シリーズ形式でお伝えしているオウンドメディア業界別事例。今回は、アプリ・ITサービス関連のオウンドメディアを紹介します。自社のオウンドメディアに活用出来るポイントをぜひ見つけてください。
アプリがあることで便利になることや豊かになることの訴求がポイント
日々たくさんのアプリが公開されている中で、どうやって自分たちのアプリに気づいてもらうことができるでしょうか。ASO(App Store Optimization = アプリストア最適化)という手法もありますが、アプリストア内での最適化はすでに「アプリで実施したいなにか」を想起しているユーザーが対象です。
ユーザーの悩みや解決したいことが「アプリでできる」と気づいてもらうためには、その悩みや解決したいことに応えるコンテンツを用意し、アプリそのものの存在に気づいてもらうことがユーザー拡大に大きく寄与すると考えられ、その中でオウンドメディアやコンテンツマーケティングが重要になってきます。
☑︎まずはコンテンツマーケティングの基本を知る:成功するコンテンツマーケティングとは?
アプリに関連したオウンドメディア事例5選
では、具体的に事例を見ていきましょう。
① COUPLES( https://couples.lv/content/ )
株式会社エウレカが手掛けるカップル専用アプリ「COUPLES(カップルズ)」に関連するオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
COUPLESのアプリ紹介ページ内に掲載されています。コンテンツはカップル向けのコラム記事で、テーマは「仲良しカップル5つの心得」や「愛され彼女の5つの特徴」などカップルが長続きするために大事にしたいことについて書かれたものや、イベントの告知、アプリの便利さや機能について解説したものなどさまざまです。
◆ コンバージョン
各記事の最後には、アプリダウンロードページへのリンクが貼られています。単純にテキストリンクを貼るのではなく、アプリの画面イメージの写真もあわせて掲載されています。コンテンツで盛り上がったキモチをそのままにアプリをダウンロードしてもらう仕掛けでしょう。
◆ 会員登録の導線
アプリなので最終的なゴールはアプリダウンロードになります。ダウンロードすると「COUPLES Q」という機能が使えるようになり、アプリユーザー同士が恋愛の悩み(寄せられる悩みは付き合い方や彼氏・彼女としての振る舞い方といったものからプレゼントの選び方までさまざま)を投稿・回答できるようになります。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
FacebookとTwitterのアカウントを持っています。10代後半から20代前半の女性がメインユーザーだと想定されるのでTwitterの方が頻繁に更新されているのでしょう。更新内容は季節やイベントごと、「今日は◯◯の日」といった日柄とカップルの過ごし方を結びつけた投稿が多く、発信のテイストもメインユーザー像を意識した若い女性のような口調で、親しまれやすい投稿を心がけているようです。
※ 参考URLなど
エウレカは、COUPLES以外に恋活・婚活アプリ「Pairs」を運営しており、pairsコラムというオウンドメディアも運営しています。こちらでは、片思いの人向けの記事や、占い・診断コンテンツも掲載されています。
② Dr.Walletナビ( https://www.drwallet.jp/navi/ )
株式会社 BearTailが手掛ける、スマートフォンでレシートを撮影するだけで自動的に家計簿が付けられる無料アプリ「Dr.Wallet(ドクターウォレット)」に関連するオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
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「Dr.Wallet公式ガイド」
初期設定の方法からお得な特典までDr.Walletの利用者向けの情報が掲載されています。
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「節約レシピ」
週1回〜月1回の更新頻度で安くておいしいレシピを紹介しています。コンテンツにアンチエイジングに効くレシピなどが多いのも、アプリ利用ユーザー層に女性が多いからでしょうか。
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「節約術」
大カテゴリの下に「通信費の節約法まとめ」「美容・衛生費の節約法まとめ」など15以上のサブカテゴリがあり、それぞれ10記事以上が掲載されています。この他にも、「予算&関係別プレゼント・贈り物・ギフト」「エリア別おすすめグルメ」「お金コラム」などのテーマに基づいた記事が掲載されています。
◆ コンバージョン
こちらもアプリダウンロードがコンバージョンになりますが、記事下と記事横にDr.Walletのダウンロードバナーがあります。同様にBearTailが手掛ける別サービス「Dr.経費精算」アプリへのバナーリンクが設置されています。
◆ 会員登録の導線
上述の通り、会員登録というよりはアプリダウンロードが目的になります。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
Dr.Walletサービスに紐づくFacebookとTwitterアカウントを持っています。発信内容はどちらもオウンドメディアの記事更新情報で、Twitterは4,500人以上にフォローされています。
※ 関連リンク
下記記事内で触れられている「節約ZINE」は現在のDr.Walletマガジンのことを指しています。 購買ビッグデータで家計簿アプリを進化させる『Dr.Wallet』が、1億円増資に成功した背景【連載:NEOジェネ!】
③ 本のアプリStandのブログ( https://standbk.co/blogs/ )
読んだ本や読みたい本が登録を登録して管理したり、フォローしたユーザーの本棚を覗いて読書の幅を広げることのできるアプリ「Stand(スタンド)」に関連するオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
古本屋やブックカフェの店主・読書会主催者への取材、本にまつわるイベントのレポート記事が掲載されています。記事内に多く使われている写真や、読書好きな担当が書いたに違いない丁寧に描写された文章から、お店や空間の雰囲気が伝わってきます。
◆ コンバージョン
ソーシャルシェアボタンとおすすめ記事の紹介がコンバージョンポイントになっています。オウンドメディアのページ全体にもバナーが一切無く、記事だけが並んでいて読者が記事に集中できるようなUI(ユーザーインターフェース)を追求しているようにも見えます。ヘッダー右上に一応アプリダウンロードボタンがあるので、ここが最終的なコンバージョンであると考えられます。
◆ 会員登録の導線
会員ページのようなものはありませんが、アプリ以外にブラウザからログインして使うこともできて、TwitterやFacebookのアカウント情報で会員登録ができます。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
FacebookとTwitterのアカウントを持っています。いずれも人気作家の新刊発売情報や本にまつわる特集が掲載された雑誌の発売情報が発信されており、アプリの販促やオウンドメディアの告知はほとんどありません。
※ 一言コメント
本を読む人とその人たちによって読まれた本の情報が多く揃って価値を成す、読書版Twitterのようなアプリであるため、メディアでは一貫して「本好きに役立つ情報」という軸で「本のまとめ」や取材やイベントを中心とした情報発信が行われています。
④ 名刺管理Hacks( https://meishihacks.com/ )
法人向け名刺管理サービスSansanや個人向け名刺アプリEightを提供するSansan株式会社のオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
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「名刺管理ソフトを探す」
インストール型・クラウド型などのサービスを比較した記事が掲載されています。競合サービスの情報もフラットに掲載しています。(このスタンスはすごい!)
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「名刺整理術」
名刺ホルダーやPDFでの管理方法もまじえて、ビジネスマンが日々悩みやすい増え続ける名刺の効率的な整理方法について案内しています。
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「名刺管理で働き方を刷新」
〝たかが名刺、されど名刺〟といわんばかりに、「名刺交換の際に好印象を持たれる方法」や名刺情報を活用したデータベースマーケティングなど、名刺とビジネスの結びつきに関連する記事を更新しています。
◆ コンバージョン
記事の最後には、「名刺管理サービス比較資料」や「Sansanサービス資料」などのダウンロードコンテンツのリンクや、Sansanサービスページへのバナーリンクが貼られています。ここから各種資料のダウンロードに至った顧客にアプローチしていくのでしょう。サイト下部には、関連記事や人気記事のリンクもあります。
◆ 会員登録の導線
BtoB企業のため、会員という概念はなく、オウンドメディアから個人情報を入力してコンテンツをダウンロードした方や資料請求した方が潜在顧客となり、メール・電話などでアプローチされる対象となるようです。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
「名刺管理Hacks」としてFacebookページを持っており記事の更新告知をしていますが、メインはSansanの会社アカウントのようです。事例公開の告知やセミナー告知などの情報を発信しています。
※ 一言コメント
Sansanは、名刺管理Hacks以外にも、もう少しライトに読める文体や漫画を用いてコンテンツが作られている「名刺のネタ帳」、SFAシステムの比較記事や営業力強化のためのノウハウ記事が掲載されている「SFA Hacks」など、コンテンツ力の高いメディアを複数運営しています。
⑤ カタリスト-人を変え、企業を変え、世界を変えるメディア-( https://www.teamspirit.co.jp/catalyst/ )
勤怠管理・工数管理サービスTeamSpiritを提供する株式会社チームスピリットが運営するオウンドメディアです。
◆ コンテンツ
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「特集」
朝型勤務を推奨する企業の担当者や働き方改革を掲げる大学院教授などとチームスピリット代表の対談記事が主です。
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「働き方の未来地図」
IT改革を専門領域としており、本も出版しているコンサルタント・細谷功氏による連載です。ウエアラブルデバイス、IoT、AIなどが今後進化・普及していくとどのように働き方が変わっていく可能性があるのかについて書かれています。
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「ワークスタイルの行動経済学」
行動経済学を専門としている、明治大学情報コミュニケーション学部教授・友野典男氏による連載です。「人はなぜ変われないのか」というテーマのもとに、心理学の専門用語や、モチベーション向上に寄与する報酬について解説しています。この他にも「海外ワークスタイル事情」や「エバンジェリストは見た!」などの連載があります。
◆ コンバージョン
記事読了後のコンバージョンポイントは特に置いていません。記事の右側には新着記事一覧が並んでおり、ページのヘッダーとフッターにチームスピリットWebサイトへのリンクが敷かれています。
◆ 会員登録の導線
前述のSansan株式会社と同じくBtoB企業のため、会員という概念はないようです。チームスピリットの概要資料などは、個人情報を入力せずともダウンロードできるようです。
◆ ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
カタリストのSNSアカウントは持っていませんが、企業としてはFacebookとTwitterをメインに利用しているようです。内容は、カタリストの記事更新情報や企業向けのニュースリリースなどがメインです。
※ 一言コメント
“働く人の創造的な時間を生み出しチームの力を引き出すサービスで、変化に挑戦する人と企業に貢献します。”という企業理念どおり、ワークスタイル変革に挑戦する企業や担当者への取材をメインに、「これからの働き方」や「新しい働き方」を取り上げているメディアです。
可処分時間の奪い合い競争激化!ユーザーに想起してもらえるメディア/サービスに
BtoC向けアプリだけに留まりませんが、今や同じジャンルのアプリだけでなく他のアプリやSNS、テレビ、リアルイベントなどありとあらゆるものとユーザーの可処分時間の争奪戦をしなければいけない状況にあります。BtoB向けITサービスにおいても、技術革新が進み様々な領域で便利なサービスが、より安価に、便利になって次々と生まれ、競争は激しくなる一方です。
こういった中でユーザーシェアを獲得していくために、オウンドメディアではアプリによって解決できる悩みや課題があることに気付いてもらえるような情報発信を行い、ユーザーの悩みが顕在化した時点で「あーそういうアプリあったな」などとアプリ名で検索(=指名検索)をしてもらったり、「●●● アプリ」と検索で発見されたり、思い出したりしてもらえるようなアプリ・サービスになることが重要ではないでしょうか。
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著者PROFILE
SFA導入コンサルからCRMベンダーのセールスに転身し、営業マネージャーに。その後Faber Company営業部長を経て、マーケティングを担うIMC部を設立。現在は執行役員として、ミエルカのプロダクトマネージャーやセミナー登壇などの活動をメインに行っている。
■ 講演実績:マーケティングアジェンダ/日経クロストレンドForum 他■Twitter:@tsuuky09