2026年7月7日に開催した「Japan SEO Conference 2026」。日本のマーケティング業界をけん引する20社近くが登壇し、AI時代の検索と購買体験について議論を交わしました。
本記事ではOpening Keynoteのレポート記事に続き、テクニカルSEO・UIUXアクセス解析・コンテンツ・若手SEOerの4つのセッションのレポートをお届けします。

Japan SEO Conference 2026とは?
Japan SEO Conference 2026は、当社Faber Companyが主催する、日本発・最大規模のSEOカンファレンスです。昨年の第1回は申込者3,200名を超え、オンラインの同時視聴で約1700名、リアル会場では約200名の方に参加いただきました。
第2回目となる今年はリアル開催に特化し、会場規模は2.5倍の500名へ拡大。申し込みは600名を超え、当日は400〜500名の方が会場に集まりました。

登壇企業は、合同会社DMM.com、株式会社サイバーエージェント、株式会社JADE、株式会社TechFabric(SEO研究チャンネル)、株式会社リクルート、アユダンテ株式会社、株式会社ウェブライダー、株式会社Hakuhodo DY ONEなど…。(順不同)日本のマーケティング業界をけん引する20社近くの企業に参画いただきました。

今回は、そのなかからテクニカルSEO・UIUXアクセス解析・コンテンツ・若手SEOerのセッションレポートをお届け。支援会社側と事業会社側、ベテランと若手──。立場の異なる登壇者たちが、AIとどう向き合い、何を変え、何を残そうとしているのか。各セッションの様子を、当日のスライドを交えてご紹介します。
1.テクニカルSEO【FIFTY-EIGHT, LLC×アユダンテ×Hakuhodo DY ONE】
最初のセッションはテクニカルSEOです。FIFTY-EIGHT, LLC、アユダンテ、Hakuhodo DY ONEから3名の方にご登壇いただきました。

GEO/LLMO時代のテクニカルSEO最前線

FIFTY-EIGHT, LLC 吉野 五十也 氏、アユダンテ コガン・ポリーナ 氏、
Hakuhodo DY ONE 登 章良 氏
まずは、アユダンテ社のコガン・ポリーナ氏の発表。コガン氏は、アユダンテでグローバルな大規模サイトのテクニカルSEOを中心に支援する歴戦のコンサルタントです。本セッションでのトークテーマは、LLMボットのアクセス(訪問)状況の把握について。
※LLMボットとは:ChatGPTやGeminiなどの生成AI(LLM)が、Webサイト上の最新情報を読み取ったり学習したりするために巡回(クロール)してくる自動収集プログラムのこと( くわしいLLMO解説記事はこちら )

LLMボットのアクセス状況を把握してみましょう
(コガン・ポリーナ氏/アユダンテ)

コガン氏:
「生成AIが裏でどんな回答を作っているのか直接見るのは難しいですが、LLMボットの足跡はサーバーのログ(訪問記録)に残ります。アユダンテでは、このログをBigQueryにエクスポートし、一目でわかるようにデータポータルでダッシュボード化しています。このダッシュボードからは以下のようなことがわかります」
- robot.txtのLLMボットブロックがきちんと機能しているか(無視するボットもある)
- 学習用ボットや検索用ボットが「いつ・どのページ」にきているか
- LLMボットの訪問数が増えているか(施策との連動性)
さらに、ステータスコード(200や301、404など)も確認できるので、表示エラーが起きているかどうかもチェックできるそうです。

コガン氏:
「たとえば404を返している場合は、ハルシネーションが起きている可能性があります(存在しない会社概要ページなどを、生成AIが勝手に作ってリクエストを送っている)。その場合は、正しいページに301リダイレクトする、あるいはページを新たに作成するといった対策が有効でしょう」
ちなみにコガン氏が見ているアユダンテのデータでは、「llms.txtはどのボットも見ていない」というデータになっているそうです…。

次は、アイレップ、メルカリを経てFIFTY EIGHT, LLC. を創業した吉野氏の発表です。
吉野氏は事業会社でのプロダクト開発経験を生かして、プロダクト×SEOのかけ合わせによるマーケティング支援を行っているプロフェッショナルです。

LLMをテクニカルSEOに活用するときの大事な視点をお伝えします
(吉野 五十也 氏/FIFTY-EIGHT, LLC)
吉野氏:
「大規模なDB型サイトのページタイトルを変更するシーンを例にあげましょう。ひとつひとつのページを手作業で変更していくとしたら膨大な労力がかかりますよね。だからといって、LLMへ『(SEO施策で成果が出るよう)良い感じに修正して!』と丸投げすれば、かえって検索順位やCTRが悪くなる可能性が高い。なぜなら、人間のSEOコンサルタントは、様々な情報と状況をもとに総合的な視点から施策を判断しているからです」
そこで吉野氏は、人間がやっている判断をAIに共有することが重要だと語りました。
吉野氏:
「たとえば以下の3点です。
- 流入クエリを外さないこと
- タイトルに入れるべき語を商品データから選ぶこと
- 使ってはいけない表現を排除すること
これらの判断軸を、あらかじめAIに共有するのがおすすめです」

吉野氏:
「一見すると大変な作業のようにも思えますが、BigQuery(データベース)に格納しておけば1つのSQLで自動生成できます。これは、タイトル生成だけでなくコンテンツ生成にも応用が効きます。単なるデータでも、ユーザーにとって付加価値の高い“コンテンツ”へと昇華させられることもできる取り組みです」
テクニカルSEOセッションの最後は、Hakuhodo DY ONE の登(のぼる)氏から、AIの推論プロセスの解析について。登氏は2010年から大規模サイトのデジタルマーケティング分野で活躍し、エンジニアからコンサルタントまで幅広い実績を持っています。

AIの推論データとして、思考プロセスやサブクエリの傾向についてご紹介します
(登 章良 氏/Hakuhodo DY ONE)
登氏:
「当社では、さまざまな業界の『AI検索における言及・引用状況』を可視化するだけでなく、各業界の推論プロセスについても解析を進めています」
登氏は、AIはモデルによって思考プロセスが異なると指摘しました。
登氏:
「たとえば『転職活動におすすめの求人サイトはありますか?』というプロンプトに対し、以下のような違いが見られたんです」

| ・カテゴリが整理されているサイト ・出典の明記を必ず行う ・代理店型とネット型の違いを解説 | ・総合型求人サイト ・ハイクラス・エグゼクティブ向け ・ITエンジニア特化型 |
思考の方向性だけでなく、サブクエリもモデルによって大きく異なると登氏は言います。同社ではこの推論プロセスの傾向を業界毎の検索クエリのタイプ(Do・Know・Go・Buy)に当てはめることで、大規模サイトのテンプレートに活用できないか、模索しているとのことです。
※Do・Know・Go・Buyとは:Do(したい)・Know(知りたい)・Go(行きたい)・Buy(買いたい)という、4つの検索意図でクエリを分類する考え方( くわしいクエリタイプ解説記事はこちら )

これらの指標を基にした調査例として、GEOとサブクエリSEOの相関分析のデータが示されました。
特定業界の例では、このサブクエリのSEOスコアとGEOスコアに一定の相関が見られ、また、GEOスコアが上位のWebサイトはSEOのサブクエリでも上位に位置しているとのことです。
登氏:
「GEOを推進する上でSEOが重要だと語られておりますが、その解像度を高めるうえで、推論プロセスにおけるデータの解析(思考プロセスやサブクエリなど)は有効に働くと捉えています」
誤解されているSEO/GEO/LLMOテクニカルのリアル
テクニカルSEOセッションは、まだ続きます。今度は、登壇者同士で「誤解されているSEO/GEO/LLMOテクニカルのリアル」のテーマでトーク。それぞれ現場の声を交換しました。

コガン氏はこの1年間、いわゆるLLMOベンダーとも一緒に仕事をしてきた中で感じた印象や注意点について解説してくれました。
LLMOベンダーが提案する施策の多くが、構造化データの充実化や、サイト内のリンク切れを直すといった基本的なSEO施策であったと指摘します。また、中には、先ほどAIクローラーが一切参照しなかった「llms.txt」を早急に追加すべき、といった効果に疑問を持つものも少なくなかったと言います。
効果測定の方法や顧客の期待値のギャップ、KPIの設計など多くの問題が見られたとのこと。
そのうえで、本質的なGEO(LLMO/AIO)の取り組みを以下のスライドのように語りました。

コガン氏:
「本格的なGEO/LLMOは、一朝一夕でできるものではありません。期待する効果や他の施策も含めたマーケティング全体の優先順位を踏まえ検討するべきでしょう」
登氏からは「ブランド」という観点で、重要な示唆をいただきました。

先述したAIの思考プロセスの中で、特定のブランドが含まれるケースが見られたとのことです。またモデルによっては、AIのサブクエリそのものにブランドが入るケースも散見されるようです。
一方で「特定のブランドを回避する思考プロセス」も見受けられ、この挙動は大手ブランドにおいても確認されているとのことでした。この特定ブランドの回避行動の要因として「機械可読性の課題(サイトの情報をAIが読みとりやすく整理していない)」や「公式情報の不足(そもそも必要なページがない)」などが挙げられると登氏は述べました。
登氏:
「AIが指名検索を行うケースは少なくありません。これはブランドの重要性を示すと同時に、領域によっては小手先の施策だけでは通用しないことを示唆しています。その一方、大手を含む特定ブランドを回避する思考プロセスも確認されているため、ブランド力の向上と併せて公式情報や機械可読性の見直しなども重要になります」
2027年以降のSEO/GEO/LLMOテクニカル予想
最後に、2027年以降の予想についてお三方の考えを語っていただきました。
コガン氏:
「2027年にはGEO/LLMOへの加熱がひと段落し、本質的なSEOに回帰するでしょう。たとえば、JSに依存するコンテンツをChatGPTが認識できないなどといったことです。また、PRもよりいっそう重要になります。海外では、すでにテクニカルSEOよりもPRの話題の方が多いんです」
吉野氏:
「AIはコンペティター(競争相手・競合相手)にもなり得ます。エージェンティックコマース(AIエージェントによる買い物代行の仕組み)の普及により、ECの一覧画面の役割が変わってきます。たとえば、あの店員がいるからあの店を選ぶ、という思考と同じように、サイト内の体験を再定義する必要があるかもしれないですね」
登氏:
「SEOとも共通する、AIが理解しやすいWebサイトづくり『機械可読性』の重要性は変わらないでしょう。エージェンティックコマースの領域は伸びていくと予想します。今より進化し、ブランドエージェント(企業の接客AI)と生成AI、つまりAtoA(Agent to Agent)の世界が実現すると、そこに向けた最適化という考え方や課題が新たに生じる可能性はあります」
2.UI/UX解析【プリンシプル×Faber Company】

さて、次はUI/UX解析のセッションを紹介します。業界のレジェンドと呼ばれるプリンシプル 木田 和廣 氏と、当社の小川 卓が登壇しました。

AI×Web解析のテーマで、皆さんの質問に答えます
(木田 和廣 氏/プリンシプル)

現場でのAI活用法や今後の展望までお伝えします
(小川 卓 /Faber Company)
木田氏は2004年からWeb解析に携わるベテランです。デジタルマーケティングの支援会社プリンシプルの創業メンバーとして、100社以上の「GA設定診断」を行うなど、多くのWeb解析コンサル実績を持ちます。
小川は、当社・Faber Company 執行役員 CAO(チーフ・アナリティクス・オフィサー)。Webアナリストとして、リクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務後、独立。2015年から当社CAOに就任。

プリンシプル 木田 和廣 氏、Faber Company 小川 卓
UI/UX解析のセッションは、事前に収集した質問に対してお二方が回答する形式で進みました。
本レポートでは、その一部を抜粋。最初の質問は、組織におけるデータ活用の根付きについてです。

小川氏:
「データ活用が根付いている組織とは、施策を行いやすい環境を作っている組織でしょう。施策実行のためのツール(ABテストツールなど)がある、内製のためのチームがあるといった環境のことです。もう1つ大事なことは、上司が任せてくれる組織だということ。上司にいちいち聞かないと意思決定できないチームより、現場で意思決定できるチームの方が当然ながら施策を回すスピードは速くなります」
木田氏:
「データを活用できない組織の特徴は2つあります。1つは過去の成功体験が強すぎる組織。たとえば営業部が非常に強いとか。こういう会社は新たにデータを見ていきましょうと働きかけても、変わりにくい。もう1つは、仕事の進め方が受け身でルーチン化している組織。主体性を持って現状を変えていくという、ベンチャースピリットがある組織の方が変化しやすいものです」

小川氏:
「ズレがランダムなのか、規則性があるのかによります。前者は問題だけど、後者ならば意思決定には使えるはずです」
木田氏:
「提案の方向性が変わるほどズレていれば問題ですね。なぜなら、これは意思決定をするためのツールだから」
小川氏はそもそもデータはズレるし、正確ではないことの方が多い、Googleのデータもインターネットのすべてを表しているわけではないと続けました。そして両名とも「意思決定に足るデータかどうかが大事である」と強調しました。

小川氏:
「分析が楽になるので大半のサイトはBigQueryを使うべきです。ただし、そもそも流入数が少ないならば流入数を増やすべきだし、Webサイトがダメすぎる場合はデータを見なくても直せる部分がほとんどですね」
木田氏:
「全サイト入れた方がよいと思います。とくに小規模なWebサイト。小規模なWebサイトは1つのCVの重要度が相対的に高まります。その場合、あるユーザーがどのチャネルから来たのか、CVに至るまでにどのページを見たのかを詳細に分析することは非常に意味がある。さらにサンプルが小さいと統計的な有意差分析が重要になるが、その関数がBigQueryには数多くあります」
なお、BigQueryには無料枠が用意されているため、数万PV以下など小規模サイトの場合はほとんど費用はかからないとのことです。

小川氏:
「今までと変わりません。Webサイトに来てCVするという状況が今のところ変わらないからです」
木田氏:
「ユーザー軸の指標をみるべきだと思います。ユーザー単位のキーイベント率など。なぜなら『セッションはお財布を持っていない』からです」

木田氏:
「アクセス解析をデータの収集・可視化・分析・行動と4つに分けた際に、データの収集と行動は人間の領域として残ります」
小川氏:
「私は分析をほとんどやっていません。いかにAIへ正しいデータをインプットするか、こちらにパワーをかけています。それと、出てきた改善案のチェック・優先順位付け。ここは組織事情が絡むので、AIが判断しづらいところなんです」

小川氏:
「AIにペルソナを作成させ、そのペルソナにWebサイトを巡回させます。そのデータを、自分の思考を学習させたAIに分析してもらって、出た改善点をAIでモックにまで落とし込んでいます」
木田氏:
「BigQueryの会話分析がアツい。データソース・手順・検証済みクエリ・用語集など会話分析のためのパーツを設定しておき、AIエージェントとして社内に公開する。ここまで組めば、AIの出力はかなりブレにくいです」
この後も質問&回答セッションは続きました。全貌を知りたい方はぜひ、2026年8月5日〜8月31日までの期間限定アーカイブ配信をご覧ください。
UI/UXアクセス解析のセッション最後は、これからアクセス解析を学ぼうとしている人へのメッセージでした。
小川氏:
「大事なのは好奇心。とりあえずやってみる、試してみる。自分の仕事をより効率的に、効果的に行うためにいろいろと挑戦してみてください」
木田氏:
「忘れてはいけないのは、数字の先に人がいるということ。もう1つはデータリテラシー。たとえば平均値と代表値の違いや欠損値など。AIで簡単にデータ分析ができるからこそ、忘れないでほしいことです」
3.コンテンツ【ウェブライダー×KAAAN×StoryHub】
3つめのセッションは「コンテンツ」です。テーマは「体験」と「ストーリー」。モデレーターは元LIGブログの編集長で、今はKAAANにて自社広報とメディアプランニングを担当する齊藤 麻子(まこりーぬ)氏。登壇者は、ウェブライダー 松尾 茂起 氏と、StoryHub 田島 将太 氏です。

松尾氏は、シリーズ累計24万部突破(電子含む)の『沈黙のWebマーケティング』『沈黙のWebライティング』の著者であり、マーケティング支援会社ウェブライダーの代表を務めます。
田島氏は、スマートニュースにてメディア事業開発を担当、2022年にStoryHubを共同創業し、AI編集アシスタント「StoryHub(ストーリーハブ)」を開発・提供しています。

ウェブライダー 松尾 茂起 氏、StoryHub 田島 将太 氏
はじめに、モデレーターの齊藤(まこりーぬ)氏からいくつか登壇のお二方に質問がありました。
コンテンツ制作でどのくらいAI使ってますか?

松尾氏:
「僕のAI活用範囲は30%程度です。あまり多くないかもしれません。なぜなら、うちがコンテンツづくりで重視する『体験』はAIにはできようがないからです。ただし、体験前のリサーチや、コンテンツのブラッシュアップにはAIから得られる多様な視点を上手く活用しています」
田島氏:
「僕のコンテンツ制作プロセスでは、60%程度をAIがカバーしていますね。たとえば次のような部分で活用しています。
- AIとディスカッションして質問項目を作成
- その質問項目に沿ってセルフインタビューを収録
- 録音データをもとにコンテンツのドラフトを作成
- 最後に自分でブラッシュアップ
AIは良い壁打ち相手になってくれています」
ちなみに齊藤(まこりーぬ)氏も、コンテンツを制作しているプロ。KAAANに入社する前は、AIのアウトプットに対し「出来が悪く人間が修正するもの」という印象が強かったと言います。しかし今は「アウトプットが悪ければインプットを見直す」という考えのもと、渡すデータや文脈を見直し、「いかにAIを活用してよりよいアウトプットを生み出すか」に日々チャレンジしているとのことです。
体験とストーリー
さてここからは、コンテンツセッションの本題。松尾氏からは「体験」について解説いただきました。

コンテンツで最重視していることは『体験』、そこから設計します
(松尾 茂起 氏/ウェブライダー)
同社では「ウェブライダーマガジン」というオウンドメディアを運営しています。デザインに関する情報を発信しており、「動画編集アプリ」や「写真加工アプリ」といった検索ニーズに対して上位表示を実現しています。

同社のオウンドメディアが成功している理由の1つが「体験を重視したコンテンツ設計」です。その「体験」について、松尾氏は以下の4つの観点を「4R(4Real)」というフレームワークに落とし込んでいるそうです。

松尾氏:
「AIは既存の情報からそれらしいコンテンツをつくれますが、実際に使ってわかる価値や課題、まだ世に出ていない一次情報までは生み出せません。こうした情報はAIが回答を生成する際の手がかりにもなるため、その真正性は人間にとってもAIにとっても、これまで以上に重要になります」
ちなみに、このフレームワークは「4R(4Real)」と名付けられていますが、「4Real」を「for real」と読むと「ほんまもん」という意味にもなり、偶然ながらもどこか運命的なものを感じるネーミングとなったそうです。
松尾氏は、体験は良質なインプットだと続けました。冒頭で齊藤(まこりーぬ)氏が述べた「アウトプットが悪ければインプットを見直す」という考えとも共通しているのではないでしょうか。
また、松尾氏は、いわゆる「◯選おすすめ」系の記事で自社サービスを含む複数のサービスを比較する場合、どのような方針で制作しているのかを紹介しました。
自社も比較対象に含まれるからこそ、こうした記事は「提灯記事(自社にとって都合のよい記事)」になりかねません。そのため、ウェブライダーは、比較記事を書くときにセルフレビューを徹底しています。基本のルールは、以下のスライドに書かれた7箇条。

ベンダーはその道のプロとして、プロだからこその視点であえてレビューを行ってみる。その心意気でつくられた記事も、付加価値の高い情報になるのだと言えるでしょう。
また、松尾氏は、これからの情報の価値は「検証可能性」と「当事者性」が重視されると語りました。

松尾氏:
「『当事者性』とは平たく言うと熱量です。当事者だからこそ発せられる熱量は、人の心を動かします。それはAIにはできないことでしょう。
AIは製品に恋することはできない。これからのクリエイターは何かを好きになる力や、新しいことに積極的にチャレンジする姿勢がさらに重要になってきます」
続いて、田島氏から「ストーリー」についてお話いただきました。同社は「StoryHubスタジオ」というAI編集SaaSを提供しています。

田島氏によると、SEOやAIプラットフォームの精度が向上した結果、SEOとPRのノウハウが溶け合い融合しつつあるのが昨今の現状です。

現代のコンテンツづくりで大事なのはストーリーテリングだと思います
(田島 将太 氏/StoryHub)
AIによってライターの仕事が奪われるとも言われていますが、海外では新たに「ストーリーテラー」という求人が生まれているそうです。この新たな分野の仕事について田島氏は、まだ定義が曖昧だとしたうえで、自身の考えを以下のように示しました。
田島氏:
「ストーリーテラーとは、企業側が発信するナラティブ(ストーリーや想い、理念)と、オーディエンス側が受け取るナラティブを一致させる職業。SEOやPR、ブランド、マーケティングを横断して一貫したブランドメッセージを届ける仕事だと考えます」
ここで、松尾氏が重視する体験と、田嶋氏の語るストーリーがつながったように感じました。
さらに田島氏はAI時代の情報流通を考えるうえで、重要になるのが「共同構築」と「再媒介化」だと言います。

これからはネットワーク(やコミュニティ)の中で、誰にどう語られるか(ナラティブ)によってブランドイメージが形成されていく世界になると田島氏は分析します。
一例として、W杯でリーバイスのロゴが隠された事件を挙げました。スポンサーでなかったリーバイスのロゴがスタジアムで隠されたのですが、それを受けてリーバイス側が「たとえ隠されたとしてもこのバットウィングはリーバイスを連想させる。それほど我々のブランドは強い」として、SNSなどで情報発信しました。

つまり、①「リーバイスのロゴが隠されたがバットウィングの形は残るという情報がSNSで拡散される状態」が共同構築の段階、それを②「ブランドの強さに変えて発信しなおす」ことが再媒介化です。

田島氏:
「このような時代に重要になるのは、再編集されてもコンテンツの強度を失わない“コンテキスト(文脈・背景)”です。AIがコンテンツの一部を要約、抜粋したとしても意図が壊れない状態をいかに作り出していくかが求められるのではないでしょうか」
田島氏は参考になる事例として、三菱重工浦和レッズレディース様の取り組みを紹介しました。同社はStoryHubを導入することで、それまで外部に依存していたコンテンツ制作体制から内製主導に舵を切りました。導入後は、内製で69本もの記事を制作するなど、大幅にコンテンツを増やしています。

注目すべきはそのコンテンツの作り方。試合を終えた選手にインタビューしてコンテンツを作成しているとのことです。最も「熱いタイミング」で情報を収集している点がポイント。選手の生の声をコンテンツに反映できるので、ここでも体験とストーリーが生きています。
田島氏:
「どんな企業にも、埋もれた一次情報はあります。それを見つけてコンテンツ化した好事例と言えるでしょう」
最後に、コンテンツセッションのお三方から、参加者に向けてメッセージが投げかけられました。

松尾氏:
「ストーリーは体験から生まれる。これからは、いかにして体験をインプットしていくかが重要になります」
田島氏:
「今の日本にはコンテンツが足りません。とくに、ロングテールのニッチなコンテンツが少ない。しかし、そうしたコンテンツがつくれる材料は事業会社にも多く存在するんです。これからどんどん、そんなコンテンツを増やしていってほしいです」
齊藤氏:
「ハリボテの情報はバレてしまう時代になりました。企業の実力が問われるでしょう。いちビジネスパーソンとして、自分の実力や企業の実力を伸ばすことに真摯に向き合っていきたいですね」
4.若手SEOer【シンクムーブ×JADE×so.la】
ここまでは比較的、ベテランの方々のセッションをご紹介しましたが、最後はこれからのSEOを担う、20代から30代前半の若手SEOer(エスイーオーアー)の現在地と未来をテーマに。モデレーターはFaber Company の本田 卓也(※唯一ベテラン50代)が務めます。

豊藏氏は、2019年にアイオイクスに入社し、事業責任者として大手企業を中心としたWebコンサルティングに従事。2024年にシンクムーブを創業し、2025年にはアイオイクスのフェローも兼任しています。
江越氏はマーケティングリサーチ会社を経て、2024年にJADEに入社。Webサイトの現状分析からコンテンツ・テクニカルSEOなど幅広い支援を行っています。
伊藤氏はメンバーズにて大手企業のWebサイトの制作・運用に従事した後、so.la(Faber Companyグループ)に入社。代表・辻 正浩氏のもと、複数の巨大サイトのSEO分析や施策立案などを担当しています。
モデレーターを務めるFaber Companyの本田から、若手SEOerのお三方に質問を投げる形でセッションは進みました。
Q.若者への質問。なぜ今、SEOを仕事にしているのか?
一部では「AI検索によってSEOはオワコンになった」などとささやかれていますが(実際はそんなことはないのですが)、登壇者の若手3名はなぜSEOという仕事を選んだのでしょうか。

シンクムーブ 豊藏 翔太 氏、JADE 江越 誠一郎 氏
so.la 伊藤 壮良 氏
豊藏氏:
「マーケティングの入り口として、SEOはとてもいいからです。検索データは事業とユーザーの接点を見直す入り口になる。かつ、市場と向き合うという観点で、解析やデータ分析など様々な業務の土台になるので面白いです」
江越氏:
「SEOは検索エンジン(=機械)がどう動くかだけでなく、人間がどう動くか考えなきゃできないですよね。これは他の仕事にも応用が利く。社会人としてSEOに触れておくというのは、今後のキャリアを考えても価値が高いと思っています」
伊藤氏:
「SEOはサイトによってやるべきことが全然違います。インターンや前職でいろんなサイトを担当させてもらった。そこでの成功体験、失敗体験でSEOの奥深さに気付けました。あと、程よく褒めてくれる上司がいたのでSEOに取り組むモチベーションが高まりました」
Q.SEOの情報収集、実践への落とし方は?

豊藏氏:
「SEOには、まず覚えるべき原理原則があります。そのうえで、細かなルールや環境は変わっていくので、『今ならこれをやったらいいんじゃないか』と仮説を立てて、実際に試していく。読む、聞くだけでなく、自分で手を動かして確かめることが大事だと思っています」
江越氏:
「僕はGoogle 検索セントラルを読み込み、それをもとに社内でディスカッションをしています。実践経験の豊富なJADEの先輩社員と話し合う中で、実践の疑似体験を重ねてきたことが、実際の仕事でもかなり役立っています」

伊藤氏:
「僕は、SEOの神と呼ばれている辻 正浩のもとで仕事をしています。が、すべてを辻さんから学ぼうとは思っていないんです。考えが違う人も含めて様々な意見・情報を収集し、自分なりに整理しています。SEOはサイトによってやることが違う。各サイトごとに実践して、肌感覚を養っていところです」
Q.AI検索時代に、変わるSEO・残るSEOとは?

ここから突っ込んだ質問に移ります。AI検索時代に、SEOの何が変わり、何が残るのでしょうか。
豊藏氏:
「本質に回帰すると思う。AI検索の裏側の仕組みがまだわからないし変わり続けるからこそ、自社の顧客がどのように行動するのかをゼロベースで考えるようなSEOになってきていると感じます」
江越氏:
「施策ベースでの成否は常に変わり続けています。しかしSEOの本質は、マーケティングの成果を検索という観点で還元すること。そんな本来的なSEOに近づいてきていますね」
伊藤氏:
「ユーザーが情報収集の際に投げる言葉は、クエリからプロンプトに変わる。しかし、ユーザーが知りたいことは変わらない。今、培っている視点や肌感覚は今後も生きていくと思います」
Q.10年後、どの領域で何をしていたい?

若手SEOerセッションの最後に、10年後の2036年どの領域で何をしていたいかというお三方の言葉をまとめます。

10年後の予測はできません。働いていないかもしれませんが、仕事をしているなら、いくつになっても自分で手を動かしていたいです。肩書や領域が変わっても、現場から離れない人でいたいと思います(豊藏 翔太 氏/シンクムーブ)

SEOはWebサイトのポテンシャルを解放する仕事。その対象が人か組織か、サイトかという違いに過ぎない。目的を達成する上でSEOが必要なのであれば、しっかりと結果を出せる人間でい続けたい(江越 誠一郎 氏/JADE)

SEOというラベルが10年後もあるかは謎ですが、検索・情報探索が自分の武器であることは変わりません。僕は辻さんを超える。やりたいことはたくさんある。(DMMの)渡辺さんみたいに事業会社でプロダクトを見たいし、(サイバーエージェントの)木村さんみたいに大学と共同研究もしたい。(TechFabricの)平さんのようにYouTubeで情報発信するのも楽しそう。ワクワクします(伊藤 壮良 氏/so.la)
20代、30代前半の若手SEOerたちは、タフでクレバーで、しなやかでそして情熱的でした。SEO(という言葉がどうなるかわからないですが)の明るい未来が見えた気がします。
まとめ:AIを使いこなし、人の価値を磨く。変わるものと変わらないもの
4つのセッションを通じて、いくつかの共通したキーワードが浮かび上がりました。
1つは「ブランド」と「エンティティ」です。AIの思考プロセスには特定のブランドが最初から組み込まれるケースがあり、機械可読性の確保や公式情報の整備が、選ばれるための土台になります。
2つ目は「AIドリブン」。ログ解析やタイトル生成、Web解析の自動化まで、AIを前提に業務を組み替える動きが各所で進んでいました。その基盤としてBigQueryの活用が広がっていることも、複数の登壇者が指摘した点です。
いっぽうで、変わらないものも繰り返し語られました。数字の先にいる人を見る「ユーザーファースト」の姿勢、そして人にしか生み出せない「体験」と「ストーリー」です。AIが担える範囲が広がるほど、当事者としての熱量や一次情報の価値はむしろ高まります。
AIを使いこなしながら、人が上乗せする価値をどう磨くか。テクニカルからコンテンツ、そして次世代を担う若手の言葉まで、その問いが一本の線でつながったカンファレンスでした。
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