自社の人材採用やリクルーティングにオウンドメディアは寄与するのか?通常は潜在顧客層とのエンゲージメント形成目的が多いオウンドメディア。一方で、人材採用に活用している企業もあります。そこで今回は、採用に活用している事例と、その手法を紹介します。
採用リクルーティングにオウンドメディアを活用する2つの方向性
人材採用にも活用されているオウンドメディアには、下記2つのパターンがあります。
- 目的の一つを「人材採用」と定めてオウンドメディアの運営を開始
- オウンドメディア運営によって独自の世界観が形成されて人材採用にも寄与
1.の場合は、ニュースリリースを発信する自社広報媒体の役割としてオウンドメディアを立ち上げたという場合が多いようです。
人材採用・リクルーティングにも活用されているオウンドメディア事例4選
では、具体的に事例を見ていきましょう。
① mercan
株式会社メルカリが運営しているメディアで、採用情報に限らず、メルカリの社員やメルカリであった出来事を発信しています。
◆ コンテンツ
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「インタビュー」
メルカリ社員へのインタビュー記事が掲載されています。CTOが交代するタイミングでどうして体制変更をするのかについて迫る記事や、メルカリのしくみを支えるインフラエンジニアのキャリアに関するインタビュー、育児と仕事を両立する社員へのインタビューもあります。また、業務提携先の企業の担当者との対談など、プレスリリースを掘り下げる内容も満載です。
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「ブログ」
毎年行われる部門別合宿の目的や内容紹介を含めたレポート、インターンに来ている大学生から見るメルカリについて書いた記事、メルカリ社員が執筆し出版されている本の紹介などが掲載されています。
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「広報」
広報担当の方が、日々のニュースを更新しています。内容は、プレスリリースの発表、全社で行う体制発表会のレポートなどです。プレスリリースも、広報の方の言葉で、感情や感想が伝わるような書かれ方をしているので、面白いです。
◆ コンバージョン
TOPページには、新卒採用ページ・中途採用ページ・エンジニアが更新しているブログ「Mercari Engineering Blog」、月に数回開催されている「meet up」の紹介ページへのバナーリンクがあります。各記事の最後には、おすすめ記事や人気記事の紹介とあわせて「募集職種一覧」へ遷移するリンクも置かれています。
※ 参考URL
取材される機会が増えてきたからこそ、自分たちで情報をコントロールできる媒体を持つべきだという考えからメディア運営が始まったそうです。どのような体制でメディアが運営されているのか、メルカンを通じて追っているゴールは何なのか、これまでの実績と今後のビジョンなどが下記の記事に詳しくまとめられています。
- 「メルカリはなぜ採用オウンドメディアを選んだのか? 編集長が語る『メルカン』立ち上げの経緯」※5記事に渡って掲載されています
- 「採用オウンドメディアはやるべき?メルカリのコンテンツプラットフォーム『mercan(メルカン)』運営の裏側」
② THE BAKE MAGAGINE
〝お菓子のスタートアップカンパニー〟株式会社BAKEが運営しているオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
BAKEの事業や人のこと、新しいテクノロジーのことなどが発信されています。特に印象に残る記事をいくつかご紹介します。
- 「オウンドメディアをはじめて1ヶ月。すごい効果がありました」
THE BAKE MAGAZINEを開始して1ヶ月間の成果がまとめられた記事ですが、始めた経緯、目標やターゲット・方針、成果と成果が出た理由、現時点での課題などが詳しくまとめられています。 - 「美大を卒業して、制作会社で働くか、メーカーのインハウスデザイナーになるか、それともフリーランスになるか?」
BAKEでアートディレクターとして活躍されている社員さんに、これまでの経験を聞いたインタビュー記事です。記事タイトルと同じように悩んでいる美大生の気持ちに寄り添いつつ、BAKEで働く魅力が紹介されています。 - 「1ヶ月あたり600万の経費削減に成功!でもそれだけじゃない、BAKE『購買部』の仕事」
同業の方以外からはイメージを持ちにくい「購買部」がどのような業務を通してBAKEに貢献しているのかを、購買部の社員の方にインタビューしています。社員の方とBAKEの出会いについても触れられています。
◆ コンバージョン
TOPページには、「PICK UP記事」としてBAKEの代表の方の経歴と思いが記された記事とBAKEがどのような会社かが理解できる記事が紹介されています。
※ 参考URL
〝お菓子のスタートアップ〟という特異性を活かしたテーマを元に、読み応えのある記事が更新されています。メディア運営の知見を持った編集長を招聘したことも大きいでしょう。編集長)塩谷舞さん目線で立ち上げ〜運営について語られたものが下記スライドシェアにまとめられています。
・「『THE BAKE MAGAZINE』運営について」
また、〝人生でいちばんおいしいお菓子〟をコンセプトに、東京のお菓子を紹介する「cake.tokyo」というメディアも運営しています。
③ サイボウズ式
グループウェアなどを提供しているサイボウズ株式会社が運営している〝「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイト〟です。BtoBオウンドメディアの成功事例としてもよく紹介されているかと思います。
◆ コンテンツ
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「ブロガーズコラム」
「チームワークって何だろう? チームで働くうえで大切なことって?」をテーマに、多くの読者を持つブロガーが自身の体験談を寄稿しています。「成果を『労働時間』で評価する会社には限界がきている」、「定時後の『帰りにくい空気』とどう向き合うか」など、ドキッとさせるタイトルを付けることにもこだわりがありそうです。
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「あのチームのコラボ術」
話題の企業のチーム作りの秘訣に迫るものです。アクセンチュア、リクルート、Yahoo! JAPANなど新しい制度を制定したり、新規のメディアを立ち上げたりしている企業へ取材を行い、その概要と実現の肝となるチームワークや組織の作り方について話を聞いています。
上記のようなカテゴリの他に、社内イベントとして企画されたサイボウズ社長青野氏とベストセラー『嫌われる勇気』著者の岸見一郎氏との対談をレポート形式でまとめた記事も掲載されています。
「離職率28%を経て気づいた「社員が会社を辞めるのは、自分の理想を実現したいから」──『嫌われる勇気』岸見一郎×サイボウズ 青野慶久」
◆ コンバージョン
TOPページには、カテゴリ、著者紹介のリンクがある程度で直接採用ページに遷移するようなリンクは置いてありません。各記事の下部も、関連記事と新着記事の紹介だけと導線はシンプルです。
※ 参考URL
成熟市場を切り開くために〝新しいコミュニケーション手法〟としてサイボウズ式は生まれたそうです。顧客目線・読者目線を徹底してコンテンツを考えた結果、お客様獲得にも人材募集にも寄与しているお話が下記で紹介されています。
- 「オウンドメディアは、最高の採用ツールでもある。『サイボウズ式』初代編集長・大槻幸夫氏に訊く」(※前後編あります)
- 「『サイボウズ式』編集長 藤村さんの社内を巻き込むコミュニケーション仕事術 第1話」(※4話あります)
④ LIVSENSE info:
求人情報サービス「ジョブセンス」などを運営している、株式会社リブセンスの最新ニュースを発信しているブログです。
◆ コンテンツ
社員へのインタビューや対談記事などを通して、リブセンスの制度やリブセンスで積めるキャリアなどについて紹介されています。
幾つか記事を紹介します。
- 「キャリチャレ制度の活用で活躍の幅を広げたエンジニア」
社内の制度を利用して自発的に異動した社員が、なぜ異動したのか、異動前後での働き方、周囲の反応などについて語っています。制度の存在を列記することは簡単ですが、こうして実際に社員の方の口から語られることで説得力が増します。 - 「次の10年の礎を築く~リブセンスの新卒採用~」
新卒採用の強化を始めた狙い、新入社員の研修内容、就職活動へのアドバイスなどを人事担当が語っている記事です。 - 「村上太一×桂大介対談 『激動の20代、夢中で突っ走ってきた』」
リブセンス代表の村上氏と前取締役 桂氏が、設立当初からを振り返りながらの対談。桂氏の取締役退任についてもユーモアを交えて触れられています。
◆ コンバージョン
TOPページには、採用ページのリンクがあり、「採用情報」と「私達と一緒に働きませんか -エンジニア積極採用中-」とコピーを変えて2種類設置されています。
※ 参考URL
記事内容が自社のニュースや社員の紹介に特化しているため、採用サイトと連動してこれからリブセンスを受けようかと考えている求職者の方や、今後リブセンスで働く内定者の方に社内の雰囲気や体制を知ってもらうためにも役立ちそうです。他に、エンジニアの方が記事を更新している「LIVESENSE made*」というオウンドメディアも運営しています。
働き方が多様化する今、ブランドを理解し、共感できる人材が求められる
働き方の多様化が進んで、求職者が仕事に求めるこだわりもさまざまになっています。これまでのように、給与体系・勤務地・福利厚生を条件として確認できるだけでは、働く場所としての魅力は伝わりません。
「この企業ではどのような働き方が可能なのか」「どんな人が活躍しているのか」「一緒に働きたいと思えるのか」といった疑問を解消する情報を発信することで、求職者からの共感や理解を得ることが重要になっているのだと思います。
だからこそ、社内の雰囲気を伝えるようなコンテンツや実際に活躍している社員の声、社内勉強会の様子など、社内のあらゆることがコンテンツとなり「採用・リクルーティングに貢献するオウンドメディア」にもなりえるのではないでしょうか。上手く機能すれば、求人媒体などを通した採用に比べて、採用コストも押さえられ、価値観の合う、将来活躍する可能性の高い人材を採用しやすくなるかも!?
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当社でも採用サイトはチカラをいれておりまして、当社の“職人”候補を積極採用しています。ご興味あれば、まずは気軽にランチにでもいきましょう!
https://www.fabercompany.co.jp/recruit/
もちろん月岡もインタビューされてます!会社の外でレフ板当てられるのは恥ずかしいですね(笑)
https://www.fabercompany.co.jp/recruit/interview/tsukioka/
おわり
著者PROFILE
SFA導入コンサルからCRMベンダーのセールスに転身し、営業マネージャーに。その後Faber Company営業部長を経て、マーケティングを担うIMC部を設立。現在は執行役員として、ミエルカのプロダクトマネージャーやセミナー登壇などの活動をメインに行っている。
■ 講演実績:マーケティングアジェンダ/日経クロストレンドForum 他■Twitter:@tsuuky09