シリーズでお伝えしているオウンドメディア業界別事例。今回は、業種問わずEC・通販に関連するオウンドメディアを紹介します。同業者の方も、まったくの別業界の方も、自社のオウンドメディアに活用出来るポイントをぜひ見つけてください。
ECは激戦!コマースクエリだけでなくコンテンツクエリも重要に
各社メーカーが自社チャネルとしてEC・通販を展開するのも当たり前になり、私達ユーザーもAmazonや楽天市場のようなモールを始めとしてネットで買い物をするのが日常になりました。EC運営側からすると、すぐ買ってくれるユーザーに来てほしいわけですが「買ってくれる(=コマースクエリで検索する)」ユーザーはそう簡単に自社サイトにきてくれません(そもそも母数も少ない)。
よって、もっと母数の多い情報収集段階の「悩みや解決課題をしたい(=コンテンツクエリ)」ユーザーにリーチしないと認知拡大につながらないのですが、商品情報だけでは不十分です。そこでコンテンツ(オウンドメディア)の出番なのですが、いくつかの取組事例を紹介します。
☑︎まずはコンテンツマーケティングの基本を知る:成功するコンテンツマーケティングとは?
☑︎SEOの基本もおさえたい:【最新版】正しいSEOとは?5つのSEO対策とチェックリスト
EC・通販のオウンドメディア事例5選
では、具体的に事例を見ていきましょう。
① 結婚STYLE Magazine
婚約指輪や結婚指輪を製造・販売する株式会社俄(にわか)が運営するオウンドメディアです。
コンテンツ
「結婚準備の基礎知識」
結婚式を挙げるのか否か、両家への挨拶・顔合わせの段取り、結納について、ブライダルフェア前に準備しておきたいことなど、結婚を決めたカップルが考えるべきことが幅広く網羅されています。写真も多く、結婚情報誌を読んでいる気分になります。
「顔合わせ・結納会場」
結婚前の顔合わせ食事会や結納などに活用できる、全国のレストランや料亭が紹介されています。個室とお祝い用のコース料理が用意されている場所だけが載っており、選択しやすくなっています。
「結婚映画ランキング」
「ベストプロポーズ映画」「「ベストリフレッシュ映画」など結婚にまつわる映画がまとめられており、あらすじも詳しく紹介されています。
コンバージョン
コンテンツ「結婚指輪・婚約指輪」は商品紹介ページへリンクしています。また、topページ下部には、婚約指輪と結婚指輪の写真がずらりと表示されるようになっています。
会員登録の導線
NIWAKA全体では「俄 MEMBER’S CARD」という会員組織を持っています。これは基本的に店舗で入会金(100円)を払って入るもので、ジュエリーを優待価格で購入できたり、「結婚STYLE Magazine」からブライダルフェアや結婚式場の見学予約をすると「広告費還元金プレゼント」などの特典があります。
ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
Facebookアカウントがあり、記事紹介と広告費還元金プレゼントキャンペーンの告知が交互に更新されています。
一言コメント
「結婚STYLE Magazine」は2015年8月からスマートフォン対応を始めています。メインターゲットは、通勤途中などのスキマ時間に情報収集したい若年層カップル。文章量をできるだけ減らし、漫画や写真を使って「読みやすさ」を追求しています。
② レイコップのある生活- LIFE
ふとんクリーナー「レイコップ」を販売しているレイコップ・ジャパン株式会社が運営しているオウンドメディアです。
コンテンツ
レイコップの公式ホームページにおいて、「お客様の声」やレイコップの使い方をユーザーが投稿したinstagramまとめコンテンツと並んで、お役立ち記事があります。医師が花粉症の予防方法や皮膚の病気について解説する「ドクターズ・コラム」、ダニに詳しい専門家により書かれたコラムがあります。
コンバージョン
コンテンツ自体がEC内に配置されているため、自然と商品情報を目にする機会が増えるように設計されています。
会員登録の導線
オンラインショップでは会員登録をすると、ハウスダストの情報やお知らせなどがメールで届きます。レイコップ購入者は登録すると、通常1年のメーカー保証が2年間に延長される「公式保証サービス登録」のサポート制度もあります。
ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
レイコップ全体ではFacebook、Twitter、Youtube、Instagramのアカウントを持っています。Facebookではオウンドメディアの更新情報に加えて、Web記事や雑誌で紹介された際の告知などを紹介、Youtubeではレイコップユーザーの声や使用方法・お手入れ方法をわかりやすく解説した動画を紹介しています。
関連リンク
レイコップのヒットの背景の一つに、商品の「打ち出しコピー」を変えたことが挙げられています。「ダニに悩む人」「気持ちよく眠りたい人」の両方をターゲットとしており、どちらのニーズも満たせる情報を発信しています。
レイコップ:「ダニ専用」から「ふとん専用」へ、価値の一般化がヒットの転換点に
③ 大地宅配
有機農産物宅配サービス「大地宅配」を提供している、オイシックス・ラ・大地株式会社(旧 株式会社大地を守る会)が運営しているオウンドメディアです。
コンテンツ
「ピープル」
「大地宅配」で食卓に届けられる、食材を生産されている生産者の方の素顔や生活に迫るコンテンツです。
「学ぶ」
フードジャーナリストの方が「大地宅配」で届く食材に関して綴るコラムから、「有機野菜と無農薬野菜」の違いについて知ることができるものまで掲載されています。
「商品情報」
「大地宅配」で販売されている商品の素材のこだわりや、おすすめの調理方法などを紹介。記事内では生産者の方の顔や作っている際の雰囲気がわかる写真なども掲載されています。
コンバージョン
各記事の中では、必ず食材が紹介されており、その食材を購入できるオンラインショップへのリンクが貼られています。オンラインショップに遷移すると、目立つキャラクターによるポップアップウィンドウを活用しており、離脱を防ぐ役割がありそうです。
会員登録の導線
オンラインショップの利用は会員登録が必要です。「新規登録」ボタンを押すと会員登録に進むのではなく、お試しセットの申し込みページに遷移して、通常より安価な料金で「大地宅配」サービスが利用できるようになっており、初回購入のハードルを下げる工夫がされています。
ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
大地を守る会全体でFacebookとTwitterのアカウントを持っています。25,000以上の「いいね!」を集めているFacebookでは、新着記事はもちろん、イベントレポート、旬の野菜を使ったレシピの紹介などがあります。
一言コメント
オンラインショップにも「野菜の力で花粉対策」「スムージー生活のすすめ」「発酵食のススメ」などのコンテンツが用意されており、訪れた人がお目当ての食材以外にも興味を持つきっかけとしての役割を果たしていそうです。
④ 石鹸百科
国内外の石鹸を販売しているオンラインショップ「石けん百貨」を手掛けている株式会社生活と科学社が運営しているオウンドメディアです。
コンテンツ
「入門編」
「石鹸と洗剤の違いとは?」「石鹸生活を始める上で用意すべきものとは?」など、良い石鹸を生活に取り入れたいと考え始めた方向けの情報が掲載されています。
「石鹸生活のHow to」
家事や入浴、スキンケアにヘアケアなど、さまざまなシーンで石鹸を愉しむためのノウハウ紹介コンテンツです。各記事の下部には「ぬいぐるみの洗い方」「水周りの掃除」など、それぞれのシーンでおすすめの商品も掲載されています。
「石鹸親密度チェック」
◯×形式のチェッククイズで、石鹸理解度を確認できるコンテンツです。解答ページには石鹸の理解に役立つ詳細な解説も掲載されています。
コンバージョン
各記事の最後には「Item guide」という欄が設けられていて、記事に関連する商品情報を紹介。「お買い物ページへ」というオンラインショップ誘導、他にも「メールマガジン登録」バナーがあり、月1回で石鹸百科や関連サイトからのオススメ記事、石鹸生活に関する雑学が配信されるようです。
会員登録の導線
オンラインショップでは「石けん百貨クラブ」という会員組織があり、会員特典は「初回お買い物時の10%割引サービス」「商品購入の際のポイント付与」「誕生月に商品プレゼント」などです。
ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
「石鹸百科」のFacebookとTwitterのアカウントを持っています。Facebookページで記事の告知をする際、更新された記事1本だけを紹介するのではなく「今月のトピックスは『 髪とお肌 春のお手入れ 』です。」などと複数記事をまとめて紹介しており、読者が知識やノウハウを一度に学べるようなコミュニケーションになっています。
参考URL
「石鹸百科」以外にも、スキンケア・ヘアケアの知識を案内する「読んで美に効く基礎知識 お肌とコスメの科学」や、石鹸生活の情報交換が行える掲示板的なメディア「せっけん楽会」も運営しています。
参考:ECサイトのコンテンツマーケティング事例「石鹸百科」の堅実なオウンドメディア戦略を徹底分析
⑤ DOOR by ABC-MART
靴の専門店を全国に展開し、オンラインショップでも靴を販売している株式会社エービーシー・マートが運営しているオウンドメディアです。
コンテンツ
-
「SPECIAL」
ランニングのプロにシューズの選び方を聞くものや、スニーカー好きな著名人へのインタビューが掲載されています。
-
「FASHION」
新社会人向けの業種別おすすめパンプスや、靴下とシューズのコーディネートなど、足元を中心としたファッション情報が紹介されています。
-
「HOW TO」
「履く前のお手入れで靴が長持ち。新品の革靴を買ったら最初にやること」「ワンルームの靴の収納術!一人暮らしで靴をすっきり収納する3つのアイデア」など、生活の中での靴の扱い方の豆知識やノウハウが紹介されています。
コンバージョン
記事内で特定のブランドや商品が紹介されている場合は、下部バナーで商品情報ページにリンクしています。また、記事内で出てきたキーワードがタグに分解されていて、タグから関連コンテンツ一覧を閲覧できます。
会員登録の導線
オンラインショップでは、会員登録をするとポイントを貯められたり、メルマガなどのサービスがあります。
ソーシャルメディア(SNS)の利用状況
「DOOR」専用のFacebookとTwitterのアカウントがあります。どちらも、新着記事の更新案内が主なコンテンツです。ハッシュタグを多用する投稿で、タグを辿って見つけられやすくする工夫をしています。
「店舗での接客」のような体験を提供することで購買意欲を高める
ECで購買するのが当たり前になった時代だからこそ、ユーザーの購買意欲を高めたり興味喚起するためには、店舗に足を運ぶのと同等もしくはそれ以上の体験やおもてなしをサイト上で提供する必要があるのではないでしょうか。
例えば、ブランドや商品のイメージはもちろんのこと、店舗の雰囲気すら感じることのできるUI、接客に通ずる商品知識/使い方の情報提供なども含めたおもてなしを感じるUXなどなど。これらを意識することで、ECでの体験だけではなく、店頭に行きたくなる、実際に商品に触れて、体験してみたくなるようなオウンドメディアコミュニケーションができれば、ECと店頭が連動したオムニチャネルも実現できるのではないかと思いました。