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Pubcon Pro Annual 2023 参加レポート

更新日: 2024.11.11   公開日:2023.10.13

この記事では、2023年9月20日〜21日に米オースティンで開催されたPubcon Pro Annual 2023カンファレンスの現地からのレポートをお届けします。

Pubcon Pro Annual 2023 参加レポート

セッション開始前

会場は、2月の開催のときと同じAT&T Conference Centerです。

AT&T Conference Center

ただし、気温がぜんぜん違います。日中の最高気温は36〜37℃。日差しも強く直射日光に当たっていると焦げそうです。それでも日本とは違って湿度が低いのが救いでした。日陰にいれば、汗が噴き出るということはありません。

ホテルのプール
ホテルのプールでは宿泊客が水浴び(気持ちよさそう!)

レジストレーションを済ませて、ネームバッヂとリーフレットをもらいます。

ネームバッヂとリーフレット

Pubconは朝が早く、8:15にスタートします。さらに、本番開始前には早朝サイトクリニックが行われていました。希望者はSEOやCROのプロにサイトを無料で診断してもらえます。

ちなみにXの投稿に書いたように、屋外とはうってかわり室内は極感です。

朝が早いので朝食がふるまわれます。

ホテルの朝食

ホテルの朝食

ホテルの朝食

ホテルの朝食

ホテルの朝食
ホテルの朝食がショボかったので助かりました。ほかにもメニューはたくさんあったけれど、グルメ記事ではないのでこれくらいで。

セッション レポート

主催者のBrett Tabke(ブレット・タブキ)氏が開始を宣言します。

最初のセッションは、Bill Hunt(ビル・ハント)氏によるキーノートスピーチです。テーマは、「2023年のSEO/SEMの状況」で、過去のSEOを振り返りながら現在のSEOを考察します。

ビル・ハント

ビル・ハント

いつの時代でもSEOにおいては次の心構えが重要だとアドバイスして、ハント氏はキーノートを締めくくりました。

  • 大きな変化が起こっている——適応する意欲を持とう
  • 検索マーケティングの収益力を最大限に引き出そう
  • 経済的価値を常に示そう
  • なぜそうなったのかを理解しようとしよう

注目セッション

今回のPubconでいちばん面白かったセッションを選べと言われたら、まずは、Microsoft Bingのプリンシパル プロダクト マネージャであるFabrice Canel(フェイブリス・キャナル)氏のキーノートを選びます。

フェイブリス・キャナル

Bing検索のシェアは日本では少ないとはいえ、BingチャットでGoogleを猛追しています。中の人の話を聞けるのは貴重な機会です。

Bingチャットは改良を重ねており、ユーザーの状況に応じた回答を返せるようになっています。具体例として、次のような質問にどのようにBingチャットが回答するかをキャナル氏は見せました。

  • Pubconカンファレンスの日時と場所
  • 会場近くのホテル
  • カンファレンス終了後の市街でのイベント

どの質問にもBingチャットは的確に回答していました。

さらには次のような複雑で長い質問にもBingチャットは対応できます。

赤ちゃん連れの友人と一緒に外食したいとき、ベジタリアンに対応した子供連れに優しいレストランにはどんな選択肢があるでしょうか?

Bingチャットは質問を理解し、気を付けるべき点とともに要望に合うレストランを提示しました。

Bingチャットの回答

Bingウェブマスターツールが、Bingチャットからのトラフィックもレポートするようになったこともキャナル氏は発表しました。

Bingチャット(を含むChatGPTやBardなど、LLMを基盤としたAIチャット)が引き起こすハルシネーション対策にもキャナル氏たちは誠心誠意、取り組んでいるとのことです。

面白かったセッションには、もちろんGoogleのGary Illyes(ゲイリー・イリース)氏のキーノートスピーチが含まれます。

イリース氏は、2023年のGoogle検索の重要ニュースのTOP5を紹介しました。

ゲイリー・イリース氏のスライド

TOP5は次のとおりです。

1.Multisearch near me(Googleレンズで近くのレストランを探す機能)
2.Search Consoleのサイト確認APIのリリース
3.Search Consoleの動画インデックス改善ツール
4.有用なコンテンツのドキュメントから「人間よって」の記述が削除
5.そのほかの発表

実際にはこれらのTOP5は、イリース氏ではなくAIが選んだものです。TOP5には選ばれるはずがないニュースばかりです。イリース氏は、AIに頼るべきではない実例をイントロで示したのです。

Multisearch near meは、革新的な機能ではありますがTOP5に入れるほどではありません。Search Consoleのサイト確認APIは今年ではなく、去年(よりも前?)にリリースされています。動画インデックス改善ツールと「人間よって」の記述のドキュメントからの削除はそこそこ重要ですが、すべての人にとってというほとではありません。最後のその他の発表にいたっては、重要なニュースを選べと指示したのに「その他」では回答になっていません。

ゲイリー・イリース氏のスライド

イリース氏がこの例で伝えたかったのは次の通りです。

LLMは信頼できない。必ずしも、正しい情報を提供しないから。

つまり、LLM(大規模言語モデル)を頼るべきではないというのがイリースの主張です。コンテンツ作成にAIを利用することにイリース氏は反対こそしていないものの、人間によるレビューは必須だと注意喚起しています。

次のメッセージでイリース氏はセッションを締め括りました。

人間のために作った、独自で役に立つコンテンツを公開しなさい

ゲイリー・イリース氏のスライド

そのほかのセッションのハイライト

そのほかのセッションで学びになった部分をXの投稿で紹介します。

AIは最もホットなトピックです。AI関連のセッションに1つのルームが割り当てられるほどでした。

欧米では、自分から能動的に働きかけてリンクを獲得する方法が一般的です。アウトリーチにはメールを用いるのが定番です。アウトリーチメールをChatGPTに書かせると効率的だとこのスピーカーは自身の体験を共有しました。

数年前までは、AI生成コンテンツは質が低く実質的に使えなかったけれど、今はそんなことはなく、むしろAIツールを使用してスケーラブルに高品質なコンテンツを展開している事例のセッションです。
Content at Scaleというツールを提供している企業の社員がスピーカーでしたが、セールス的なトークではなく、AIツールをどのように利用すれば品質を保ったコンテンツを作れるかの知見を共有してくれました。

Content at Scaleは別のスピーカーもおすすめしていました。一方で、低品質なスパムコンテンツを量産するだけだと酷評したAIライティングツールもあります。

PubconではSEOだけではなく、CROをテーマにしたセッションも扱われます。

こちらは「Buy now(今すぐ購入)」というボタンのラベルを「Explore pricing(料金を見る)」に変えただけで、CTRが8倍近く上昇した事例です。さらに、隣に設置してあった「Start my free trial(無料体験を始める)」のボタンは、ラベルは変えていないのに、こちらもCTRまで上がってしまったという棚ぼた(?)も起きたそうです。

CROには、A/Bテストツールの利用が欠かせません。しかし、A/Bテストツールには、JavaScriptの読み込みなどでページの表示速度を遅くしてしまうものもあります。ユーザー体験を損ねるので注意が必要です。

こちらはローカルSEOのセッション。レビュー獲得は鉄板のローカルSEOです。

モトコ・ハント氏の多言語サイトSEOのセッションは基盤となる施策を具体例とともに提示し、非常に参考になりました(ちなみに、モトコさんは日本出身で、キーノートスピーチで講演したビル・ハントさんの奥さま)。

番外編

こちらは、セッション外なのですが、Googleのゲイリーと2人でランチに行き、そのときに衝撃の情報を入手しました。

先日実施されたヘルプフル コンテンツ アップデートのタイミングで、寄生サイトに関する記述がドキュメントに追加されました。てっきり、寄生サイト対策のシグナルが組み込まれたと、僕も含めて大多数が信じました。ところが実のところは、純粋なドキュメントの更新であってランキングシグナルの更新には含まれていないとのことでした(詳細は筆者のブログを参照)。

ClarityはMicrosoftが(無料で!)提供するヒートマップツールです。弊社の競合なのですが、ClarityのPMのシャロンさんはとっても気さくな人です。2月のPubconでは僕のセッションを聴いてくれて、そのときに少しだけ言葉を交わしただけだったのですが、覚えていてくれました。今回のシャロンさんのセッションには参加できなかったのですが、ハイライト部分を個別に説明してくれたうえに、Clarityのスワッグももらいました。

このように、ゲイリーやフェイブリスさん、シャロンさんなど日本では接する機会がない人たちと直接交流できるのも海外カンファレンスの大きな魅力です。

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本記事の著者
鈴木 謙一
鈴木 謙一
取締役 Search Advocate
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