そのように誰でも記事を読んだ後に具体的なアクションを起こせる内容を重視しています。 信頼や実績がある専門家こそ、初心者でも理解できる内容にまとめる力が求められます。そのテーマについて詳しくない友人に読んでもらい、意見をもらうのもオススメです。 ユーザーファーストのWebライティングを心がけよう まずは記事がどのくらいのユーザーにどのくらい読まれているか、知ることから始めましょう。文中でも紹介したヒートマップを使うと、ひと目で確認できます。 無料のヒートマップを使う 今回ご紹介したプロのWebライターのテクニックを学び、是非活かしてみてください。本記事が、皆様のWebライティングの参考になれば幸いです。 編集者情報 市川莉緒 大阪大学卒。新卒でFaber Companyに入社後、 300近くの会社のヒートマップ分析に従事。 現在はミエルカヒートマップのマーケティングを担当。 大学時代1年休学し1人で世界を放浪。 グレートバリアリーフでのダイビングが最高の思い出。 監修者情報 玉飼 真一 この記事をシェアする