ドメインパワーという言葉は、日本国内で最近出てきた「造語」です。GoogleやYahoo!などの検索エンジンの公式用語ではありません。それゆえ、検索アルゴリズムなどにおいてもこの概念は無いと考えられます。
この「ドメインパワー」の最古の使用例は2000年代に見られたのち、この数年で一部のSEO界隈で広まりました。その語感と意味の分かりやすさから、現在ではライターをはじめとしたSEOに関わる層への使用が増え、一般用語となりつつあります。
では、なぜこのドメインパワーがSEOにおいて重要視されるようになったのでしょうか?今回はこのドメインパワーの重要性について、詳しく解説します。
ドメインパワーとはWebサイト全体の評価指標
ドメインパワーは、簡単に説明すると「Webサイト全体」を評価したものです。
SEOの知識がある方であれば、質の良いコンテンツページが評価され、結果として検索結果の上位に表示されることはお分かりいただけることでしょう。
ただ、質の良いコンテンツページだけが評価されるわけではありません。冒頭でもお話したように、「Webサイト全体」も評価対象となっていると考えられています。
つまり、Webサイトへの被リンク数やコンテンツの量や質、サイトの更新頻度なども評価の対象です。「ドメインの力も非常に重要である」と意識した上で、SEOを考えなければいけません。
ちなみに、ドメインパワーと類似する概念に、後述するSEOチェックツールを提供するMoz社が独自制定した評価指標である「DA(Domain Authority)」や、Ahrefs(エイチレフス)の独自指標である「DR(Domain Rating)」などがあります。
世界視点で見れば、これらの方が一般的に使われています。
なぜドメインパワーがSEOで重要なのか?
ドメインパワーがSEOの視点で重要な理由は大きく2つあります。これから説明する内容をしっかりと頭に入れておいてください。
検索上位にコンテンツが優先表示されやすくなる
ドメインパワーが強い、つまりWebサイト全体の評価が高いWebサイト(ドメイン)は、当然、Googleなどの検索エンジンからも「質の高いサイト」として高く評価されます。
例えば、同じジャンルの2つのWebサイトがあり、1つはドメインパワーが高く、もう一つは1つ目と比較して低いとします。その場合、仮に両方に掲載されているコンテンツの質が高かったとしても、サイト全体の評価の高いサイトが、ユーザーにとって価値あるサイトだと認識されやすくなり、結果として検索上位にコンテンツが優先表示されやすくなるのです。
このようなことから、コンテンツだけではなく、Webサイト全体の評価を上げることが、SEOにとっては重要だと言えます。
Googleなどの検索エンジンへのインデックス(登録)期間が短縮される
Googleなどの検索エンジンが持つクローラーに作成したコンテンツを認識し、検索エンジンに登録してもらうためには、自身のWebサイトを巡回してもらわなければなりません。
ただし、クローラーは特にドメインパワーの強いサイトを頻繁に巡回するので、ドメインパワーの弱いサイトへの巡回頻度は強いところに加え、格段に少なくなります。
その結果、ドメインパワーの強いサイトで公開した新規コンテンツは、巡回したクローラーにより検索エンジンに早期にインデックスされます。
反対に、ドメインパワーの弱いサイトは、新規コンテンツを公開してもインデックスに時間がかかることを意識しておいてください。
実際、ドメインパワーの強いサイトでは公開して当日、早ければ数時間でインデックスされますが、ドメインパワーの弱いサイトではインデックスまで1週間以上かかることがあります。
ドメインパワーをチェックツールで手軽に確認する
このドメインパワーを簡単に確認できるチェックツールをご紹介します。
このチェックツールの計測では、Webサイトの被リンク数をベースに計測されている場合が多いため、おおよその目安数値で考えるようにしてください。
チェックツールは無料と有料のものがある
ドメインパワーを計測するチェックツールには、無料で使えるものと有料のものがあり、それぞれの状況に合わせて、活用を検討するとよいでしょう。
無料で使えるチェックツール
無料で使えるチェックツールは次の3つです。
- パワーランクチェックツール
- Majestic
- Moz
パワーランクチェックツール
使い方はとても簡単です。「URLを正確に入力してください」と書かれている検索ボックスに調べたいサイトのURLを入力するだけで、ドメインパワーの計測が可能です。
特定のキーワードで上位表示されたサイトのドメインパワーを一括比較できる機能があります。
自社サイトや気になるサイト単体のドメインパワーを調査する際におすすめのツールです。
基本無料で利用可能ですが、アカウント登録をしない場合、24時間で1回しか使えませんので注意しましょう。
Majestic
出典:Majestic
自社サイトと競合サイトのドメインパワーや被リンク数を計測・比較できるチェックツールです。無料で登録できます。
本格的に分析を行ないたい場合は有料プランへの登録がおすすめです。
Moz
出典:Moz
無料で使うためには無料アカウント登録が必要です。
Moz社が制定した独自指標であるDA(Domain Authority)をリンクエクスプローラーで計測することができます。
有料で使えるチェックツール
有料プランの申し込みでのみ使えるチェックツールは次の2つです。
- Ahrefs(エイチレフス)
- Rank Tracker
Ahrefs(エイチレフス)
出典:Ahrefs
Ahrefsの有料ツール「Site Explorer」を使うことで、自社サイトと競合サイトの被リンク数やドメインパワー、キーワードごとの順位を比較確認できます。
また、Ahrefsの独自指標であるDR(Domain Rating)の数値も確認可能です。
次の4つのプランから選択できます。
プラン名 |
価格(税別) |
ライト |
約99ドル |
スタンダード |
約199ドル |
アドバンスド |
約399ドル |
エンタープライズ |
約999ドル |
※2023年現在
Rank Tracker(SEO PowerSuite)
出典:Rank Tracker
Rank Trackerは、ワンストップSEOソフトウェアであるSEO PowerSuiteの機能の1つです。
多くのチェックツールではGoogleの順位しか追跡できないことが多いですが、このチェックツールでは、競合サイトの分析から、キーワードの検索順などをGoogle以外の検索エンジンも多数含めた結果を確認することができます。
実際、アマゾンやマイクロソフト、GE、IBM、シーメンス、インテルなど、世界的な有名企業が活用しているツールです。
ドメインパワーは最低でも「30」を目指す
SEOで成果を出すために必要とされるドメインパワーの数値は、最低でも「30」を目指しましょう。ドメインパワー数値の30から50が、SEO対策で最も効果が出やすいとされています。
ドメインパワーを高める方法
ドメインパワーを高める最短ルートはありません。
今ドメインパワーが強いWebサイトも、立ち上げた当時から強かったわけではありません。日々コツコツと積み上げてきた結果です。
まずこれを頭に入れた上で、これから説明する方法を実践してみてください。
良質なコンテンツ(資産)を増やす
Webサイトのテーマに沿った良質なコンテンツが多く存在しているほど、クローラーから評価されやすくなります。
ユーザー視点で見れば、欲しいコンテンツが数多く存在しているサイトは、サイト全体の評価が上がります。
ただし、やみくもにコンテンツの数を増やせば良いわけではありません。サイトテーマと関連性の低いコンテンツを掲載したり、低品質なコンテンツでは評価が上がりません。
Googleなどの検索エンジンはユーザーファーストを掲げています。
ユーザーにとって有益ではないものは、当然ながら高く評価されることはありません。
ユーザーの検索意図に沿った、質の高いコンテンツを作ることが大切です。
現状、質の低いコンテンツがあるのであれば、質の高いコンテンツを更新することもドメインパワーの向上につながります。
良質なコンテンツを作り、ユーザーとクローラーの双方に評価されるサイトにしていきましょう。
Webサイトの流入数を増やす施策を打つ
Webサイトを訪れるユーザーを増やすこともドメインパワーを強くすることにつながります。ここで注意して欲しいのが、アクセスを集められれば何でも良いということではないのです。
ユーザーが本当に欲しい情報を提供し、価値あるサイトであると正しく発信することです。
流入数を増やす施策は次の5つがあります。
- タイトルやページ内にSEOキーワードを入れた、魅力あるタイトルにする
- サイトの更新頻度を高める
- スマホでも見やすいサイト構成にする
- サイト表示のスピードを改善する
- SNSを使い情報を拡散する
まず、今の段階で出来ることから着手していくと良いでしょう。
長期間Webサイトを運営する
運営期間の長いサイトほど、SEOの評価も高くなり、ドメインパワーも高くなる傾向があります。運営期間はサイトを立ち上げてから放置していても、ドメインパワーは高くなりません。
検索エンジンのクローラーから高い評価を得るのは、定期的な更新をしながら長く運営してきたサイトです。
今はドメインパワーが低くても、定期的に更新し運営をしっかり行なっていけば、必ずドメインパワーは高くなっていきます。
質の良い被リンク獲得に尽力する
ドメインパワーを高める基本的対策は、質の良い被リンクの獲得です。
被リンクを数多く獲得することで、「このサイトは役立つサイト」だとクローラーに評価される傾向があります。その結果、ドメインパワーが高まるのです。
質の良い被リンクを獲得するためには、質の良いコンテンツを作り、SNSを活用するなどの工夫が必要です。
日々の良質なコンテンツ作りやSNSでの発信が、質の良い被リンク獲得につながります。
ただし、有料の被リンクの購入は避けるべきです。例えば運営しているWebサイトと関連性の低いサイトやサテライトの被リンクは評価されず、場合によってはGoogleのガイドライン違反でペナルティの可能性すらあります。
安易に中古ドメイン購入を選択するのは逆効果
ドメインパワーを高めるために近道はなく、日々地道な取り組みが必要ですが、ドメインパワーを短期間に得ようとする方法として、中古ドメインを購入する方法があります。
確かに、中古ドメインであれば既に運用歴のあるサイトなので、ドメインパワーも高くなっているサイトも中にはあるでしょう。
ただし、注意しないといけないのが、中古ドメインにはいい評価だけではなく、過去にペナルティを受けたようなドメインも販売されていることです。
サイトのテーマに沿うドメインだからと安易に購入するのではなく、安心できる中古ドメインの購入サイトを探すなど、慎重に調査をするようにしましょう。
また、ドメインパワーが高い中古ドメインを購入しても、中身のコンテンツの質が低ければ、いずれドメインパワーは下がってしまうことにも留意してください。
ドメインパワーだけが評価指標と考えてはいけない
ここまで解説すると、ドメインパワーだけがSEOの評価指標だと考えがちになりますが、そうではありません。ドメインパワーとは、あくまでドメインの持つSEO観点での強さ、優位性を言語化したものに過ぎません。
この他にも、次のような視点が必要です。
- 検索意図を満たすコンテンツが存在していること
- Googleの品質評価ガイドラインである以下4つの観点(EEAT)で優れていること
- Experience(経験)
- Expertise(専門性)
- Authoritativeness(権威性)
- Trustworthiness(信頼性)
- コンテンツにユニーク性があること
ドメインパワーを高めることだけに専念するのではなく、まずはユーザーにとって価値あるコンテンツを提供しているかを軸に取り組んでいくとよいでしょう。
ドメインパワーに関するよくある質問
ドメインパワーに関するよくある質問について、解説します。
ドメインパワーが0の場合、どうすればよい?
当然ですが、新たに立ち上げたWebサイトのドメインパワーは「0」です。ただ、ドメインパワーが「0」だから、公開コンテンツが検索エンジンの検索結果に表示されないということはありません。
ドメインパワーが強ければ、それだけWebサイトの情報やユーザーからの信頼が高いと評価されていますので、検索結果の上位に表示されやすく、かつ優先的に検索エンジンにも早期でインデックスされやすくなります。
ドメインパワーを急激に高める方法はありません。日々良質なコンテンツをWebサイトに公開するなど、着実にドメインパワーを高める努力をしていくようにしましょう。
ドメインパワーが増えるのにどれぐらいかかる?
ドメインパワーを急激に高める方法はありません。最低でも3ヵ月は必要です。ただ、何も施策を打たずに3ヵ月間運用すればドメインパワーが増えるわけではありません。きちんと対策を実施していることが前提です。
結果が出ないからと短期で諦めず、長期視点でWebサイトを運営する意識を持つようにしましょう。
ドメインチェックツールは無料と有料でどう違う?
無料で使えるチェックツールは機能制限や、一日に検索できる回数に制限があります。有料ツールの場合は、有名企業が活用しているほど詳細な分析が可能であり、ツールの機能も充実しています。
実際の業務で活用するのであれば、有料プランで申し込むと良いでしょう。
中古ドメインを購入してドメインパワーを上げても大丈夫?
中古ドメインの購入は非常に慎重な判断が必要になります。たしかに中古ドメインは既に運用実績のあるドメインで、ドメインパワーもあります。
ただし、中古ドメインは良い評価だけではなく、過去にペナルティ評価を受けている可能性があります。
新たに立ち上げたWebサイトのテーマに合致しているからといって、安易に飛びつくのは危険です。購入するにしても、信頼性のある中古ドメインの販売サイトをしっかりと調査することが大切です。
仮にドメインパワーが高い中古ドメインを購入しても、コンテンツの質が低ければ次第にドメインパワーが下がっていくことにも注意しましょう。