デジタルマーケティングとは、デジタル技術を用いたマーケティング活動の総称です。その範囲は幅広く、マーケティングにおける1つの大きなカテゴリと位置づけられます。例としてはデジタル広告やSEO対策、メールマガジンなど以前からある手法に加えて、最近ではSNS、MAツール、デジタルサイネージ、AI技術の活用などが挙げられます。企業側には販売促進に活用できるユーザー行動のビッグデータを得られることや成果測定が可能などのメリットがあります。事例も交えながら、定義や手法、資格をわかりやすく解説します。
目次
デジタルマーケティングとは
はじめに、デジタルマーケティングの基本を解説します。
デジタルマーケティングの定義・特徴
デジタルマーケティングとは、デジタル技術を用いたマーケティング活動の総称です。Webサイトやアプリなどのデジタル技術を活用して顧客との接点を築き、データ収集・分析や情報提供、プロモーションなどを行い、売上・利益の創出を図ります。
Webマーケティングとの違い
デジタルマーケティングとWebマーケティングの違いは「範囲」にあります。
Webマーケティングとは、Webを活用するマーケティング手法の総称であり、WebサイトにおけるSEO対策やSNS運用、Web広告などが該当します。見込み客の集客や認知形成、売上獲得などは全てWeb上で完結させます。
一方でデジタルマーケティングでは、Web上の施策に限らず、デジタルサイネージやAI(人工知能)など、あらゆるデジタル技術を使った施策を行います。つまり、Webマーケティングはデジタルマーケティングの一部に含まれます。
デジタルマーケティングの重要性が高まっている背景
デジタルマーケティングの重要性は、主に以下2つの理由から高まっています。
インターネットを中心としたデジタル技術の普及
日本人の86.2%がインターネットを利用しており、そのうち80.8%はSNSを利用しています[1]。
以上より、インターネットは人々の生活や消費行動にとって不可欠であり、オンラインのチャネル活用はビジネスを行う上で無視できないものになっています。
消費者ニーズの多様化・競争の激化
一昔前と比べて消費者のニーズは多様化しており、画一的に商品・サービスの販売やプロモーションを行う戦略が適さなくなっています。また、人口減少や経済のグローバル化により、国内市場における同業・他業種との競争は激化しています。
こうした現状から、見込み客や既存顧客のデータをもとに、一人ひとりが持つニーズや興味関心を分析し、個々に最適なアプローチを図る戦略が求められています。その手段として、MAやAIなどのデジタル技術が用いられています。
デジタルマーケティングのメリットとデメリット
デジタルマーケティングで期待されるメリットと、注意すべきデメリットを解説します。
デジタルマーケティングのメリット
主なメリットは以下の3点です。
精度の高い情報収集ができ、より効果的なマーケティング施策を行うことができる
デジタルマーケティングでは、デジタルツールを用いて施策を行うことがほとんどです。例えばWeb広告であれば、広告管理サイトなどを利用して出稿します。こうしたデジタルツールを活用することで、見込み客や既存顧客、Webサイトの訪問客などの詳細な情報を取得でき、マーケティングに役立てることができます。
ツールの種類によって変わってきますが、主に以下の情報を収集可能です。
- デモグラフィック(属性)情報(年齢、性別、所得、職業、居住地など)
- 検索データ(検索ボリューム数、検索順位推移、サジェストキーワード、競合見出しデータなど)
- Webアナリティクスデータ(流入経路、セッション数、コンバージョン数、訪問したページ、デバイスの種類など)
- ビッグデータ(興味関心、位置情報、トレンドなど)
精度の高い情報を得ることで、より効率的に見込み客の獲得や既存顧客のLTV向上などを行いやすくなります。
リアルタイムで成果測定できる
SNSやGoogleアナリティクス4などのプラットフォームやツール活用により、施策の成果や自社商品に対する評判などをリアルタイムで測定できます。
「成果測定→問題点の改善→改善策の実施」というサイクルを素早くに回すことで、より迅速にマーケティング施策の質やROIを高めることが可能です。また、チャットボットなどの技術を活用し、顧客の不満や疑問を即座に解決することで、離脱防止も期待できます。
オフラインのチャネルでも情報を活用できる
顧客情報は、オフラインのチャネルでも役立ちます。たとえば、MAツールで購買意欲が高い見込み客を抽出すると、営業部門がより効率的に案件を受注できるようになります。
営業や展示会などのオフライン施策の効率性や成果を高める上で、デジタルマーケティングは有用な手段となるでしょう。
デジタルマーケティングのデメリット
デジタルマーケティングの実施に際しては、以下2つのデメリットに注意が必要です。
デジタルマーケティングに特化した知識やスキルも必要
デジタルマーケティングを行う際には、各領域の専門的な知識も必要となってきます。
デジタルマーケティングを行う際に用いるツールの使い方はもちろん、ツールで確認できるデータを読み解く方法を身につけたり、そこから新たな施策を考える技術を習得したりする必要があります。特に、デジタルマーケティングで指標として用いられる用語は専門的なものが多いため、意味を覚えるのにも時間がかかります。
また、AIなどの最先端の技術を用いたマーケティングを行うためには、技術的な部分の学習はもちろん、研究の動向をキャッチアップする必要もあります。
こうしたデメリットに対しては、デジタルマーケティングに特化した人材を育成・確保したり、専門家に監修などをお願いするなどの対策をとると良いでしょう。特にSEO対策でコンテンツを執筆する際は、専門家の監修を受けていることもE-E=A-Tの観点から欠かせません。
情報漏えいやサイバー攻撃を受けるリスクがある
デジタルマーケティングにおいて、インターネットの利用は避けられません。しかし、きちんとしたセキュリティ対策やデータマネジメントをせずにインターネットを活用したマーケティング施策を行っていると、情報漏えいが起こってしまったり、サイバー攻撃の被害にあってしまったりする可能性が高まります。
復旧に時間も労力も取られてしまうことはもちろんですが、顧客に被害が広がって企業としての社会的信頼を失ってしまうことにも繋がります。セキュリティ対策ソフトを全社的に導入したり、VPN活用を検討したりするなどの対策をとり、少しでもリスクを避けられるようにしましょう。
デジタルマーケティングの主な手法
デジタルマーケティングの主な手法5つと、その他の手法を解説します。
デジタル広告
デジタル技術を用いた広告の総称であり、代表的なものにWeb広告があります。主なWeb広告には、リスティング広告やSNS広告、アフィリエイト広告などがあります。広義の意味では、タクシー広告や後述するデジタルサイネージも含まれます。
クリックやCV数、掲載期間などに応じた費用がかかるものの、ターゲットにピンポイントで情報を届けやすい点がメリットです。
SEO対策
SEO対策とは、検索エンジンで自社サイトを上位表示させる施策の総称です。コンテンツ施策(検索意図を満たす記事作成など)や内部施策(内部リンク設計など)、外部施策(被リンク獲得など)の手法があります。
比較的低コストで行える点や質の高いコンテンツが資産として残り続ける点などがメリットです。KW調査やサイトの内部調査などを細かく行ってSEO戦略を立てていくことや、行ったSEO施策が検索エンジンの検索結果に反映されるまでに一定の時間がかかるため、中長期的な時間軸でのデジタルマーケティング施策となります。
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コンテンツマーケティング
顧客にとって有益なコンテンツ(情報)をWebサイトなどで提供することにより、購買意欲の喚起や顧客ロイヤルティの向上などを図る手法です。主に、ブログ記事やホワイトペーパー、動画などの手段が用いられます。
比較的広告費を抑えやすい点や顧客に不快感を持たれにくい点がメリットです。ただし、短期的には売上やコンバージョンに直結しにくいデメリットもあります。
メールマーケティング
Eメールによって、顧客の役に立つ情報(商品の使い方やお得なキャンペーンの告知など)を提供する手法です。代表的なものとして、メルマガ配信が挙げられます。主に、見込み客の育成や既存顧客のリピート購入促進などを目的に活用されます。
少ないコストや労力で多くの対象者に情報発信できる点や、システムの活用によってターゲット設定や効果測定を容易に行える点がメリットです。ただし、迷惑メールと判定されたり、開封率が低くなったりしやすい点がデメリットです。
顧客の心理状態やタイミングに応じて、配信する内容や言い回しなどを工夫することで効果が高まります。
SNSマーケティング
SNSの自社アカウントを開設し、情報発信やユーザーとの交流を行う手法です。主に、ブランドイメージおよび認知力の向上、ファンの獲得などを目的に実施します。
爆発的な拡散(バズること)により、短期間かつ低コストで認知度を高められる可能性がある点などがメリットです。ただし、不適切発言によって炎上し、かえってイメージを悪化させるリスクもあります。
SNSで成果を生み出すには、ターゲット層が日常的に見たくなるようなコンテンツ作成と、ユーザーを楽しませるようなキャンペーン企画などが効果的です。ミエルカコネクトを介したSNSのプロ人材を採用し、上記の施策を行った結果、3ヶ月でX(旧Twitter)のフォロワーを5.5倍(2,000人→11,000人)まで増やすことに成功した事例もあります。
関連記事:サイトPV10万/SNSフォロワー5.5倍に!EC集客の土台作りを最速で実現した新しいマーケティング体制とは
その他
上記以外にも、デジタルマーケティングには以下の手法(ツール)もあります。
手法 | 概要 |
MA(マーケティングオートメーション) | 見込み客の獲得〜選別までのプロセスを効率化する手法またはツール |
CRM (カスタマーリレーションシップマネジメント) | 既存顧客の情報や関係性を管理し、良好な関係構築を図る手法またはツール |
CDP(カスタマーデータプラットフォーム) | 各顧客のデータや行動履歴などを収集・分析するプラットフォーム |
デジタルサイネージ | 店頭などの場所で、ディスプレイなどの電子機器を介して情報を発信するシステム |
上記は一例であり、他にもIoTやビッグデータ、モバイルアプリなど、多様な手法が活用されています。
デジタルマーケティングで用いる主なKPI
KPI(Key Performance Indicator)とは、目標達成に向けた各プロセスにおいて、達成度合いを評価する指標です。似たような指標にKGI(key goal indicator)があり、こちらは最終的な目標を数値化して表す指標です。つまりKGIが最終ゴール(売上高など)を表し、そこに至るまでの中間ゴール(顧客獲得数など)がKPIです。
デジタルマーケティングでは、主に以下のKPIが施策の効果を図る指標として活用されます。
手法 | 主な指標 |
デジタル広告 | CTR(クリック率)CVR(コンバージョン率)ROAS(広告費用対効果) |
SEO対策 | 検索順位PV/UU数直帰率 |
メールマーケティング | 開封率CTR(クリック率) |
SNSマーケティング | フォロワー数表示回数リポスト/いいね数 |
上記は一例であり、目的に応じたKPIの設定が重要です。
デジタルマーケティングの効果を高めるポイント
デジタルマーケティングでは、主に以下のポイントを押さえることで効果が高まりやすくなります。
- 目的やターゲットの明確化
- 的確なチャネル選定
- 適切なKGI/KPIの設定
- 最新技術(AIによる自動生成など)の活用による作業の効率化
デジタルマーケティングの学習に役立つ資格・本
デジタルマーケティングの基礎知識を学ぶのに役立つ資格と本を紹介します。
主な資格
デジタルマーケティングの学習に役立つ主な資格は以下です。
- Google広告の認定資格
- Google アナリティクス個人認定資格(GAIQ)
- ウェブ解析士
主な書籍
デジタルマーケティングの学習に役立つ主な書籍は以下です。
- デジタルマーケティングの定石(著者:垣内 勇威 出版社:日本実業出版社 発売日:2020/9/10)
- 現場のプロがやさしく書いたWebサイトの分析・改善の教科書(著者:小川 卓 出版社: マイナビ出版 発売日:2018/6/19)
まとめ
デジタルマーケティングは、スマートフォンや5Gの普及が進み、行動のデジタル化が進んだ現代において、企業にとって販売促進やユーザーとのコミュニケーションを効果的に行う上で、重要なマーケティング活動となっています。
5Gなどの通信インフラが整ってきたことにより、例えば商品の情報を調べているユーザーに提供するコンテンツも、従来のテキスト情報に加えて動画などのリッチなコンテンツも提供可能になりました。
ユーザーと企業が日常的に接する媒体も検索エンジンによるネット検索に留まらず、SNSやディスプレイ広告、デジタルサイネージなど多様化しています。
これからのマーケティングにおいては、これらの多様な媒体を通じてユーザーとどのようにコミュニケーションを取るか、またそこで得られたユーザー情報や行動情報などのビッグデータをどのように保管し、分析・活用していくかが重要になっていきます。
これらの多様な媒体とユーザーのビッグデータを統合的に見て、より効果的な販売促進や企業の顧客資産として活用することが、これからのデジタルマーケティングに求められていくでしょう。
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