コンテンツマーケティングのKPI・KGIの設定って悩みますよね?コンテンツマーケティングはWeb広告などと比べて、コンバージョン(CV)までに長い時間がかかるものです。そのため社内外への価値を証明するための効果測定が難しくなる傾向があります。そこで今回は、どのようにKPI・KGIを設定して効果測定すべきか、またそれらを達成するための運用体制の構築方法についてまとめました。
SFA導入コンサルからCRMベンダーのセールスに転身し、営業マネージャーに。その後Faber Company営業部長を経て、マーケティングを担うIMC部を設立。現在は執行役員として、営業・マーケティング部の統括やセミナー登壇などの活動をメインに行っている。
■ 講演実績:マーケティングアジェンダ/日経クロストレンドForum ■Twitter:@tsuuky09
目次
コンテンツマーケティングのKPI・KGIとは?
ここでは、コンテンツマーケティングの一環として実施されることが多い「オウンドメディア」を中心にKPI・KGIについて考えます。まずKPIとKGIについて解説をしておきます。
- KPI:Key Performance Indicatorの略
- 最終的な成果(KGI)に至るまでにマネジメントするべき中間指標です。
オウンドメディアのKGIによって、集客数、コンテンツアップ数など様々な指標が設定されます。 - KGI:Key Goal Indicatorの略
- オウンドメディア運用によって、最終的に得たい成果指標です。
KGIは、コンバージョン数や売上(貢献)になることが多いでしょう。
オウンドメディアのKPIやKGIについて悩むことが多いのは、冒頭でも言いましたが、成果が出るまで長期の施策であるにも関わらず、いきなり最終的なKGIを求められがち、ということに尽きると思います。
それなりの予算を投じて行う施策なのですから、成果は求められて当然です。しかし明日のコンバージョンを上げたいならWeb広告のほうが良いわけであって、〝なぜオウンドメディアを運営するのか〟という目的を社内で周知、理解してもらわなければなりません。
カスタマージャーニーを描いて、どの段階にいるユーザーにどのようなコンテンツで接触するのか。カスタマージャーニーの手前のフェーズであれば、コンバージョンはKPIにならないことが説明がつくかと思います。
例えば、弊社のコンテンツ/SEO支援ツール「ミエルカSEO」は以下のような流れで見込み顧客と出会い、ご契約となることが多いです。(「ミエルカが良いと聞いたから」というお問合せも多いですよw)
カスタマージャーニーとオウンドメディア運営の目的を社内外に理解してもらった上で、できれば長期的な計画とともにKGI・KPIを設定したいところです。そのあたりの設計が上手なのは、当社の事例にもなってもらっている「カオナビ」さまの事例です。ぜひこちらの事例もご参考に。
オウンドメディアのフェーズに合わせたKPI・KGI設定
では、どのようにオウンドメディアのKPI・KGIを設定するべきか。運用フェーズにもよって変わってくるはずですので、フェーズごとに当社の提唱する「4つの力」をベースに考えてみましょう。
オウンドメディア立上げ期(公開~1年以内)
ここでは、構築当初~運用開始して1年以内を”立上げ期”とします。この段階ではまだ閲覧者すら少ない状態なので、最終的なKGIである「コンバージョン数」や「売上貢献」を求めること自体が間違っています。
このフェーズでは「集客力」に着目すべきです。各メディアによって目的は異なりますが、まずはユーザーの目に触れなければ何も始まりません。そこで最初は「集客力」を測れるようなKPIを設定しましょう。
ただし初期段階であれば、社内理解のためにも「小さな成功」が必要なケースも多くあると思います。できるだけ早めに(成功に近づいていることを)確認できるKPIがいいのではないでしょうか。
- 検索順位(競合サイトとの差分)
- ファイダビリティスコア(検索順位をスコア化したもの)
Google Search Consoleでも確認できる「検索順位」の情報ですが、月間検索数の少ないキーワードであれば、コンテンツをしっかり作れば比較的早く評価されます。コンテンツの質を高め、多くの人に役立つメディア・コンテンツにしていくことが最優先です。
当社ミエルカユーザーの中では、検索順位をスコア化した「ファイダビリティスコア」のみを経営会議での報告事項にしていた企業さまもいます。ミエルカSEOのようなモニタリングツールを使えば、ファイダビリティスコアも検索順位も、競合サイトとのスコア差分も簡単に出せるので便利ですよ。(宣伝)
- ページビュー(PV)数/ユニークユーザー(UU)数(新規)
- メールマガジン等での反応率(開封・クリック率など)
- ソーシャルでのシェア数 など
新規のPVやUUもいいのですが、これも結果指標に近いものです。少しずつアクセスを増やしていくのですが、はじめは大きく伸びない可能性があります。
コンテンツデリバリーのチャネルは多いほどよいです。ハウスリストを一定量持っているのであれば、まずはメルマガなどでコンテンツを配信してコミュニケーションをとり、その反応率を指標にしてもいいかなと思います。
オウンドメディア運用定着期(6ヶ月~2年以内)
一定のクオリティを保つコンテンツが定期的に更新できていれば、6ヶ月目くらいからある程度の集客力が得られているでしょう。この段階でまだ集客状況が芳しくないようであれば、コンテンツの質を見直してみる必要がありそうです。
このフェーズでは、よりKGIに近くなるような指標を設定してもいいでしょう。
「閲覧力」や「誘導力」を加味してKPIを設計し直してみてください。
- 再訪率
- 滞在時間、スクロール率(要ヒートマップ分析)
- キラーコンテンツへの遷移率/回遊率 など
「閲覧力」はユーザーにコンテンツがきちんと消費されているかを表しています。ユーザーが一度触れたコンテンツに価値を感じ、「またこのサイトにくればいい情報がありそうだ」と思ってもらえない限り「再訪率」は向上しません。
また「滞在時間」をみて、コンテンツ毎の文字量と読むスピードを勘案すれば、きちんと読まれているかどうか=精読されているかを判定することも可能です。
さらにヒートマップツールを利用すれば、スクロール率(コンテンツを最後まで見てくれたか)を確認することもできます。
※Google Analyticsは、あくまで“平均”滞在時間であることに注意が必要です。
最近では「ユーザー体験」が重要であると色々なところでお伝えしていますが、コンテンツのリライトや構成変更などでより読みやすく、より理解しやすくを追求するとパフォーマンスが向上することも多いです。
もう1つの「誘導力」は「遷移率/回遊率」などで計測可能です。特に集客コンテンツからキラーコンテンツ(CVページやサービスページへ誘導を目的とするコンテンツ)の遷移数を指標とすればKGI貢献に一歩近づけるはずです。
よく「直帰率が高いことはコンテンツの問題点か」と相談を受けることがありますが、コンテンツは直帰率が高くて当然です。検索したユーザーは自分の知りたいことや困りごとが解決したらそれでOKなので、サービスページやら次のコンテンツやらにいく必然性がありません。
もちろんコンテンツの読み終わりに、他コンテンツへの導線もなく、そっと「閉じる」しかできないのは問題かもしれません。関連コンテンツを内部リンクでつなげることや、誘導リンクを目立たせる(テキストリンクからボタンやバナーにする)などして導線を強化することは継続的な改善として必要です。
「ユーザーをエスコートする」ような内部リンクの張り方、キラーコンテンツへの誘導の仕方は「ユアマイスター」さんや「グロービス経営大学院」さんの事例が参考になると思います。ぜひこちらも御覧ください。
オウンドメディア活用期(1年以上~)
コンテンツ制作体制も整い、メディア流入が安定してきたら、ようやくKGIとして「コンバージョン数」を目標にできます。
コンバージョンはサイト種別によって異なりますが、BtoC向けのサイトであれば「会員登録」やEコマースにおける「購買」。BtoB向けのサイトなら「メールマガジン登録」「ホワイトペーパーダウンロード」「セミナー申込」、最も価値が高いのは「サービス問合せ」「トライアル申込」「資料ダウンロード」などのコンバージョンになります。
しかし、コンバージョンを意識し過ぎるあまりに、いつの間にか販売(売り色)が前面にでたコンテンツばかりにならないよう注意が必要です。前述もしましたが、ユーザーをエスコートして気持ちよく行動してもらうには、「文脈」が大事です。
いきなりサービスの資料請求をさせるという考えではなく、関連するセミナー・ウェビナーへの参加を促したり、より詳細に語られたホワイトペーパーをダウンロードしてもらったり。様々なCTA(Call to Actionの略で、コンバージョンポイント)を出せるように、ダウンロードコンテンツを作り出せることもコンテンツマーケティング上は重要になりますね。
ホワイトペーパー制作については、その道のプロである峯林晃治氏がこちらでまとめていますので合わせてチェックしてみてください。
オウンドメディア運用体制のポイント
このようにコンテンツマーケティングやオウンドメディアのフェーズごとに、設定すべきKPI・KGIは柔軟に運用していく必要があります。複数のKPI・KGIを1人の担当者で追いかけることになると、考慮すべきこと/やるべきことが多くなって、相当大変です。。
可能であれば、コンテンツの質を高め「集める」担当者と、サイトにきたユーザーに適切なオファー(ホワイトペーパーダウンロードやWeb接客ツールなどの活用)を用意して「成果を出す」担当者は分けた運用体制にするのが理想でしょう。
この場合に注意しなければならないのは、それぞれの担当/部署同士できちんと集めたいユーザー像やペルソナ(理想のユーザー像)、それらのカスタマージャーニーなどの前提理解を揃えることでしょうか。
とはいえ、そんなに人数はかけられないという場合も多いと思います。その場合はフェーズに合わせてやるべきことを設定し、それらを評価するKPI・KGIを柔軟に組み替えていくことをオススメします。
指標のモニタリングはミエルカのようなツールを活用したり、データポータルなどに集約して、手間なく見れるようにしておきたいですね。
各フェーズの分析法で迷ったら、ご相談ください。30分程度の無料オンライン相談の範囲で質問にお応えすることも可能なのでお気軽に。
客観的に知りたい方へおすすめ
コンテンツマーケティングのKPI・KGIはフェーズに合わせてシンプルに
コンテンツマーケティングの運用は、長期的な計画とKPI・KGI設定が継続の肝となります。初めから多くのKPI・KGIを設定したり、ゴール(コンバージョン)に近すぎるKPIを設定してしまうとすぐに行き詰まることが多い印象です。
コンテンツマーケティングの実行フェーズに合わせてKPI・KGIを設定し(できれば1つか2つ、モニタリングしやすい指標)、継続的に運用できる体制を構築することがコンテンツマーケティングやオウンドメディア施策の「成功への近道」になるでしょう。
著者PROFILE
SFA導入コンサルからCRMベンダーのセールスに転身し、営業マネージャーに。その後Faber Company営業部長を経て、マーケティングを担うIMC部を設立。現在は執行役員として、ミエルカのプロダクトマネージャーやセミナー登壇などの活動をメインに行っている。
■ 講演実績:マーケティングアジェンダ/日経クロストレンドForum 他■Twitter:@tsuuky09