シリーズ形式でお伝えしているオウンドメディア業界別事例。今回は、旅行業界のオウンドメディアを紹介します。自社のオウンドメディアに活用出来るポイントをぜひ見つけてください。
潜在層が具体的に旅行を検討するきっかけ作りを
これまで、旅行代理店やホテルなどの宿泊施設のWebサイトは、旅行先を決めた人が航空券や宿泊先を予約するために訪れるものでした。
しかし、行き先が決まっている人以外にも「旅行に行きたいけれど、どこへ行くか迷っている」「ちょっと旅に出たいなあと思っている」ユーザーはたくさんいます。そういった潜在ユーザーが「行き先」の候補を見つけられるように、各地の特色や魅力を伝えるコンテンツを用意することが旅行系オウンドメディアに求められる役割の1つになります。さらに「日頃の疲れを癒やしたい」など息抜きを求めているユーザーにも、リフレッシュの手段としての「旅」を提案するような、何かの手段として「旅」「旅行」を想起していなかったユーザーへ需要喚起するようなコンテンツも有効ではないでしょうか。
☑︎まずはコンテンツマーケティングの基本を知る:成功するコンテンツマーケティングとは?
旅行にまつわるコンテンツマーケティング・オウンドメディア事例6選
では、具体的に事例を見ていきましょう。
① We Love Expedia
旅行予約サイトを運営するエクスペディアのオウンドメディアです。
◆コンテンツ
アジア・アメリカ・ヨーロッパなどエリア別におすすめスポットやおすすめグルメを紹介する記事が掲載されています。また、旅行先として人気のビーチや世界遺産をテーマにした記事の特集もあります。記事は、世界各地に住んでいる編集者やライターが執筆しており、プロフィールも顔写真付きで公開されています。
◆コンバージョン
各記事の最後には、おすすめ記事の紹介と合わせて、記事中で紹介した国のホテル・航空券・ツアーを探せるサイトへのリンクが設置されています。また、オウンドメディアのトップページでは、スペシャルクーポンが届くニュースレターの登録フォーム、航空券やツアーの検索フォームが固定で設置されています。
◆会員登録の導線
オウンドメディアに会員ページはありません。本体サイトには、会員組織があります。会員登録による特典は、会員価格での割引、会員限定の特別セール情報の受け取りなどです。
◆ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
オウンドメディア専用ではありませんが、エクスペディア全体でFacebook、Twitter、Youtubeのアカウントを持っており、中でもオウンドメディアの更新情報を発信しているFacebookは、640万人以上からフォローをされています。Youtubeでは、旅行ガイド動画・世界各地をドローンで空撮した動画などを発信しています。
※ 関連リンク
「まだ行き先は決まっていないけれど旅行に行きたい」と思っている方にアプローチするために、「We Love Expedia」は生まれました。下記の記事から、エクスペディアが持つSEOについての考え方やオウンドメディアの評価基準を知ることができます。
「検索キーワードこそ読者のニーズ! オウンドメディアでSEO対策をすべき理由とは」(SELECKより)
② Skyscanner「旅行情報とニュース」
格安航空券の比較サイトを運営するSkyscanner Japan(スカイスキャナージャパン)株式会社のオウンドメディアです。本体サイトのドメイン配下にコンテンツが置かれています。
◆コンテンツ
時期や目的に合わせたおすすめの渡航先や、旅をお得に楽しむための裏ワザ、世界のお祭りのレポートなどが発信されています。記事を書いているのは、地球の歩き方のWeb特派員の方です。「【決定版】スカイスキャナーで最安値の航空券をゲットする方法」のように、ユーザーからよく寄せられる質問への回答として執筆された記事もあります。
◆コンバージョン
各記事の中に、本体サイトへの導線が散りばめられています。「◯◯への格安航空券をチェックしよう」「◯◯へはどうやって行ける?」「◯◯まではいくらで行ける?」など、ユーザーの心境とリンクするコピーと記事になじんだバナーが興味を喚起させます。他に、記事の下部ではメールマガジンの登録フォームや、格安航空券の検索フォームが設置されています。
◆会員登録の導線
ニュースページにおいて会員ページはありませんが、本体サイトでは会員組織があります。Yahoo! やFacebookのアカウントを用いて会員登録することも可能です。他に、メールマガジン登録者も集めており、登録すると人気の旅行先情報やお得なキャンペーン情報が送られます。
◆ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
skyscanner全体のFacebookアカウントを持っており、910万人以上の方からフォローされています。美しい写真を掲載して「ここはどこでしょう?」とフォロワーに問いかけるクイズ記事には、多くのコメントが付いており、またフォロワーから寄せられたコメントに対してはFacebook運用担当者が返答をしています。
※ 参考URL
「We Love Expedia」同様、潜在層と接点を作るためにオウンドメディアの取り組みを始めたようです。旅行記事は特に、特化したメディアも多く、読者から求められる情報を独自性のあるコンテンツとして発信することが求められます。またミエルカも導入いただき、ユーザーの検索意図に添うコンテンツづくりを実施しています。
・「Skyscanner Japan株式会社様にコンテンツマーケティングツール『MIERUCA(ミエルカ)』を導入いただきました」
③旅行情報ブログ 旅ブロ
海外・国内旅行の予約サイトと旅行代理店を運営している株式会社エイチ・アイ・エスが運営するオウンドメディアです。
◆コンテンツ
エイチ・アイ・エスの海外支店担当者が更新しているオウンドメディアです。ブログ形式で、毎日世界各地からレポートが寄せられています。おすすめのおみやげ屋さんや飲食店の紹介などコンテンツは多岐に渡りますが、旬のイベントの告知や、世界各地の季節にちなんだ文化(クリスマスなど)を比較できるような記事もあります。記事のテイストは、「旅ブロ」というタイトルどおりブログ調であるため、身近な人の日記を読みながら世界のことを知ることができるような気分を味わうことができます。
◆コンバージョン
記事中で紹介したスポットや施設の詳細情報など、時折関連リンクもありますが、CTAというには控えめです。各記事にはテーマタグが付けられており、同じテーマの記事が表示されるようにはなっています。その他、ページ右側に固定で、旅行商品や格安航空券の検索ページへ遷移するバナーリンクが敷かれています。
◆会員登録の導線
オウンドメディアに会員登録導線はありません。本体サイトでは、海外旅行等の予約に会員登録が必須となっています。会員登録すると、マイページから予約商品や過去の旅行履歴の確認ができます。
◆ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
Facebook、Twitter、Instagramのアカウントを持っており、中でもInstagramに注力しています。Instagramでは、旅など特定のテーマに基づいた写真を募集し、特に良かった9枚の写真を、HISの公式InstagramアカウントとHISが別途運営しているオウンドメディア紹介するという企画を行っています。 さらに、Instagramで募集した写真の中から特に良かったものは、別途運営している「Like the World」いうオウンドメディアでも紹介しています。こちらメディアは、主にInstagramを利用している女子を対象にしており、フォロワーから寄せられた色鮮やかで美しい写真とともに世界各国のフォトジェニックなスポットや料理を紹介しています。
④タビタツマガジン
海外現地ツアー・アクティビティの予約サイト「タビタツ」を運営する株式会社RisingAsiaのオウンドメディアです。
◆コンテンツ
コンテンツは主に、現地在住の日本人が選ぶおすすめのお土産や、穴場スポット、アクティビティについて紹介するものが主です。紹介するレストランやアクティビティには、必要金額やアクセスなど、ユーザーが行き先として具体的に検討するために必要な情報が添えられています。各記事のPVも表示されているので、何から読んでいいか迷う方はまず人気の記事から選べるようになっています。
◆コンバージョン
記事内では、内容に関連するツアーが紹介されており、すぐにツアーの詳細を確認できるようになっています。記事下部では、ソーシャルシェアボタンとおすすめ記事のリンクが置かれています。また、記事右側では固定で週次のアクセスランキングが掲載されています。
◆会員登録の導線
オウンドメディアに会員登録導線はありません。本体サイトでは会員登録が必須となっており、登録はYahoo! やFacebookのアカウントでも可能です。
◆ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
「タビタツマガジン」専用のFacebookとTwitterのアカウントを持っています。更新はTwitterがメインのようで、タビタツに関連するニュースの発信やタビタツマガジン読んだユーザーが書いている感想のリツイートなども積極的に行っています。 旅行系のオウンドメディアであれば、記事タイトルにどこの国のことを書いているのかを明記している場合がほとんどです。タビタツマガジンは多くの記事で「2回目の台湾ならここがおすすめ」「家族連れにおすすめ!」「歴史好き集まれ!」などのタイトルを設定し、ターゲットユーザーが自分向けの記事だと理解しやすくなっています。
⑤マイフェイバリット関西
鉄道会社である、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)が運営するオウンドメディアです。
◆コンテンツ
関西・北陸・せとうちエリアのおでかけ情報を掲載しているメディアです。鉄道会社が運営しているメディアということもあって、季節のイベント情報に限らず、身近なパン屋や鉄道沿線の街や風景についてなど、その土地に住む人がふと足を伸ばそうかと思えるような、身近な情報発信も大事にしています。一方で、プレミアムフライデーの過ごし方を提案するコンテンツも用意するなど時事ネタも取り上げています。
◆コンバージョン
各記事では、文中に出てくるスポットの詳細情報やアクセスが記されたページへのリンクなどが貼られています。また、記事下部にはマイフェバのアプリダウンロードを促すリンクや、日帰り旅行にお得なきっぷの紹介ページへ遷移するバナーリンクが置かれています。
◆会員登録の導線
登録無料の会員制度があります。特典は、記事のブックマーク機能・会員限定のキャンペーン参加など。また、スマートフォンから参照するユーザーのために、アプリもあります。アプリを起動すると、ユーザーの現在地周辺にあるおすすめスポット情報が表示されます。また、実際にそのスポットへ足を運んでチェックインをすると、マイフェバ専用のコインが貯まり、プレゼントに応募できる機能も付いています。
◆ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
SNSのアカウントは無いようです。 ※ 参考URL読むとおでかけしたくなるコンテンツだけでなく、実際におでかけを促すアプリのしくみまでも網羅しているところが特徴です。記事一つひとつは、文章が多すぎず写真とデザインも多用されたコンテンツであるため、雑誌感覚で楽しく読むことができます。
⑥ 旅の効能
全国に旅館やリゾートホテルを展開する株式会社星野リゾートが運営するオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
星野リゾート代表の星野佳路氏が、各界の著名人と対談するコンテンツです。対談相手は三ツ星シェフ、歌手、Airbnb Japanの代表取締役などさまざまで異業種の方がほとんどですが、どの対談も観光・旅などのテーマをもとに実施されています。書籍も出版しており経営者として露出の多い、星野氏が代表だからこそ制作できるコンテンツであり、対談を通して読者に新たな知見や発見を与えつつ、タイトルどおり旅の効能を伝えるメディアです。
◆コンバージョン
各記事の下部には、サムネイル付きでバックナンバーが並べられています。さらにその 下部のリンクからは、「場所」「目的」「旅のスタイル」などから、星野リゾートの施設を検索できるページへのリンクが掲載されています。
◆ 会員登録の導線
オウンドメディアに会員登録導線はないようです。本体サイトには「星野リゾートアカウント」という会員組織があります。星野リゾートの全ブランド共通のアカウントであり、2回目以降の宿泊予約の際に入力の負担を軽減できるメリットがあります。
◆ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
オウンドメディア専用のSNSアカウントは持っていませんが、星野リゾート全体でFacebookを持っており、Twitterアカウントは一部施設ごとに持っています。Facebookページでの発信内容は、宿周辺のイベント情報、新施設のオープンやリニューアル情報の案内などです。2017年5月からアカウントを開設したInstagramでは、星野リゾートに宿泊した際の写真を掲載しているフォロワーの方の写真のリポストもしつつ、宿や宿周辺の美しい光景を発信しています。 他に、「大人の自由な一人旅」というオウンドメディアのようなコンテンツも運営しています。「一人旅」というキーワードで検索すると上位に表示されるこちらのコンテンツでは、エリアやジャンル別におすすめの一人旅プランが紹介されています。
旅行のニーズを喚起するオウンドメディアを
すでに「箱根の温泉にいきたい」「ハワイの海を満喫したい」など、行き先もやりたいことも決まっているユーザーは、パッケージツアーや宿泊施設、移動手段などを手配したいと考えているはずです。「予約を完了したい」意図が強いので、コンテンツでのリーチは難しいかもしれません。
オウンドメディアやコンテンツマーケティングでリーチすべきは、「なんとなく旅にでたい!」「とにかく日常を抜け出して非日常を…」など、【行き先は分からない、どこでもいいけど旅行でリフレッシュする】という提案を待っているユーザーだと思います。
そうしたユーザーのココロを動かすには、「行ってみたい」と思わせる「魅力的な」写真は重要です。メディア運営を生業にしている企業を含めると、旅行系メディアは多く存在します。そのため、他のメディアにはない「現地でしか得られない生の情報」を含めた、オリジナルな情報発信が必須となるでしょう。
ミエルカユーザーでもあるアソビューさんも一次情報(取材)コンテンツを大事にされています。「余暇を楽しむ人を増やしたい」という想いのもと、コンテンツを読んで「お出かけしたくなるか」を指標に運営される「asoview! TRIP」もぜひご覧ください。
※アソビューさんのオウンドメディア運営についてのインタビューはこちら。
とはいっても、、、ヒトのココロを動かすのは、なかなか難しいですね。。。
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著者PROFILE
SFA導入コンサルからCRMベンダーのセールスに転身し、営業マネージャーに。その後Faber Company営業部長を経て、マーケティングを担うIMC部を設立。現在は執行役員として、ミエルカのプロダクトマネージャーやセミナー登壇などの活動をメインに行っている。
■ 講演実績:マーケティングアジェンダ/日経クロストレンドForum 他■Twitter:@tsuuky09