【IDOM様事例】半年で流入を32%改善。Web未経験の担当者が、クルマ買取販売「ガリバー」のコンテンツ施策を立て直すまで
更新日:2023.2.13 公開日:2017.05.30「中古車買取実績14年連続No.1(※)」と、中古車市場で圧倒的な実績を持つ「Gulliver(以下、ガリバー)」。しかしその「車の買取り」に関するコンテンツ戦略は、2015年末から苦境に立たされていました。
Googleのアルゴリズム変更により、売り上げに直結するいくつものキーワードで検索順位が急落していたのです。SEO会社に任せてディレクションに徹するか、それともアプリ戦略にシフトするのか…。 さまざまな選択肢の中で、ガリバーを運営するIDOMが選んだのは「ユーザーニーズに応えたコンテンツを、社内で地道に作る」という“直球勝負”の道でした。アサインされたのは三井紀子さん。彼女はWeb未経験だったにもかかわらず、たった半年で流入数を対前年比32%回復させることに成功しました。 その道のりを、「コンテンツ制作の指導者」として伴走してきた白砂ゆき子、岡村眞友子(Faber Company)とともに振り返ります。
※2001年~2014年主要買取専門店7社における中古車買取台数(株式会社矢野経済研究所調べ/2015年5月現在)
検索結果が急落。 2015年末から始まった混乱
白砂ゆき子氏(以下白砂) 「ガリバー」のコンテンツマーケティングのテコ入れは、いつごろ、どんなきっかけで始まったのですか?
三井紀子氏(以下三井) 2015年時点で、ガリバーのサイト全体で約1000のコンテンツが投入されていました。12月頃にその検索順位が乱高下して、社内がざわついたんです。それでも繁忙期にあたる翌年1~3月はまだ現状維持できていたのですが、5月、「車の買取り」に関するキーワード群が軒並み検索7位や8位に下がってしまいました。「え!? 今日の数字、間違ってない?」というほど急でした。 原因はGoogleのアルゴリズム変更。コンテンツ品質がより厳しく評価されるようになり、対策で出遅れていた当社のサイトは、その影響をもろに受けてしまったのです。
白砂 Googleはユーザーにとって質の良い情報が多く含まれ、読んで役に立つコンテンツほど高く評価します。 逆に情報が薄いコンテンツは評価しません。その頃、IDOM様からご相談いただいて調べたら、全体的にユーザーに熟読されているコンテンツが少なかったのを覚えています。
三井 そうなんです。直帰率や滞在時間を見ると、そもそもあまり読まれていなかった。車の買取り事業自体は、2014年から2015年を比較すると1.2倍ほど利益が上がっていました。ビジネス的に調子が良かった時だけに、この順位下落事件は大打撃でした。
白砂 何がGoogleの評価を下げたのでしょう?
三井 今思えば、カスタマージャーニーの最後の部分、「コンバージョン」だけに力を入れ過ぎていたんですね。白砂さんにも、最初に「ユーザーに向き合っていない」とご指摘いただきました。 当社は「全国のあらゆる街に店舗がある」というビジネスモデルに強みがあります。「ガリバーは車を高く買取ります」というメッセージも、CMの影響もあって広く認知されていました。2015年前半まで作っていたのは、このメッセージをキャッチーに、面白く伝えるコンテンツばかり。 ユーザーが流入するとすぐに「車売りませんか?」「ガリバーなら高く買取りますよ」と査定申込み(コンバージョン)に誘導する、ランティングページのようなコンテンツを大量に投入してきたのです。でも一括査定サイトなども増え、ユーザーの検索行動が変わる中で、皆さんの目が肥えてきます。事前の情報収集もしっかりされる。当社はこの「情報収集段階のニーズに答えるコンテンツ」が手薄でした。
白砂 サイト構造から精査してみたら、内容が似通ったコンテンツも多かったですよね。
三井 そうでしたね。投入済みの1000本のうち「車の買取り」に関するコンテンツは約600本ありました。似たようなページを統合して、ちゃんとユーザーの検索意図に応えた内容に絞っていったら、約50本まで減ることがわかったんです。
白砂 文章とか内容はすごく面白かったんですよ。ただ、ユーザーの検索意図に答えられていないコンテンツが結構あって。まずはそこを整理し直しましょうと、提案しました。
外注に出すこともできた。でも「自社でコンテンツを作る」ことにこだわった
白砂 そもそも、なぜコンテンツの「制作」でなく「指導」をFaber Companyに依頼したのでしょう?
三井 順位下落問題に直面した時、当社ではたくさんのSEO関連ツールを比較しました。当然ながら、専門のSEO会社にコンテンツ制作を任せてしまって、社内でディレクションだけする手もありました。また、時代の流れもあってソーシャルやアプリ戦略へのシフトを勧める提案も受けていました。 でも当社は、あくまで「自社でのコンテンツ制作」にこだわったんです。「大変かもしれないけど、地道に学んで、質の高いコンテンツの作り方を自分たちにインストールしよう。スキルを身につけて社内に横展開できる環境を作らなければ、成果を上げ続けることはできないから」と。 その方針に対して、一番納得のいく提案というか、「これなら自分たちにもできる」という自信をくれたのが「MIERUCA(ミエルカ)」を開発しているFaber Companyでした。ミエルカはコンテンツマーケティングツールとして評判が高かったですし、役員には「海外SEO情報ブログ」の鈴木謙一さんや、著名なWebアナリストの小川卓さんがいるという信頼性もありました。でも最終的な決め手は、白砂さんにお会いして、経験に裏打ちされた細やかなご指導がいただける部分に軍配が上ったこと。「製品以上に、人で選んだ」と、導入を決めた担当者は言っていました。
白砂 ありがとうございます。ツールは使いこなせて初めて意味がありますから、お客様がインハウスでしっかり自走できるように、サポートは惜しみません。でも三井さんはコンテンツチームの担当になられた時、きっと焦りましたよね。当時SEOもWebもご経験がないと伺ったので…。
三井 そうなんです。 本当にゼロからだったんですよね。すごく覚えているのが、導入してすぐに参加したミエルカのセミナーです。他社ユーザーさんがミエルカを実務でどう使っているのか解説してくださったのですが、もう何を話しているのかさっぱりわからなくて…。「どうしよう、この登壇者に『教えてください』って言いに行こうかな」と思ったぐらい、知識がなかったのです。 白砂さんや岡村さんに教わり始めても、やっぱり1回や2回じゃ覚えられない。「これで合ってるのかな」「作り上げたコンテンツが本当に効くかな」と不安で、常にお2人に相談しながら進めていました。
白砂 なぜ未経験の三井さんがアサインされたのでしょう。
三井 上司からは、「向いているから」の一言でした(笑)。
白砂 私、わかるような気がします。コンテンツマーケティングって、数字の分析力より、ユーザーの気持ちでモノを見る「なり切り力」とか「察し力」が必要なんです。 三井さんは、この資質がずば抜けていらっしゃいますよね。細部にまで心を配らなければいけないマーケティング手法なので、相手のことをどこまで想えるか、おもてなしに似た感覚に優れた人が向いているんですよ。
三井 自分では全然そんな力があると思わなかったです。でも、コンテンツ制作を始めて、どんどん楽しくなって。達成しなければいけない数字のプレッシャーより、「面白い」のほうが強くなっていきました。
プロジェクト名は“ブートキャンプ”。「隊長」と「先生」に鍛えられる日々
白砂 コンテンツ制作のレクチャーは、具体的にどのように受けていましたか?
三井 まず、進捗管理ツールのプロジェクト名を「ブートキャンプ」に設定しました。白砂さんを「隊長」、岡村さんを「先生」と呼んで(笑)。何か相談事があると「隊長、おつかれさまです!」「先生、ここちょっと教えてください」とチャットで送っていました。
流れとしては、まず私が構成案を作ってみて、お2人に見てもらうところからスタートします。最初はミエルカで検索ボリュームが多いサジェストキーワードを見つけると、「これで流入が増えるかも!」とちょっと興奮してしまって、他のキーワードが目に入りませんでした。すると岡村先生から、「意図がバラバラのキーワードやテーマを無理に詰め込んでも、ユーザーの知りたい内容にはなりません。それよりミエルカの『重要テーマ・トピック抽出機能』で出た、この内容のほうがユーザーの知りたい答えに近いのでは?」と、冷静に戻していただいて。「なるほど。確かに」と、構成案を直して…。最後に白砂隊長チェックで「これで書き始めて大丈夫です」とOKが出るまで、何度も何度も添削していただきましたね。
岡村眞友子氏(以下岡村) ミエルカはヒントを提案するツールですが、最終的に人間が判断します。ユーザーの想いにどこまで寄り添えるかが、判断の軸です。慣れるまでは「サジェストキーワードから何を読み取るか」「テーマ・トピックを掘り下げて分析するには、ミエルカのどこをどう見るのか」って難しいんですよね。
三井 そうなんです。イメージするのと、実際やってみるとでは大違いで。最初の3カ月間は、定例ミーティングのたびに 「次までにミエルカのこの機能で、ここを分析してきてくださいね」と“宿題”をもらって、みっちり鍛えていただきました。
ユーザーの疑問にはっきり答えてから詳細説明を
白砂 どのようなコンテンツを投入していますか?
三井 白砂さんと岡村さんのご指導で、これまで取れていなかったキーワードで検索10位以内に上がった例が増えています。その一つが、お得な車の買い替え時期を教えるこちらのコンテンツです。当初はターゲットキーワードで20位近かったのに、2カ月で5位まで上がってきました(2017年3月現在)。
白砂 見出しや構成をかなり変えましたよね。もともと、「狙い目は決算、特に納車日は注意…」といった具体的ではない文章でした。これを岡村が「ユーザーの検索意図を見ると、とにかく『いつ乗り換えるべきか』を知りたがっているので、先に結論を述べてから、理由を書きましょう」と指摘して、第1セクションのh2見出しを「乗り換え検討のサイクルは、3年/5年/7年」と提案したのです。
岡村 ミエルカでサジェストキーワードを分析すると、「何年」「いつ」「タイミング」「税金 3月」「平均」といったワードが出てくるので、自分がユーザーなら、まずはっきり「時期」を言ってほしいなと。調べたところ、車の価値がガクッと下がるタイミングがあると分かったので、テーマに「リセールバリュー(再販価格)」の変動についても追加するよう提案しました。
シンプルで短いタイトルのほうがいい理由
三井 大きな学びの一つには、「ユーザーに端的に伝えるために、タイトルを短くする」というポイントもありました。タイトルを工夫すると、成果が全然違うんです。
白砂 タイトルには「驚きの」とか、「簡単これだけ!」とか入れようとしがちです。でも不思議なことに調べてみると、シンプルで短く、色気がないタイトルのほうがCTRは高いんですよね。当社の別プロジェクトを見ても、同じ傾向です。
三井 最初はターゲットキーワードで検索24位だったこのコンテンツも、お2人の指導で一度構成を見直した後、「クルマ買い替えの手続きと流れ」というシンプルなタイトルに変更したら、1位にポンと上がりました(2017年3月現在)。
岡村 飾り言葉より、知りたいことがパッと目に入るほうが、ユーザーにとってわかりやすいということですよね。
三井 もう一つ、「迷ったときは必ずSERPs(検索結果画面)を見る」という教えも、自分の中で軸になっています。コンテンツって1~2カ月しないと成果が表われないので、コンバージョン部隊からはいつも「三井さん、流入が全然増えてないんだけど」「順位、何位から動いてない。これ、いつ上がるの?」と急かされるわけです。そうすると「流入の多いキーワードを追加すれば…」と気持ちがブレることがありました。 でもそこで脳裏によぎるのが白砂隊長の教えです(笑)。「SERPsを見て、ユーザーの気持ちになり切って、『この言葉で検索した人には、本当にこの答えで合っているのか』を突き詰めてから、コンテンツに取り組む」。この姿勢を、何度も粘り強く刷り込んでいただいたので、ブレずに済みました。
直帰率10ポイント減、滞在時間3割増し以上。「読まれるコンテンツ」に
白砂 全体的な数字の動きはいかがですか?
三井 施策開始後半年で、直帰率は全体平均で10ポイント減、滞在時間は3割増し以上になりました。「じっくり読まれるコンテンツ」が大幅に増えた証拠です。キーワードの検索順位をスコア化した「ファインダビリティスコア」も、ご覧のように上がっています。
白砂 コンテンツ以外で役立ったアドバイスはありますか?
三井 白砂さんにシステム改修を提案されたことです。「ユーザーが知りたい答えを基幹システムからデータとして取り出し、コンテンツの一部として表示する」という提案でした。社内的に、これまで「やらなくては」と思いつつ、踏み込めないでいた領域でした。 でも白砂さんの「検索意図から発想して、これは必ず入れたほうがいい情報です。現在のサイトコンテンツは、ユーザーの気持ちと違います」という力強い言葉に背中を押されて、システム実装を決めました。「ここまで徹底してユーザーに寄り添うのが、コンテンツマーケティングなんだな」と、あらためて実感しました。
白砂検索意図を読み解くと、コンバージョンの一歩手前で「この情報が知りたいのに…」ともどかしく思っているユーザーの気持ちがわかることがあります。これを解消するには、文章や写真でなく、時にはシステムで答えることが必要なケースもあるんですよね。
三井 これは本当にやってよかったなと。施策から半年で、ビッグワードからの流入数も、当初の目標に限りなく近づいています。繁忙期の3月には、順位下落事件の時から前年比32%も改善しました。しかもシステム実装後、売り上げもかなり上がったのです。
白砂 それはよかったです!ユーザーのニーズに応えられたという結果ですから、うれしいですね。
コンテンツの手法を全国の店舗へ。未来への展望
白砂 半年後の現在、コンテンツ制作の指導はどのような状況ですか?
三井 今はFaber Companyのセミナーや、ワーク中心でミエルカの操作を教わる「ミエルカ大学」で学んでいます。他社さんの実例からもヒントがもらえますし、復習だけでなく知識のアップデートもできるので、すごくためになります。
岡村 最初の頃は一度の添削の戻しでドカッと量がありました。それがだんだん減ってきて、回数も少なくなり、最近「なんか寂しいな」って思うんです。
三井 あの3カ月みっちり個別指導の期間があったから、自信がついたんですよ。お2人が毎回“宿題”を出して、本当に寄り添って、前に前に進むような設計をちゃんとしてくださったのが大きかったです。
白砂 現在の施策や、将来の目標を教えてください。
三井 今は「非直帰ユーザーのコンバージョン率」に注目しています。実は、新規流入はまだ2015年前半の水準には追い付いていませんが、コンバージョンに至るユーザーの数は、ほぼ変わらずに保てています。ということは、じっくりコンテンツを読んで、ちゃんと有益な情報が得られたユーザーは、戻ってきてくれるのではないか。車を乗り換えるタイミングが来たときに、ガリバーを選んでくれるのでは…と想定しています。
もう一つ、まだ案ですけど、コンテンツ制作のメソッドをほかのチームや全国の店舗にも広められればと思っています。会社全体で、ユーザー視点に立ったコンテンツ作りに取り組めば、地域によって違う車のニーズにもきめ細かくしっかり寄り添えます。白砂さんたちから学んだように、今度は私が「コンテンツ制作はこんなに面白い」「ユーザーの気持ちとつながるのはこれだけの意味がある」と、ちゃんと伝えられたら、みんな楽しんで工夫してくれると思うんですよね。
白砂 すごい施策になりそうですね。私たちも楽しみにしています。
著者PROFILE
ミエルカ研究所は、人工知能と言語処理の力で、「言葉」の持つ可能性を追及、研究していくための研究所です。
SEO&コンテンツマーケティング・オウンドメディア支援ツール「ミエルカ」を提供するFaber Companyが母体となってます。