SEO

DegiMarCon Australia 2024 カンファレンス参加レポート

公開日：2024.09.05

この記事では、筆者（鈴木謙一）が2024年8月14〜15日に豪シドニーで参加したDegiMarCon Australia 2024 カンファレンスの模様をレポートします。

DegiMarConとは

DegiMarConは、デジタルマーケティングをテーマにしたカンファレンスです。今回のオーストラリアのほか、米国や英国、インド、シンガポールなど世界各地で開かれています（2025年は東京でも予定しているらしい）。

カンファレンス会場は、2000年の夏季シドニーオリンピックの開会式が行われたAccor Stadium（アコー・スタジアム）でした。もちろん、セッションが行われたのはフィールドではなく併設されている屋内施設です。

セッションレポート

DigiMarCon Australiaでは2日間に渡って十数個のセッションが行われました。そのなかから特に内容が濃かったもののハイライトをいくつか紹介します。

SEOとユーザーシグナル

SEO専門家のAaron Taylor氏は、SEOの成功を達成するうえで、ユーザーシグナルが果たす重要な役割について議論しました。ユーザーエクスペリエンスの最適化がSEOの成功にとって重要であると主張し、自身のクライアントワークからの洞察を共有しました。

キーポイントは次のとおりです。

米国政府による独占禁止訴訟で明らかにされた文書によって確認されたように、ランキング要因としてユーザーインタラクションをGoogleは優先している。
従来、SEOは技術的な側面、リンク構築、コンテンツに焦点を当てていたが、Googleの真のランキングの柱は、body（オンページSEO）、アンカーテキスト、そしてユーザーインタラクションである。
Googleが測定するユーザーシグナル
・ページ上のスクロール深度
・セッション時間
・クリック：Googleは、検索結果ページ自体と個々のページの両方でのクリックを追跡する。
・ホバリング行動：Googleは、ユーザーが特定のページ要素の上にマウスを置く時間を監視する。
ユーザーエクスペリエンスの最適化
・CTR：検索結果でページをクリックする人の割合が高いほど、ユーザーの好みの強い指標となる。
・バックリンクは依然として重要：ユーザーシグナルは重要だが、バックリンクは依然としてGoogleのアルゴリズムにおいて重要である。
・質の高いコンテンツに焦点を当てる：ユーザーの質問に直接答え、価値ある情報を提供するコンテンツは、ポジティブなユーザーインタラクションシグナルにより上位表示される。
・コンテンツの深掘りを優先する：ユーザーは長文の記事を最後まで読まないかもしれないが、深く、包括的なコンテンツを作成することで、信頼性と権威性を確立できる。
・使いやすさのために最適化する：ページ速度とモバイルユーザビリティは、ユーザーエクスペリエンス、ひいてはSEOに大きな影響を与えるため、優先する。
検索結果でのユーザーシグナル（クリック）を促す最適化：
・関連性があり、惹きつけるタイトルとスニペット
・ランキング
・ドメイン名の知名度と信頼度
・ブランドの認知度と信頼性
ページレベルでのユーザーシグナルの最適化：
・検索結果でのメッセージ（タイトル・スニペット）との一致
・深掘りしたコンテンツ
・コンテンツの品質
・読みやすさ
・CTA
・画像や動画などのテキスト以外のコンテンツ
・カスタマイズした画像
・内部リンク
・UX/UI
・以前体験した好ましい体験
・データの可視化
実践すべきSEOアプローチ
・SEOの成長のためにコンテンツ作成に焦点を当て、クライアントの確立されたバックリンクプロフィールとブランド認知度を活用する。
・ターゲットオーディエンスの特定のニーズと検索意図に応える魅力的なコンテンツを作成することを重視する。
・シームレスなユーザーエクスペリエンスのために、検索結果とランディングページ全体で対称的なメッセージングを実装する。
・明確で意思決定しやすいランディングページの最適化を優先する。

SEOとAI：SEOの未来

SEOの専門家として18年の経験を持つBrie Moreau氏は、AIと大規模言語モデル（LLM）の時代におけるSEOの進化する状況に焦点を当てました。現代のSEOの実践において、ユーザーエンゲージメント指標とデータクラスタリングの重要性を強調し、コンテンツだけではもはや王様ではないと主張します。キーポイントは次のとおりです。

コンテンツだけではもはや王様ではない。これは、コンテンツが大量に制作されていることと、Googleがユーザーエンゲージメント指標に焦点を当てているためである。
Googleの考え方とユーザーエンゲージメントの優先順位を理解することが、SEOの成功には不可欠である。
クリックのあるリンクは、アルゴリズムにおいてより高い重み付けを受け、それらを著しく価値のあるものにしている。
自分の代理店では、この原則を適用し、関連性の高いトラフィックの多いページからリンクを獲得することに注力しており、クライアントにとって素晴らしい結果をもたらしている。
・あるクライアントは、2年以内にトラフィックがゼロから8000万に増加し、月間1000万米ドル以上の収益を生み出している
・このケーススタディは、CROとSEOパフォーマンス向上の強い相関関係を表している。
ユーザー行動を理解し、ページ上で最も魅力的なコンテンツを特定するために、ヒートマップトラッキングを使用することを勧める。
ヒートマップを使用してユーザーエンゲージメントを追跡し、ページ上で最も人気のあるコンテンツ要素を優先する。
バックリンクレポートを精査し、リンクされたページに関連するトラフィックがあることを確認する。
特定のトピックを中心に、強力かつ簡潔なコンテンツクラスターを構築し、Googleに強力なシグナルを送ることに焦点を当てる。
Googleのアルゴリズムを理解し、ユーザーエンゲージメント指標を優先することで、Googleのように考えることを学ぶ。

データ主導のソーシャルメディアマーケティング

元投資銀行家でソーシャルメディアの専門家であるGeorge Hawwa氏は、オーストラリアのソーシャルメディアマーケティングの進化する状況について話しました。データ主導の戦略の重要性を強調するとともに、「コンテンツが王様」という神話を打ち破り、データがコンテンツ作成を導くべきだと主張します。キーポイントは次のとおりです。

2024年1月現在、オーストラリア人は平均して1日1時間51分をソーシャルメディアに費やしている。
・2019年以来初めて利用時間が減少した
オーストラリアにおけるトップ3のソーシャルメディアプラットフォーム（2024年1月）
1.Facebook：月間アクティブユーザー数1850万人
2.YouTube
3.WhatsApp

B2CおよびB2Bマーケティングにお勧めのプラットフォーム
・Facebook
・LinkedIn
・Meta プラットフォーム
ソーシャルメディアマーケティングへのデータ駆動型アプローチ
・「データが王様」であり、「コンテンツが王様」ではない。データは、ROIを促進するためにコンテンツ作成に情報を提供するべきである。
・ソーシャルメディアのマーケティング担当者は、プラットフォームのアルゴリズムの仕組みを理解し、それらを活用してキャンペーンのパフォーマンスを最適化することに焦点を当てるべきである。
・単にフォロワーを追いかけるのではなく、ソーシャルメディアのインタラクションを通じて顧客データベースを構築することに焦点を当てる。
・エンゲージメントとコンバージョンへの進捗を示す主要な指標を追跡する、例えば：
・CPM（インプレッション1000回あたりのコスト）：CPMが低いほど、キャンペーンが健全であることを示す。
・CTR（クリックスルー率）：CTRは2％以上を目指す。
・リンククリック、投稿クリック、プロフィール訪問、ソーシャルメディアキャンペーンからのウェブサイト訪問
プラットフォームのアルゴリズムを理解し活用する
・アルゴリズムの主な目標は、ユーザーをプラットフォームに長く滞在させることである。
・ソーシャルメディアマーケティング担当者としての主な責任は、プラットフォームアルゴリズムの内部の動きを理解することである。
・アルゴリズムの目標に合わせてコンテンツとキャンペーン戦略を最適化する。
・アルゴリズムのビジネスに対する認識に影響を与える主な要因
　■一貫した投稿スケジュール
　■定期的に更新されるページコンテンツ
　■メッセージやコメントへの良好な応答率
　■毎日広告を掲載している
　■Facebook for Business または LinkedIn for Business で概説されているベストプラクティスに従っている
　■過度なプロモーション的なコンテンツを避け、コミュニティ構築に焦点を当てることで、「リスクのない」エンティティであることを示す。

インフルエンサーマーケティング

Leigh Cowan氏は、「デジタルマーケティング」という言葉に関する一般的な誤解を解き、マーケティングそのものの核となる原則を話しました。セグメンテーションを通じてターゲット市場を理解し、それに応じてマーケティングミックスを調整することの重要性を強調します。そして、インフルエンサーマーケティングの力について掘り下げ、多段階マスコミュニケーション理論を通じてその有効性を説明します。

キーポイントは次のとおりです。

顧客行動をまず理解する
・市場細分化は、マーケティングマネージャーにとって最も強力なツールである。
・誰もが同じものを望んでいるわけではない。ターゲット顧客を特定し、彼らが望むものを提供する。
・顧客行動は、多くの場合、彼らのメディア消費に影響され、あなたが選んだマーケティングチャネルの有効性を定義する。
・メディア行動に基づいたセグメンテーションは、製品やサービスをどこで宣伝するかを決定するのに役立つ（たとえば、Facebook対LinkedIn）。
・価格感度のような顧客特性を理解することで、販売促進のオファーを調整することができる。
インフルエンサーマーケティングの力
・インフルエンサーマーケティングが機能するのは、多段階マスコミュニケーション理論のためである：人々は、自分よりも知識があると認識している個人を信頼する。
・口コミは強力だが、信頼性に欠け、ネガティブバイアスの影響を受けやすい。
・適切なインフルエンサーを選ぶことが重要である。すべてのインフルエンサーが同じようにできているわけではない。特定の製品カテゴリーにおける彼らの信頼性と信頼性が不可欠である。
・インフルエンサーは、関与度の高い製品カテゴリーや、社会的圧力/顕著性のある製品において最も効果的である。
・関与度の低い製品（たとえば、基本的な食料品）にインフルエンサーを使うのはお金の無駄である。
・インフルエンサーの評判がすぐに傷つき、ブランドに悪影響を与える可能性がある「ミルクシェイクダック」現象に注意する。
・選ばれたインフルエンサーに関する潜在的な危機に対処するためのPR緊急時対応計画を用意しておく。

動画ストーリーテリング

Chris Schwager氏は、ビジネスにおける動画ストーリーテリングの力を語りました。感情的なつながりと意思決定におけるビジュアルのインパクトを強調し、緊急性、信頼性、戦略的なビデオ作成の重要性を主張します。キーポイントは次のとおりです。

ビジュアルは深いインパクトを与える：脳はビジュアルを10分の1秒で処理し、結果として迅速な判断と意思決定につながる。これは、感情的なつながりを作り出し、選択に影響を与える動画の力を示している。
動画はコミュニケーションの未来である：2024年までにインターネットトラフィックの80％は動画になるだろう。72％の人がテキストを読むよりも動画を見ることを好む。企業は、関連性を保つために、この変化に適応する必要がある。
緊急性が重要：自身の臨死体験は、時間を最大限に活用し、目標を達成するための緊急性を感じさせた。これは、ビジネス成長のために動画を活用することに、すぐに行動を起こすことにつながる。
ビジネスのための戦略的なビデオアプリケーション
・パーソナルブランディング：動画は、パーソナルブランドを構築するために重要である。一般的なウェブサイトではなく、動画ストーリーテリングを通して、あなたがもたらすユニークな価値を紹介することに焦点を当てる。
・合理化された販売プロセス：Schwager氏のシステムは、パーソナライズされたアウトリーチから、提案書、お客様の声まで、販売ファンネル全体に動画を統合し、コンバージョン率を高める。
・ROIの最大化：1つのビデオを複数のチャネル（ウェブサイト、YouTube、LinkedIn、Eメール、さらには物理的な動画パンフレット）で再利用し、配信することができる。これにより、最大限の影響と投資収益率を確保する。
ストーリーテリングと信頼性の力
・すべての動画には目的が必要である：動画のための動画を作ることを避ける。インパクトのあるコミュニケーションを確実にするために、動画が対処する特定の問題や課題を特定する。
・信頼性を築く信頼性：弱さを受け入れ、あなたの物語を語る。これは、聴衆と共鳴し、より深い繋がりを作る。
・クライアントを擁護する：クライアントとの関係を築き、ビデオ作成を通して彼らを勇気づけ、彼らの成功を自分の成功として祝福することが重要である。