ミエルカTOP ミエルカジャーナル 生成AI プロンプトエンジニアリングより『辞書登録』を先にすべき理由
生成AI

プロンプトエンジニアリングより『辞書登録』を先にすべき理由

公開日:2025.01.23

「生成AIでコンテンツマーケティングを効率化したい」と考えているアナタ、そのためには「プロンプトエンジニアリングが鍵だ」と思っていませんか? それは間違いではないですが、複雑なプロンプトを駆使するよりも、よく使う指示をあらかじめ辞書登録しておく方が、じつは効率的だったりします。
 たとえば、「箇条書きにして」「要約して」「例を挙げて」といった基本的な指示を登録しておくだけで、AIとのやり取りがグッとスムーズになります。本記事では、プロンプトに頼りすぎない新しい生成AI活用の考え方と、辞書登録を最大限に活用する方法を解説します。

※ChatGPTのDALL·E3 で生成

なぜ「プロンプト」より「辞書登録」が重要なのか 

 プロンプトは、生成AIに対して与える指示や入力文のことで、プロンプトエンジニアリングとは、生成AIに対して最適な指示(プロンプト)を設計し、目的に合った出力を効率的に得る技術や工夫のことです。
プロンプト自体は大事ですが、プロンプト入力を効率化する工夫も同じくらい重要です。よく使うプロンプトは辞書登録する、ショートカットやツールを活用して瞬時に呼び出すといった工夫をすれば、毎回イチから考えたり入力したりする手間が省けます。

1.生成AIの進化で、複雑なプロンプトは不要になりつつある
 生成AIは、以前は具体的で細かい指示を与えなければ、期待通りの結果が得られないことが一般的でした。しかし、文脈理解能力の向上に伴い、現在は曖昧な指示や短いプロンプトでも、高い精度で適切な応答を返してくれるようになっています。
たとえば、「この文章を要約して」というシンプルな指示でも、AIは適切な長さ、文脈に即した内容、目的に応じた調整を自動的に行ってくれます。複雑な条件を含むプロンプトを一から考えるよりも、よく使う基本的な指示を辞書登録しておき、状況に応じて選ぶ方が手っ取り早いです。

2.よく使う指示はパターン化している
 大半の方は、特定の指示を何度も繰り返し使っているのではないでしょうか。

「要約して」

「例を挙げて」

「もっと具体的にして」

「中学生でもわかるように説明して」

などの指示を辞書登録しておけば、タイピングの手間が省けます。ちなみに筆者は、プロンプト以外では、氏名、メールアドレス、電話番号、住所、屋号、社名、各種挨拶、業界用語(SEOやコンテンツマーケティング業務に頻出する単語やフレーズ)、各種URL、SNSリンク、HTMLタグ…を辞書登録しています。
ディスクリプション、オウンドメディア、Google Search Console、コアアルゴリズムアップデートとか、わざわざ手入力するなんて時間の無駄ですからね。

3.継続的な利用を前提にした効率性がある
プロンプトエンジニアリングと辞書登録を比較すると、その持続性と効率性に明確な違いがあります。

  • プロンプトエンジニアリング
    ・特定の場面では役立つが、一度きりの応用が多く、状況ごとに異なるプロンプトを考える必要がある。
  • 辞書登録
    ・定型的な指示を蓄積しておけるため、毎回新しい指示を考える必要がなく、作業がルーチン化しやすい。

「箇条書きにして」や「対象者に合わせて説明して」という指示は、汎用性が高く、辞書登録する価値があります。

ただし、(構成案を作るとき等の)細かな条件設定が必要なシーンでは、一言だと伝えにくいので、長文の指示と#の条件分岐を組み合わせたプロンプトを使うことはあります。そういったプロンプトは辞書登録ではなく、他のツールと組み合わせています。(後述します)

辞書登録しておくべきオススメ指示例

以下、筆者がよく使う指示文を挙げてみます。

■基本操作・フォーマット系
リストアップして
箇条書きにして
表を作って
フローチャートにして
図解して
整理して
構成を考えて
短くして

■情報収集・分析系
~について教えて
比較して
必要な情報を検索して
メリットとデメリットを挙げて
問題点を明らかにして
リスクを評価して
選択肢を列挙して
優先順位をつけて
解決策を提案して

■内容調整・改善系
要約して
詳しく説明して
分かりやすくして
簡単にして
もっと具体的にして
1パラグラフにして
意味を変えずに具体を盛り込んで文章を調整して
曖昧な箇所を明確にして
情報を最新に更新して
日本語にして
英訳して

■トーン・スタイル調整系
~風に言い換えて
読者の感情を意識して書いて
カジュアルなトーンで書いて
フォーマルに書いて
専門用語を使わずに説明して
ペルソナに合わせて書いて
高校生向けに簡単に説明して

■具体例・応用系
例を挙げて
ステップを示して
具体的なアクションプランを示して
背景情報を追加して
最新のトレンドを考慮して

■検証・チェック系
文法を確認して
正しいか確認して
情報が偏っていないか確認して
もっと説得力を持たせて
曖昧な箇所を明確にして

■創造的作業サポート系
タイトルを考えて
質問を作って
キーとなるメッセージを引き出して
見出しを考えて
序論と結論を書いて
他の案を出して

辞書登録の方法ですが、筆者は「先頭のひらがな1文字だけを使う」というシンプルなルールを採用しています。この方法なら、一度覚えてしまえば非常に直感的で使いやすく、入力も最小限で済みます。

「り」→「リストアップして」

「か」→「箇条書きにして」

「よ」→「要約して」

「く」→「詳しく説明して」

「わ」→「分かりやすくして」

知っていると差がつく「ちょい足し英語プロンプト」

 生成AIに指示を出すと、「素晴らしいアイデアです。それでは~~についてお答えします」とか「いただいた情報をもとに以下に説明します」といった前置きを入れてくることがあります。あれってイライラしませんか?(筆者はします)
 おすすめなのが、指示の最後に「no talk」と付け加える方法です。「no talk」=「喋るな(御託はいいからさっさと答えよ)」という意味で、たとえば、「リストアップして」ではなく「リストアップして no talk」とするだけで、余計な前置きなしに、いきなり回答を開始します。

例:
「リストアップして」
 → 回答前に「わかりました、以下にリストアップしますね」という前置きが入る。
「リストアップして no talk」
 → 前置きなしで、いきなり回答が始まる。

“Just the answer” (答えだけ)
“Start directly” (即始めよ)
“No preamble” (前置きは不要)
と言い換えてもOKです。
※日本語指示の後に、一行加えるだけです。

さらに、こんな指示も地味に便利です。
・”Do not elaborate” 詳細な説明を避け、シンプルに答えさせたいとき
・”Skip examples” あえて例を挙げないでほしいとき
・”Only facts” 主観や推測を避け、事実だけ知りたいとき

辞書登録を最大限活用するためのコツ

 ひとつ注意点がありまして、あまりに膨大な量を登録すると「ひとつのひらがなに複数の指示を割り当てて」しまい、破綻します。辞書登録だけに頼るのではなく、他のツールと併用する方法を取り入れるのがおすすめです。

1.メモアプリを活用する
 Google Keep、Notion、Evernoteなどのメモアプリに、よく使う指示をまとめて保存しておき、必要なときにコピー&ペーストする方法です。この方法なら、指示を整理しながら管理できます。

2.クリップボード管理ツールを使う
 よく使う指示をクリップボードに保存し、必要なときに呼び出せるツールも便利です。

■ Clipy(Mac専用)
直感的な操作でクリップボードの履歴を管理するツール。ショートカットキーで簡単に操作して、すばやく指示を呼び出せます。

Clibor (Windows向け)
最大10,000件までの履歴を保存できる拡張ソフトで、頻出する指示や定型文を効率的に管理できます。ショートカットキーで登録内容をすぐに呼び出せるため、スピーディーな作業が可能です。

WindowsやMacには、クリップボードの履歴を管理できる拡張ツールが多数存在します。自分の作業スタイルに合ったツールを探してみましょう。

…と、紹介しておいてナンですが、筆者はもっぱらWindowsのデフォルト機能の「Winキー + V」を愛用しています。過去のクリップボード履歴を遡ることができる機能で、ソフトのインストールは不要です。
まずは「Winキー + V」を試し、それでは不便だと感じたら、上記ツールと辞書登録を併用してみてください。

本記事の著者
中山 順司
中山 順司
コンテンツクリエイター
この著者の記事をもっとみるarrow-right

関連記事