【海外カンファレンス現地レポート】brightonSEO 2023 September (Day 1 & 2) 〜 世界最大級のSEOカンファレンスにデュオ登壇~
更新日:2023.11.24 公開日:2023.11.10この記事では、当社の鈴木謙一、市川莉緒、安藤優登(筆者)が参加した brightonSEO. 2023 September カンファレンスの 2 日間分をまとめてレポートします。前日に開催された MeasureFest カンファレンスの現地レポートも併せてお読みください。
世界最大規模のSEOカンファレンス
弊社は2018 年からbrightonSEOに参加し、今回が 6 回目となる遠征です。
いまやPubconなどと並び世界最大級のSEOカンファレンスと称して差し支えない規模となっています。前日のFringeも多くの人が来ていましたが、やはり9/14、15がbrightonSEOのメインの日とあってか、Fringeとは比べ物にならない量の人が朝9時から会場に詰めかけます。眠気も吹き飛ぶ熱気です!
セッションの様子
カンファレンス冒頭、司会者のあいさつでは、音楽と照明のせいか日本のカンファレンスと比べても数段ワクワクさせられます。セミナー開催が多い弊社としてもぜひ見習いたいところです。
まず最初は、Meg Green氏による「Intent is king: creating content for the new-age SERP」に参加しました。
次のようなことを Megは語りました。
- 昔は簡単だったSERPsも今は複雑化している
└SGEを含めたくさんのUIをGoogleは常に試している
└検索は徐々に具体的になってきている/検索意図理解の解像度が上がってきている - コンテンツマーケターが複雑化するSERPsについていくためには、以下3点を考慮できているかを考える必要がある
①消費者行動を理解する
└Informative, Investigative, Navigational, Transactional、どのインテントに該当するか
└ターゲットとなる年代にはどの様な特徴があるか
└Z世代:特定ブランドに固執しない、企業倫理とCSRへの関心度が高い
└ミレニアル世代:ソーシャルメディアへの親和性が高い、企業倫理とグリーンイデオロギーへの関心度が高い
└X世代:リアル店舗での購入を好む、レコメンドやレビューを重要視する
②消費者に適した訴求スタイルとフォーマットを考える
└金融:ホワイトペーパー、Podcast
└ファッション:ビデオコンテンツ、インフルエンサーとの提携
└ペットケア領域:ローカルSEO、UGC
③消費者の意図に適した情報を提供する
我々SEO従事者にとって、検索意図を捉えたコンテンツを発信する重要性は今も昔も変わりません。しかし潜在顧客にリーチする手法という点においては、ユーザー行動が複雑化している以上、SEO記事だけでなく動画やローカル、音声配信など様々なコンテンツ提供を常に選択肢に入れる時代になったのだという事を改めて感じました。
続いて参加したのは、 Andrei Țiț 氏による「10 quick wins to improve your rankings using Ahrefs」。みんな大好きAhrefsによる、SEOにおける実践的Ahrefs活用Tips10選についてのプレゼンです。
Andrei はAhrefsを使った以下10コの分析手法を提示しました。
1.かんたんに着手できる改善キーワードを見つける方法
2.強調スニペットの表示改善余地を見つける方法
3.過去 6 か月でトラフィックが減少しているページを更新する方法
4.コンテンツギャップを明らかにする方法
5.トラフィックの少ない既存ページを更新する方法
6.404ページからリダイレクトさせる方法
7.内部リンク設置の提案を得る方法
8.リンクギャップを明らかにする方法
9.リンクされていないブランドの言及を見つける方法
10.サイト全体の重大な問題を見つける方法
Ahrefsは普段から使っているつもりでしたが、フィルタ機能など全然使いこなせていなかったと反省しました。(笑)コンテンツギャップ2.0やLink Opportunitiesなど上位プランでしか使えない面白い機能もぜひトライアルしてみたくなりました。
具体的な活用法を修得するには、実際に手を動かしながらトレースするのが一番。ぜひ以下スライドにてご確認ください。
ひそかに楽しみにしていたTikTokセッションにも参加しました。
Mathilde Høj 氏の「What is TikTok SEO and how do you utilize it as a part of your SEO-strategy? 」です。
TikTokはより広いユーザーへのリーチが可能であり、SEOコンテンツのように作りこんだ品質が求められるわけでもない。一方TikTokユーザーはコンテンツの独自性を好むためユニークネスを常に意識したほうが良い、とのこと。またWebサイト利用ユーザーと親和性の高い商材を扱っているのなら作成したTikTokコンテンツをWebに埋め込み相乗効果を狙った方が良い、とも語ります。
TikTokがSEOに与えたケーススタディも紹介されました。
Lidlというデンマークのスーパーマーケットの事例です。
”mochi ice cream”(餅アイスクリーム)の紹介をしたTikTokインフルエンサーの動画がバズった結果、”餅アイスクリーム”という検索キーワード自体の検索数が増加、自社サイトへの流入も激増したそう。
TikTokにおける”バズり”はなかなか意図的に計画的に起こせるものではないものの、SEOへの副次的効果も大きいプラットフォームであるため、親和性の高い商材を扱う企業は全体マーケ施策の1つとして活用するメリットは大きいのではないか、と提言しました。
TikTokを活用した企業戦略を練っている方はぜひ以下Mathildeのスライドを確認ください。
AIセッションは注目度も高いようで、brightonSEO最大である3000人収容の会場にて行われました。
Chat GPT、Bing、SGE以外にもLlama2、DALL·E、Stable Diffusionなど現在どのようなAIツールが台頭しているか、ケイパビリティが語られました。改めて今我々は時代の転換点にいることを感じます。AI系セッション内の動画生成AIを語るスライドにて、バレンシアガの洋服を人間に着させている動画を使う登壇者が多く疑問でしたが、2023年3月の動画「Harry Potter by Balenciaga」のバズりをきっかけにネットミーム化した、のが由来とのこと。
確かにバレンシアガの服って未来人っぽいかも(笑)
また、Aleyda Solis氏の「 Embracing AI in SEO: how to 10x your SEO leveraging AI bots」は、本カンファレンスを通し最も参加してよかったと思えるセッションの一つとなりました。
ChatGPTをはじめAIツールを駆使しSEO記事作成をいかに自動化できるか、極めて具体的な内容が語られます。
AIに完全に任せきった記事作成をしたところランキング評価がかえって下がった事例も紹介されました。
単純なコンテンツ執筆以外にも、日々の様々なSEO業務においてAIツールを活用できる余地がある、AIツールをSEO戦略に取り入れない企業は競合企業に次々に後れを取るだろう、とAleyda氏は力説します。
プロンプト作成においては5W1Hを意識して命令文を書きましょうと説明し、Aleyda氏作成のプロンプトフォーマットも公開されました。
他にも、次のような貴重なノウハウをAleyda氏は共有しました。
- ChatGPTのプラグインKeymate.AI、BrowserPilotなどを使用し最新の情報を出力する方法
- ターゲットキーワードのPAAに応えるテキストを出力/分類しコンテンツの網羅性を上げる方法
- 過去のGSCのデータから未来の流入数を予測させる方法
- 競合サイトコンテンツ内で言及されているトピックの爆速分析術
- 話題の最新動画からコンテンツ作成のヒントを得る方法
- Googleガイドラインに準拠する最も適したFAQを自動生成する方法
- 最適なmeta descriptionを一括出力する方法
- スプレッドシートで使えるChatGPTのアドオンについて
- XMLサイトマップのPHPコードを生成する方法
- リンク獲得先となる情報発信者を見つけ提携する方法
これだけ具体的にAIの活用事例が語られると、「AIツールを使い込まないと我々は金魚になる」というSoftbank孫正義の発言にも実感が湧いてくるというものです(汗)
Aleyda氏の資料はボリュームがあり、本記事では内容を全て紹介しきれません。
新時代におけるSEO戦略を勝ち抜きたいというWeb担当者の方は、Aleyda氏のスライドをぜひご一読頂けると良いかと思います。世界のTopマーケターの仕事ぶりをうかがい知ることが可能です。
Andrew Holland氏の発表 「The new SEO metric that makes SEO 10 x more valuable (and 10 x more effective) 」も興味深いものでした。
SEOの目的はオンラインでの誘導を通した”ブランドの向上”にあり、ブランドは2つの方向(Physical AvailabilityとMental Availability)から成長するものだと解説。SEOのゴールは「検索を通し自社ブランドを見つけやすく、思い出しやすい状態にさせる」事であると話します。
SEOはROIをベースに語られることが多い一方、ブランド力向上の観点から語られることは少ない事を指摘。SEOの成果を測る新指標として、Les Binet氏により2020年に発表された「Share of Search」を提案しました。
Share of Searchとは、獲得したいブランド(キーワード)の全ボリュームにおいて、他社に比べ自社のシェアがどれぐらいかを測るというもの。具体的にはAhrefsやSEMrushなどで指標を出していく形式。サードパーティーツールのデータを使うため正確さはベンダー依存になってしまいますが、SEOを測る新指標の提言としては非常に興味深いと感じました。
Andrewが提唱する新指標 Share of Search について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
Share of search volume: The CMO’s new best friend
マーケティング戦略に関するセッションではウェットな話も話題に出ました。
Jonathan Mooreいわく、CEOの半分以上は経理財務のバックグラウンドを持っているため社内政治においてCMOよりCFOの声がよく通る企業が多いとのこと。
マーケ部門出身のCEOは5-15%だそうです。少ない。。
だからこそ、我々Webマーケターは社内外への報告の際、財務経理の人が使う言語に合わせたコミュニケーションを取る事が必要不可欠だ、と強調しました。
CEOがCMOに求めるものはROIであり、バックリンクの数などではないと指摘します。新規顧客の獲得量やビジネスインパクトを投下コストと合わせ密にコミュニケーションし報告を上げる事で我々Webマーケターの存在価値をより評価してもらえるようになる、と説明しました。
社内で孤独になりがちなWebマーケターにとって自己肯定感を上げることは大切です。
Jonathanが行っていた実践的な方法も共有されました。
自分の机に以下の様な肯定感を上げる”SEO Positive Affirmation Card”なるものを作り、気分が落ち込んだときはパラパラ見てやる気を出していた、とのこと。意外とこういうの大事ですよね(笑)
UXセッションではMyriam Jessier氏の「Banish image bloat with an image performance budget 」にも参加しました。
SEO文脈での画像運用におけるパフォーマンスバジェットについてのプレゼンです。
筆者は本項目についてよく理解していなかったため良い学びとなりました。
SEOとUX改善は切っても切り離せない関係ではありますが、SEO×UXのセミナーはまだ少なめとあってか、400人キャパの会場がいっぱいです。
コンテンツ内に設置する画像の取り扱いについて、しばしば”肥大化”が起こるものだとMyriam氏は説明します。
デザイナーは最高品質のピクセル数を、マーケターは視覚的美しさを、Devチームはロード時間を短く、というように要望が際限なく肥大化していく問題が出てくるといったものです。
このような”画像の肥大化”を避けるために以下の様なパフォーマンスバジェット(画像パフォーマンス改善に関するボーダーライン)となる指標を導入することを推奨しました。
・パフォーマンスバジェットの指標になり得る要素
└画像の重さ
└画像のリクエスト時間(サーバー応答時間)
└画像のディメンション(縦幅×横幅)
└最初の画像表示までの時間
└全画像が完全に読み込まれるまでの時間
└Lazy load
└CLS
どの指標を採用するのかは運用するサイトによってケースバイケースである一方、この様なパフォーマンス改善のボーダーラインとなるしきい値を設けることにより、社内での画像運用をより円滑にしつつUX改善していく重要性を訴えました。
鈴木と市川のデュオ登壇
さて、今回弊社から登壇するのは鈴木と市川。掛け合い形式でのデュオ登壇です。2人同時に登壇するセッションスタイルは本カンファレンスを通して弊社だけだったはず。
セッションタイトルは「Unlock the power of heatmaps: supercharge your SEO and UX strategy」。ヒートマップを通した改善活動によりCTR・CV・エンゲージメントが大幅改善された事例がテーマです。
市川は今回がbrightonSEO登壇2回目。もはや緊張など微塵もしていない様子!鈴木は流石のプレゼン力。スライドの前をスティーブジョブスのように行ったり来たりしながらジョークを言い聴衆の笑いを誘っていました。
実はこの登壇の裏でJohnのリアルQAセッションがあり、ほとんど人が来ないかと思っていたのですが、予想に反し400人の会場が満員でした。SEOにおけるUXの役割やヒートマップ分析について、現地の関心度は非常に高いもので、プレゼンテーションを終えると会場は拍手喝采。セッション後には多くの人が追加の質問をしに鈴木、市川のもとにやってきていました。
業界関係者の方々からも前回に引き続きたくさんの好評をいただきました。
We’re rounding off the day at #BrightonSEO in the ‘UX’ session learning all about the relationship between UX and SEO and how to utilise that to benefit ours users from @RiRiIchikawa, @suzukik and @sarafdez and then getting Image Performance tips from @myriamjessier! pic.twitter.com/rPRcTCX96Q
— Majestic (@Majestic) September 14, 2023
Heatmap knowledge from @RiRiIchikawa & @suzukik at #BrightonSEO. pic.twitter.com/7USWaOxxZl
— Jack Chambers-Ward (@JLWChambers) September 14, 2023
Learning UX & SEO & Japanese at #BrightonSEO
What a cool & insightful presentation 👏 pic.twitter.com/7i97G3bPDl— Toni Navarro – SEO + PPC ⭐️ (@ToniNavarroYes) September 14, 2023
Love seeing my friends @suzukik and @RiRiIchikawa present as a duo… #brightonseo pic.twitter.com/trYpoqj5Qa
— Greg Gifford (@GregGifford) September 14, 2023
Some great tips from @suzukik and @RiRilchikawa on how to enhance the #UX for blog articles.#BrightonSEO #Saratakesoveroncrawl pic.twitter.com/viP1126s7i
— Oncrawl (@Oncrawl) September 14, 2023
セッションの合間にはJohn Muellerにインタビューすることもできました。
今話題のSGEについてたくさん質問を投げかけました。
「SGEが今後の検索にどんな影響をもたらすのか」
「SGEに対し我々はどんなアプローチを取れば良いのか」
「SGEの検索キーワードをGoogle Search Consoleから確認できるか」
などなど。。
JohnがTiktokerになろうとしてる!?なんて話もしています。
▼インタビュー動画はこちら
番外編
セッションの中休みに会場の周りを散策していると、ばったりDanny Sullivanに会いました!次の予定があるようで数分の立ち話しでしたが、その辺に大物がいる環境って改めてすごい。世界の最前線で戦っている気持ちになれますね(笑)
Demand SphereのCEOであるRay Grieselhuber(弊社代表古澤の知り合いでもある)もbrightonSEOに参加していたので一緒に食事をしました。
商品の注文は専用アプリをダウンロードし、新規会員登録の上、アプリで頼む形式だったのですが、商品を選んでいるとセッション切れでやり直しになったりと、なんともUX改善したくなるお店でした。(笑)
Ray氏は自分でエンジニアとして開発を行いつつプリセールスも行うたいへんパワフルな社長。弊社市川も開発チームリーダーとして彼とは境遇が近いこともあり、Ray氏のバックパッカー時代の話から多国籍チームをリードする難しさとやりがいの話まで、終始質問攻めでした。(笑)
セッションレポートは以上です。現地民のSEOへの高い情熱と圧巻のプレゼン力を肌で感じられた学びの多い遠征となりました。ちなみに2023年11月アメリカにて開催のbrightonSEO San Diegoにも弊社から参加を予定しています。次回カンファレンスレポートもお楽しみに!
著者PROFILE
株式会社Faber Company ウェブコンサルタント。400社以上のLP、ウェブサイトで施策コンサルティングを担当。Googleアナリティクス・ヒートマップ・データポータルを掛け合わせた、精緻なユーザー行動解析と改善提案を得意とする。CPA30%削減、CVR150%改善など実績多数。趣味は仕事と森林浴。 提案型ウェブアナリスト(R)。Googleアナリティクス認定資格者。