2024年4月25日〜26日に英ブライトンで開催されたbrightonSEOカンファレンスに参加してきました。この記事では、注目セッションのサマリーを共有します。
SGEは検索結果の未来ではない
Tom Capper氏によるGoogleのSGE(検索生成体験)をテーマにしたセッションです。
- SGEはAIが生成した回答を検索結果の上部に表示し、多くの場合、ウェブサイトへのリンクや追加情報を提供するものである。しかし、現時点でのSGEは検索エンジン結果ページ(SERP)の将来像ではないと考える。
- GoogleはSGEを通じて、必ずしも最良ではないかもしれないが便利な回答や体験を提供することで、ユーザーを自社のエコシステム内に留めておきたいと考えている。
- SGEは、盗用、コンテンツの盗難、誤解を招く情報などに関する懸念から、法的な課題に直面する可能性がある。
- SGEのユーザー体験に関する問題点として、従来の結果とのぎこちない統合、冗長な情報、読み込み時間の遅さ、既存のGoogle機能と比較してコンテンツの質が低いことなどが挙げられる。
- SGEの収益化はこれまでのところ限定的で、従来のSERPと比較して広告数が少なく、Googleがまだ商業モデルを模索していることを示唆している。
- Googleは、SGEの展開において、現行バージョンを全面的に導入するのではなく、実験データに基づいて改善を行いながら、より段階的かつ漸進的なアプローチを取ると予想される。
- SEO担当者にとって、Googleがより直接的な回答を提供するようになるにつれて、独自のウェブページを持つに値するコンテンツを作成するためのハードルは上がり続け、単純なQ&Aコンテンツでは成功が難しくなるだろう。
- ローカルパック、商品フィードなど、Googleエコシステムの他の要素は、SGEが進化する可能性があっても、今後も存続し、SEO担当者にとって重要なままであると考えられる。
パブリッシャーにとってのSGEと検索の未来
次もSGE関連のセッションです。スピーカーはKapwom Dingis氏です。
- SGEは、AIを活用して、様々な情報源を要約することで、明確な答えがない複雑な質問に対して概念的な答えを生成するものである。
- SGEは、ユーザーのクエリが検索結果に直接回答されるため、ウェブサイトへのクリックトラフィックを30~70%も大幅に減少させると予想されている。このため、検索トラフィックに大きく依存しているウェブサイトの所有者にとっては、トラフィック源の多様化が不可欠となる。
- SGEの主な課題として、有料コンテンツへの対応、SGEの機能の不安定さや変化の激しさ、知識ベースの限定性、ウェブサイトのパフォーマンス追跡データの不足などが挙げられる。
- パブリッシャーは、既存の情報を単に書き換えるだけでなく、ユニークで専門性の高いコンテンツを作成することで、SGEの結果に掲載される可能性を高める必要がある。
- SGEの結果における視認性を向上させるためには、強力なブランド評判を築き、ウェブサイトのセキュリティと信頼性を確保し、魅力的なタイトルとビジュアルを使用し、サイトの構造を最適化することが有効である。
- SGEは未だ急速に進化しており、最終的な形は不確実であるため、SGEのアップデートやトレンドを注意深く監視することが重要である。
- 高品質でユーザーにとって役立つコンテンツを作成するという従来のSEOのベストプラクティスは、SGEに合わせて調整する必要はあるものの、SGEにとっても依然として有効である。
Google検索の戦略:AIとマーケットの現実のバランスをとる
SGEがテーマのセッションをもう1つ紹介します。スピーカーはMarcus Tober氏です。
- 広告収入の潜在的な損失やステークホルダーからの収益成長の要求をGoogleは懸念し、SGEを現行のままではリリースしないだろう。
- Googleは、収益化を促進するために、ダイレクトチェックアウトボタンや人気商品の視認性を高めるなど、eコマース機能の強化に注力する可能性が高い。
- 質の高い関連性の高いコンテンツ、バックリンク、網羅的なトピックカバー、ウェブサイトのパフォーマンス、強力なユーザーシグナルといった従来のランキング要因は、AIコンテンツ生成の台頭があっても重要であり続けるだろう。
- AI生成コンテンツだけでは不十分であり、特に健康や金融などの分野では、人間の専門知識と品質管理が上位にランクされるウェブサイトの重要な差別化要因となるだろう。
- AIは検索とコンテンツ作成に大きな影響を与えるが、近い将来、Googleのウェブ検索における優位性を脅かすような競合が出現するとは思えない。
- ユーザーによるAI技術の段階的な導入と、Googleが検索結果の品質を維持する必要性から、検索における一夜にしての劇的な変化は起こりそうにない。
- 純粋なAI主導の検索結果は、ハルシネーションや信頼性の欠如などの問題に直面する可能性があるため、人間の専門知識とAIの支援を組み合わせたハイブリッドなアプローチが、今後の最適な方法となるかもしれない。
競合の激しい分野で勝つための根拠に基づくSEO戦略
Tom Mansell氏は、感覚ではなくデータに基づくSEOの重要性をテーマにプレゼンしました。
- SEO戦略は、あいまいな指針を超えて進化し、実験、テスト、AI分析による大規模なデータに基づいたものになる必要がある。
- 時系列モデリング、予測、およびさまざまな戦術の相対的な影響を理解することにより、オーガニック検索からの増分収益機会を計算する。
- 実績のあるSEO戦術のレポジトリを構築し、因果リフト調査やA/Bテストなどのテストアンドラーンフレームワークを使用して、それらの真の増分効果を測定する。
- SEO戦略におけるさまざまなコンポーネント(技術、コンテンツなど)の加重影響を評価し、ギャップを特定して取り組みの優先順位付けを行う。
- 自動クロール、コンテンツ/作成者の機械学習分析、およびデータ集約を使用して、パフォーマンスドライバーに関する客観的な洞察を大規模に得る。
- あいまいな推奨ではなく、予測される増分収益の観点からSEOの価値提案を伝える。
- 継続的にSEO戦略を最適化するために、絶え間ない実験、測定、および反復のアジャイルプロセスを採用する。
- あいまいな「ケースバイケース」という回答をする文化を排除し、よりデータ駆動型の客観的なSEOプラクティスに移行する。
ブログコンテンツを活用したSEO戦略で企業収益を倍増する方法
Abbie Dando氏は、利益を上げるためのブログ運営の秘訣を共有しました。
- ブログコンテンツを作成する際は、闇雲にコンテンツを書くのではなく、ターゲットキーワードと行動喚起を重視するSEOの考え方を持つ。
- オーディエンスの購買プロセスを理解し、認知、検討、決定の各段階で彼らを引き付けるコンテンツを作成する。
- コンテンツのアイデアを検証し、キーワードを購買プロセスのさまざまな段階に分類するために、キーワード調査を行う。
- 内部リンクと強力なCTAを使用して、読者を購買プロセスに導くコンテンツファネルを作成する。
- たとえ月に1つの高品質なブログ記事であっても、長期的なコンテンツ計画を立てることを心がける。
- ターゲットキーワードで既にランクインしているものを調査し、それに応じてコンテンツをモデル化する(単語数、画像、動画、FAQなど)。
- ガイド、FAQ、箇条書きリスト、ドロップダウンセクションなどのコンテンツフォーマットを混在させ、読者を圧倒しないようにする。
- セッション数、ページビュー数、コンバージョン数、リード数、収益などのパフォーマンス指標を測定し、コンテンツを継続的に改善および最適化する。
- 常に新しいページを作成するのではなく、既存の高パフォーマンスコンテンツを更新および改善する。
- 最大の効果を得るために、最も多くのトラフィック、リード、収益をもたらしているキーワードとトピックを優先的にターゲットにする。
検索エンジン(と人間)が本当に理解できるコンテンツの書き方
Dixon Jones氏のセッションのテーマはコピーライティングです。
- 人々は、奇妙で一見非論理的な興味や部族(砂漠にあるサーフショップなど)に惹かれる。コンテンツマーケティングにおいて、これらの「部族」の心理と動機を理解することが重要である。
- 人間の脳は、五感から同じ入力があっても、非常に異なった働きをする。感情、信念、経験が「隠れた層」を形成し、私たちの興味や意思決定を左右する。
- オーディエンスとつながるコンテンツを作成するには、彼らの興味/部族を理解する必要がある。自然言語処理(NLP)ツールを使用して、彼らが既にどのようなトピックやエンティティに関与しているかを調査する。
- オーディエンスが現在関心を持っているトピックに近いものをベースにコンテンツを作成する。コンテンツで概念的な飛躍をさせすぎないようにする。
- NLPツールを使用して、ニッチ市場で成功している既存のコンテンツから主要なトピック/エンティティを抽出する。それらのトピックに対応しつつ、独自の視点を追加したコンテンツ計画を作成する。
- AIにライティングを完全に自動化させるのではなく、コンテンツにおいて本物の人間の声と視点を維持する。ターゲットオーディエンスを知り、彼らに向けて具体的に書く。
- コンテンツの計画とライティングのプロセスはAIに支援させるが、公開する前にAIの出力を徹底的に確認/編集する。
本当に重要な指標だけを考える – ローカルSEOで気をつけるべきポイント
スピーカーのClaire Carlile氏はローカルSEOのプロフェッショナルです。
- ローカルSEOはランキングだけではない。ランキングは重要だが、それが直接ビジネスの収益につながるとは限らない。ローカルSEOでは、電話やウェブサイトへの訪問、来店など、実際のビジネスへの影響を示す指標に焦点を当てるべき。
- 指標はオーディエンスに合わせて調整する。関係者によって関心は異なる。クライアントは主に収益とリードに関心があるが、社内のマーケティングチームはどの機能がコンバージョンを促進しているかを知りたい場合がある。それぞれのオーディエンスの具体的な関心事に合わせてレポートを調整する。
- GoogleアナリティクスとSearch Console以外にも目を向ける。これらのツールは価値があるが、ローカルSEOのパフォーマンスの全体像を把握するには不十分。Googleビジネスプロフィールのパフォーマンスデータ、コールトラッキングデータ、UTMタグを活用して、Googleビジネスプロフィールが収益にどのように貢献しているかを深く理解する。
- ビジネスにとって重要なものを測定する。電話や経路案内、予約、来店など、ビジネスの目標に直接影響を与える指標に焦点を当てる。UTMタグを使用して、Googleビジネスプロフィール内のさまざまなリンクや機能の効果を追跡する。
- レビューを分析して洞察を得る。レビューは顧客の感情に関する貴重なフィードバックを提供し、改善すべき領域を特定するために活用できる。ツールを使ってレビューデータを分析し、顧客体験をより深く理解する。
- Googleビジネスプロフィールのメッセージを追跡する。Googleビジネスプロフィールのメッセージ機能を使用している場合は、リードに転換するメッセージの割合を追跡する。メッセージングのメリットとリソースの費用対効果を比較検討する。
- 単一の指標に固執しない。指標は変化したり消失したりする可能性があるため、柔軟に対応し、ビジネス目標に最も関連性の高い指標に焦点を当てることが重要だ。GA4やGoogleビジネスプロフィールAPIのアップデートに注目し、新しい指標や洞察を得るようにする。
- さまざまなツールとリソースを活用する。GA4、Googleサーチコンソールなどのツールを活用してデータを収集・分析する。無料のコースやリソースを活用して、ローカルSEOとGA4の理解を深める。
YouTubeのためのSEO:あなたのブランドチャンネルの成長と拡大
Llorente Pérezs氏のセッションテーマは、YouTube SEOです。
- YouTubeのSEOは、SEOとソーシャルメディアマーケティングの組み合わせである。つまり、動画を検索エンジンとソーシャルメディアプラットフォームの両方に最適化する必要がある。
- おすすめ動画は、検索結果よりも強力だ。動画を最適化する際は、視聴者におすすめ動画として表示されるように注力する必要がある。これは、視聴者の興味に関連する高品質なコンテンツを作成することで実現できる。
- YouTubeでのランキングは、Googleでのランキングとは異なる。YouTubeでは、Google検索結果、YouTube検索結果、おすすめ動画セクションなど、さまざまな場所に動画がランクインする可能性がある。
- 動画のランク付けは一度きりだ。YouTubeのアルゴリズムは、動画公開後24時間以内に動画をプロモーションするかどうかを決定する。最初の24時間で動画のパフォーマンスが良くないと、上位にランクインする可能性は低くなる。
- 登録者数は以前ほど重要ではない。YouTubeのアルゴリズムは、登録者数よりも興味・関心に重点を置くように変更された。つまり、チャンネル登録者数が多くなくても、チャンネルを成長させることができる。
- 動画を作成する前にリサーチを行う。キーワード調査は、YouTubeのSEO対策に不可欠だ。上位にランクインする動画を作成するには、人々が何を検索しているのかを事前に把握する必要がある。
- クリック率を上げるために動画を最適化する。クリック率は、YouTubeで最も重要なランキング要因の一つだ。クリック率は、目を引くサムネイルやタイトルを作成することで向上させることができる。
- 最初の24時間で動画を宣伝する。最初の24時間は、動画の成功にとって非常に重要だ。最初の24時間で動画をできる限り宣伝し、上位にランクインする可能性を高める。
- 動画投稿スケジュールの一貫性を保つ。一貫性は、YouTubeのSEO対策において重要だ。視聴者の関心を維持し、YouTubeにあなたが真剣なコンテンツクリエイターであることを示すために、定期的に動画を公開する必要がある。
- 長いコンテンツの方がYouTubeでは効果的だ。YouTubeのアルゴリズムは、長い動画を優遇する傾向にある。だからといって、やたらと長い動画を作るべきではないが、価値あるコンテンツがある場合は、長い動画にすることを恐れないことだ。
- モバイルファーストで考える。ほとんどの人は、スマートフォンでYouTube動画を視聴する。小さな画面でも見やすいように、クリアなフォントとグラフィックを使用して、モバイル視聴に最適化された動画を作成すること。
TikTok SEO:検索を制してバズる
Carlos Estevez氏は、SEOの知見を利用したTikTokマーケティングのコツを共有しました。
- TikTokは単なるソーシャルメディアではなく、検索エンジンであり、Eコマースプラットフォームでもある。
- TikTokのプロフィールの裏には、実際にコンテンツに積極的に関わっている人々がいる。
- TikTokのアルゴリズムは、ユーザーにとって関連性があり興味深いコンテンツを優先する。
- 外部リンクを使用することで、TikTokからWebサイトへのトラフィックを誘導できる。
- TikTok SEOは、動画に関連性の高いキーワードを使用し、コンテンツを最適化し、外部リンクを取得することによって行える。
- データと分析を追跡し、TikTok SEOの取り組みの成功を測定することが重要である。
- TikTokはオーガニックトラフィックを獲得するための強力なプラットフォームであり、企業は見逃すべきではない。
- TikTokでは、ブランドのメンションを追跡したり、競合他社のコンテンツを分析したりするためのツールが利用できる。
- TikTokで成功する鍵は、ユーザーの共感を呼ぶ魅力的なコンテンツを作成し、SEO戦略を用いてより多くの人々にコンテンツを見てもらうことにある。
セッションレポートは以上です。
最後は、brightonSEO名物のアイスクリームで締めます。