シリーズ形式でお伝えしているオウンドメディア業界別事例。今回は、ホームセンターとDIYにまつわるオウンドメディアを紹介します。自社のオウンドメディアに活用出来るポイントをぜひ見つけてください。
「体験」をコンテンツにしてわかりやすく伝える
ホームセンターで販売されている主な商品は木材などの材料、またはそれらを加工する道具や工具になります。これらは購買されることそのものが主目的では無く、材料と道具を用いて新しいものを創り出したり、修繕することで初めて価値を成すものです。また、ホームセンターを利用する多くのユーザーは、何かを手作りしたり、カスタマイズすること(DIY)に楽しみを感じる人も多いのでは。だからこそ、材料や道具を使って生まれる新しい、楽しい体験や、面白さを伝えるようなコンテンツが重要になってきそうです。
ホームセンター・DIYにまつわるオウンドメディア事例5選
では、具体的に事例を見ていきましょう。
① カインズ How to
関東圏を中心に200店舗以上を展開し、オンラインショップも運営している株式会社カインズのオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
「動画で見るカインズ How to」というタイトルで、収納術やロープの結び方、ぬか漬けの作り方などが動画を用いて紹介されています。動画は1分から3分程度のものが多く、テロップで解説されているので早くわかりやすく学ぶことができます。動画はすべてカインズのスタッフによる手作りです。
◆ コンバージョン
各動画の紹介ページには、店舗検索ページやお問い合わせページへのリンクが貼られています。また、サイドバナーにはオンラインショップのバナーも置かれています。
◆ 会員登録の導線
オンラインショップでは会員登録をすると、店舗とオンラインショップ両方で利用できるカインズカードの残高確認ができたり、お気に入りや購入履歴を保存できるメリットがあります。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
カインズ全体としてFacebookとYoutubeのアカウントがあります。Facebookでは商品の案内が主ですが、動画で紹介しており思わず目に止まるようなコンテンツです。Youtubeでは「カインズ How to」の動画がカテゴリごとにわかりやすく紹介されています。
※参考URLなど
「カインズ How to」以外にもカインズ社のWebマーケティング戦略が紹介されています。 ・最も運営が難しいECサイト?通販に20年以上携わるベテランが語る、サイト運営の工夫
② KOMERI.COM How to 情報
全国に1,186店舗を展開し、オンラインショップ「KOMERI.COM」を運営している株式会社コメリのオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
「DIY」「ガーデニング」「愛車のお手入れ・アウトドア」「美味しい料理の作り方」などの大カテゴリがあり、それぞれハウツーが動画・写真・イラスト(図)のいずれかで解説されています。説明文章内に商品名が登場した際には、オンラインショップの商品ページへのリンクが貼られており、購入も促しています。
◆ コンバージョン
各記事には「関連商品を探す」というバナータイトルでオンラインショップへのリンクやアプリへのリンクがあります。 便利なのは、PDF形式の取扱説明書へのリンクが設置されており、ダウンロード・印刷ができることで、紙を見ながら作業を進めたい方にとっては嬉しい機能です。
◆ 会員登録の導線
オンラインショップでは会員登録をすると、店舗とオンラインショップ両方で利用できるコメリポイントを貯められる他、商品注文時の毎回の住所登録を省くことができます。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
コメリ全体として運営しているFacebookページ「コメリ菜園&ガーデン倶楽部」は16,000人以上からフォローされ、2日に1回のペースで更新されています。内容は草花の紹介、新商品の案内、コメリ運営のガーデニングコンテストの結果発表などです。
※一言コメント
「How to 情報」ページは全体的に字が大きく見やすいレイアウトになっています。また、前述した通りPDFのダウンロードや印刷が可能な導線を敷いていることからも、Webにそれほど精通していないユーザーでも情報が見つけやすいような配慮のあるサイト設計になっていることがわかります。
③ ロイヤルホームセンター 住まいと暮らしのサポート集
関東・関西を中心に店舗を展開し、オンラインショップ「ロイモール」を運営しているロイヤルホームセンター株式会社のオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
コンテンツは、オンラインショップ「ロイモール」のページ内に設置されています。「外壁のすきまの補修」「和風庭園のつくり方」「TVアンテナの取りつけ方」などがイラスト・写真・動画で紹介されています。イラストや写真による紹介ページでは、必要な材料リストが最初に載っており、最後には関連商品の写真と値段が一覧できるようになっています。
◆ コンバージョン
各記事の最後にある関連商品一覧がコンバージョンポイントになります。「詳細を見る」ボタンと「カートに入れる」ボタンがあります。
◆ 会員登録の導線
ロイモールでは会員登録をすると、購入履歴の確認やおすすめ商品が紹介されたメールマガジンが届くほか、ロイモールですぐに使える500円クーポンがプレゼントされる特典があります(2017年2月時点)。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
ソーシャルメディアは利用していないようです。
※一言コメント
よく参照されるテーマは、イラスト付きのバナーを作成・設置して最初に目に入る箇所に配置する工夫がされているようです。こうすることで、多岐に渡る商品を展開していて、発信テーマやコンテンツが多くなってしまう中でも、少しでも興味のあるテーマが探しやすいようになっています。
④ グッティ 暮らしペディア
九州地方を中心に店舗を展開する株式会社グッデイのオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
「手作り燻製にチャレンジ!」「「スノコで梅雨対策」「包丁の種類と選び方」などが動画を中心に紹介されています。動画には、店舗で働くグッディの社員が自ら登場し、作り方やDIYの解説をしています。人気ランキングの掲載やタグ分けもされています。
◆ コンバージョン
各コンテンツを参照した人におすすめの記事・動画が表示されます。楽天オンラインショップは持っているものの、そちらにリンクさせるような、購買に繋げるコンバージョンポイントは置いていません。
◆ 会員登録の導線
会員登録はありませんが、代わりにメールマガジン会員を募集しています。登録すれば、お得なイベント情報が届いたり、ポイント倍増の特典があるようです。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
グッディ全体として、Facebook、Twitter、LINEのアカウントを持っています。店長として「良日出来太」というキャラクタ−を起用するなど親近感を抱かせるブランディングを意識しており、Facebookページでコメントが寄せられた際には1件1件丁寧に返信しています。
※ 一言コメント
地域密着企業らしく、親しみやすさを打ち出したコンテンツ作成やブランディングが得意です。副社長が九州地方の企業の社長やキャスターと対談する「モノ見聞録」というコンテンツも以前は発信していたようです。
⑤ オリジナルテクスト DIYers
集合住宅の大規模修繕工事の際にマンション居住者に向けて工事情報などを発信するシステム「サポトシオ」などを提供する株式会社オリジナルテクストが運営するオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
-
「FEATURE-特集-」
DIYのワークショップを主催している方の自宅紹介や伝統工芸作家のインタビューなどが紹介されています。
-
「TIPS-ヒント集-」
包丁の基本的な使い方やマフラーの編み方などが紹介されています。記事は写真メイン、テキストは補助程度で添えられているものが多いです。
-
「PLACE-ショップリスト-」
ハンドメイドやDIY関連のアイテムを揃えているショップ情報(東京・静岡・関西圏)が掲載されています。単に店舗名と所在地を載せるだけでなく、店舗の立地や外観・内観、実際に置かれている商品を取材の上、写真とテキストで丁寧に紹介されています。 この他にも鉄鍋のサビ取りの方法を紹介した「DIYer(s) Ch-オリジナル動画-」、ユーザーからDIY作品を集めた「POST-ユーザー投稿-」などがあります。
◆ コンバージョン
各記事の下部には運営しているSNSアカウントのリンクが設置されています。オンラインショップは保有していないため、商品訴求のコンバージョンは用意していません。
◆ 会員登録の導線
「DIYers」の会員になるとMyページからDIY体験の事例を投稿できるようになります。プロフィールを編集できたり、過去の投稿も保存されていくので、投稿が溜まれば「参考になるユーザー」として一目置かれる人気ユーザーになることも可能です。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
Facebook、Twitter、Instagramのアカウントを持っています。投稿内容はいずれもDIYersの記事更新のお知らせが主ですが、Facebookページには10万人以上が「いいね!」をしており、ビジター投稿からユーザーがDIYの実践例を投稿しています。
※ 一言コメント
インタビュー記事が充実していることはもちろん、DIYに興味がある層が好むであろうアパレルブランドや雑誌、Webメディアと共同でイベントや企画を実施したりと、認知度の獲得法に長けています。
「お困りごと解決」と自分で作り上げる「世界観」をイメージしてもらえるコンテンツを
「使い方」や「やり方」など文章だけでは説明が難しい内容が多いためか動画を活用している事例が多くなりました。また、ユーザーニーズが多様化する中、自分の好きなモノや空間を自分で作り上げてしまう人も増えているのかと思います。 今後は、初心者でも取組みやすさや簡単さを訴求するようなコンテンツ(作り方、やり方など)を動画でわかりやすく伝えたり、「こだわりの世界観」を表現できることをインタビューコンテンツで発信するなどのコミュニケーションが有用になるのではないでしょうか。 おわり
著者PROFILE
SFA導入コンサルからCRMベンダーのセールスに転身し、営業マネージャーに。その後Faber Company営業部長を経て、マーケティングを担うIMC部を設立。現在は執行役員として、ミエルカのプロダクトマネージャーやセミナー登壇などの活動をメインに行っている。
■ 講演実績:マーケティングアジェンダ/日経クロストレンドForum 他■Twitter:@tsuuky09