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知の探索

未来を担うスタートアップを育てる。同じ志を抱くベンチャーキャピタルと検索の“職人”が語る、事業成長のためのSEOとは。

公開日:2025.01.16

スタートアップ企業は、一国の経済を支える「成長のドライバー」であり、日本国内においてはその創出と育成が急務となっています。そのスタートアップ企業の成長過程において、インターネットでの認知拡大・利用者増加は極めて重要な要素の一つとなります。ただ、その初期の戦略で誤った選択をしてしまう企業も少なくありません。

そこで今回の「 #知の探索 」は特別編として、日本初の本格的ハンズオン型ベンチャーキャピタル(VC)、グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社(以下、GCP)の代表パートナーである、高宮 慎一 氏と、SEO業界では知らない人間はいない、株式会社so.laの辻 正浩 氏のお二人に、so.laがFaber Companyにグループインするという機会に合わせ「スタートアップとSEO」というテーマで語っていただきました。
(執筆:峯林晃治 編集:月岡克博 撮影: 中林正二郎)

グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社 代表パートナー 高宮 慎一 氏

コンサルティング・ファーム アーサー・D・リトル(ジャパン)を経て、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)に参画。東京大学経済学部卒(卒業論文特選論文受賞)、ハーバード経営大学院MBA(2年次優秀賞)。Forbes Japan’s Midas List 日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング 2018年1位、2015年7位、2020年10位。デジタル領域にて多くのIPO実績を持つ。X:@s1kun

 

株式会社so.la 代表取締役 辻 正浩 氏

営業、広告・Web制作を経てSEOの専門家として活動を始めた後、2011年に独立。株式会社so.la代表としてさまざまな規模・種別・業界のWebサイトのSEOに関わっている。特に大規模サイトの対応を得意としており、多数の日本有数の巨大サイトのSEO担当として検索流入拡大に取り組んでいる。 Webマスターと検索ユーザー、検索エンジンの三者が利益を受けるSEOを信条に活動中。X:@tsuj

互いにトップレベル。ベンチャーキャピタリストとSEOの専門家の意外な接点

辻:
私は、2011年に独立しさまざまなスタートアップの支援に関わらせて頂いたのですが、行く先々で高宮さんがいらっしゃいました。

高宮:
はい。その頃からの長いご縁です。当時、盛り上がっていたWeb系サービスのトラフィックの多いところや投資先の多くに辻さんがいらっしゃって。僕も無理をいって辻さんに「アドバイスください」とお願いしていたこともありましたね。

辻:
社員数名のシードから成長初期のベンチャーまで、色々な会社で高宮さんとご一緒することになりました。高宮さんが入られている会社では、私も驚くような大きな判断をされて、それが成功されることばかりで驚いていました。当時、日本のVCでWeb系サービスに目を向けられているのは高宮さんしかいなかったのではないでしょうか。

高宮:
当時はVCそのものが少なくて、企業が1億円の資金調達をするとニュースになる世界観でした。僕はWebサービス系の会社に投資することが多くて。辻さんは、一人で日本の検索トラフィックの数%を支えているんでしたっけ?

辻:
はい、5%です。日本での検索トラフィックが100ありましたら、5回は私がサポートするサイトにアクセスされていますね。

高宮:
「日本の見えざる手なんじゃないか」って(笑) しかも辻さんは想いを持っている。短期的な“焼き畑”でもいいからトラフィックを集めるのではなく、本質的に日本のインターネットユーザーにとって価値ある情報を届けるのにはどうすればいいか。そして、そういう方向性のGoogleに寄り添おうとすると、こうやるのがいいんだよってアドバイスをくれる。

なんかすごい想いをもって「日本のインターネットをきれいにしたい」「ユーザーに価値ある情報を正しく届けたい」という感じで仕事をやられているから。SEOをただ生業としてやっているのとは違うなというのはすごいあって、めちゃくちゃ共感しています。

また、この辻さんのキャラクターと、空気感がいいですよね。めちゃくちゃすごい人なのにめちゃくちゃいじりたくなる(笑) そのギャップが素敵だなあって思います。

スタートアップにとってのSEOは焼き畑であってはならない

辻:
SEOはやっぱりずっと脇役で、表に出るものでもないし、それこそ自分では何もできないし、企業にこうしてくださいとお願いすることしかできない、というのがあってこういうスタンスになっています。でも、たとえば個人であればSEOは極論どんな手法でもよくて、一時的にトラフィックが増えればいい。

高宮:
焼き畑でもいい、と。

辻:
はい。一般的な企業も、場合によってはすぐトラフィックが落ちる一時的な上昇でもいいです。それを次々と積み重ねることができるのでしたら。でもスタートアップって長期戦、マラソンじゃないですか。

高宮:
スタートアップは「世の中のインフラになりたい」というような大きな絵を描いています。辻さんのおっしゃっているとおり、一過性でいいという企業もいるかもしれません。でも10年、20年、それこそ100年続くインフラになるためには、SEOを焼き畑で行ってはいけない。

辻:
スタートアップの場合、爆発的に成果をあげないといけない。大きく伸ばさないといけないけれど、それを不安定にしてはいけない。そんな無茶な話をどうにかするためには、その企業が持っている価値そのものを検索エンジンにも、人間にも評価される状態にしないといけないと思ってずっとやってきました。

やっぱりそれでも難しい。これまで、それこそGCPさまが入っていないようなスタートアップでは方針・戦略の筋が通っていなくてスケールアップできない、というのも少なからず見てきました。やっぱり高宮さんが入られているところはスムーズに進むことが多い。

たとえば、無茶な成長をするための、無茶な施策としての投資をやっていただけることも多くて、だからこそ成果が出る。その結果、関わられている企業がほぼ上場につながっているんじゃないでしょうか。

私が独立してから5年ぐらいで「SEOはスタートアップの力になる」、そしてそれは日本社会のためになると実感を持てたのは高宮さんのおかげです。

正しい方針を選択することこそが最重要、「SEOありき」ではない

辻:
最近、スタートアップ企業とお話させていただく中で多いんですが、事前に変なコンサル会社のアドバイスで動いてしまって、すごく微妙な方向性で走り出しているケースがあります。最初に「いまやってるSEOを全部止めてください」と言うこともあったり。毎月200記事出しているのを全部止めてゼロから考え直しましょう、とかもよくありましすね。

こういうコンサル会社は本当に何の知識をもって提案をしているのだと憤ります。ひどい言い方ですけど、スタートアップ企業が食いものにされているという状況があります。もちろん、ちゃんとしたSEO会社もあるのですが、なぜかスタートアップはそういう微妙なSEO会社を選びがちで、そこをかなり危惧しています。

高宮:
食いものにされているとすると、由々しき問題ですね。

辻:
私は、日本で成功したスタートアップ企業のSEOに一番多く関わってきたと思っています。その経験の中で言えるのは、SEOは企業や事業フェーズによって選ぶべき方針が全く違うということです。

だからこそ“経験”が必要になります。この企業なら、この状況なら、という“引き出し”をどれだけ持っているかが重要だと考えています。

高宮:
VCとしても、どこまで悪意を持ってかはわからないけれど、投資をしたお金が、間違った方向のSEOをやって無駄になってしまう、それどころか負の遺産となって、後々も悪いほうに引っ張られてしまうというのは残念です。

一方で、VCとして「何がSEOとして本当に正しいのか」は、そこまで専門性がないからジャッジできない。そういう時に辻さんがいてくれるとめちゃくちゃいいんですよね。

辻:
はい、負の遺産を見ることも多いですね。最初から間違って進んでいると、あとから方向修正が難しい。最初の方針は何より重要です。

高宮:
まさに、辻さんは完全に経営アジェンダとして、Webに限らずマーケティング戦略全体をどうするのか、さらにはプロダクト戦略をどうするのか、から入っていただけるのがすごいありがたいです。場合によっては「SEOではないんじゃないですか?」とまで言っていただける。

自分の仕事がなくなるのを顧みず、その企業にとって良いと思ったら「御社の場合はSEOではない」とズバッと言っていただける。プロ意識というかスタートアップファーストの精神だと思います。

辻:
スタートアップ企業ごとにやるべきことが全部違いますから、そうなってしまいますね。毎回考え抜いてお話していますが、「SEOを考えずにWeb広告に注力するべきでは」というのも多いですし、「ひとまずTVCMしかないですよね」ということも何度かありました。ただ、TVCMをやるときもSEOに影響するようにこうするべき、など検索を意識することも重要です。

こうした支援を通じて、私も社会に対する責任みたいなものも感じるようにもなりました。どうやって日本社会とインターネットを検索で支えていくか。それが、私の人生での主なテーマになってきたところです。SEO業界の方々から価格破壊と怒られることもありますが(笑)、儲けることよりもこの先数年はそれを追求したいと思っています。

高宮:
辻さんのそういうところが、領域は違うけれど同じプロとプロが手をつないで世の中を良くしていく、そうして世の中を良くしていくスタートアップ企業を支援する、ということでタッグを組みやすいんですよね。

辻:
ありがとうございます。日本を支えるスタートアップ企業のサポートは日本社会の成長のサポートにつながり、責任の重い仕事と思っています。大きなやりがいも感じながら取り組んでいます。でも、社会的意義だけではなくて、特殊なSEOが必要になることも多いので技術的なタスクとしても楽しい仕事なんですよ(笑)

時代の流れとともに進化する検索エンジン。それはESGという考え方に行きつく

高宮:
僕、辻さんのすごいところは、さっきも言ったけどSEOにとどまらないところだと思っていて、戦略・マーケティング全体までみてアドバイスできることですよね。SEO以外の手段も考えたときに、SEOはどう位置づけられるべきか、そこでプロダクトはどうあるべきか、みたいな部分まで踏み込むじゃないですか。

そうすると、大きなインターネットの潮流みたいなのも影響を受ける。これまではインターネットだけだったのが、アプリやソーシャルもでてきて、AIもでてきたとなった時に、マーケティングやSEOとか辻さんはこの先どうなると思いますか?

辻:
結局は、情報の価値、および情報を出す主体の価値というものが、より誤魔化しようもなく、しっかりと評価されるような流れになっていくのが、この10年の流れではないかと考えています。

高宮:
今まで人間がしていたような価値の判断もプラットフォーム側でできるようになってくるし、ユーザー側も自分の可処分時間とかを考えると、価値ある情報を出してくれるところを選ぶようになる、と。

辻:
はい。数年前までのSEOは、本来の価値を実際より大きく見せることを目指すことが多かったとように思います。いまは過剰に大きく見せようとするとスパムになることが多いので、本当にある価値をちゃんと見せるのを目指すことが多いです。

高宮:
100の価値のものをそのポテンシャルの通りしっかり100として伝える。100しかないのを、1000に見せるではないんですね。

辻:
この会社が出す、この情報に大きな価値があるというのを、着実に多く積み上げていくというのが重要になっていますね。

高宮:
一方で、誰がその価値を判定しているんだ、というのが問題化するじゃないですか。ソーシャルで自分の聞きたい情報しか聞かないという、エコーチェンバー現象みたいな。AIのハルシネーションなんかもある。“価値”っていうものの、“正しさ”をどう判定するのか、すごく難しくなってきているじゃないですか。

辻:
おっしゃるとおりです。

高宮:
情報の出し手としては、価値があるからと信じて出すし、価値あるものを出すというのはプロダクトをつくる側の矜持だと思いますが、必ずしもそう判定してもらえないという問題が出てきている気がします。

辻:
この5年間の検索エンジン各社の変化として、「人間の評価をそのまま検索順位の評価に使えるようになってきた」というのがあります。検索結果のクリック行動やログインしたユーザーのWeb行動など様々なデータをもとに、人間が良いと思っているコンテンツを直接評価してランキングできる。ただ、それでも検索エンジンが未熟な部分もあって正しく判定してもらえないことは多いので、正しく評価されるように配慮することは欠かせません。

そのうえで効率性も考える必要があります。SEO目的で記事を作ることが多いですが、事業フェーズによっては、潜在層にアプローチするようなSEOを意識したコンテンツ量産に注力することは最善ではない場合も多いです。

プロダクトの価値を潜在層にSEOで伝えようとしても、時間もかかりますし、それだけで10倍、100倍の成長のドライブをかけるのは難しい。もちろん、記事自体が主な価値というメディア系スタートアップは別ですし、どのような企業でも一定量のコンテンツで価値を伝えることは必須です。ただ、それを主な成長リソースとして考えているとうまくいかないことも多いでしょうね。

高宮:
スピード感をもって、大きな成長を目指すtoC向けスタートアップの場合、SEOを意識してオウンドメディアを作って、、、という施策が適していないことも多いと。

辻:
一般のBtoB企業などには、従来通りのオウンドメディアもまだまだ価値があります。ただスタートアップのように大きな成長が必要な企業には、誰でも書けるような記事を出すだけではうまくいきません。どうやってその企業の本来の価値、世の中に提供する価値が、そのまま検索されるようになるのか、というのを突き詰めるしかありません。

ただ、これも難しい。例えば、BtoB系サービスのスタートアップ企業の場合、顧客候補に伝えたい価値だけを追求してもうまくいかないことが増えてきました。検索エンジンが実際のユーザー行動を強く参考にするようになった結果、顧客候補の企業だけに向けた情報ではあまりにユーザーの評価の量が少ない。より幅広い領域をカバーする大企業のほうが有利な状態です。

だからといって、顧客にも事業にも全く関係のないものを作っているとあまりに効率が悪くて、結局それも成長ドライバーにはならない。ですから、そこの間でどうやって本来の価値を、見込顧客に伝わるようにしつつ、その周囲にもちゃんと評価されるように事業展開できるかがとても重要になっているのです。

高宮:
そういう意味でいうと、直接的な顧客だけではなくBtoBtoCのような、顧客の顧客からも評価されるような訴求をしていかないと、中々インターネット上で評価されないということなんですかね。

辻:
1年間に10~50%程度の成長を求めるのであれば、普通のBtoB企業なら”顧客”だけを見ていればいいんですが、それだとスタートアップが求める成長にはならないと思います。

ただ、本当に価値のあるBtoB企業においては、その事業が見込顧客の周辺ユーザーにも価値を持つものになっている場合が多い。検索での大きな成長を目指すのであれば、幅広い対象に価値を与えられるように考えて動くしかありません。

高宮:
そういう意味でいうと、直接お金をもらう顧客とか顧客の顧客だけでなく、マルチステークホルダー的な考え方、従業員や地域などESG※に近いような発想で周囲にいる全ステークホルダーを巻き込んで、その人たちからの評価を勝ち取らないと難しいということでしょうか?

ESG: 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字をとったもの。企業が長期的に成長するためには、ESGの3つの観点が必要だという考え方。

辻:
その通りです。そうしないと大きな動きになりにくいですね。例えば、医療用医薬を扱う製薬会社のお客さまは「病院」や「医師」ですが、SEOに強い企業は患者向けに正しい情報を届けようと疾患に合わせたWebサイトをたくさん作っていたりします。ただそれはきちんとした方針がないと無駄な投資にもなってしまいます。きちんとメイン事業へとつながるように設計しないといけません。

高宮:
アルゴリズムの進化で、検索エンジンが価値を正しく評価しようとする動きがでてくると、世の中の経営全般でいわれているESGみたいな思想と同じになってきて、インターネット上でも同じものが価値として評価されていく。実社会とインターネット上の価値の定義が、表裏一体になってきているというのが面白いですね。

辻:
実社会が成果に影響することはアルゴリズムとしても面白いですが、大きく成長する意欲のある、腹を決めて成長に踏み込んでいるスタートアップ企業は実際に成果につながりやすいので、そういう意味で楽しいですね。

高宮:
Googleが意思を持ってESG的な方向に寄せてきたのか、アルゴリズムが世の中で評価されているものの変化に合わせてチューニングしてきたら自然とそうなってきたのか、どちらでしょう?

辻:
おそらく後者です。昔からGoogleはリンクを評価していました。ただ、もともとリンクがされるWebサイトを評価したいわけではなくて、人間が評価したいサイトを評価したいけれど、人間の評価なんて当時はわからなかった。

高宮:
昔は、現実との連動性が低いパラメーターしかなかったから、リンクを評価するしかなかったと。

辻:
それが今はAIのおかげで現実と連動したパラメーターが使えるようになりました。出す内容が人間にとって価値さえあれば、そのまま検索エンジンに評価されることも増えました。

高宮:
AIが正しい価値を評価できるように、勝手にチューニングをしていく。

辻:
はい。そのあたりはAIの影響で変わりましたね。今はAIというと「生成AI」を指すことが多いですが、そうではないAIです。Googleはずっと前から人間のWeb上の行動データなどのビッグデータを機械学習に読み込ませて、AIで検索結果を作っていくことに注力していましたし。

高宮:
そういう意味でいうと、AIディストピアの思想は逆をいっていますね。

辻:
最近では生成AIを中心に語ると、人間がAIのために……のようなディストピアな話が増えています。とはいえ、いま主に世の中に影響を与えだしているAIは、少しずつではありますが素晴らしい流れの中にあると思っています。

スタートアップを支援するGCP Xという強力なエンジン

辻:
GCPさまとso.laの直接の取り組みは5年目になります。スタートアップへのSEO支援は価値があると体感していましたので、本格的に取り組みたいと思いまして高宮さまに連絡したのがきっかけでした。
その際、「GCP X」という動きを始めようとしていることを伺いました。最後に、この「GCP X」についても教えて頂けますか。

高宮:
VCとして「GCP X」というチームを作っていまして、それはいわゆるバリューアップチームで投資先をハンズオンで支援するチームです。

以前から我々VCが社外役員となって、投資先の経営者やCEOの壁打ち相手になったりすることが多くありました。ただ経営って他にもCPOやCFOなど、色々なファンクションがあって、それごとに専門家が必要なときがあるんですよね。そこに寄り添って支援していく体制を作っています。

我々VCは、最後は株を売却・EXITしていなくなってしまう存在なので、「魚をあげるよりも、一緒に魚の釣り方を考えよう」的な発想で、アウトソーサー的に代りにやってあげるというよりも、一緒にOSを作り上げ、スタートアップ企業が自走できるように支援しようとしてはじまりました。

GCP Xは、CxO採用、組織戦略、採用の仕組みづくりを中心にやっていて、他にも企業成長のレバレッジが効くところを、外部専門家ともパートナーシップを組んでやろうという考えがありました。なので、辻さんから話をいただいた時は”渡りに船”で。日本のスタートアップとインターネットは切っても離せない、インターネットとSEOは切っても離せない、その中でSEOといえば辻さんということで、辻さんにお願いするしかないよなと。

辻さんのサポートは投資先に非常に感謝されています。一般論でアドバイザーというと、当たり前なのですがコミットしていただいた時間の外で、事前に対象会社のことを調べる時間ってなかなかとれないじゃないですか?辻さんはめちゃめちゃ時間外で調べてきてくれるんです。プロとしてのアウトプットにこだわりがあるから、過剰なくらい価値をだそうと時間をかけてくれる。毎月2社しか支援枠がない中、すごい争奪戦ですよ(笑)

辻:
私もスタートアップの方々との話でGCP Xの支援が非常に助かっているという話を聞きます。その支援でいろいろな施策が動き出して、それがまたSEOにもプラスになることも多いですね。私もそのチームの一員というのは光栄です。

ちなみに、スタートアップがよく抱える問題として、採用もよく話題になります。GCP Xでの採用支援も多いのでしょうか?

高宮:
SEOをちゃんとやりましょうといいながら、社内でできる人間がいません、じゃあ採用しましょうというのがあるあるですよね。

辻:
それこそ十倍、数十倍を目指すSEOなら、体制作りから始めなければなりません。逆に大きい会社でも、やればいいのはわかるけれどエンジニアリソースが一切ない、採用不可能みたいな状況でどうしようもない時があります。

スタートアップ企業は、それこそ慎重に考える必要はありますが、投資できるお金があって、GCP Xで採用ノウハウも得てできるというのは、成長に着実につながる支援だと思います。

高宮:
さらに本来、機能としてSEOはマーケティングなんでしょうけど、開発が伴うからプロダクト側とも密接に絡む。いわゆるマーケティングの4Pがある中で、どの部門が主管となってプロダクトマネージャーとなり、主導権を握るのかみたいな話もあります。

その体制にあわせて、SEOチームをどこに置くのか。プロダクトが強い会社やプロダクトチーム配下に入れてもいいし、プロモーションチームと並列に置くとプロダクトとの連動性が弱くなるからダメとか、そういう話もあるからSEOは実は極めて組織論と密接なんですよね

辻:
初期の何も体制のない状態から、そこまで見据えて支援するのは素晴らしいです。私もそのスタートアップの成長により貢献できるよう、頑張らないといけませんね。

Faber Companyグループイン後のso.la 辻正浩が目指すもの

高宮:
ところで、辻さんはFaber Companyさんにグループインした後はどういう動きをお考えなんですか?

辻:
体制として大きく変わるわけではなく、今後もGCPさまとの取り組みは続けたいと考えています。あとは私もずっと最前線でやり続けられるわけではないので、将来のことも考えて数名の弟子を採用して私の知見の全てを教えていきたいと思っています。スタートアップの多様な支援も私の横で学んでもらって、5年後くらいに引き継げるように職人を育てていきたいですね。

高宮:
VCもそうなんですが、職人の技を拡大再生産するにはどうするべきかというと、結局は徒弟制度なんです。辻さんとはジュニアメンバーに職人技をどう効率的に伝承するか、などと以前から盛り上がっていましたよね。

うちでいうと、必ずパートナークラスにジュニアクラスのツーマンセルでチームを作って、しかもリソースプール制なので、なるべく色んなパートナーにジュニアがつくようにして、学べる機会を作っています。そこで多くのパートナーの技を見て、学んで、いわゆる守破離から、自分流を作りだすみたいな形でやっています。きっと辻さんの目指す所もそうかもしれません。

そして職人の数を増やすことは大切なんですけど、ファベルさんとの折角の座組なので、職人技で定型化できるものはプロダクト化して横展開できれば、日本のSEO全体が底上げされるんじゃないかな、なんて思っていたりします。

辻:
本当に仰るとおりです。高宮さんのやり方を以前伺いまして、そのような育成を目指したいと思うようになりました。独立してから15年、SEOを1人の職人として極めようとやってきましたが、今回の意思決定も弟子を育てるためであったりします。

そしてグループインするFaber Companyも「職人」ということを言い続けてきた会社です。「Faber(ファベル)」はラテン語で「職人」という意味があります。Webマーケティングの様々な領域のプロフェッショナルを「職人」と呼び、その職人技をプロダクト化して広くあまねく使えるようにする、というのをやってきました。

今回の新しい体制で、職人技を弟子に最大限引き継ぎつつ、プロダクト開発もできるFaber Companyを通してより多くの人に影響を与えられればと考えています。

高宮:
それは楽しみですね。お付き合いも長くなってきましたが、同じプロとして、後進を育成しつつも、いつまでも第一線で活躍していきたいですね。

辻:
はい!高宮さん、今後ともよろしくお願いします。

\日本のSEO・インターネットを支える仲間を募集中です!ご応募お待ちしています!/

辻さんの弟子にエントリー
株式会社so.laがFaber Companyにグループインした背景やこれからについては、Faber Company代表の古澤と辻氏の対談コンテンツで詳細に語っています。こちらも合わせてご覧ください。

【特別対談】辻正浩がFaber Companyにグループイン SEOの未来を創るこれから

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