指名検索(branded search、branded keyword)とは、会社名やサイト名、サービス名や商品名、型番などで検索されることです。自分たちのサービスを探している可能性が高く成果につながりやすいのですが、意識しなければその価値に気づきにくかったりします。本記事では指名検索とSEOとの関係、その実例を交えながら解説します。
株式会社Prompta. 代表取締役
出版社、学校法人広報、SEOベンダー企業を経て2013年に個人事業主として独立し2015年に法人化。9年間SEOコンサルティングのみで事業継続。マーケティング戦略立案、担当者育成やブランドマネジメントなども行う。数社のマーケティング顧問やアドバイザーとしても活動。
目次
指名検索とは?具体的にどの点を指すのか
指名検索(branded search、branded keyword)とは、特定の企業やサービス、商品名を示すキーワードを含めて検索することを指します。
「ミエルカジャーナル」で検索する、というのも指名検索になります。他の具体例は以下のようなものです。
- ファベルカンパニー
- ミエルカ
- SEOZERO
- ミエルカジャーナル
上記のようなフレーズが含まれる検索が指名検索です。ミエルカに関してはサジェストに多くのキーワードが表示されています。
サジェストに含まれるキーワードでの検索も指名検索になります。関連するサービス名が表示されていたり、オウンドメディアの名前も出ています。
私は数年前から指名検索数以外の要素は、SEOにおける資産として考慮しなくなりました。リンクもコンテンツも一定期間で価値が目減りします。アルゴリズムの変動や世の中の動きによって、その価値やあり方が変わってしまったりもします。
指名検索数だけはブランドの認知度を示す指標として活用できます。SEOにおいても広くマーケティングにおいても重要な指標と考えています。
指名検索が重要な理由は変動に強くCVRが高いため
指名検索が重要な理由は大きく2つ
- 指名検索による流入のCVRが一般名詞と比較して高いため
- 検索アルゴリズムの変動に左右されにくいため
です。それぞれ理由とともに解説します。
指名検索による流入でCVRが高い理由は認知されているから
指名検索される、という事はサービス名や企業名などを知っていなければいけません。更に、その企業やサービスが必要な状況になっている可能性が高かったため、一般名詞で多くのサービスの情報収集をすることなく指名検索をした可能性があります。
のような流れです。この流れで検索されていた場合、検索ユーザーの頭の中の第三想起以内くらいにブランドネームがある可能性が高いです。
この指名検索がされるという事は「非助成想起(純粋想起)」が形成されているからです。ブランドが属するカテゴリについて必要な状況になった時に、ブランドが思い出され検索される状態ですね。頭の中でかなり思い出しやすい状況になければ、こういった状態にはなりません。
指名検索の中には「非助成想起(純粋想起)」しているユーザーが含まれています。困った時に(優先的に)思い出してもらえる存在=非助成想起と考えると、CVRが高い理由が分かります。選択肢が絞られた状態でユーザーにサービスを閲覧されているのです。
非助成想起の対義語として助成想起があります。「○○を知っていますか?」と聞いた時にYes/Noで回答されるものが助成想起です。
こちらも指名検索に含まれている可能性はありますが、以前とあるプロジェクトで調査してみたところ、割合としてはそこまで多くありませんでした。何かを見てブランドを思い出し、反射的に指名検索を行うユーザーはそこまで多くない、とも言えそうです。
変動に左右されにくい指名検索数の上昇は安定した事業収益に寄与しやすい
検索エンジンのアルゴリズムは定期的に大規模なアップデートが行われます。よりよい検索結果を維持するために行われるのですが、検索エンジンからの集客を考えると、このアルゴリズムの変動に振り回される状態、というのはビジネス的に良い状況とは言えません。
一般名詞キーワードでの検索順位は変動しやすいため、特定のキーワードに依存した集客はどうしても不安定になってしまいます。指名検索は特定の企業やサービスを探すキーワードであることが多いため、変動が起こっても順位が変動しにくいです。指名検索の流入数の大きさや伸びは、検索エンジンからの集客の安定性とイコールになりやすいです。安定性と収益性の高さ、という2つの点から指名検索が資産である、と言えます。
指名検索を増やすための手法と考え方
指名検索については高順位が期待できるため、検索数を増やすための施策が重要です。ユーザーにブランドネームを検索してもらうためには何が必要なのでしょうか?
基本的にはサイト外でのプロモーションや広報活動が重要になります。さらに、効率的な広報活動を行うためにはトリプルメディアを使い倒す必要があります。
ペイドメディア、アーンドメディア、オウンドメディアでの露出を増やす
それぞれのメディアの特徴とともに効果的な施策について解説していきます。
ペイドメディア(Paid Media)
ペイドメディア(Paid Media)とは広告を出したり、お金を払って自分たちのサービスを露出してもらうメディアを指します。
ミエルカはタクシー広告を出したりしていましたが、そういったCMもペイドメディアです。SNSで広告が流れてきたりするのもペイドメディアになります。ペイドメディアは大量に流れているので見られないことも多いため露出数が重要です。
サービスごとに効果的なペイドメディアは異なっているので、どのメディアが自分たちのサービスと相性が良いのか?を考えて適切な運用を行う必要があります。
アーンドメディア(earned media)
アーンドメディア(earned media)とは自分たち以外の第三者が情報発信してくれるメディアを指します。
earnedとは「獲得する、取得する」といった意味の単語です。
アーンドメディアは何らかの方法で第三者の信頼を獲得した、といった意味で使われます。
- 例えば、自分たちのサービスが第三者のメルマガで紹介された
- Youtubeで誰かが紹介してくれた
- サービスを使っている人が使い方についてSNSで発信してくれた
といったものがアーンドメディアに掲載された状態を指します。特定のメディアの形を指すのではなく、自分たち以外の誰かが運営しているメディアを指します。
第三者が「このサービス良いですよ!」と言ってくれている状態ですので信頼獲得に大きく寄与します。アーンドメディアの情報は説得力がある事が多く指名検索に繋がりやすいです。
オウンドメディア(Owned Media)
メディアにはもう1つ、オウンドメディア(Owned Media)があります。オウンドメディアは自分たちで保有するメディアですが、こちらは運用し一定の成果が出るまでかなり長い時間がかかります。ミエルカジャーナルもオウンドメディアになります。
時間コストを許容できるのであれば良いのですが、指名検索を増やす、という1点で見ると、他の2つのメディアに比べて効果的とは言いにくいかもしれません。オウンドメディアの情報がアーンドメディアに掲載されて一気に広がる、という可能性もあるので、オウンドメディアを活用するのであればアーンドメディアとの接続を意識することをオススメします。
指名検索を効率的に増やすのは、このトリプルメディア(ペイド+アーンド+(オウンド))を上手く活用することが大切です。
▶オウンドメディアについて解説した記事はこちら
https://mieru-ca.com/blog/ownedmedia/
プレスリリースやイベントなどの広報活動
プレスリリースを出して新サービスの告知をしたりすることも大切です。他のメディアに取り上げられる可能性もありますし、マスメディアに取り上げられて一気に認知される可能性もあります。
アーンドメディアへの接続可能性も高いので、ぜひ活用して欲しい施策です。アーンドメディアは非助成想起の形成に効果的なので、是非とも積極的に狙ってほしいと思います。
セミナーや展示会などイベントの開催や出展も重要です。オンライン、オフライン含めてイベント関連での露出を行うのは認知度の向上に大きく寄与してくれます。イベント参加者がレポートを書いてくれたり、SNSで紹介してくれるといった行動も認知度向上に寄与します。
指名検索を増やすためサービス名に気を配る
指名検索を増やすために注意した方が良いこともありますので、いくつか紹介します。
最も重要なことは覚えやすい、入力しやすい名前にすることです。指名検索をするためには検索窓に文字を入力してもらう必要があります。
サービス名が漢字、アルファベット、ひらがな、カタカナが混在したややこしい名前であれば入力をしっかりしてくれるでしょうか?面倒くさくなって入力してもらえなかったり、検索を諦めてしまう可能性もあります。
入力しやすい名前である事は正義です。
理想はカタカナ4文字、みたいな分かりやすい名称ですが、そうではなかったとしても入力しやすいかどうかは意識してほしいです。もしこれからサービス名を考えるのであれば名前の候補は実際に検索してみましょう。
もう1点、一般名詞、既に存在しているサービス名称と被っていない名前にすることも大切です。ミエルカが「SEOキーワードくん」みたいな名前であれば、今のように多くの方へ指名検索をしてもらえたでしょうか?
入力しにくい上に、一般名詞2つが使われていてオリジナリティがありません。指名検索とはいえ上位表示も難しく安定しない可能性も高いでしょう。一般名詞をサービス名として定着させるのは大変です。オリジナルの名前を使うようにしましょう。その際、他とかぶっていない名前を使うようにすると、より安定して上位表示できます。指名検索で1位が取れない状況は、特にサービスローンチ直後に不利になります。
指名検索数は検索順位へ良い影響はあるのか?事例をみてみる
指名検索数は上位表示の関係性については、徐々に高くなってきてはいますが、よほどの数値にならなければ影響は大きくない、と考えています。2017年のお話になりますが、作ったばかりのサイトでSEOを成功させるために「指名検索を伸ばそう」となり、SNSのフォロワーを増やして認知してもらえるように施策が行われました。
運用から数ヶ月でフォロワーが6万を超えて、それなりの影響力を持つようになりました。投稿の中で指名検索を増やすように誘導したこともあり、一般名詞での上位表示が全くない状態で指名検索だけが大きく伸びました。
その時のデータだと、フォロワー数の10分の1くらいが月間検索数でした。6万フォロワーでしたので、月間検索数が6000くらいです。
そこまでやって検索順位はどうなったのか?というと、ほぼ無風でした。検索順位は動かず、指名検索だけが大きかったので売上はある、という状況です。
サイト名やキーワードを出すことはできないのですけれども、オーガニックキーワードのみを抜き出したグラフをお出しします。GoogleAnalyticsではキーワードは閲覧できないのですけれども、9ヶ月ほどの検索からのトラフィックのデータのほとんどが指名検索からの流入です。
このサイトは既に閉鎖されており、サイトは存在しないのですけれども1つの事例として参考にしてください。
Instagramでの集客が上手くいった事例で、Instagramからの流入もそれなりにありました。
トラフィック全体に占めるInstagramからの流入も多くなっていますが、それ以外のほとんどは指名検索です。数ヶ月以上、この状態が続きましたが一般名詞での順位上昇はありませんでした。
競合サイトの状況やキーワードがどういったものか?にもよりますが、2017年の時点では指名検索数がどれくらい検索順位に反映されるのかの参考にしていただければ幸いです。
一般名詞の検索順位は伸びませんでしたが、指名検索からの売上は非常に大きなもので、それだけで事業として成立するくらいの売上になりました。
検索順位への影響を抜きにしても指名検索を増やすための活動は無駄になりません。むしろ投資対効果としては高いので、広報やプロモーション施策のKPIへ指名検索数を設定することもおすすめです。
先ほどの事例とは別のプロジェクトで、テレビCMを活用した事例もあります。CMの最後に「○○(一般名詞)△△(ブランドネーム)」で検索!と検索を促すようにした事がありました。一般名詞と絡めて検索を促したのです。
CMで告知した一般名詞とセットでの検索は増えましたがこちらも同様に順位への影響はありませんでした。一般名詞のサジェストに表示されるようになったのでプラスと言えばプラスでしたが、単一の施策で一般名詞の検索順位を動かすのはむずかしいと実感しています。
指名検索は検索順位上昇の効果が少なくても費用対効果が合うほど効果がある
指名検索の検索順位への影響は、2019年よりも今現在の方が高くなっている可能性があります。ただ過度な期待ができるほど大きなものでもない可能性もあります。検索順位上昇への期待はあまりしない方が良いです。
指名検索数が大きくなれば、それだけでビジネスが成立する可能性もあります。広報活動やプロモーションなど、Webに限らず多くの活動を継続的に行うことで大きくなる可能性も高いので、指名検索数との関連性からプロモーションの成果を判断することもできます。
冒頭にも書きましたが、最も安定したデジタル資産の1つが指名検索数である、と考えています。ぜひとも指名検索を上手に活用し、ビジネスを成功させてください。
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著者PROFILE
株式会社Prompta. 代表取締役
出版社、学校法人広報、SEOベンダー企業を経て2013年に個人事業主として独立し2015年に法人化。9年間SEOコンサルティングのみで事業継続。
マーケティング戦略立案、担当者育成やブランドマネジメントなども行う。
数社のマーケティング顧問やアドバイザーとしても活動。