ASO対策とは、アプリストア最適化とも呼ばれるアプリマーケティングの手法のひとつです。App StoreやGoogle Play ストアでユーザーがキーワード検索した際に、自社のアプリが上位に表示されることを目的に取り組みます。いわば、SEO対策のアプリ版です。
ASO対策とSEO対策には共通点も多いです。たとえば、ASO対策においてはプラットフォームにおける検索結果上の見え方を最適化することが重要になります。またGoogle Play ストアではキーワードとの関連性やアプリのユーザーエクスペリエンスが重要視されています。
本記事ではASO対策の概要や要素、各プラットフォームにおける具体的な対策方法について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
Webディレクター、SEOコンサルタントを経て、2013年に事業会社に入社。主にBtoB領域のデジタルマーケティングに携わる。2020年に独立。シニアコンテンツディレクターとして、株式会社Faber Companyでも鋭意活動中。▶︎Twitter
目次
ID=“01”>ASO対策とは
ASO対策とは、App StoreやGoogle Play ストアでキーワード検索された際に、自社のアプリが上位表示されるようにタイトルや画像などを最適化する、マーケティング手法のことです。
SEOのアプリ版ともいえる施策で、ASO(App Store Optimization)は日本語で「アプリストア最適化」と呼ばれています。各プラットフォームによって検索結果画面が異なるため、個別にASO対策を実施する必要があります。
ASO対策の要素
ASO対策では、まずアプリストア内のキーワード検索で自社のアプリを上位表示し、流入数を増やすための施策に取り組みます。次に、アプリストアの掲載情報を充実化させ、コンバージョン(アプリのダウンロード)につなげることが重要です。そのために以下の要素に基づいてASO対策を進めます。
- キーワード選定
- 検索結果におけるアセットの最適化
- ABテストによるCVR最適化(CRO)
- アプリの改善
①キーワード選定
まずは上位表示を狙うキーワードを選定します。アプリと関連性の高いキーワードを選定し、タイトルや説明文に反映することが大切です。たとえばポイントアプリなら「ポイ活」、体重管理アプリなら「ダイエット」などが考えられます。
キーワード選定時は、Apple Search AdsやGoogle キーワードプランナーなどの情報も参考になります。ツールを使うと短時間で多数の関連キーワードを抽出でき、ASO対策に効果的なキーワードを選定できます。ツールを利用する際は、検索ボリュームだけでなく、アプリとの関連性、実際にユーザーが検索するであろうキーワードを選ぶことが重要です。
②検索結果におけるアセットの最適化
キーワード検索された際に、ユーザーの目に留まってクリック率を最大化させるには、表示されるアセットが目立つように最適化することが重要です。たとえばApp Storeで「カーナビ」と検索すると画像の左側の画面が検索結果に表示され、上位表示されたアプリをクリックすると右のような詳細画面が表れます。「Yahoo!カーナビ」では、コンテンツに動画が使用されていてユーザーの目を引くように工夫されています。
SEOと同様に、検索結果や詳細画面でどのような要素が表示されるかを把握することが大切です。プラットフォームの仕様変更などによって検索結果に表示される内容が変わることもあるため、アプリストアの検索結果を定期的にモニタリングしておきましょう。またiOSやAndroidでは構成要素も見え方も異なるため、それぞれチェックする必要があります。
③ABテストによるCVR最適化(CRO)
アプリのアイコンや画像、動画、説明テキストなどのABテストを行い、ストア画面のCVR(コンバージョン率)を高める施策も重要です。コンバージョン率を最適化するための取り組みは「CRO(Conversion Rate Optimization)」と呼ばれています。
Googleは「ストア掲載情報のテスト機能」を提供しており、Google Play ストアでアプリを提供する際に利用することができます。テスト機能では一部のユーザーに対してABテストを実施でき、掲載情報ページの最適化を図れます。
④アプリの改善
アプリそのものの改善もASO対策において重要です。AppleもGoogleも共通してユーザーの評価やレビューを重視しているからです。
ユーザーの声を反映させた使いやすいアプリを提供することで、ユーザーエクスペリエンスは向上します。ストアの掲載情報だけでなくアプリを継続的にブラッシュアップすることで、ストア内でアプリを見つけてもらいやすくなるでしょう。
ASO対策を行うメリットや必然性
アプリを提供している企業であれば、ASO対策は必然的に求められています。ここではASO対策を行う3つのメリットを紹介します。
- 多くのユーザーがストアを検索してアプリをダウンロードする
- CVRの向上は広告施策との相乗効果を生む
- アプリそのものの収益性を高める
①多くのユーザーがストアを検索してアプリをダウンロードする
Appleの2022年のデータによると、App Store訪問者の70%近くがアプリを見つけるために検索を行っていることがわかりました。さらに約65%のダウンロードは検索後に行われています。
したがってアプリが多くのユーザーにダウンロードされるには、アプリストア内のキーワード検索で上位表示され、タップされるようASO対策に取り組むことが重要になります。
参考:ユーザーの意図をダウンロードに変える。|Search Ads Advanced
②CVRの向上は広告施策との相乗効果を生む
アプリストアでのCVRの向上は、広告施策との相乗効果をもたらします。十分にASO対策を行いCVRが高ければ、SNSやディスプレイ広告の費用対効果が高まるからです。
逆にASO対策が不十分でアプリのCVRが低ければ、広告の出稿費用を増やしたとしても効果はあまり見込めません。そこで広告施策よりも先にASO対策を実施し、CVRを高めておくことが大切です。
③アプリそのものの収益性を高める
ASO対策を通してユーザーエクスペリエンスを高め、アプリの継続率を高めることはアプリそのものの収益性を高めることにつながります。また後述する検索結果上の各種プロモーションは、検索結果でアプリを目立たせると同時にアプリの収益向上に貢献します。
App StoreにおけるASO対策
AppleはApp Storeにおける検索結果の順位を、「テキストの関連性」「ユーザー行動」などを中心に判断しています。ここでは、App StoreのASO対策に必要な要素を解説します。
- キーワード
- タイトル
- カテゴリ選択
- 評価・レビュー
- App内イベント
- App内課金プロモーション
- ダウンロード数アップ
①キーワード
キーワードの選択について、Appleは以下のように言及しています。
- キーワードの文字数の上限は100文字
- アプリの特長や機能をとらえたキーワードを選択する
- キーワードや複数のキーワードを区切るコンマの前後に、スペースを使用しない
- 商標登録されたキーワード、著名人の名前などを無断使用しない
- アプリに関連性のないキーワードを使用しない
キーワードの選択で重要な点は、文字数の上限と選び方です。ユーザーが入力しそうなアプリの特徴を表すキーワードを選ぶことで、「関連性の高い検索」で見つけてもらいやすくなります。
②タイトル
タイトル(アプリの名前)とサブタイトルについてAppleの見解を見てみましょう。
- タイトル(アプリの名前)の文字数の上限は30文字
- シンプルで覚えやすく、アプリの機能がわかるタイトルであることが重要
- 特徴的な名前をつける
- サブタイトルでアプリについて詳しく説明する
タイトルではアプリの具体的な説明は避け、サブタイトルで機能や特徴を説明することが大切です。
③カテゴリ選択
カテゴリの選択も重要です。カテゴリでは「プライマリカテゴリ」と「セカンダリカテゴリ」の2種類を設定でき、プライマリカテゴリによってApp Store内の「アプリ」と「ゲーム」タブのどちらに表示されるかが決まるからです。Appleはプライマリカテゴリの選び方について、以下のように言及しています。
- アプリの主な機能やテーマに最も合うカテゴリを選択する
- ユーザーが検索する見込みの高いカテゴリを選択する
- 類似したアプリが設定しているカテゴリを参考にする
④評価・レビュー
Appleはアプリのレビューの質と量のどちらも重要視しています。評価やレビューは検索結果やストアページに表示され、ユーザーに大きな影響を与えます。ユーザーからポジティブな評価やレビューを受けるために、Appleは以下の方法を推奨しています。
- アプリが使用され満足度が高いタイミングで、アプリへの評価をリクエストする
- ユーザーがフィードバックを送信しやすい仕組みを作る
- サポートの窓口や連絡先をわかりやすい場所に記載してネガティブな評価を防ぐ
⑤アプリ内イベント
アプリ内イベントとは、ライブストリーミングやゲーム大会などApp Store内で開催されるイベントのことです。アプリ内イベントを利用することで露出度が高まり、検索結果画面などでユーザーに見つけてもらいやすくなります。
また「Today」タブを開くと、「開催中の大型イベント」に「マリオカート ツアー」のイベントが大きく表示されています。
アプリ内イベントを提供するにはイベントの詳細やイベント用ページを提出し、Appleから審査を受ける必要があります。「マイアプリ」から審査に進めるので、必要事項を入力して提出しましょう。
⑥App内課金プロモーション
App内課金プロモーションとは、アプリがダウンロードされていないデバイスからも、アプリの課金アイテムを購入できる仕組みのことです。20個までアイテムを掲載でき、プロモーション用画像や説明を載せることができます。自動更新サブスクリプションをプロモーションとして提供することも可能です。
App内課金プロモーションを利用すると、アプリのダウンロードを促せるだけでなく、課金によって収益アップにつながります。
⑦ダウンロード数アップ
鶏が先かタマゴが先かという話になりますが、ダウンロード数が多いアプリは上位表示されます。広告など他の施策と並行してアプリのユーザーを増やせば、ASO対策にもつながるでしょう。ただし、短期間で広告を大量に出稿してアプリのダウンロードを促す「ブースト広告」は、AppleやGoogleでも禁止されているので注意が必要です。
Google Play ストアにおけるASO対策
GoogleはGoogle Play ストアにおけるアプリの検索順位について、関連性と品質を評価しています。アプリの品質に関しては、Google Play ストア上の説明文からアプリそのもののユーザーエクスペリエンスまで含まれます。ここでは、Google Play ストアのASO対策に必要な要素を解説します。
- タイトル
- 説明文
- 画像や動画
- レビュー・評価
- プロモーション用コンテンツ
- 広告の表示方法の検討
- 継続率など主要指標の向上
①タイトル
タイトルにはなるべく短い言葉で、アプリの機能が伝わる内容を記載しましょう。長すぎるタイトルをつけてしまうと、デバイスによって最後まで表示されなくなるためです。特に以下の点には注意して作成する必要があるでしょう。
- タイトルの文字数の上限は半角30文字、全角15文字
- 別の組織と関係があるような虚偽を書かない
- 「アプリ オブザイヤー」、「No.1」などランキングを示す表現は利用できない
②説明文
説明文には、ユーザーがアプリで利用できる機能やサービスを記載します。説明文は検索結果画面やストアページに表示され、後半部分はスクロールが必要になるため、重要な文言は前半部分に記載しましょう。説明文に関する主なルールは、次のとおりです。
- 説明文の文字数の上限は半角4,000文字、全角 2,000文字
- 最初の数行しか読まないユーザーもいるため、簡潔に記載する
- ほかのアプリとの関係をほのめかす記載はしない
③画像や動画
ユーザーの目に留まりやすいアイコンや画像、動画を掲載しましょう。高画質のスクリーンショットや動画を載せることで、アプリの魅力を視覚的に伝えられます。また一貫性のあるストアページを作成するために、画像や動画のカラーテーマやスタイルを統一することが大切です。
④レビュー・評価
ユーザーからのレビューや評価を重視し、フィードバックをもとにアプリを改善することが重要です。ネガティブなレビューにはコメント返信することで、10人中7人のユーザーは評価をひとつ高めてくれるとGoogleは言及 しています。
⑤プロモーション用コンテンツ
プロモーション用コンテンツは、Google Play ストアで配信される期間限定イベント、スペシャルオファーなどを指します。プロモーション用コンテンツを活用すると、利用していないアプリ提供者と比較して、 28 日間のアクティブユーザー数が2%、収益が4%多くなるとGoogleは言及しています。
Google Play ストア内の目立つ場所に掲載されるため、新たなユーザー獲得につながります。
⑥広告の表示方法の検討
広告が表示されるアプリを提供している場合、広告がユーザーエクスペリエンスを損なわないように配慮する必要があります。たとえばアプリのコンテンツと親和性の高い広告を配信したり、コンテンツの邪魔にならない場所に設置したりすることが大切です。ユーザーエクスペリエンスが低下すると、収益性も下がる恐れがあります。
⑦継続率など主要指標の向上
Googleはアプリのユーザーエクスペリエンスなどを評価しています。そこで以下のようなKPIを設定し、計測することが大切です。
- ユニークユーザーの獲得数
- 解約率
- インストール数、アンインストール数
- 訪問者数
- コンバージョン数
- 1日のアクティブユーザー、リピーター など
代表的なKPIはGoogle Play Consoleで確認できるので、定期的にモニタリングして改善につなげましょう。
アプリにおけるディープリンクとは
ディープリンクとは、インターネット上から自社が提供するアプリの特定コンテンツへ直接遷移させるリンクのことです。ユーザーにとっては手間をかけずアプリにアクセスできるだけでなく、アプリ提供会社にとってはコンバージョン率アップにつながるというメリットがあります。また休眠ユーザーの掘り起こしやユーザーエクスペリエンスの向上にもつながるため、ASO対策に有効です。
まとめ
ASO対策を実施すると、自社のアプリがストア内で上位表示やダウンロードされやすくなり、コンバージョン率や収益の向上につながります。ユーザーの多くがアプリストアの検索機能を使ってアプリを見つけていることからも、ASO対策は必須といえます。SEO対策と共通する部分が多いため、アプリのストアページでも同様に取り組んでみましょう。
Faber CompanyではWebサイト改善の無料相談を受け付けています。SEOの改善点や集客方法などのご提案も承っていますので、お気軽にご相談ください。
著者PROFILE
Webディレクター、SEOコンサルタントを経て、2013年に事業会社に入社。主にBtoB領域のデジタルマーケティングに携わる。特に、リード獲得を目的とした自主調査においては7年間で累計400件以上を企画、獲得したリード数(企業の名刺情報)は述べ6万件を超える。2020年に独立。
シニアコンテンツディレクターとして、株式会社Faber Companyでも鋭意活動中。▶︎Twitter
監修者PROFILE
SFA導入コンサルからCRMベンダーのセールスに転身し、営業マネージャーに。その後Faber Company営業部長を経て、マーケティングを担うIMC部を設立。現在は執行役員として、営業・マーケティング部の統括やセミナー登壇などの活動をメインに行っている。
■ 講演実績:マーケティングアジェンダ/日経クロストレンドForum 他■Twitter:@tsuuky09