この記事では、SEO 初級者からよく聞かれる質問についてアドバイスします。今回取り上げる質問はこちらです。
概して言えば、インタースティシャルが SEO に与える影響は限定的です。しかし、ユーザー体験に与える影響は無視すべきではありません。
インタースティシャルの概要
インタースティシャル (interstitial) とは、ページに覆いかぶさるようにして出現する、そのページとは別の表示領域です。一般的に、広告やアプリダウンロードなどのプロモーションだったり、サイト利用の年齢制限や Cookie受け入れのような同意確認などに用いられます。ポップアップやオーバーレイ、ダイアログと同類の表示手段です。
Google 検索のランキング要因であるページ エクスペリエンス シグナルには「煩わしいインタースティシャル」が含まれています。ユーザーのページ閲覧を著しく妨げるインタースティシャルを表示するページはユーザー体験が悪いとみなされ、検索ランキングが下がることがありえます。
煩わしいインタースティシャルのイメージ。左は、通常表示されるページ。真ん中は、ページ全体に覆いかぶさるインタースティシャル広告。右は、同じようにページ全体に覆いかぶさるアプリダウンロードのインタースティシャル。どちらもページのメインコンテンツがインタースティシャルのためまったく見えず、うっとおしく感じる。
ページ エクスペリエンス シグナルがランキングに与える影響は小さい
インタースティシャルをはじめとするページ エクスペリエンスは、たしかにランキングに影響を与える要素ではあります。しかし実際には、影響度は小さなものです。
ページ エクスペリエンスがランキングに与える影響について Google は次のように説明しています。
ランキングを決定する際にGoogle が最も重要視するのはコンテンツの関連性と信頼性です。ページ エクスペリエンスが関連性と信頼性を凌駕することはありません。しかしながら、関連性と信頼性が拮抗しているコンテンツが複数ある状況では、最終的な決め手としてページ エクスペリエンスが関わってくるかもしれません。
ページ エクスペリエンス シグナルの役割を説明する際に、”tie-breaker”(タイブレーカー)という表現を Google 社員はよく使います。タイブレーカーとは同点決勝のときに勝者を決める方法です。たとえば、サッカーの PK です。
中身がほぼ同じでどちらも役立つコンテンツで、
- 片方はすぐに記事を読める
- もう片方はウザいインタースティシャルがまず表示されて、それを手動で閉じてからやっと記事を読める
あなたは、どちらのページを知り合いに勧めますか? 答えは明白です(インタースティシャルがない前者ですね)。
このように、一般的にはインタースティシャル(とそのほかのページ エクスペリエンス シグナル)が実際に影響している検索結果はかなり限定されていると想定されます。明らかにインタースティシャルが原因で順位が下がった事例を僕は聞いたことがないし、(米国の)知り合いの SEO スペシャリストたちに聞いても知らないようでした。
したがって質問者のケースでも、順位が下がったのがインタースティシャルによる可能性は低いのではないでしょうか。
とはいえ、実際にページを見ていないので断定はできません。インタースティシャルを一定期間停止してランキングの変化を観察するのもいいでしょう(この場合でも、ランキングに変化があったとしてもインタースティシャルによるものとは断定できない。Google はアルゴリズムを絶えず調整しているし、新しいコンテンツが日々公開される)。
インタースティシャルがランキングに影響しているかどうかを調べる方法
インタースティシャルに関してよく聞かれる質問には次のようなものもあります。
残念ながら、インタースティシャルが煩わしいと判断されているかどうかを確認する方法はありません。検証するツールも状態を報告するレポートも Google は提供していません。自分たちで判断するほかないのです。
朗報として、インタースティシャルがユーザー体験を阻害しているサイトに対して Search Console 経由で通知を送信する仕組みを Google は(試験的に?)始めているようです。
Looks like Google is sending out a new “wave” of mobile intrusive interstitial notices.
Reminder; this is not solved by recon request, it’s solved algorithmically.
Remove the pop-up, then wait for Google to recrawl you.
Full details here: https://t.co/GT1GHbOzF8 pic.twitter.com/PNIJNQpICQ
— Casey Markee (@MediaWyse) April 1, 2022
もしこの通知を受け取ったとしたら、煩わしいインタースティシャルだとして間違いなくみなされているでしょう。すみやかな対応が求められます。
Google のランキングには影響しなくてもユーザー体験には影響する
全体としては、インタースティシャルは Google 検索のランキングにはほとんどの場合は影響しないと考えられます。そうは言えど、ユーザー体験という観点では確実に影響します。多くの場合は、ネガティブな影響です。
インタースティシャルに対するユーザーの反応をツイッターで探してみました。
インタースティシャル広告はwebページのCXの邪魔でしかないので、発明した奴は余生を苦しみ抜いて生き然る後地獄に落ちてほしい。
— isatsuki (@nasikustaka) April 16, 2022
インタースティシャル広告とかフッター固定とか、フロート広告とか、ユーザー目線だと操作を妨害されるので邪魔でイライラする。
— matayoshi (@nmatayoshi) April 8, 2022
ダイヤモンドオンラインまでインタースティシャル広告導入してきたのはちょっと引く。収入源の確保とかサブスクリプション誘導っていうのは解るんだけど、可処分時間と対立するこの手の広告は新規獲得にとって結構諸刃の剣だと思うんだけどな。そこのところ実際どうなんだろうか。
— T.OTSUKA🐬🌱 @Marketing Planner (@METALIRUKASUN) March 17, 2022
インタースティシャル広告も見ないよ。
画面に出た瞬間、小さな×印を必死で捜してる。
「このサイトつまらないな…」って思う頃にさりげなく端っこととか下に出る広告は見るけど、サイトを遮る広告は絶対に見ない!!
もしくはその広告を覚えて絶対に買わない。 https://t.co/bNgjuUYXPa— *さくら* (@sakura_tenhouin) April 22, 2022
僕も個人的にはインタースティシャルは大嫌いです。出現した瞬間に閉じます。内容を見ることはまずありません。
このようにインタースティシャルを嫌うユーザーが存在する一方で、インタースティシャルがコンバージョンに寄与する場合があることもまた事実でしょう。世の中にインタースティシャルが存在する理由です。
インタースティシャルは、ユーザー体験の低下とコンバージョンの上昇のトレードオフと言えるのではないでしょうか。多少のユーザーを切り捨ててでもコンバージョンを優先するか、あるいは長期的な視点でリピート訪問してくれるユーザーを増やすのかの選択になるかもしれません。インタースティシャルが本当にビジネスに貢献しているかどうかは、A/Bテストのようなユーザーテストで検証することを推奨します。