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インハウスで加速するコンテンツマーケティング。縮小する年賀状市場でも流入数172%、注文件数114%を叩き出す富士フイルムの体制づくり

更新日:2023.2.16 公開日:2018.05.31

毎年約5%ずつ発行部数が減り続けている年賀状。競合各社がサービス縮小を余儀なくされる中、富士フイルムは2018年年賀状商戦において「写真年賀状サービス」の注文件数を前年比114%に伸ばした。 勝因となったのが、「ユーザーの検索意図」を正確に捉えたコンテンツを自社制作したことだ。これにより2017年12月の商戦期には、ECサイトへの自然検索流入数が前年比172%に増加した。同社のe戦略推進室・一色昭典氏をはじめとする同社の“写真年賀状ECチーム”、そして施策をサポートしたFaber Companyのメンバーとともに勝因を振り返る。

(左から)富士フイルム 角田旬氏、羽田悦子氏(FFBX)、一色昭典氏、吉原英昭氏(FFBX)/
Faber Company 月岡克博、大森和博
※FFBX:富士フイルムビジネスエキスパート

2018年商戦期は前年に比べ自然検索流入数172%。注文件数は114%に

―現場ディレクションを担当された角田さん、まずは単刀直入に2018年の写真年賀状ECサイトにおける成果をお聞かせください。

角田旬氏(以下、角田):ECサイトへのアクセスで最もボリュームの大きい自然検索流入数が172%と伸びたことが主因となり、注文件数を114%と押し上げることができました。こちらは「年賀状」単体ワードの検索順位推移を前年と比較したグラフです。昨シーズンまでは商戦期になると競合サイトが追い上げて順位を落としていましたが、2018年は逆に順位が向上しました。

―素晴らしい成果ですね。12月に入ってから常に上位をキープしています。

角田:年賀状の商戦期は12月メインの短期決戦です。9月に「今年はコンテンツマーケティングで勝負する」と決めて、ユーザーの検索意図の分析を始めました。注文件数110%を目標に据えて走り出しましたが、商戦期は生きた心地がしませんでしたね(笑)。しかし市場縮小の中、目標を上回る結果を出すことができて胸をなでおろしています。

「テールワードに込められたユーザーの想いに応えるOne to Oneの施策が、今回の成果につながりました」
(富士フイルム株式会社 e戦略推進室 角田旬氏)

―統括の一色さんはこの成果をどうご覧になっていますか?

一色昭典氏(以下、一色):12月だけの1カ月間で数億円の売上を左右する商材ですから、やはり心配でした。ここ数年、SEOに注力はしたものの成果にはつながっていませんでしたから。昨シーズンまでは、注文の集中する週末になると、リスティング広告出稿の担当から私に「このキーワードいくらで買っていいですか」「増額お願いします」と承認依頼の電話が入っていましたが、今年はほぼなかったんですよ。心配になって私から確認しても「注文数は順調。広告の追加はしなくて大丈夫です」と言われ、そのまま商戦期が終了。結果集計までヒヤヒヤでしたが、売上はきちんと上がっていました。ROIで前年比2割は良くなったと思います。広告費が浮いた分、違う施策に回せました。

「クリエイティブから広告運用まで、インハウス化を推進しています。インハウスを前提としたツールしか今は採用していません」
(富士フイルム株式会社 e戦略推進室マネージャー 一色昭典氏)

年5%ずつ市場縮小の中、コンテンツ施策にシフトした理由

―最近は年賀状を出す人が減っていると聞きますが、年賀状サービスへの影響は?

一色:大きいですね。年賀状発行枚数は、毎年5%程度の縮小傾向です。当社の写真年賀状サービスでも店頭販売は減る一方でしたが、その分ECサイトでの注文件数は増えていました。ただ、市場縮小の波に逆らえず、ECサイトの伸び分でカバーできない状況が続いております。

日本郵便が発表している年賀状発行部数の推移。2003年の約44億6千万枚をピークに減り続けている。

インハウスを推進する目的は、コストカット・スピード感・ノウハウの蓄積

―市場縮小の中、今回SEO、中でもコンテンツマーケティングに注力したのはなぜですか?

一色:ECサイトで写真年賀状を注文するお客様は例年、自然検索流入が多いのです。自宅のプリンターで作る方法を含め、「年賀状 印刷」などで検索するユーザーをいかにサービス認知につなげ、写真年賀状の注文につなげるかが課題でした。また年賀状離れが進む中、マス広告よりも、コラムなどの読み物のほうがナーチャリングできる可能性が高いと考えたことも理由です。

―年賀状を出す層を厚くするということですか?

一色:はい。写真年賀状ECサイトは現在、結婚や出産をきっかけに年賀状を出し始めた/再開したというお客様からのご注文がメインです。今後はさらに、年賀状を出した経験のない若年層にまで需要を広げる、つまり「年賀状を出すことの価値」を伝えて文化を守っていくことも、リーディングカンパニーとしての一つの役目と考えていました。しかし成果につながるのは数年先。この目的でテレビCMなどマス広告を打つのはROIが合いません。そこでリスティング広告と並行しつつ、3年ほど前から地道に「年賀状の由来」など文化を伝えるコンテンツや、年賀状づくりに役立つ情報コンテンツの制作に取り組んできたのです。

年賀状の文化的な背景やSNS・メールと違う「良さ」もコンテンツで訴求(左)、お役立ちコンテンツで取り上げたキーワードの例(右)
※クリックして「富士フイルムの年賀状」コラム一覧へ

―コンテンツはどのような体制で作られていたのですか?

一色:今年は私の統括する本社e戦略推進室と、富士フイルムビジネスエキスパート(FFBX)社の合同チーム3名で担当してもらいました。e戦略推進室は、グループ全体で約280ある事業会社、販売会社を横軸でつなぎ、デジタルマーケティングを推進する部門です。一つの事業で試した知見を別事業でも横展開したり、商品開発につなげたりする役目を担っています。 デジタルマーケティング強化にあたって、「インハウス(自社制作・運用)化を推進したい」という構想から、FFBXに人材を集めていました。その中で年賀状ECのコラムページは3年前から羽田が、注文ページは吉原がそれぞれ担当。そして今年から、他社ECでの経験を持つ角田をマーケティング担当としてアサインしたのです。

―なぜ外注せず、インハウス化にこだわられたのでしょう?

一色:理由は大きく分けて3つです。①コストカット、②スピード感、そして③ノウハウの蓄積。特に③は重要です。クリエイティブから広告運用まで代理店にお任せでは、他事業でも横展開できるようなノウハウが社内にたまりません。さらに昨今のデジタルマーケティングでは、アドフロード(botなどによりインプレッションやクリックを水増しする不正広告)対策や、アドベリフィケーション(意図しない場所への広告配信によるブランド毀損の防止)などが課題です。インハウスなら社内の信頼関係の中で、高速でPDCAを回していけるというメリットもかなり大きいと考えています。

手塩にかけたコンテンツが、検索意図の分析で花開いた今シーズン

―コンテンツ担当の羽田さん、昨シーズンまでどのように制作してこられたかお聞かせください。

羽田悦子氏(以下、羽田):Google Search ConsoleやGoogleトレンドから抽出したキーワードを参考にしていました。またメインの顧客層である子育て中のお母さんとの会話など、身の回りの生活からもテーマを拾っていましたね。制作はけっこう感覚に頼った手探りだったと思います。

「人に役立つコンテンツなら、いつか結果もついてくると信じて作り続けてきました」
(富士フイルムビジネスエキスパート株式会社 羽田悦子氏)

一色:羽田はお客様目線に立ったリアルなマーケティングに強いんですよ。そんな羽田の右脳の感覚的なマーケティングセンスを、今年は「MIERUCA(ミエルカ)」を導入して検証して、ロジック化できた感がありました。

―ミエルカ導入のきっかけは?

一色:あるイベントでFaber Companyの月岡さんと出会い、ミエルカを見せてもらったのです。ユーザーの検索意図をまさに“見える化”して、コラムページリリース後の効果検証や改善までできるツールだったので「すごいな」と。直感的に「年賀状のコラムに向いている」と感じ、導入を決めました。

月岡克博(以下、月岡):一色さんにご状況を伺って、ミエルカで年賀状サイトを解析してみたのですが、抜け漏れているテーマ・トピックがたくさん見つかりました。これらを軸に既存コンテンツを改善していくだけでも、目標としておられる「年賀状」単体キーワードでの上位表示が叶うのでは、とご提案したのです。

「短いスパンでPDCAを回すインハウス体制が成功のポイントです」
(株式会社Faber Company エグゼクティブ・マーケティング・ディレクター 月岡克博)

吉原英昭氏(以下、吉原):僕は普段、羽田の隣の席に座っていますが、ミエルカを導入してからというもの、彼女が隣で「やっぱり合ってたよ」と言うのを頻繁に聞きました(笑)。羽田はこの2年間、まさに自分の頭の中から生み出してきたコンテンツの方向性が合っていたのか、その答え合わせをミエルカでやっていたと思うのです。そして足りない部分を補っていった作業が、2018年で狙った通りに成功したんじゃないかなと。

羽田:まさにその通りです。私は長年この道で、コンテンツの持つ力をずっと信じて書いてきました。今すぐお客様にならない方にも「年賀状っていい文化だな」と感じてもらえるように、一本一本こだわって作り続けてきたのです。 今回ミエルカの操作を学んでからは、毎日毎日、本当に時間があれば画面を覗いて検証していました。変な話ですけど、コンテンツは「子どもを育てている」ような感覚です。たくさんの方に見てもらえて、有益な情報を渡せるコンテンツに育ち、写真年賀状の注文につながったらこんなにうれしいことはない。今シーズンはコンテンツ育成のヒントが次から次にミエルカからもらえたので、本当に楽しかったです。

―コンテンツ改善はどのように進めましたか?

角田:週2~3回、私、羽田、吉原の3人でミーティングをして、その場で施策を決めてどんどん回していきました。このスピード感は本当にインハウスならではの強みだったと思います。SEO会社さんにコンサルに入っていただき、分厚いレポートをもらっても、データの羅列を施策につなげるイメージがなかなかつかめなかったんです。しかしミエルカは違いました。「今このページはこういう現状でこれが足りない、だったらこういう施策を打てばいい」と、色使いも含めてシンプルに視覚化してくれる。だから納得感がありました。

吉原:どのぐらいのスピード感かというと、ミーティングでコンテンツ改善を決めた直後に、羽田から「コラムはもう直しました!商品ページも直してください!」と追いかけられて、慌てて直すこともあったほどです(笑)。

「ユーザーニーズがはっきり見えたから、コラムページと商品ページの担当が一体のチームとして走れました」
(富士フイルムビジネスエキスパート株式会社 吉原英昭氏)

羽田:ミーティング中に3人で画面を見ながら修正をかけたことも多かったじゃないですか(笑)。わからない部分は月岡さんや、カスタマーサクセスの大森さんをメール、電話で質問攻めにして。セミナーの後もつかまえて教えてもらいました。

大森和博(以下、大森):テールワードでどこが取れてないのか、あるいは1ページ内で「読み手」が違うテーマ・トピックが混在しているページの整理や、別コンテンツへの切り分けなどをお伝えしたのを覚えています。

―例えばどのようなテーマですか?

羽田:ビジネス系のキーワードでは大森さんの指摘で多くの気づきがありました。検索キーワードが「年賀状 上司」だったら、部下が個人的に上司への年賀状の出し方やマナーを調べている。一方、「年賀状 ビジネス」「年賀状 会社」「年賀状 社外」になると法人として取引先やお客様に送る時のマナーや文例を調べている、といった具合です。これらを整理して完成したのが「上司・先輩への年賀状の文例は?ビジネス年賀状のマナーと書き方」です。上記いずれのキーワードでも検索上位に入ることができました。

※クリックして拡大
「年賀状 上司」と検索したユーザーの意図を、テーマ別に可視化したネットワーク図(2018年3月現在)。ユーザーが「子どもが生まれた上司への一言/文例」「宛名に役職は書くか」など、マナーを気にして調べていることがわかる(ミエルカで作成)。
【無料】自社ユーザーの検索意図を調べてみる

社会人に役立つ年賀状のマナーや文例、マナーを集めたコンテンツ
※クリックして「上司・先輩への年賀状の文例は?ビジネス年賀状のマナーと書き方」へ

角田:それぞれのコラムに対して、「このキーワードで検索してきた人は、こういう感じの人で、これを知りたがっているのでは」といった、ペルソナや行動パターンのアイデアを、大森さんはたくさん提示くださいました。

吉原:「年賀状 一言」も面白かったですね。商戦期の後半になると、「年賀状 文例」「年賀状 一言」の検索ボリュームがあがります。ミエルカで分析すると、「文例」は「明けましておめでとう」など印刷に入れる定型文を指し、「一言」は印刷されたものに手書きで添える文章を指すことがわかりました。

検索意図(ユーザーがその検索を通じて行いたいこと)を4つの大きな意図に自動分類・分析した「サジェストキーワードマップ」
ミエルカで作成)。

羽田:その吉原の気づきから書き換えたのが「家族から取引先まで!年賀状に添えるお役立ち一言メッセージ決定版」です。このコンテンツが商戦期後半に爆発的に流入を集め、サイト全体の底上げに貢献しました。

※クリックして「家族から取引先まで!年賀状に添えるお役立ち一言メッセージ決定版」へ

年賀状を出す段階で悩むのが添えるメッセージ。上司、親族、恩師、取引先など対象に合わせておすすめ文例を指南したコンテンツが12月後半から流入を集めた(ミエルカで作成)。

大森:準備期間3日でも改善後1週間以内に順位が上がるようなケースが多かったですよね。やはり的確にユーザーニーズに応えられたからだと思います。11月頃、一時順位が下がったとご相談をいただいて調べたことがありました。競合の施策やコンテンツ更新が影響した可能性はありましたが、競合9社と比較したファインダビリティスコア(検索エンジンからの“見つけやすさ”をスコア化した数値)は上がっていた。そこで「心配ありません。このまま改善を続けてください」とお伝えしたら、やはり商戦期までに回復しました。

「コンテンツ品質がもともと高かったので、意図がずれている部分を直せば成果は出ると思っていました」
(株式会社Faber Company カスタマーサクセスチーム エバンジェリスト 大森和博)

吉原:初めての私たちだけでは仮説に自信が持てない部分があるので、経験値が高い方に背中を押してもらえて助かりましたね。何か壁にぶち当たると「ああ、大森さんに相談だな」「月岡さんに聞こう」という感じでした。

羽田:施策自体は3人で回しましたけど、常に「後ろに強い味方がいる」「支えてもらっている」という安心感がありました。ミエルカにはチャットで質問できる機能がありますが、私一度も使ったことはないんです。迷うところはすぐ電話やメールして、すぐ答えがもらえましたから。「ミエルカ大学」などFaber Companyのセミナーにもかなり通いましたが、どの社員さんも距離が近くて、細かいことも気軽に質問できる雰囲気でした。

角田:ミエルカのサポートは基本的に、我々が自走することを前提に組まれている点が本当に良かったです。ミエルカはまず武器を与えてくれて、自分たちで戦う方法を教えてくれる。そして困った時一緒に戦ってくれるパートナーの存在まで含めてのパッケージでした。今後コンテンツ施策を他部署で横展開していく上でも、すごくいいスタートを切れたと思います。

月岡:ありがとうございます。ツールはきっかけを作るものにすぎません。ツールだけあってもその体制を作れなければ、残念な結果に終わってしまいます。今回お三方が数日単位という短いスパンでPDCAを回されたことが、成果につながった最大の要因だと思います。

―e戦略推進室とミエルカでは、今後どんな施策の展開を考えていますか?

一色:もともとのミエルカは、長い時間をかけてSEOに取り組み、効果をきっちり検証してくという理念に基づいて設計されていると思います。今後はそれに合致する商品、例えばフォトブックやデジタイズ(VHS等のアナログメディアを劣化から守るデジタル化サービス)にも展開しようと考えています。

月岡:検索エンジンのSSL化に伴ってGoogle Analyticsでも「コンバージョンキーワード」がほぼ見られなくなってしまいました。これを人工知能で推測し、あぶり出す新機能もミエルカに実装しています。今後さらに成果に直結する施策に活かしていただけると思うので、ぜひお使いください。

羽田:すごく期待感あります!「結婚」「出産」「引っ越し」で年賀状を再開するお客様が多いのですが、ミエルカで分析したユーザーインサイトはすでにサイトだけでなくマーケティングオートメーション施策や紙のカタログ、店頭ツール、商品企画にも活かし始めています。新機能を使えば、2019年の施策ではより心を打つ訴求ができそうですね。

一色:日頃から私は「デジタルマーケティングはデータドリブンマーケティングだ」と言い続けていますが、今回年賀状で得た成果はまさに他部署にもエビデンスとして出せるものです。富士フイルム全体のデジタルマーケティングをミエルカで推進していきたいですね。さらに当社の中で先進的なe戦略推進室によるデジタルマーケティングの手法、組織のつくり方を、米州、欧州、アジアパシフィック、中国へ、またR&Dや商品・研究開発、生産管理にも広げていくのがミッションです。Faber Companyさんにも同じスピード感で一緒にグローバル化していただけたらと。

月岡:ありがとうございます。ミエルカはすでに英語版(アメリカ、フィリピン、インドネシア)、ベトナム語版を提供しておりますが、ご期待に応えられるよう、今後はヨーロッパ圏も視野に入れつつ開発を進めて参ります。

―今後の展望が楽しみですね。ありがとうございました。

著者PROFILE

井田 奈穂(いだ なほ)

記者、ライターとして活動後、大手英会話教材のWeb担当を経て、株式会社Faber Companyへ。広報としてミエルカ導入企業様の事例取材など発信業務を担当する。趣味は都内の銭湯めぐり。

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