みなさんは、もし自分の溺愛する娘からある日突然、「キモい」と言われてしまったらどうしますか? ある人は絶望し、ある人は気に入られるために謎のコミュニケーションを無理やり取り、返り討ちにあってさらなる精神的ダメージを受けてしまうのがオチでしょう。 ですが、多感な時期の子どもとうまく関係性を回復できる方法があるとしたら?しかも、それがSEOと密接な関係があるとしたら……? 「娘と父のマジトーク」連載がバズり、2014年に出版した本も大ヒットした「お父さんがキモい理由を説明するね」の著者、中山順司氏は「子どもとの信頼を取り戻すためには、SEOの考え方が重要」だと言います。 一体どういうことなのでしょうか? そこで今回のミエルカブログでは、2019年5月よりファベルカンパニーの仲間としてジョインした「元キモいお父さん」こと中山氏に、同社広報の井田が突撃入社インタビューを行いました。
ある日、娘から自分がキモい理由を理路整然と説明された
井田:インタビューの初っ端から失礼な質問かもしれないのですが、いつ頃から中山さんは娘さんから「キモいお父さん」と疎まれていたんですか?
中山:娘が生まれた2000年から、中学2年生になる2013年頃までですね。愛情が激しすぎて、娘に引かれるという状態がキモいの意味です
井田:赤ん坊時代から嫌われている!?…えーっと、その体験談を著書『お父さんがキモい理由を説明するね』として出そうと思ったのは、どのようなきっかけで?
中山:娘が中学2年だったある日、寿司屋に行ったのですが、彼女からいかに僕がキモい言動をおこなっているのかを理路整然と説明されたんです。
僕がそのことに衝撃を受けてインターネット上で記事化したら、めちゃくちゃバズったんですね。(編集部注:「お父さんがキモい理由を説明するね」連載)
Twitter、Facebook、2ちゃんねるやガールズちゃんねるなどの掲示板で「こいつマジキモいわ」と万単位で拡散されて、それがきっかけで出版社の方から「本を出しませんか?」というオファーをいただいたという流れです。
井田:それで「キモいお父さん?」が有名になったわけですね。当時はどんな気持ちでしたか?
中山:悲しいけど、ウェブ上の面は取ったぞ、みたいな気持ちでした(笑)。
面白いコンテンツを作ることが天職。SEOでも勝ちたい
井田:そんな中山さんが、ファベルカンパニーに入ろうと思われたのは何故でしょうか?
中山:元々前職でミエルカを使っていて、中の人とも3年くらいの付き合いがあったことがひとつ。
あとは面白いコンテンツを作るということが僕にとっての天職だなと思っていて、SEOでも勝ちたいし、人の心に刺さるエモい記事も作れるような人になりたいと思ったのがもうひとつの動機ですね。
それをもっと突き詰めていける環境ってどこだろうとなったときに、ファベルって唯一無二の場所だなと、社員の方々と会話を重ねるごとに思いが強くなって決めました。
子どもとの距離感は付かず離れずがキモ
井田:中山さんがどれくらいキモいお父さんだったのか、というのを改めて聞きたいんですが、娘さんからどんな風に嫌われていたんですか?
中山:よくある思春期の女の子の、”父親ウザいあるある”を思い浮かべてください。例えばベタベタ触ったり、「~たん」とか「~りん」とあだ名で呼んでみたり。
当時、ゆうこりんが流行っていた時期だったので、娘は「あやか」という名前なんですが、「あやこりん」とか、そういうちょっと茶化すような感じで呼ぶのも嫌がりましたね。外で絶対やめて!みたいな。
井田:私もかつて女の子だったので、その嫌さ加減はだいぶ分かりますけども……。
中山:女性だったらみんな一度は通った道ですよね。普通に接していてもそういうことは起こるのがノーマルなんですが、僕は娘への愛が過剰だったので、それ以上踏み込んじゃったところがあって。
井田:踏み込んではいけない領域……?(ゴクリ)
中山:娘が中2になるまで、私-娘-妻という川の字フォーメーションで寝ていたんですが、寝ている娘のほっぺた、おでこにチューをしたりとか、じーっと至近距離で見つめたりとか。あとは可愛いさあまって背中をさすったり、抱きよせたり。でも娘は実は起きてて、寝たふりをして我慢していたというのを後になってから告白してくれました。
中2のタイミングでさすがにもう嫌だと言って、自分の部屋を持ってからは1人で寝てますけど。
井田:うわあ……お父さんの立場から見るとかわいそうだけど、娘の立場から見るとそのキモさが超分かるというところが痛し痒しなところです。そこからどうやって関係性を回復させていったんですか?
中山:娘とのコミュニケーションを通して、父親というものは食い気味にいってはいけないんだな、ということが分かりました。子どもに構ってほしいからちょっとおどけてみたり、つまらないダジャレを言ってみたり、父親って「見て見て!」って一方的にアピールしがちじゃないですか。でも、あれは逆効果でしか無かったなと。
井田:たしかに一方的にやられたら、ちょっとウザいかもしれない(笑)
中山:わざとオナラしてみたり、ちょっと特徴的なクシャミをするとか、要するに子どもの気を引きたいんですね。
僕としては、(父さん、面白いだろ~ユーモアあるだろ~)とアピールしているつもりなんですが、娘からしたら「つまんねー」でしかないわけで。やればやるほど心が離れていきました。
今はそれを反省していて、むしろちょっと距離を空ける感じというか、付かず離れずくらいの距離感が大切だと感じています。
距離感を間違えると…
こうなる。
あと、父親がやってしまいがちなNG行為が「相手に合わせようとし過ぎる(おもねる)」でして、「今こういうグループが流行ってるよね」ってすり寄るのもダメです。「お前、なんも知らねーだろ」と一発で見破られます。
「父親はもっとドンと構えていて欲しかった」「ヘラヘラしているのは父としてみっともない」と後日娘に言われてショックでしたね…。
井田:困った時に手助けしてくれるとか、相談ごとには誠実に対応するとかがちょうどいいバランスで、基本的に自分からアプローチするのは悪手なんですね。
中山:そうです。相手が来てから反応する、というのが良い関係性を作る上では大切だと思います。
相手の興味あることを先に知ることが勝利のコツ
井田:でも、そこまではっきり「キモい」と言われた中で、娘さんのほうから近づいてくるって難しくないですか?
中山:ここでSEOが関係してくるんですが、たとえば自分のコンテンツをユーザーに読んでもらいたいとします。でも検索意図を分析せずに、自分本位で「これいいっしょ?面白いっしょ?」と思ってアプローチしてみても、相手からしたら「それは私の意図じゃないから」となってしまいますよね。
井田:おお…その文脈でいうと、SEO対策ならぬDKO=娘さんの好感度対策(Daughter Koukando Optimazation)はどのように行われたのでしょうか?
中山:さきほどの話の続きですね。僕は一歩引いたアウトボクシング・スタイルで、相手からアクションが来たらパンチを返す…といった感じにして
いこうと思いました。
ずばり、「娘が興味あることを先に知る」ことが勝利のコツです。
例えば、彼女がホットケーキにめちゃくちゃハマっているのだとしたら、ホットケーキの話題になったタイミングで「面白いリンクがあるよ」とか「どこそこに美味しいお店があるみたい」といった有益な情報をそっと差し出す。そうすると感謝されますね。
井田:さりげなさがポイントですね。
中山:「待ってました~~!」って食い気味に知ってるアピールをするのではなく、良ろしければどうぞ、くらいのトーン。上手くいったのはすべてそのアプローチです。
井田:それで娘さんから一緒に行こうよっていうのは?
中山:そうは問屋が卸さないですね…。でもつながりが生まれるだけで良いんです。
井田:なるほど。1度ページに流入した後は、さりげなくCRM。でも、自分から意思表示してくれればアンサーをSERPsという形で返せるけど、話題を振ってくれないこともありますよね。
中山:そういう場合は、娘のTwitterをサーチしまくります。
井田:(軽く引きながら)…え、娘さんのTwitterを?
中山:僕には伝わらない、面と向かっては言わない彼女のインテンションがそこにある訳です。どこそこが楽しかったとか。何々がつらいとか。
井田:でも、さすがに「いいね!」を押したりはしないですよね?
中山:いえ、押しまくってました。Twitterは公開された場所なので、良いじゃんということで、別に向こうはブロックしてこなかったです。で、娘の隠れたインテンションを探っていくうちに、「自転車」という共通の趣味に繋がっていきます。
娘専用のカスタマージャーニーマップをつくり、リアルの生活でSEO対策を実践
井田:どんな自転車が趣味なんでしたっけ。
中山:ロードバイクです。10年来の趣味なんですが、娘はずっと「おっさんがチャリンコって、バカじゃねーの?」みたいな感じだったのが、半年前から興味を持ってくれたんです。
井田:どうして娘さんは、突然ロードバイクに興味を持ったんでしょうか?
中山:『トリガール』という鳥人間コンテストの映画を観て、高いところを自転車で漕ぐ姿を見て、自転車楽しそう!というツイートをしてまして。 おや?と思って、父親のバイクには興味はないくせにそうだったのか、じゃあそこからどう拡げていこうかと思案しました。
そこでとったのがSEO的なアプローチ。彼女のインテンションを分析し、意図にマッチしたコンテンツを提供したのです。
興味対象は自転車本体ではない
↓
よってメーカーがどうだとか、機材がどうのという話はしない
↓
代わりに美味しいものを食べに行こうとか、きれいな景色を見に行こうと アプローチ
↓
乗ることを目的とするのではなく、移動した先で得られるメリットを提示
井田:自転車で得られる体験を先にプレゼントしたんですね。
中山:本当のゴールは自転車の購入ではなく、自転車を使ってどこかへ楽しい体験をしに行くことです。それを達成するための要素として、スイーツとか景色というコンテンツを用意し、移動手段として自転車を提案したわけ。あくまでサブです。
きちんと娘専用のカスタマージャーニーを組んで、連れていくことに成功し、それを何回か繰り返していくうちに「サイクリングが楽しいものだ」と認識してくれました。
そこからは自然と、「私もそろそろ自分のが欲しい」とか「お父さんのそれって、何ていうやつなの?」とようやく興味を示してくれるようになりました。
井田:おお、オーガニック流入をちゃんとリピーターにして、ナーチャリングからのコンバージョンに結びつけている…。
中山:SEO対策をリアルな生活でやったということですね。
井田:ちなみにTwitterをやっていないお父さんは、どこで子どもの検索意図を引き寄せれば良いんですかね?
中山:妻からのタレコミですかね。一般的に女子って同性の母親には色々打ち明けるんです。妻は知っているけど僕は知らないってことはいっぱい
ありました。恋愛の話だとか、学校が嫌なことがあったとか、そういう話題は全部妻にいくんです。
なので妻と2人のときに、「最近あいつどうなの?」みたいな探りを入れるようにしています。
井田:そのためには奥さんとの日頃の関係性も重要になってきそうですね。娘さんと趣味を分かち合えた今、中山さんにとってのコンバージョンポイントはどこにありますか?
中山:自分のロードバイクを買わせる、ですかね。そうなったら機材について調べない訳にはいかないですし、大切に扱うならメンテナンスもせざるを得ないじゃないですか。
実はゴールデンウィークにそれを達成しまして、娘がついに自分のバイクを買いました。
井田:おめでとうございます。買うまでもゴリ押し戦略はしなかったんですか?
中山:しなかったですね。買うのは大学の入学祝いとして、「チャリより今は大事なことがあるよね」って受験期は一切自転車には触れませんでした。お互い自転車について半年間くらい話さない期間を設けて、合格したら買ってあげるよと伝えました。やっぱりSEO対策と一緒で、相手の意図に寄り添わない限り情報に罪はないけど、結局それが刺さらなかったら意味がないよね、ということですね。
キモい父のようになっているコンテンツや企業を救いたい
井田:思春期の女性とお父さんというのは、最もかけ離れたいと思わせるものをSEO的な手法で繋いでいくと。中山さんの経験、「ユーザーがなかなか流入しないなー」と悩んでいるミエルカを導入されるお客様企業にも当てはまりそう。
中山:かつての自分のように、相手には刺さらないコンテンツを一方的に押し付けてしまっている企業がたくさんいると感じています。
ファベルカンパニーでは、そうした状況を変えていきます。ミエルカのようなツールを使いこなすスキル、分析した結果を文章に反映させる筆力、検索意図を汲み取る観察力など、どんなコンテンツを出せば自社ユーザーに喜んでもらえるのかが分かる人たちをもっと増やしていきたいです。
テクノロジーを使いこなせれば、時短をしつつ余った時間をよりクリエイティブな脳内活動にも使っていけますもんね。
井田:幸せな家族の再生のお話、ありがとうございました。……ひとつ疑問があるんですけど、「あだ名で呼ぶ、寒いギャグを言う、若者の流行におもねる」ってキモいには違いないけど、どの家庭でも大なり小なりあるだろうし、そこまで酷い行為だとは思えないんです。
中山:そうですか。
井田:こうやってお話している限り、中山さんって落ち着いていて、節度を持ったジェントルマンって印象を受けます。仮にも父親に向かって「キモい」と言うのはちょっと無礼がすぎるかと。一昔前なら往復ビンタを食らっても文句は言えないんじゃないでしょうか。
中山:はいはい。
井田:娘さんが過剰に反応しただけじゃないのかなぁ…って気もするんですよね。
中山:では最後に、13歳当時の就寝中の娘にやっていたMy 愛情表現を再現します。誰にも打ち明けたことはなく、本邦初公開なんですが…。
パターンA:横からキス&ハグ
中山:「これが基本ポジションとなります」
井田:「ぉ、ぉぅ…?」
パターンB:S字型ハグ
中山:「背後からこのようにそっと…」
井田:「いやいやいやいや、そのポジションはちょっと…」
パターンC:押さえ込みハグ
中山:「うつ伏せに寝ているところを羽交い締めするイメージなんですが、我ながらこれはやばいですね。妻には”次やったら殺す”と言われているので今はお蔵入りです」
井田:「う、うぎゃぁぁぁぁぁ…!!!ぜ、前言撤回!絶対無理!!」
おしまい
株式会社Faber Company (ファベルカンパニー) では、ユニークで一芸に秀でたスキルフルなビジネスパーソンを募集しています。採用情報はこちら。
中山 順司 プロフィール
コンテンツ制作が三度の飯より好きな Faber Company のエヴァンジェリスト。freeeのオウンドメディア『経営ハッカー 』 元編集長。2005年からブログを始め、会社員の傍らロードバイクメディアを運営中。趣味の自転車を中心に、エンタメ、育児、教育、ガジェット、ディープ過ぎる取材等、さまざまなwebメディアで企画・執筆に携わる。 2013年にITmediaに寄稿した「キモいお父さん」記事がネットをざわつかせ、それがキッカケで書籍出版を果たす。「お父さん キモい」で検索するとSERPsを自分が(ほぼ)独占してしまうのが目下の悩み。
著者PROFILE
記者、ライターとして活動後、大手英会話教材のWeb担当を経て、株式会社Faber Companyへ。広報としてミエルカ導入企業様の事例取材など発信業務を担当する。趣味は都内の銭湯めぐり。