マーケティング戦略とは、市場や顧客のニーズを分析し、提供する価値やアプローチの方法を決定することを意味します。マーケティング戦略を策定する重要性や流れ、フレームワーク、事例をわかりやすく解説します。
マーケティング戦略とは
マーケティング戦略とは、市場や顧客のニーズを分析し、提供する価値やアプローチの方法を決定することです。前提としてマーケティングとは、顧客ニーズに応えるために行う活動であり、市場調査や商品開発、販売促進などが含まれます。
主に、「誰に」「どのくらいの価格で」「どのような価値を」「どのように提供するか」を計画し、上記活動による成果を最大化することがマーケティング戦略の役割です。
「マーケティング」と「マーケティング施策」と「マーケティング戦略」の違い
「マーケティング戦略」という言葉は、「マーケティング」や「マーケティング施策」という言葉と混同して使われがちです。その違いはどこにあるのでしょうか。
「マーケティング」とは、市場や顧客のニーズを分析し、その結果を元に、顧客にアプローチしたり、商品やサービスを開発・提供したりする活動のことを指します。
その活動において、様々な分析を元に、どんなアプローチや開発・提供を行っていくのか、どの部分に注力するのか、という方針を指すのが「マーケティング戦略」です。
例えば、後述するフレームワークを元に分析した結果、集客に注力すべきだと決定した場合、「集客に注力する」という方針が「マーケティング戦略」である、と言えます。
そのマーケティング戦略を実行に移すために、具体的に企業全体で取り組むマーケティング手法のことを、「マーケティング施策」と言います。例えば、「集客に注力する」というマーケティング戦略を実行に移すために、広告を新たに出稿したり、SEO対策を行ったり、展示会などのリアルイベントを行ったり、という具体的な手法をとる必要が出てくると思います。これがマーケティング施策です。
マーケティング戦略の重要性
マーケティング戦略は、以下4つの理由から重要です。
目標や施策の方向性が明確になる
マーケティング戦略を策定すると、中長期的な目標や、その達成に向けて行うべきこと(施策)も明確になります。
方向性が明確になることで、成果に直結する施策に経営資源を集中させることが可能です。また、費用対効果が低い施策に時間をかけずに済みます。加えて、目標が明確になることで、施策の成果測定や改善もスムーズに行いやすくなります。
マーケティング施策の優先順位やリソース配分の決定がしやすくなる
方向性が明確化されることで、優先的に行うべき(=費用対効果が高い)マーケティング施策も明確化されます。また、施策の効果を最大化するという視点に立ち、最適なリソースの配分も決定しやすくなります。
市場や顧客のニーズに基づいた施策を行える
インターネットの普及や経済発展などを背景に、消費者のニーズは複雑化・多様化しています。それに伴い、緻密なデータ分析に基づいてマーケティング戦略を策定し、顧客の複雑なニーズに対応することが不可欠となっています。
その手段として、顧客や市場等の調査・分析プロセスを経て策定するマーケティング戦略の重要性が高まっています。
最初に市場や顧客のニーズを把握した上で全体のマーケティング戦略を立てることで、顧客ニーズに合致するマーケティング施策を実行しやすくなります
競争優位性を確立できる
マーケティング戦略の策定プロセスでは、「競合他社の戦略・施策」と「自社が有する技術やノウハウ等の強み」の両軸を分析するため、競合他社に対してどのような優位性を築くことができるかが明確となります。
競争優位性を確立することで、利益率の向上や中長期的な売上の安定化などのメリットを見込めます。
マーケティング戦略の立て方・手順
マーケティング戦略の立て方を、3つのStepに分けて解説します。
Step1:外部環境・内部環境の分析
はじめに、外部・内部環境を分析します。具体的には、顧客や市場、自社の経営資源などを分析します。
外部環境の分析とは、自社を取り巻く環境を分析することです。具体的には、下記に挙げた内容の理解を図ります。
- 顧客(属性、ニーズ、課題など)
- 競合他社(商品の特徴、マーケティング戦略、市場シェアなど)
- 市場環境(市場規模・トレンド、代替品の有無、新規参入状況など)
- マクロ環境(政治、経済、世界情勢、技術革新など)
一方で内部環境の分析とは、自社内部の環境を分析することです。具体的には、下記に挙げた内容の理解を図ります。
- 商品・サービスの特徴(種類や価格、生産数など)
- 経営資源(営業スキルや集客ノウハウ、技術、機械設備など)の強み・弱み
- 会計・財務(資金力や資金繰り、収支状況など)
- 顧客や取引先の数
- その他(実績や拠点数など)
外部・内部環境の分析では、3C分析やPEST分析、SWOT分析、VRIO分析などのフレームワークが活用されます。
Step2:基本戦略の策定
次に、基本戦略を策定します。具体的には、ターゲットとする顧客層と、自社の立ち位置を決定します。基本的には、STP分析というフレームワークが活用されます。基本戦略の策定により、「自社商品の購入可能性が高い層に対して、競合他社とは異なる自社ならではの魅力を打ち出すこと」が可能となるため、より売上や利益などの成果が生まれやすくなります。
また、顧客のベネフィットを明確化することも重要です。競合他社との差別化を図っても、その内容が顧客にとって価値があるものでなければ、商品の購入には結びつきにくいためです。
ベネフィットとは、商品・サービスを利用することで得られる便益です。フィットネスジムを例にすると、最終的な目的は「痩せること(=メリット)」自体ではなく、痩せた結果「活発に動けることや、自信を取り戻すこと(=ベネフィット)」などです。
「差別化すること(=自社目線)」と「ベネフィットを打ち出すこと(=顧客目線)」の両方を持つことで、よりマーケティング戦略の質が高まります。
Step3:具体的な戦略の検討
最後に、具体的なマーケティング戦略を検討します。具体的には、価格や販路、プロモーション方法、訴求軸の方向性などを決定します。このフェーズでは、4P分析や4C分析というフレームワークが用いられます。
具体的な戦略を検討する際、一般的にはマーケティングミックスの考え方が用いられています。マーケティングミックスとは、単一的な視点ではなく、複数の視点を組み合わせることで、マーケティングの戦略を考える手法です。たとえば、「何を売るのか(商品)」、「どのくらいの価格で売るのか(価格)」、「どのような経路・方法で販売するのか(販路)」といったように、複合的な視点でマーケティングの方向性を定めます。
マーケティングミックスの検討に際しては、基本戦略との間に矛盾が生じないように注意が必要です。たとえば、若者層がターゲットの場合、流通経路やプロモーションがオフライン中心(実店舗で販売、新聞広告で宣伝など)だと効果が低くなりやすいため、避けることが賢明です。
また、最終的なゴールとしてKGI(目標売上高など)を、途中段階における達成度合いを図るKPI(目標新規顧客数など)を設定し、定期的に効果を測定し、必要に応じて戦略や施策を改善することも重要です。
マーケティング戦略の立案に活用できるフレームワーク
マーケティング戦略の立案に役立つフレームワークを7個取り上げ、概要や使い方などを簡単に紹介します。
3C分析
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」、「Company(自社)」、「Competitor(競合他社)」という3つの視点で、外部環境(ミクロ視点)と内部環境を分析する手法です。競合他社の動向や顧客ニーズなどを分析することで、自社が取るべきポジション(差別化の方向性)や成功する可能性が高い施策などを見つけやすくなります。
PEST分析
PEST分析とは、「Politics(政治)」、「Economy(経済)」、「Society(社会)」、「Technology(技術)」という4つの視点で、企業や事業を取り巻く環境を分析する手法です。
自社ではコントロールできない4つの要素を分析することで、自社事業に及ぶネガティブな影響を事前に予測し、ダメージの回避や最小化を目指せます。また、ポジティブな影響をいち早く捉えることで、ビジネスチャンスとして活かせます。
SWOT分析
SWOT分析とは、内部要因の「Strength(強み)」および「Weakness(弱み)」と、外部要因の「Opportunity(機会)」および「Threat(脅威)」を分析する手法です。
自社を取り巻く機会や脅威を把握するとともに、自社の強み・弱みを客観的に把握できます。また、4つの要素を掛け合わせる(=クロスSWOT分析を行う)ことで、想定される状況ごとに最適なマーケティング戦略を検討できます。
VRIO分析
VRIO分析とは、「Value(経済的価値)」、「Rarity(希少性)」、「Inimitability(模倣可能性)」、「Organization(組織)」という4つの視点で、自社の経営資源が有する競争優位性を分析する手法です。
経営資源ごとに競争優位性を可視化できる点や、想定されるリスクや弱みを把握できる点が特徴です。
STP分析
STP分析は、基本戦略の策定に役立つフレームワークです。「Segmentation(市場細分化)」→「Targeting(ターゲット層の選定)」→「Positioning(立ち位置の決定)」というプロセスを踏むことで、スムーズに基本戦略を導き出せます。
4P分析
4P分析は、「Product(商品)」、「Price(価格)」、「Place(流通)」、「Promotion(販売促進)」という4つの視点を組み合わせて、具体的な戦略を考える手法です。企業側の視点から、マーケティングの成果を左右する要素を整理できます。
4C分析
4C分析は、「Customer Value(顧客価値)」「Cost(コスト)」「Convenience(利便性)」「Communication(コミュニケーション)」という4つの視点を組み合わせて、マーケティング戦略を考える手法です。
4P分析と異なり、企業ではなく「顧客側」の視点で戦略を検討する点が特徴であり、各要素は4P分析と対になっています。たとえば4P分析では「Price(どのくらいの利益を生み出したいか)」という視点を重視しますが。4C分析では「Cost(どのくらいの価格であれば、顧客は納得するのか)」という視点を重視します。
4P分析と4C分析を併用することで、「企業の経済合理性」と「顧客のニーズ」を両立したマーケティング戦略を考えやすくなります。
マーケティング戦略の参考事例2選
最後に、4P分析を用いて「商品」、「価格」、「流通」、「販売促進」という4つの視点で、スターバックスとユニクロのマーケティング戦略を紹介します。
スターバックス
スターバックスのマーケティング戦略を出典の情報を参考にしながら以下のとおり整理してみました。
戦略の種類 | 各戦略の概要 |
Product(商品)戦略 | 生産地や加工・抽出方法などにこだわり抜いたコーヒーを提供 |
Price(価格)戦略 | 他チェーンよりも高価格[1] |
Place(流通)戦略 | 都市部では駅前、郊外ではショッピングセンターとドライブスルーへの出店を重視 |
Promotion(販売促進)戦略 | テレビCMを行わない点が特徴[2]高品質な商品や店舗内でのサービスを通じたブランド力向上、口コミによる販売促進を重視 |
ユニクロ
ユニクロのマーケティング戦略は以下のとおりです。
戦略の種類 | 各戦略の概要 |
Product(商品)戦略 | 顧客の声やトレンドを重視した商品開発[3]機能性素材を用いた独自商品による差別化[4] |
Price(価格)戦略 | 素材調達から製造・販売までを一貫して行うことにより、高品質な服をリーズナブルな価格で販売[4] |
Place(流通)戦略 | 各地域の文化や歴史を重視した実店舗の出店、店舗とeコマースを融合したサービスの拡充[3] |
Promotion(販売促進)戦略 | 季節ごとにコア商品を対象としたプロモーションを実施、期間限定の割引価格による集客[3] |
[1] 【比較】有名カフェ・チェーン店「ホットコーヒー」価格調査(Yahoo!ニュース)
[2] スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?(ディスカヴァー・トゥエンティワン、ジョン・ムーア、2014年)
[3] ユニクロのビジネスモデル(FAST RETAILING CO., LTD.)
まとめ
マーケティング戦略は、マーケティングの競合性が高まり媒体が多様化した今、様々な企業でその重要性が再認識されています。リスティング広告、SEO、メールマガジンなどの各マーケティング施策を「点」で見るだけでなく、大きなマーケティング戦略の目的や指針に沿った活動となっているかを確認することで、企業がマーケティングに求める成果により近づくことができるでしょう。
マーケティング戦略は適切なフレームワークで自社や競合他社の分析を行い、自社の強みや弱みを知ることから始まります。その分析を元に自社サービスや商品の提供価値やその見せ方、アプローチ方法を考えていきます。
あらためてマーケティング戦略を立てていくことで、今まで気付かなかった自社の強みや、競合他社がまだ行っていないサービスなどに気付けることもあります。特定のマーケティング施策だけを見るのではなく、まずはマーケティング戦略を立て、その目的や指針に沿ったマーケティング施策を実行していくことで、企業のマーケティング成果を高めていきましょう。
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