【海外カンファレンス現地レポート】brightonSEO 2023 September (Day 0) 〜 MeasureFestに参加 〜
更新日:2024.11.11 公開日:2023.10.312023 年 9月 13日 〜 15日に英ブライトンで開催された brightonSEO カンファレンスに当社の鈴木謙一、市川莉緒と筆者(安藤優登)が参加しました。現地での様子をこの記事でレポートします。
brightonSEO とは
brightonSEO は、イギリスのブライトンで春と秋の年2回 開催される SEO をテーマにした大規模カンファレンスです。SEO と一言で言っても、カバーする範囲は幅広く、内部施策やリンク構築、EEATといった定番トピックから、今注目の ChatGPTをはじめとするAI活用や TikTokマーケティングなど多岐にわたる題材が語られます。
当社は2018年から brightonSEO に参加し、コロナ禍が明けはじめた2022年10 月に参加を再開、直近では2023 年4月にも参加しています。(そのときの参加レポート Day1、参加レポート Day2)。
ブライトンは、グレートブリテン島の南に位置する海沿いの街で、ヒースロー空港からは電車で3時間ほどの街です。
最高気温22度あたりと少し肌寒い覚悟をしていましたが、半袖で全く問題ない温度感でした。建物はヨーロッパらしい建物が並び、若い人も多く活気のある街、という雰囲気です。
brightonSEOカンファレンスの本番は9月 14、15日ですが、その前日13日にはbrightonSEO fringesが開催され、SEOから派生した色々なテーマに関するセッションに参加することができます。
会場のエントランスには沢山の企業がブースを出展しています。日本でもユーザー数の多いahrefsやscreaming frog、WIXなども見かけました。
ahrefsのブース内で提供されているコーヒーが美味しいと大人気で、弊社鈴木もご満悦でした。(笑)
セッションの様子
brightonSEO開催期間中は同じ時間帯に複数の会場で各セッションが走るので、どのセッションに参加するかは悩みどころです。
今年のfringesは以下4つのカテゴリに分かれていました。
- Ecommerce Marketing Show
- Search Social Advertising Show
- Measure Fest
- PR Link Building Show
1セッションあたり3名のスピーカーがそれぞれ20分の持ち時間でプレゼンを行います。
短過ぎず長すぎないちょうどよい分数で進んでいく印象でした。
筆者の専門領域がアクセス解析/CRO(コンバージョン改善)ということもあり、面白そうなセッションにチェックを付けていくと、ほとんどがMeasure Festのセッションになってしまったので、1日中Measure Festの会場に入り浸りました。
まず最初は、 Kathryn Choi氏によるセッション「The art of data storytelling」に参加しました。
マーケティング支援企業で働く人が上司やクライアントに対しどのような筋道を立て話しを進めると上手く物事が進むか、という話でした。
人間は98%の物事を直感的で反射的に思考していて、それゆえに、マーケティング活動での各種数値説明においては、以下”ACT”の要素を意識して相手方に対し常にわかりやすい説明となっているか意識すると良い、と説明します。
┗Audience(誰に向けて話しているか)
┗Contents(適切な言語で情報過多でないか)
┗Theme(説明内容の大枠骨子は適切か)
ACTはSEOコンテンツを書く際の基本留意事項にもあたる内容ですが、日々の人的コミュニケーションにおいてもぜひ意識していきたいところですね!
続いて、 Helene Jelenc氏によるセッション「Showing SEO value throgh meaningful reporting」に参加しました。
マーケターがSEOの価値を上手く報告するためのレポート作成とは、というテーマです。
コンサル会社のHelene氏の立場からすれば、クライアントのレポート作成においてまず行うべきことは、”knowing your audience”であり、クライアントへの熱いインタビューを行う事であり、クライアントの社内状況を深く理解することで最終レポートのレベルにも大きな差がつく、と話します。
以下のやり取りのように深掘りする質問を繰り返すことでクライアントが現状本当は何を求めているのかをつかんでいきます。
- クライアント:「キーワード『job management』で1位を取りたいです」
- コンサルタント:「トランザクショナルクエリでもないですがなぜそのキーワードで1位を取りたいんですか」「なぜ~」「なぜ~」
外部コンサル企業にレポート作成をお願いする立場の事業会社さんであれば、こういったディスカッションを行いながら自社最適されたレポート作成をしてくれるのか、を依頼先選定の要素に入れると最終納品レポートの質の担保につながりそうですね。
理想的なSEOレポート構成についても説明がありました。
月次レポートでもっとも重要な部分はExecutive Summary。レポートの1ページ目です。
他のページを見なくてもこのページさえ見れば上司やチームメイトが進捗と次のアクションを理解できるようにしておく簡潔さが大事。
上司はいつどの世界でも忙しいものです。レポートを細かく読み込んでいる時間はありません。結論ファーストで報告しましょう。全体順位や流入セッションの下落などのアラート数値もこのページに載せておく必要があります。その他詳細レポートページ内の数値報告においても、結果データをべた張りするのはやめ、文脈に沿った簡潔な数値報告が大切です。
全体数値の報告だけではなく、施策実施中などの重要ページがあれば、ぜひ個別に報告するレポートページを作成しましょう。「このページではSEOの価値が出てきています!他のページ郡も最適化していきますね。」とSEOの価値を上司に報告できる良い材料になります。
Helene氏は最後に「make you irreplacable!」という言葉でプレゼンを締めくくりました。
ChatGPTをはじめとするAIツールには代替できない、価値を出せる人材だとしっかりアピールしていくことが大事、ということですね。
Saksham Sharda氏によるセッション「Effectively using first party data in marketing」ではテスラ社の面白いケーススタディが語られました。
自動車産業における多くの企業が莫大な広告予算を投じる中、テスラ社がデジタル広告に予算をかけずに時価総額1位となっている理由の一つとして自社サイトにて、ファーストパーティーデータを獲得しマーケティング活動に活かせる状態である点を挙げました。
テスラのサイトでは、好みのモデル、カラー、ホイール、拡張自動運転機能の有無など、様々な情報をサイト上で選びながら注文金額を見積もる事が出来ます。単純な静的ブログコンテンツでは得られない、インタラクティブな動的コンテンツから得られるユーザーの一次情報を活用することで、R&Dやサービスの最適化を図れる強力な側面がテスラにはあるのだと指摘しました。
テスラ以外にもマック、ディズニー、Hubspotなど多くの企業がインタラクティブなクイズ形式/選択形式のフォーマットでユーザーの一次情報を利用していると紹介、効果的なデータ活用を推奨しました。
筆者としても、サービスサイト内のファーストパーティーデータ活用例として、例えばヒートマップツールなどは日本のサイト運用でもかなり活用されるようになってきた実感があります。
一方、Saksham氏が紹介したような、クイズ形式の動的コンテンツを用いたマーケティングへのデータ活用は日本ではまだあまり普及していない印象です。個人的にはかなり可能性を感じました。
続いて、Gemma Fontané 氏によるセッション「Unleashing the power of GA4 for B2B companies」に参加しました。
「GA4についてどう思うか」の質問では、”Hate it”が依然過半数(笑)
Universal Analyticsがまだ一部サイトで使える分、多くの方が混乱しているようですね。。
B2B企業におけるサイトの役割は多種多様。以下順番でGA4を運用することを勧めます。
┗サイトでの主要KPI(CVポイント)を社内で決める
┗GA4でKPIの計測実装をする
※細かい計測実装にはGTMとパラメータ機能をフル活用しましょう
自社サイト運用に適したイベント実装をすることで深い分析改善が可能になると強調、GA4各レポート/探索画面での分析方法にも言及しました。
Kyle Rushton McGregor氏によるセッション「Top explorations in GA4 that will help SEO」でもSEOレポーティングに使える、より具体的なGA4探索レポートフォーマットが紹介されていました。
やはりツールの機能紹介的なセッションより、現場での活用ノウハウが紹介されるセッションの方が観客が湧きますね!
まとめ
brightonSEOでの様々なプレゼンを聞いてみて、”GA4/GTM/ヒートマップなどを用いたサイト改善活動のレベルは、日本の一部マーケターは全く引けを取らないレベルにいる”、と感じました。
特定領域を極めている職人気質な人間が多い日本人のマーケターがbrightonSEOレベルのプレゼン力を修得できれば、国境を越えて現地人を魅了することも可能だという感覚を得られたのは大きな収穫でした。
例えば「SEO改善事例:GA4×ヒートマップの実践分析講座」などのより深い実務ベースでのプレゼンはウケが良いかもしれません。もちろん相応の英語力は必要ですが(笑)
番外編
さて、Measure Festのセッションは少し早めの17:00に終わったので、Brightonの街を散策しました。
ちなみに1£=185円の影響もあってか、飲食物をはじめ、販売している商品・サービスの価格はおよそ日本の2,3倍が普通の価格帯となっていたのは、予想はしつつもやはり驚きでした。今後カンファレンスに行かれる方はお気をつけて。
夜は毎年恒例Wix主催のパーティに招かれました。
翌日の登壇に向け豪華な食事でたっぷり英気を養います。
物理的に距離が近いワチャワチャした雰囲気はWixパーティー独特です。登壇メンバー同士の距離が近くなる良い場ですね。弊社市川もご満悦。(Wixお金持ってるな~笑)
というわけで初日からMeasure Festに入り浸りな1日でした。オフラインカンファレンスならではの、登壇者と聴衆の熱量を肌で感じられる学びの深い1日となりました。
Day2のレポートではいよいよ弊社の鈴木、市川の登壇模様も含めお届けいたします。
▶ その模様はこちら!
brightonSEO 2023 September (Day 1 & 2) 〜 世界最大級のSEOカンファレンスにデュオ登壇~