オウンドメディアを運用していると、ネタに尽きてアイデアに困ることがありますが、軸に分けて定型化することでアイデアが思いつきやすくなります。今回はそのネタ出しの際に役立つ14個の型を、コンテンツエバンジェリスト・中山順司が紹介します。
ネタ切れ…他社オウンドメディアとの企画の差別化に悩んだら
企業のオウンドメディアを運営していると、アイディアで困ることがあります。 「考えられる企画をやり尽くしてネタ切れ」 「他社メディアと似通ってきて困っている」 といった潜在的なお悩みを持つサイト運営者の方は多いもの。今日はそんな時の助けになるような14種の「定形コンテンツ」を紹介します。
フレームワークを作っておいたほうがアイディアが湧く
コンテンツの特性は、大きく以下の4軸14種類にわけられます。
縦軸は「ストックかフローか」、時間軸の違いです。
ストック型コンテンツ
投稿後も価値が低下しにくい「腐らない」「普遍的な」ネタ。資産として長く保持しておけるコンテンツのこと。
フロー型コンテンツ
ニュースやプレスリリースなど、即時性や情報の鮮度が重要視されるコンテンツのこと。うまく時流に合った情報が出せれば、瞬間風速のような流入が見込めます。
一方、横軸は商品「モノ&コトか、人か」という特性の違いです。
「モノ&コト」コンテンツ
用語解説や商品、サービス。ニュースの紹介、まとめなどのコンテンツのこと。
「人」寄りコンテンツ
“中の人”が、人となりや価値観、考え方をもとに発信するコンテンツのこと。
ハウツー&TIPS、辞書&FAQ、まとめページといったストック型コンテンツがある程度たまってくると、「少しマンネリ化してきたな。じゃあもう少しフロー型のコンテンツも増やしてみよう」となると思います。
企業メディアでは、ニュースや告知、あるいは独自に行なったリサーチ結果の公表など、最新情報のコンテンツをフロー型として発信することもあるでしょう。
コンテンツ企画がマンネリ化している多くの原因は
マンネリが打破できていない大きな理由が、コンテンツが左の「モノ&コト」寄りになっているからだと思います。「新しいコンテンツは定期的に発信を増やしていきたいが、他社メディアとの差別化も狙いたい」場合、次にどこに着手するか。よくあるのが「取材」です。社内の詳しい人に聞いてみた、社外の専門家に聞いてみたといったコンテンツです。
唯一無二の発信ができる「人」寄りコンテンツ
しかしより独自性を追求したいなら、私がおすすめしたいのがマトリックスの右側、「人」に寄せたコンテンツ。社内のだれかの連載、提案、考察、あるいは成長物語、「やってみた」コンテンツなど、何かしら人が考えてアウトプットしていくコンテンツのことです。
「上手に◯◯する方法3選」などいうおなじみの企画でも、その会社にしかいない唯一無二の人が「私が思う◯◯の突破法3選」といった発信に変えるだけで、差別化に効く企画に早変わり。他社メディアとは一線を画すことができます。
当社メディアのインタビュー連載「#知の探索」もヒトよりコンテンツと言えるかもしれません。インタビューアーに飯高氏を迎えた連載の第1弾は当社代表にインタビュー。ぜひご一読ください。
「人」寄りコンテンツ事例紹介
2つのメディアから、優れた「人」寄りコンテンツの例をご紹介します。出典の一つは「となりのカインズさん」というホームセンターのカインズホームが運営しているメディア。もう一つはグループウェアを提供するサイボウズが提供する「サイボウズ式」。オウンドメディアの元祖といってもいいような有名なメディアです。
「連載」の例
「となりのカインズさん」の「目指せ1年で30種類!『ひとコマ菜園』やってみた」は、ある女性ライターさんが1年かけて菜園を運営してみた連載です。種を蒔き、育て、収穫しという1年の長いプロセスを連載形式で発信していくと、月1本書いたとしても、年間12本の独自コンテンツになりますね。1カ月分の成長が記録として見られれば、家庭菜園や野菜づくりに興味のある人は続きが気になります。
- 人にファンが付きやすい
- 続きが気になる(第3回から見たら「初回から読もう」とストックコンテンツに誘導できる)
- うまくいけば2年目のロングランや、別の書き手も挑戦することで広がりが生まれる
「考察」の例
サイボウズ式「『会議で発言しない人に価値はない』は時代遅れ?──時間をかけて考える僕が見つけた、会議との向き合い方」を見てみましょう。会議の向き合い方に正解はないですし、人の数だけ考えがあります。ただ「僕はこう考えます」という内容で発信している「考察」コンテンツです。中の人が一生懸命、自分の言葉を整理し、発信してるわけなので、「違うのでは」という反応もある反面、強い共感も得られやすい内容です。
「提案」の例
これも同じくサイボウズ式から、「テレワークは『学び放題』の環境だった──若手をフォローしてわかった『後輩なり放題』のススメ」をご紹介します。
このライターさんが考えについて「ススメ」、つまり提案してくれているのです。これも個人の主張です。こういった提案も、「会社のカルチャーが見えやすい」というメリットにつながります。
「成長物語」の例
「となりのカインズさん」の「かけだしDIY」を例にとります。
これはDIYが得意でも何でもない新入社員に、片付かないオフィスのDIYをやらせてみるとどうなるかというシリーズものです。最初は失敗して、うまくいかないんですよ。でも徐々に学んで成長していく、そのプロセスを成長物語として読者は追体験できるのです。
知識まっさらな読者が多い場合は、若手の社員が取り組むほうが共感が得やすいですよね。最初からDIYの上手いプロがやってしまうと何も面白くない。むしろ失敗して七転八倒しながら成長していくほうがファンが付くのです。DIYの出来いかんに関わらず、「どう転んでも美味しい」コンテンツがつくれます。
「やってみた」の例
これも「となりのカインズさん」の「自宅の庭で一泊二日『テント避難体験』。防災グッズの準備・使い方を徹底検証」を例にとります。
防災グッズを紹介するだけでなく、自宅の庭で実際に使ってみた体験コンテンツです。災害のニュースを見て防災グッズを買おうとしてもどう選んでいいかわからない人には、ものすごく参考になります。また、YouTubeのコンテンツにも横展開しやすいでしょう。
災害は突然やってきます。グッズだけ揃えたもののいざテント生活をしてみると、
「取り扱い説明書にこうやって書いてあったけど実際やってみたら全然違う」
「気温が低いとうまく着火しなかった」
「寒くて眠れなかった」
など、いろんなことが起こり得るはずです。すべて後々まで人の興味を引き、集客し続けられるコンテンツになるのです。
上記5つの中でどれが手を付けやすい?
編集・執筆メンバーの特性によります。
例えば「深い考察は考えられないけれど行動力があるので『やってみた』『成長物語』を試してみよう」という場合もあるでしょう。あるいは、「中高年ばかりの職場でちょっと体張るのは厳しいから、一人一人業務から学んだtipsやノウハウ、考察、提案をシェアしよう」といった進め方もありかもしれません。現場の特性をうまく引き出して、文字または動画にしていく、「続ける」ことが大切です。
時間も手間暇もかかるが、メリットは「読み手のファン化」
菜園を運営する、DIYをする、思考して考察や提案を発信していく、庭で防災グッズだけで生活するーー。「人」寄りコンテンツは機械的に作れません。自分で考えたり、悩んだり、試行錯誤しないとアウトプットできないので、どうしても時間がかかってしまいます。めんどくさいですし、エネルギーも手間もかかります。こればかりをやるのは相当キツい。でも時々、こういう企画を投下していくことの価値の一つが、読み手の「ファン化」が進むことです。
どの職場にも老若男女いて、さまざまな考え方や価値観があります。誰だかわからない黒服の集団が商品ばかりおすすめしても、ファンは付きづらいのです。しっかり「中の人のキャラ」や「その人ならでは」のコンテンツを工夫して、発信していくことを強くおすすめします。
オウンドメディアの適切なKPIとは?お悩みの方におすすめの記事
オウンドメディア施策を成功に導くためには、「適切なKPI設計」が鍵となります。本記事では、立ち上げ期から改善期に至るまでの各フェーズでオススメのKPIの立て方についてオウンドメディア元編集長・新宅千尋さんが自身のの事例も交えながら紹介します。
動画出演者PROFILE
コンテンツ・エバンジェリスト&YouTube 『ミエルカチャンネル』事務局。freeeで税務/会計/人事労務領域のB2B オウンドメディア『経営ハッカー』を月間400万PVに成長させた後、株式会社 Faber Companyへ。 『ねとらぼ』『MarkeZine』等で連載。個人でYouTubeチャンネルも運営する。