マーケティング業務は「Webマーケティング」「オフラインマーケティング」に二分されます。近年では国内のインターネット広告費がマスコミ4媒体を抜くなど、特に「Webマーケティング」がマーケティング手法の中心になっています。
これら全てのマーケティング手法に精通している人材は多くはなく、社内で育成するのも簡単ではありません。そこでおすすめなのが、フリーランスのマーケターに自社の業務を外注するという選択肢です。
たとえば株式会社イールドマーケティングが2022年に行った調査では、フリーランスWebマーケターの21%が「デジタルマーケティング職」。中小企業もデジタルマーケティングに注力する企業が増える中、正社員を採用できない企業がフリーランスを採用する事例が増えていると見られます。
そこで今回はマーケティング業務をフリーランスに委託する流れとメリット、料金相場などを解説します。
目次
マーケティングはマーケターに業務委託可能!外注のメリットは?
「マーケティング業務の外部委託」と一口に言っても、マーケターの業務範囲は広いもの。どこからどこまで、どの業務を外注できるのかイメージできない方もいるのでは。
一例として、2015年に電通が提唱した購買行動モデル「DECAX」に照らし合わせて、切り出し可能な範囲を解説します。
購買行動モデル「DECAX」では、サービスや商品の購買行動とその後のシェアは以下の流れに沿って発生するとされます。
- Discover(発見)
- Engage(関係)
- Check(確認)
- Action(購入)
- Experience(体験と共有)
たとえば多くの企業では「1.Discover(発見)」にフォーカスしてコンテンツLPを用意したものの、中々思うように広がらず、「4.Action(購入)」の数値が伸びないという悩みに直面しています。一例として以下のような打ち手が考えられ、各打ち手ごとに外部のマーケターに外注するといったことも可能です。
- Discover(発見):オウンドメディアを立ち上げSEO対策及びGoogle広告などを通じて集客
- Engage(関係):Web接客ツールの導入やリターゲティング広告を通じて継続的に顧客と接点を作る
- Check(確認):比較サイトへの露出強化
- Action(購入):ABテストを通じたCVR改善など
- Experience(体験と共有):SNSキャンペーン
たとえば「1から4の工程に問題はないが、5の工程には問題がある」という場合、SNS運用に強いマーケターに「5.Experience」の工程のみを切り出すと良いでしょう。逆に「1の工程に問題がある」場合、サービスやメディアの立ち上げ経験があるSEOマーケターに「1.Discover」の工程のみを外注すると良いでしょう。
このようにマーケターに外注するメリットは、自社のリソースや知見が足りていない工程に対して「経験豊富なフリーランスがピンポイントで稼働してくれる」「フェーズに応じてフリーランスマーケターをチェンジすることもできる」ことが挙げられます。
なおかつ費用は変動費に計上されるため、給与など人件費が膨れ上がることもありません。
フリーランスのマーケターに業務委託できること
フリーランスのマーケターに業務委託できることは、前述の通り「オウンドメディアの立ち上げ」や「広告」から「CVR改善」まで様々。主に4通りに業務は分けられます。
上記の4通りの業務のうち、特にマーケターの活用ニーズが大きいのは「新規顧客獲得」。「まずは集客を見直しつつ、集客が改善されたら徐々にMAツール導入などに移行したい」という企業を一例として「SEO対策」「リスティング広告」など、外注可能な業務の具体例は以下の通りです。
フリーランスのマーケターに業務委託できること | SEO対策
SEOとは「検索エンジン最適化」を意味する、Search Engine Optimizationの略称。SEO対策を行うことで、自社のウェブサービスやオウンドメディアをGoogle、Yahoo!、Bingなど検索エンジンで上位表示し、特定のキーワードで検索している読者の流入(PV)を得ることが可能。またそれらの読者に有料サービスを訴求するなどして、売上を伸ばすことも可能です。
SEO対策は、大きく分けて3つの施策に分かれます。
- コンテンツ施策
- 内部施策
- 外部施策
【最新版】正しいSEOとは?5つのSEO対策とチェックリスト
フリーランスのマーケターに業務委託できること | 広告運用
Webサイトなどに出稿される「広告主がクリエイティブや配信先のセグメント、広告予算などをリアルタイムで変更できる広告」は、運用型広告と呼ばれます。代表的な広告プラットフォームには、Google広告やFacebook広告が挙げられます。
フリーランスのマーケターは、こうした運用型広告の各種設定変更や改善を担当することも可能です。
リスティング広告の運用を自分で始めるには?Google広告の初歩的な設定方法
たとえば「リスティング広告の運用を代理店に依頼しているが、手数料が高い」といった場合には、業務をフリーランス人材に引き継ぎつつ、将来的には内製化を目指すことで「広告運用は継続しつつも、利益率を改善できる」可能性が高いです。
フリーランスのマーケターに業務委託できること | SNS運用
toCの女性ファッション関連のECサイトなどでは「Google経由の流入」よりも「Instagram経由の流入」の方が直接的な売上に繋がりやすいケースがあります。自社が取り扱う商材によっては、SEO対策よりもSNS運用を優先するという判断もあり得るでしょう。
Instagramフォロワーを増やす方法などについては、こちらの記事を参考にしてください。
後発でもOK!Instagramのフォロワー数を増やす3つの方法~アルゴリズムを理解し、エンゲージメント率UP~
フリーランスのマーケターに業務委託できること | MAツール運用
MAツールとは新規顧客獲得や見込み顧客育成など含めたマーケティング活動全般をサポートするためのツールです。
ツールを活用することで、たとえば「Aという記事を読んだ後に、Bという記事に遷移したユーザーのCVRが高い」場合、同様の導線でサイト内を回遊しているユーザーにポップアップ広告などを表示。自社が誘導したい有料サービスをより強くユーザーに訴求し、申し込み数を伸ばすことが可能になります。
代表的なMAツールには「HubSpot」「KARTE」などがあります。いずれも非常に高機能で「社内のマーケターが使いこなせない」という悩みを抱えている企業は多いです。MAツール運用をフリーランス人材にサポートしてもらいつつ、リード数など各種KPIを共に追う体制を作るのは一案です。
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マーケターに業務委託する際に採用担当者が確認すべきスキル・実績
マーケターに業務委託する際、採用担当者が面談などで確認すべきスキルや実績は「マーケティングスキル」だけではありません。1つ1つ見ていきましょう。
マーケティングスキル
前提として自社が切り出したいマーケティングの工程に対するスキルや実績があるか確認しましょう。
たとえば広告運用に精通したマーケターにSEO業務を依頼するのは「スキルのミスマッチが生じる」ものですし、その逆もしかりです。
単にざっくりと「優秀なマーケター」を探すというよりは、ある程度求めるスキルセットや専門性を事前に明確にしておきましょう。
コミュニケーション能力
実際にマーケターに業務委託を行い、マーケティングプロセスの改善を始めると「マーケティングスキル」だけではなく「コミュニケーション力」が必要となるものです。
マーケティングプロセスにはマーケターだけではなく、社内外のステークホルダーが多数関わっており、時には良かれと提案した施策が理解を得られずに「施策が前にも後ろにも進まない」という状況に陥ることもあります。
こうした際に地道にステークホルダーと対話し、改善していくべき方向性を洗い出して少しずつでも施策を進めるのは「マーケティングスキル」以上にコミュニケーション力が求められる工程。この能力もまた、マーケターには必要です。
コンサルタントとしての実績
もちろん、そのマーケターのコンサルタントとしての実績も重要です。たとえば正社員のマーケターとしての実績があっても、コンサルタントとしては未知数という人材もいるものです。
面談では「正社員時代の実績」「コンサルタントとしての実績」を分けて、それぞれヒアリングしてみると良いでしょう。
【注意点】マーケターに求めるスキルは自社のフェーズによっても違う
ちなみに採用担当者が注意すべきことは、マーケターに求められるスキルは以下2つのフェーズでそれぞれ全く違うことです。
- 新規顧客の集客フェーズ
- 見込み顧客への接客/育成フェーズ
「見込み顧客に対する接客・リードナーチャリング」が必要なフェーズで、新規顧客の集客に長けた人材を採用してもミスマッチが起き、施策は前に進みません。
なお、もしも「自社にどのフェーズに精通したマーケターが必要か分からない」場合、リーダー層・事業責任者層のマーケターをフリーランス人材として採用することも検討しましょう。
ハイクラスのマーケターのもと、まずは競合分析などを通じて施策設計を行ったうえで、各フェーズごとに「どのような人材が必要か」を見える化。業務の方向性が定まり、施策が少しずつ動き始めたら、徐々に再度業務の内製化を進めていくといいでしょう。
マーケティング業務をフリーランスに委託/外注する基本的な流れ
マーケティング業務をフリーランスに委託/外注する基本的な流れは、4ステップです。
まずはマーケティング業務の切り出す範囲を決めます。たとえば見込み顧客へのWeb接客やリードナーチャリングは内製し、オウンドメディア運用など新規顧客の囲い込みは外注するというのがよくある例。
続いて外注先となるフリーランスの採用に移ります。この際に課題となるのが、正社員採用と比較して選考のステップが短く「相手が優秀な人材か」を見極める難易度がやや高いこと。採用面談のコツなどは後述します。
マーケターに業務委託する際の料金/報酬の相場は?
マーケターに依頼する業務の難易度や工数、また「どの程度のコミットを求めるか」によって大きく報酬相場は変わります。
フリーランスマーケターやディレクターの人材紹介を手掛ける「ミエルカコネクト」では、以下の3つの要素の掛け合わせによって、人材毎に料金を設定しています。
なお、料金の目安としては「週数日のフルリモート稼働」で、月20万円~30万円。週5日のフルコミットや必要に応じた出社を求める場合は、上記の倍以上の見積もりとなることもあります
SEO対策をマーケターに依頼する際の料金/報酬目安
一例としてSEO対策をマーケターに依頼する際の、料金/報酬の目安は以下の通りです。
多くの場合、フリーランスマーケターにSEO対策を依頼する際、施策名は「SEO総合コンサルティング」に該当します。「コンテンツSEOのみを切り出したい」「内部SEO施策のみを切り出したい」といった、業務の切り分けを社内でできる企業は意外に少なく「SEOで成果を上げるための総合支援」を求める企業が多いです。
費用相場としては月30万円~50万円が目安。週数日のリモート稼働であれば月25万円~30万円。フルコミットを求める場合、月50万円程度を下限の予算と考えておきましょう。
SNSコンサルをマーケターに依頼する際の料金/報酬目安
SNSコンサルをマーケターに依頼する際の料金/報酬目安は以下の通りです。基本的には月20万円~30万円前後の予算を用意しておくことがおすすめです。
なお投稿の作成を外注する場合、注意点は「投稿フォーマット」。近年はショート動画の人気が高まっていますが、マーケターによっては「動画作成は別料金」といったことも多いです。外注先のマーケターが動画の台本作成や動画撮影にも対応可能か事前に確認しておきましょう。
SNSコンサルとは?運用代行との違いや業務内容・費用相場・選ぶポイントも解説
その他のマーケティング業務の場合
広告運用をはじめとするその他の業務の報酬相場も、「週数日のリモート稼働」で「月額20万円~30万円」のケースが多いです。
稼働内容やコミット量によって「報酬を増額してフルコミットを求める」ことも、稼働日数を減らすことで「より少ない報酬での稼働を求める」ことも可能です。
詳細なお見積もりをお求めの方は、フリーランスマーケターの人材紹介を手掛ける「ミエルカコネクト」にお問い合わせください。
業務委託するマーケターの探し方と契約までのステップ
【1】高度なマーケティング人材を扱うエージェントに相談する
まずは高度なマーケティング人材を扱うフリーランスエージェントに、相談を行うことをおすすめします。実際にエージェントに問い合わせをしてくださる企業の担当者の方の中には、フリーランスエージェントを利用するのが初めてで「人材派遣との違いが分からない」「予算感が分からない」「そもそも自社の採用要件でフリーランスを採用することが可能なのか分からない」というケースが多いものです。
まずは問い合わせをいただくことで、その業務を行うのに必要なスキルセットや金額感を整理し、人材をピックアップすることが可能になります。
弊社が運営している人材マッチングサービス『ミエルカコネクト』では、Web業界歴18年のWebマーケティングのプロが業種や課題にあわせて、最適なマーケターをご紹介。マーケター採用や各種業務の運用などでお悩みの方は、ぜひご相談ください。
【2】スキルシートなどをチェックする
エージェントに相談を行うと、要件に合ったフリーランスのスキルシートや過去の実績がチェック可能。
自社の要件に合う人材が居た場合は、その人材を含めた三社面談を予約しましょう。フリーランスマーケターの意欲次第では、三者面談までにポートフォリオやプレゼン資料などをまとめてくれることもあります。
【3】三者面談でスキルを対話を通じてより詳しく確認する
続いて三者面談で、そのスキルを「対話」を通じてより詳しく確認します。
優秀なマーケターを見極めたい際には、たとえば自社のウェブサイトを明示したうえで「あなたであればこのサイトで●●というKPIを達成するには何を行いますか」と尋ねてみると良いでしょう。
たとえばKPIを達成するまでの道程を短時間で整理し、タスクを細分化し、その場で論理的に語ることができるマーケターは仮説思考などに優れています。
フリーランスのマーケターは個人の特性によって、驚くほどスキルセットも強み・弱みも人柄も違うものです。複数名と面談してみることをおすすめします。
マーケティングを業務委託するデメリットとは?
マーケティングを外部に業務委託するデメリットとしては、社外の人が施策の実行を行うため、完全な「内製化」はできないことが挙げられます。施策において業務委託をしながら、社内ノウハウの蓄積や自社のメンバーの育成にもつなげるためには、自社の側にも相応の工夫が求められます。
またフリーランス人材の活用は契約期間としては3か月更新が主流です。そのフリーランス人材が1年後も自社に携わっているという保証はないため、2年後、3年後といった長期の先を見越した施策は打ちづらい側面もあるでしょう。
デメリットを解消するには?
とはいえ最近は、社内育成やノウハウの蓄積も含めて、業務委託を活用することも多くなってきています。またフリーランスと自社の間に信頼関係があれば、中長期の施策をフリーランスと自社が共同で行うことも珍しくはありません。
つまりフリーランス採用のデメリットを解消し、良好な関係を築くには自社の側の受け入れ態勢や外部人材に対する協力体制もまた大切だということは覚えておきましょう。
フリーランスのマーケターに業務委託する際の「契約形態」は?
フリーランスのマーケターに業務委託する際の契約形態は「成果物の納品を義務付けるか」で変わります。
たとえばSNSのコンサル業務を発注し、具体的には投稿の作成を依頼したとします。その投稿に対して報酬をお支払いするならば、請負契約を結ぶと良いでしょう。万が一投稿が納品されなかった場合は、支払いも行わないことになります。
一方で「SNS運用に関するアドバイス」などに重きを置き「成果物の納品ではなく、現場での運用支援そのものに価値を見出している」場合は、準委任契約が適しています。
迷った場合は、マーケターに「制作を依頼したいのか」「制作だけでなくコンサルティングなど全体支援を依頼したいのか」考えてみましょう。前者なら請負契約、後者なら準委任契約が向いています。
フリーランスマーケターによるWebサービスの改善事例
最後にフリーランスマーケターによるWebサービスの改善事例として「急落したWebサイトの立て直し」「Webマーケティングチームの体制構築」に成功した企業のケースをご紹介します。
人材紹介やプログラミングスクール事業などを手がけるインターノウス株式会社様は、WebサイトのPV急落やマーケティング体制の不備といった課題に直面。人手不足も深刻化していて、チームの立て直しを迫られていました。そこで急遽「1か月以内にマーケティング人材を採用する」という目安で人材確保を試みたものの、条件に見合う人材はなかなか見つかりませんでした。
そこでミエルカコネクトに相談したところ、条件以上の人材が見つかり、フリーランス採用が決定。人の入れ替わりなどがある中でもスムーズに体制を構築でき、PV数は1年で約2倍(下落ピーク時の約4倍)、CVも約4倍にまで増加。
限られた時間と予算の中でPV数、CV数をそれぞれ最大化することに成功しています。
“正社員”でなく“外部マーケター”の参画で、マーケチームの立て直しに成功!CVは約4倍に
インターノウス株式会社様と同様に「Webマーケティングに課題を抱えている」「社内の人材不足も顕著であり、チーム立て直しが必要」な場合は、フリーランスマーケターの活用は十分に魅力的な選択肢となるでしょう。
まとめ
広告運用やSEOといったWebマーケティングは近年、マーケティング手法として主流になりつつあります。一方で業務の専門性が高いという面もあり、多くの企業がマーケターやディレクターの人材難に直面している現実もあります。
そうした際は「正社員」ではなく「フリーランスマーケター」の採用によって、マーケティングチームを立て直すという選択肢もあります。
弊社が運営している人材マッチングサービス『ミエルカコネクト』では、業種や課題にあわせて、最適なマーケターをご紹介します。Webマーケティング関連の採用や各種業務の運用などでお悩みの方は、ぜひご相談ください。
著者PROFILE
音楽ライターを経て、プログラミングスクールのオウンドメディアのSEOを担当。月間20万PVのサイトを月間100万PVにグロースさせた後、月間300万PVの女性向けキュレーションサイトのマネージャーを担当。独立後はフリーランスとして多くのクライアントのコンテンツマーケティングを行う。SEOはコンテンツマーケティング・DB型SEOの経験が豊富。他、広告運用、MA、サイト売買の知見や、趣味のプログラミングでSEOツールをPythonを使い自作するなど、エンジニア系集客や技術的知見が必要なものも執筆可能。