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「LTV(ライフタイムバリュー 顧客生涯価値)」とは?言葉の意味や重要性、計算方法、事例まで詳しく解説

更新日:2024.10.22 公開日:2024.08.29

LTV(ライフタイムバリュー/顧客生涯価値)は”Life Time Value“の略であり、顧客がある企業との関係を通じてもたらす予想収益の総額を表す指標です。

顧客獲得の難易度が高まっていることなどを理由に、マーケティングではLTVの向上が不可欠であると言われています。実際、マーケティング戦略の策定や予算配分、顧客関係管理(CRM)などでLTVが活用されています。  

本記事では、LTVの言葉の意味から、マーケティングにおいてLTVが重要な理由、計算方法からLTVをあげる方法、LTVを上げた成功事例などをご紹介します。

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LTV(顧客生涯価値/Life Time Value)とは

LTVとはLife Time Value(顧客生涯価値)の略であり、1人の顧客が特定の企業やブランドと取引を開始してから終了するまでの期間において、どれだけの売上(または利益)をもたらすかを示す指標です。

「一回あたりの購入金額(またはコストを差し引いた利益)」や「購入頻度」が多くなる、または「購入期間」が長くなるほど、LTVは大きくなります。そのため、一般的にはロイヤルティの高い顧客ほど、長期的に多くの利益をもたらし、LTVも大きくなります。

マーケティングでLTVが重要な理由

マーケティングでは、以下4つの理由でLTVが重要です。

新規顧客獲得の難易度が上がっている

人口減少や海外企業との競争激化、商品・サービスの飽和などを理由に、新規顧客を獲得する難易度は年々高まっています。

難易度の上昇に伴い、顧客獲得のコストも高くなっています。マーケティングの経験則(1:5の法則)では、新規顧客獲得には、既存顧客の維持と比べて5倍のコストがかかると言われています。また、多大な労力やコストをかけて新規顧客を獲得しても、その顧客が自社に多くの売上をもたらしてくれるとは限りません。

マーケティングの経験則(1:5の法則)では、新規顧客獲得コストは、既存顧客維持コストの約5倍と言われている

新規顧客の獲得は非効率なマーケティング戦略になりつつあることから、既存顧客の維持により長期目線で売上や利益を増やす(≒LTVを高める)戦略を重視する企業が増えています。

既存顧客のロイヤルティ向上を図る重要性が高まっている

新規顧客の獲得とは対照的に、既存顧客のロイヤルティを向上する重要性は年々高まっています。

1つ目の理由は、自社ブランドの根強いファンになってもらえるためです。長期での継続的な利用を見込めるだけでなく、1回あたり購買価格アップや購入頻度の増加も見込めます。一般論として、既存顧客の離脱率を5%改善することで、利益率が25%改善される(5:25の法則)と言われており、既存顧客の維持で高い効果が見込めると言えます。

2つ目の理由は、新規顧客の獲得にもつながることです。自社ブランドに愛着を持つ顧客は、SNSや実社会で良い口コミを広げてくれる傾向があります。ロイヤルティの高い既存顧客を増やすほど、好意的な口コミによる集客効果が見込めます。

サブスクリプションビジネスのニーズが増えている

近年は、動画や音楽などの分野を中心に、サブスクリプションビジネスが普及しています。サブスクリプションとは、商品・サービスを一定期間利用する権利を付与し、その対価として定額料金を月(または年)ごとに支払ってもらうビジネスモデルです。

最初にまとまった額の収益を得られるパッケージ販売(売り切り型)の事業と異なり、サブスクリプションの事業では長期間にわたって収益を上げ続けなければ、利益を生み出せません。こうした事情から、長期目線での売上最大化を図るLTVが重要な指標となります。

LTVを意識しないと売上や利益につながらない

上記3つの理由を総括すると、昨今のビジネスでは「顧客一人ひとりのニーズに寄り添い、顧客との良好な関係を維持し続けること」が売上や利益の創出に直結すると言えます。

LTVを意識しないと、顧客ニーズにそぐわないマーケティング施策を行い、顧客ロイヤルティの低下を招きます。その結果、既存顧客を維持しづらくなる上に、自社ブランドの知名度やイメージ低下に伴い、新規顧客の獲得がより一層難しくなります。

売上や利益の減少につながるだけでなく、売上がマーケティング費用を下回り、赤字になる事態も想定されるため、LTVを意識する(≒顧客ニーズや顧客との良好な関係維持を重視する)ことが重要です。

LTVの簡易的な計算方法

LTVは、以下の計算式で簡易的に算出されます。

  • LTV(円)=顧客単価×購入頻度×継続期間
LTV(顧客生涯価値/LifeTimeValue)の計算式

各用語の意味は以下のとおりです。

  • 顧客単価:顧客が1回あたりの買い物で支払う金額(購買1回あたりの売上)
  • 購入頻度:顧客が一定期間内において商品・サービスを購入する平均回数
  • 継続期間:顧客が自社ブランドを購入し続ける期間(≒契約期間)

顧客単価が10万円、購入頻度が4回/年、継続期間が10年の場合、LTVは「10万円×4回×10年=400万円」です。

新規顧客獲得と既存顧客維持にかかるコストを考慮すると、LTVの計算式は以下になります。

  • LTV(円)=顧客単価×購入頻度×継続期間−(新規顧客獲得+既存顧客維持コスト)

サブスクリプションビジネスでは、以下の計算式が用いられる場合もあります。

  • LTV(円)=月次ARPU × 粗利率 ÷ カスタマーチャーンレート

各用語の意味は以下のとおりです。

  • 月次ARPU:1か月あたりのユーザー平均単価
  • カスタマーチャーンレート:ユーザーの解約率

LTVを高める方法

LTVは「顧客単価×購入頻度×継続期間」で表されるため、各要素を大きくすることで売上ベースのLTVが高まります。また、新規顧客や既存顧客の獲得・維持コストを下げることで、利益ベースのLTVが高まります。

LTVを高める4つの方法

LTVアップの成果を最大化させるには、多角的なアプローチによって各要素を底上げすることが求められます。

顧客単価を高める

顧客単価は「商品単価×購入品数」に分解されるため、「高い価格の商品を購入してもらう(商品単価を上げる)」または「1回で多くの商品を購入してもらう(購入品数を増やす)」と、顧客単価が高まります。

商品単価を上げる主な施策は以下です。

手法概要
アップセルある商品を購入しようとしている(または購入した)顧客に対して、より上位(価格が高い)の同種商品を提案する。
商品の値上げ既存商品を値上げする。既存顧客のロイヤルティが高い場合に有効であり、値上げの理由を納得してもらう必要がある。

購入品数を増やす場合、クロスセルを用いることが一般的です。クロスセルは、ある商品を購入しようとしている(または購入した)顧客に対して、その商品との関連性が高い商品をセットで提案する手法です。

購入頻度を上げる

購入頻度を上げる場合には、顧客との継続的なコミュニケーションが不可欠です。アプローチの手段としては、メルマガ・DM配信やSNS運用、LINEアカウントなどが用いられます。

顧客ニーズに沿った情報(商品の使い方やお得なクーポンの提案など)や、自社商品・サービスのベネフィットなどを的確な方法・タイミングで伝えると、成果の最大化につながります。そのためには、CRMツールを用いて顧客の購買履歴やWebサイトへのアクセス履歴、メールの開封率などを分析することが重要です。

継続期間を延ばす

継続期間を延ばすには、離脱率を下げる要因を排除することが効果的です。継続的に商品・サービスの魅力を高めることはもちろん、CRMツールによって離脱する顧客の兆候や共通条件を分析し、改善する取り組みが求められます。カスタマーサポートを強化したり、定期コースを導入したりする施策でも、離脱率を下げる効果が見込めます。

また、顧客ロイヤルティを高めることも効果を発揮します。既存顧客限定の特典や、会員ステージに応じたサービスの提供が一般的です。また、自社ブランドでしか得られない体験価値を作り出すことも効果的です。

コストを低減させる

顧客獲得・維持コストの低減では、MAツールやCRMツールの活用、業務オペレーションの改善、リソースの最適化などの施策が行われます。

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LTVの向上を試みる施策例

国内でのLTV(顧客生涯価値)向上を試みる事例として、以下企業の取り組みが参考になります。

楽天グループ

金融や旅行、ECなどの多様なサービスを展開している楽天グループは、「楽天ポイント」という自社ポイントプログラムの割引によって楽天グループ全体のリピート率を上げる施策を長く行っています。いわゆる「楽天経済圏」の確立によってLTV向上を目指しています。こちらのプログラムでは、各サービスを利用するたびにポイント(1pt=1円)が付与され、貯まったポイントは全サービス共通で利用可能です。

この仕組みにより、継続的に楽天のサービスを利用するインセンティブが顧客にもたらされています。実際、2022年7月には楽天ポイントの累計発行数が3兆ポイントを突破しています。また、楽天会員一人あたりの平均獲得ポイント数は2019年から2021年の3年間で約1.4倍に増加し、通算10万ポイント以上を獲得している会員数も750万人を超えており[1]、楽天グループのリピート利用を促す当制度がLTVの向上に寄与している可能性があります。

ニトリ

家具・インテリア大手のニトリは、トータルコーディネート提案への注力を図っています [2]。家具やインテリア雑貨のセット販売による購買単価の向上、および顧客一人ひとりのニーズに合わせた提案による顧客満足度の向上を実現しており、LTV向上に直結していると言えます。

また、ニトリアプリによるインテリア等のオンライン相談やライブコマースにより、既存顧客との継続的な関係構築にも努めています[3]。2020年2月期間には522万人だった会員数は、2023年3月には1,601万人まで増えています。

加えて、同社では「EC専用商品の開発強化」や「システム改修による納期短縮」等による商品・サービス面の強化、ECサイト内における商品情報の充実化などにも注力しました。その結果、CVRの大幅な向上やSNSのフォロワー数増加(0人→120万人)、EC売上を約200億円から911億円まで増加させるなどの成果を生み出しました[4]。

CVRの向上は購買点数の増加、継続的なSNSでの情報発信は大幅に増加したフォロワーに対するリピート購入の促進につながり、結果的にLTVの向上に貢献している可能性があります。

ZOZOTOWN

ファッションEC大手のZOZOTOWNは、商品提案のパーソナライズ化に注力しています。

一例として、ホーム画面に表示するモジュール(商品ジャンルと対象者の組み合わせ)をユーザーの行動履歴に応じて切り替える施策を行っています。A/Bテストの結果、ホーム画面経由の受注金額やクリック率の向上に成功したとのことです[5]。

2024年5月には、運営するアプリ内でAIによるパーソナライズされたコーディネート提案の機能提供を開始しました[6]。

顧客一人ひとりのニーズに寄り添ったサービスの提供が、顧客ロイヤルティ向上につながっていると言えます。

こういったユーザーに個別最適化した顧客ロイヤリティの向上は一人あたりの受注金額やリピート率を向上させることに繋がります。ZOZOTOWNではこういったサービスをアプリで提供し、そのアプリ利用者にクーポンを配布しています。クーポンでのリピート率向上はLTVを高める狙いがあると考えられます。

また、ZOZOTOWNではLINEIDと連携することで自社ポイントを付与する施策を実行し、連携したユーザのLTVが高い傾向が見られました。[7]

リクルート

リクルートは、就職や転職、結婚、出産、引越しなど、ライフイベントに関連する事業を多角的に展開しています[8]。顧客に対してライフイベントに応じた自社サービスを利用してもらうことで、グループ全体でLTV向上を促進しようとしています。

リクルートではこのようなサービスを横断するユーザーの利用ケースをクロスユースと呼んでいます。

例えば「じゃらん」で旅行を予約していてその旅先でレストランを利用する可能性が見込まれるユーザーに「ホットペッパーグルメ」のポイントを付与し、別サービスの利用を促しています。[9]

また、グループ内の一部サービスで共通利用できるポイント制度も導入[10]しており、こちらもLTVの向上を企図していると考えられます。

マクドナルド

LTVの向上を図るマーケティング施策の例として自社アプリのインストールを促す施策が挙げられます。自社アプリはモバイルからの通知やクーポンの配布、独自機能などの提供を通じて、リピート率やユーザー体験の改善を通じ、LTVを向上をさせ得る可能性をもっています。マクドナルドは、公式アプリでお得なクーポンやモバイルオーダー機能の提供などを行い、顧客満足度や購入頻度の向上を図っています。2022年12月時点でアクティブユーザー数が約2,500万人に及んでおり、同機能は多くのユーザーに利用されています。[11]。

また、期間限定メニューの発売にも工夫を凝らしています。市場調査やアンケートをもとにプロモーションを行うだけでなく、顧客から共感を得られるストーリーを同時に打ち出している点[12]も特徴的です。

調査によると、ファーストフード店を月2回以上利用している人の割合に関して、「マクドナルド」が最も多い57.9%となっています。また、ファーストフードでケータイクーポン券を利用したことある人の割合は82.4%にのぼっており、利用した店舗は「マクドナルド」が97.1%1位という調査データ[13]もあります。これらのデータからモバイルでのクーポン配布などの施策がリピート率や購入頻度の高さに寄与し、LTV向上につながっていると考えられます。

[1] 「楽天ポイント」、累計発行ポイント数が3兆ポイントを突破(楽天グループ)

[2]統合報告書 2018(ニトリホールディングス)

[3]統合報告書 2023(ニトリホールディングス)

[4]【大好評セミナーレポート】大企業も動く”実践的”マーケティング LTVを劇的に高めるCX向上施策とは?(Growth Note)

[5] ホーム画面におけるパーソナライズの取り組み(ZOZO)

[6] WEAR、AIによるパーソナライズでコーディネート提案が進化(ZOZO)

[7]自社ポイント付与でID連携数2.6倍!ZOZOTOWNの『CFM戦略』を推進するLINE活用

[8] 事業・サービス(リクルート)

[9]パーソナルデータのサービス横断での活用(クロスユース)

[10] リクルートポイントがたまる・つかえるサービス・お店(リクルート)

[11]事業内容(日本マクドナルド)

[12] マクドナルドブランド(日本マクドナルド)

[13] マクドナルド携帯クーポン利用率は97%と圧倒的、しかし高付加価値バーガーのリピート率は?(MarkeZine)

コラム「CPAは安いのにLTVが向上しない問題」が起きる理由 

事業会社でマーケティングや広告運用を行っていると「CPAは低く抑えられているのにLTVが向上しない」という問題に直面することがあります。マーケターは常日頃、経営者から「CPAの調子はどうなのか」という質問を多く受けます。多くの場合、経営者はCPAが低く抑えられていることを望みますし、マーケターも「今月のCPAは◯◯円以下でしたので予定通りです」というコミュニケーションをしてしまいがちです。

しかしこの運用が続くと、「LTVが全然向上していない」という状態に陥ってしまうことが多くあります。こういったサインは、数字に敏感な営業側の誰かが気付くことがほとんどです。例えば、「マーケティング部門では目標が達成出来ているという報告を聞いているけれど、営業チームでは目標の営業売上を達成できていない」といった形で報告を受けることがあります。

こういった危険サインがでてきたら、マーケターはLTVの確認をする必要があります。使った広告費用に対して、広告から獲得した顧客がどれだけの売上を、どれだけの期間継続して上げているのか確認していきます。簡易的には「売上を上げているユーザー数」や「契約決定に至ったユーザー」などの集計でも広告がどれだけ売上に貢献しているか、ある程度の目安を知ることができます。

冒頭で経営者に報告していたCPAは「見込み顧客1人あたりの獲得にいくらかかったか」ですから、LTVは誰も分かっておらず、ここで初めて広告費用がどれだけの成果(売上・利益)に繋がったかを可視化することになります。ここで「CPAは低かったが実は全く売上につながっていなかった」といったことが判明するパターンもあります。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。最初のコミュニケーションがCPAだけで会話されていることに注目してみましょう。CPAというのはわかりやすい指標なので、皆が安易に使ってしまいます。しかし、実はその指標で分かるのはリード獲得がいくらで出来ているかだけで、ビジネスが成功しているかどうかはわかりません。LTVまで計算してみて初めてマーケティングや広告運用に使われた費用がビジネスの成功に繋がったことが分かるのです。

このような問題が起きないようにするためには、最初からLTVを目標に置くことが必要です。それが難しい場合は、LTVを向上することを最終的な目標にすることを念頭において各KPIを設定していっても良いでしょう。そうすれば自ずと「商談数」「契約数」「売上」「利益」「継続率」「チャーンレート」などLTVの計算に必要な項目が設定されていくはずです。

このようにLTVの向上を最終目標に置くということを、マーケターや経営者、会社の皆で合意した上で適切な広告運用やマーケティング活動を行うことができれば、LTVの向上へ第一歩を踏み出せたと言えるでしょう。

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まとめ

LTVは顧客獲得の難易度が高まっている現在のWEBマーケティングにおいて、自社の事業を成功させるために非常に重要な指標です。CPAだけを追い求めて、売上・利益に繋がらないWEBマーケティングにならないためにも、LTVの指標設計やそれに紐づく各種KPIをモニタリングしていくことで、WEBマーケティングがどれだけ自社の事業に貢献しているかを測ることができます。その過程で自社サービスの改善点や、より顧客に価値を提供できる方法が見いだせることもあります。WEBマーケティングと自社事業の成長をより高いレベルで実現するためにも、WEBマーケティングの開始段階から社内で適切なLTVの設計を行い、その向上を目指しましょう。

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#LTV #マーケティング #Webマーケティング #デジタルマーケティング

本記事の著者
清重 愛一郎
清重 愛一郎
シン・マーケ株式会社 代表マーケター
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