オウンドメディアは集客した後「その先」の設計が重要です。BtoB企業においては、ライトなコンバージョンとしての「メルマガ」はリード獲得の有用な施策の1つ。メルマガを活用してコンテンツへの再訪を促すなど、顧客関係を醸成していくことが可能です。どのようにメルマガを活用すべきか、BtoB企業の元メルマガ担当だったKさんにポイントを聞きました。
見込み顧客引き上げの目的でメルマガ配信
今回のインタビューは、某BtoBソフトウェア企業で、実際にメルマガを含むリード管理を担当されていたKさん(20代女性)にお聞きしました。とりあえず顔出しは無しでいきます。
(月岡)では、はじめにリストの作り方について聞きたいと思います。リードナーチャリング(見込顧客育成)の一環でメルマガを配信していたと思いますが、まず重要なのはリスト構築かなと。どうやってリストは作ってましたか?
(Kさん)展示会で名刺交換をした方や、自社セミナー参加者、資料請求などのインバウンドリストなどでメルマガ配信を希望された方が中心ですね。一番コンスタントに増えていたのは、オウンドメディアからの登録です。月100件以上の登録がありました。自社サービスに関連する情報発信ブログを運営していたのですが、コンバージョン(CV)ポイントとしてホワイトペーパーを用意しておいたので、ダウンロードの際にメルマガ送信の許諾を取っていました。
(月岡)オウンドメディアがあることでコンスタントにリストを増やせていたのですね。メルマガの配信頻度はどれくらいでした?
(Kさん)月1〜2回でした。何かキャンペーンの際や、大きな展示会に出展するときなどは、号外メルマガの配信もしてましたね。
(月岡)なるほど、頻度はそんなに多くないのですね。メルマガではどんな内容・コンテンツを送られていましたか?
(Kさん)主にお客様事例の紹介、新着ホワイトペーパーの紹介、セミナー開催予定の情報などをまとめて配信していました。
メルマガを運用しながら工夫・改善したこと
(月岡)基本的な情報はお聞き出来たので、次にメルマガ配信で気を付けていたポイントを幾つか教えていただけますか?
(Kさん)第一に、売り込み色を無くしてお役立ち情報の提供に徹することです。私が扱っていたのはBtoBサービスだったので、決裁フローが複雑で検討期間も長くなります。そのため『この企業からの情報(メルマガ)は役立つ』『何かあったら相談しよう』と思ってもらえる「関係づくり」を意識していました。
(月岡)私も自社のリード管理を担っているのですが、メール内容は「GIVE、GIVE、GIVE、TAKE」というのを意識してます。3回役立つ情報提供したら1回くらい宣伝してもいいかなと(笑)
あと、最近はUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の話も多いですが、メールにおけるUI/UXというか、デザインで意識していたことはありますか?HTMLメールが有効という話もあると思いますが。。
(Kさん)HTMLメールで送ってましたね。メールの受信画面を開くと一目でコンテンツの全体像を確認できるファーストビューのレイアウトづくりは大事にしていました。最初からこの考えだったわけではなく、もともとはスクロールが必要な縦長メールを送っていたのですが、改善する中でこのスタイルに落ち着きました。
(月岡)メールって案外読まれてないものですもんね。。じっくり読まなくても一目で、ぱっと内容を理解できるメールはいいですね。他に意識していたことはありますか?
(Kさん)しっかりPDCAサイクルを回すことですかね。毎月、編集会議を実施していて、前月の配信結果の振り返りと当月の配信コンテンツの決定、数ヶ月先までのコンテンツ候補の洗い出しをしていました。振り返りの内容は、単に開封率やクリック率を見るだけでなく、結果が良かった(悪かった)理由を仮説として挙げて検証していました。
(月岡)メルマガだけで編集会議がちゃんと回ってるのはすごいですね。PDCAサイクルを回すことで成果は上がりましたか?
(Kさん)2年くらい掛けて徐々にですが、メルマガ発刊当初と比べて、開封率は1.5倍、クリック率は4倍になりました。
(月岡)コンテンツのパフォーマンスもそうですが、改善サイクルが回るだけでだいぶ変わりますよね!あと、マーケティングオートメーション(MA)などを使ってセグメント分けて配信などもしてたのでしょうか?
(Kさん)テスト的に試したことはありました。ある程度、開封率やクリック率が目標に届いたので、「資料請求」など次のアクションをより多く促す新たな取り組みが必要だったのです。そこでMAを活用して、属性情報だけでなくメール開封者と未開封者でシナリオ分けてみたりして、名刺情報と行動履歴の両方をセグメントに使って送り分けを試しました。
(月岡)開封者と未開封者でどんな風にシナリオを変えてたのでしょう?
(Kさん)「開封をしない=件名に興味の内容が薄いと見なして、違うコンテンツを配信」という考え方でした。たとえば、1通目で紹介したベンチャー企業の先進的な事例に興味を示さなかったユーザーには、2通目で大企業のスタンダードな事例を送ったり、ノウハウ資料を送ったりするなどです。
(月岡)なるほど!コンテンツを送り分けた結果はいかがでしたか?
(Kさん)数が少なかったのか有意な差はでなかったんですけど(笑)ただ、マーケティングオートメーションもツールでしかありませんので、仮説に基づくシナリオを組むことができてはじめて使う価値のあるツールだと思いました。MAは自分たちが実施したい見込顧客とのコミュニケーションやシナリオをまず描いてみて、それを実現できる手段として使うものだと思ってます。
あとはホワイトペーパーをいくつか用意していたので、ダウンロードしたコンテンツによってメール配信シナリオを変える案もありましたね。
コンテンツマーケティングとメルマガ運用を組み合わせて成果を出すには
(月岡)では最後に、改めてコンテンツマーケティングとメルマガ運用において大事だと思うことを教えていただけますか?
(Kさん)大きく2つあります。1つは、メールを送りっぱなしにせず、配信後にはきちんとPDCAサイクルを回すことです。成果の出た施策と出なかった施策をしっかりと振り返って取捨選択し、改善をしていくことは大事だと思います。
もう1つは、オウンドメディアや掲載しているコンテンツと連動してメルマガ配信を進めることです。オウンドメディアのコンテンツはメルマガのコンテンツに応用できます。セミナー情報や新製品情報ばかりの面白くないメルマガじゃオプトアウト(配信拒否)されちゃいますよね(笑)オウンドメディアでアップしているコンテンツがあれば、それに興味のあるユーザーは「役立つ情報がくるかも」と思ってもらえるかなと。
ただ、あらかじめ「いつ何を送りたいか」数ヶ月先を見据えて決めておかないと「配信するコンテンツが無い!!」と焦ってしまうこともあります。余裕を持ってコンテンツを準備できるように計画しておくべきですね。
(月岡)最後にちょっと話は逸れるますが、最近は「メールはもう有効じゃない」って話もあったりしますが、ポイントを抑えて運用すれば、メールはまだまだ活用できると思いますか?
(Kさん)はい!メルマガは、オウンドメディアへ再訪してもらえるきっかけを作れるチャネルでもあり、BtoBではプッシュで見込み顧客にアクションできる数少ない手段の1つだと思います。しっかりPDCAサイクルを回して運用できれば、オウンドメディアとの相乗効果も得られます。コンテンツマーケティングやオウンドメディアを展開中の企業の担当者さんは、メルマガの登録から運用まで含めて設計して、見込み顧客と良い関係を作っていってほしいですね。
(月岡)そうですね。自分も改めて意識していきたいです。色々お話いただきありがとうございました!
著者PROFILE
SFA導入コンサルからCRMベンダーのセールスに転身し、営業マネージャーに。その後Faber Company営業部長を経て、マーケティングを担うIMC部を設立。現在は執行役員として、ミエルカのプロダクトマネージャーやセミナー登壇などの活動をメインに行っている。
■ 講演実績:マーケティングアジェンダ/日経クロストレンドForum 他■Twitter:@tsuuky09