コンテンツマーケティングとは、顧客や見込み顧客にとって価値のある情報を発信することで、自社を知ってもらい信頼を得て、最終的にはサービスの購買・リピートまでめざすマーケティング活動です。この記事では、初心者にもオススメな「オウンドメディア」を中心にコンテンツマーケティングに取り組む企業の事例を10個ピックアップして紹介します。成功のヒントが見つかるはずなので、ぜひ参考にしてください。
コンテンツマーケティングとは
2010年頃にコンテンツマーケティングというフレーズが定着して以来、多くの企業が採用するようになりました(※)。
(※コンテンツマーケティングを提唱する世界的団体「Content Marketing Institute」のファウンダーであるJoe Pulizzi氏へのインタビューより抜粋)
まずはコンテンツマーケティングの基本を理解するために、こちらのコンテンツを読んでおいていただけるとよいと思います。その上で各事例を読んでいただくと理解が深まるでしょう。
BtoBのコンテンツマーケティング事例4選
BtoBのコンテンツマーケティングの事例として、次の4つを紹介します。
コンテンツマーケティング事例【BtoB編】成功の秘訣を各担当者にインタビューしてみた
①月間200万PV!Web広告の2.5倍のコンバージョンを獲得する「カオナビ人事用語集」(株式会社カオナビ)
- 人事向けタレントマネジメントシステムを販売する株式会社カオナビ
- オウンドメディア「カオナビ人事用語集」は、自然検索流入を中心に月間200万PVに成長
- ホワイトペーパーとのかけ合わせで、Web広告の2.5倍ものリード獲得に成功
「カオナビ人事用語集」は、記事コンテンツとホワイトペーパーを組み合わせ、Web広告の2.5倍ものリード獲得に成功しているオウンドメディアです。
SEO対策に注力しており、自然検索流入を中心に月間PVは200万以上にまで伸びています。キーワードの月間検索数やサービスとの親和性などから独自の優先度を算出してテーマを決め、順調に記事を制作しています。さらに、注目度の高いテーマをホワイトペーパーにまとめ、ダウンロードをフックにリードを獲得することで受注につなげています。
▶︎オウンドメディア活用で、リード獲得コストは半減・受注額は3倍!月間200万PVまで成長したBtoBオウンドメディアの3つの戦略とは?
②オウンドメディア内に戦略的な導線をしかける「SATORI マーケティングブログ」(SATORI株式会社)
- マーケティングオートメーションを提供するSATORI株式会社。
オウンドメディア「SATORI マーケティングブログ」を運営 - ブログの記事下部に申し込みフォームを設置。
多種多様なダウンロード資料やセミナーを用意し、記事ごとに最適なものを出し分けしている - 自社サービスを活用し、ターゲティングメールなどの複数の施策を展開
マーケティングオートメーションツールを提供するSATORI株式会社では、「SATORI マーケティングブログ」を運営しています。検索結果で1位をキープしている記事が多数あり、自然検索に強いのはもちろんですが、特徴的なのは記事コンテンツからのリード獲得への導線です。
記事の下部に申し込みフォームがありますが、案内される資料やセミナーが記事ごとに異なります。非常に豊富な種類の資料やセミナーの中から、記事のテーマによって最適なものをCTA(※Call To Actionの略。コンバージョンポイント)として出し分けしているのです。
また、見込み顧客のナーチャリングは自社サービス「SATORI」を活用して効率的に行っているとのこと。ユーザーのアクションに合わせたターゲティングメールなど、複数の施策を展開しています。
▶︎「SATORI マーケティングブログ」の担当者インタビューはこちら
③BtoBオウンドメディアの先駆的存在。進化を続ける「経営ハッカー」(freee株式会社)
- クラウド会計システムを提供するfreee株式会社。
中小〜中堅企業の経営者や財務責任者に役立つ情報を発信する「経営ハッカー」を運営 - 検索流入に強いのはもちろん、経営者へのインタビューなどオリジナル情報を多数発信
- ブックマークやコメント、お知らせなどの会員限定の機能を拡充し進化を続ける
会計システムを提供する企業のメディアの中でも先駆的な成功事例として知られているのが、freee株式会社の運営する「経営ハッカー」。経理・財務、人事・労務など幅広いキーワードを取り扱っています。
自然検索をねらった記事だけではなく、経営者や財務担当者のインタビューを多数掲載。経営ハッカーでしか得られないオリジナル性の高い情報を発信しており、メディアとしての価値を高めています。ブックマークやコメント、お知らせといった会員限定の機能を拡充させており、企業のオウンドメディアという枠を超えた取り組みが特徴的です。
④エンタメ系記事で抜群の知名度!「個」の発信を大切にしている「LIGブログ」(株式会社LIG)
- Web制作会社である株式会社LIGが運営する「LIGブログ」
- 面白コンテンツがバズったことをきっかけに知名度が向上
- お役立ち記事とエンタメ記事の役割を分け、「個」としての発信を大事にすることで個性を際立たせている
株式会社LIGが運営する、Web業界では有名な「LIGブログ」。社員さんの出るユニークなコンテンツから、お役立ち系のノウハウ記事まで幅広く展開しています。記事の更新頻度は非常に高く、ほぼ毎日公開しています。
特に有名な記事は、「伝説のウェブデザイナーを探して・・・」でしょうか。社長を砂浜に埋めてデザイナーを募集するという型破りな企画です。FacebookやTwitterで拡散され、1日で14万ものPV数を獲得したそうです。
ブログ記事については、「企業」としてよりも「個」としての発信という意識が強いそう。コンバージョンにつなげたい記事と、SNSで拡散されるようなユニークな記事との役割を分け、後者では社風の自由さなどを発信することで採用にも好影響をもたらしているようです。
BtoCのコンテンツマーケティング事例4選
BtoCのコンテンツマーケティングの事例として、次の4つをご紹介します。
>コンテンツマーケティング事例【BtoC編】成功の秘訣を各担当者にインタビューしてみた
⑤自然検索から商品の認知拡大、購入へつなげる「Lidea」(ライオン株式会社)
- ライオン株式会社が運営する生活情報オウンドメディア「Lidea」
- 商品と親和性の高い記事のなかで自社商品を紹介し、認知を拡大
- 会員登録や公式LINEと組み合わせ、ユーザーとの継続的な接点を設計
大手生活用品メーカーであるライオン株式会社が運営する生活情報オウンドメディア「Lidea(リディア)」。商品と親和性の高いキーワードで検索上位を狙い、自然検索流入から商品認知、購入へとつなげています。たとえば、検索結果で1ページ目に表示されている「舌苔(ぜったい)」の記事。舌みがきのポイントの中で自社商品を紹介し、購入サイトへのリンクを貼っています。
また、会員登録で応募できるプレゼントキャンペーンや、公式LINEを組み合わせ、ファンとの継続的な関係をきずいているのも特徴的です。
⑥SNSでユーザーとの接点を持ち、指名検索を増やした「YOURMYSTAR STYLE」 (ユアマイスター株式会社)
- ハウスクリーニングサービスのECサイト「YOURMYSTAR」。オウンドメディア「YOURMYSTAR STYLE」を運営
- SEOとSNSを使った戦略で、1年で流入数を2倍、コンバージョン数を6倍に
- InstagramとTiktokで合計35万人以上のフォロワーを獲得。
その結果、指名検索が大幅増
ハウスクリーニングサービスのECプラットフォームを運営するユアマイスター株式会社。SEOと複数のSNSを使った戦略で、1年で流入数を2倍、コンバージョン数を6倍に伸ばしました。
☑︎参照:SNSとSEOでオウンドメディアの流入2倍、CV6倍に!マルチチャネル戦略のノウハウとは?|Web担当者Forum
オウンドメディア「YOURMYSTAR STYLE」では、独自性の高いオリジナルコンテンツを高頻度で公開し、検索流入を獲得しています。記事の文脈に合わせたCTAを設計しているのも特徴的です。
また、InstagramやTikTokでは合計35万人以上のフォロワーを獲得。それぞれのプラットフォームごとに最適なハッシュタグを見つけ、戦略的にコンテンツを展開しています。コンバージョン増加策に重きを置きすぎずユーザーとの関係構築に有効なお役立ちコンテンツにも注力した結果、施策開始2年程度で認知度が徐々にアップ。2021年には、指名検索数が前年比900%アップにもなったそうです。
▶︎「YOURMYSTAR STYLE」 の担当者インタビューはこちら
⑦コアなファンとの接点設計を成功させた「カエライフ」(株式会社ホンダアクセス)
- カーパーツの製造・販売メーカー、株式会社ホンダアクセスのオウンドメディア「カエライフ」
- ニッチなマーケットだからこそ、コアなファンが喜ぶコンテンツを発信し顧客ロイヤルティを高める
株式会社ホンダアクセスが運営する「カエライフ」では、レトロカー、カスタムカーの紹介から、普通車を車中泊仕様にカスタムする体験談など、カーライフを身近に楽しむ情報を発信しています。
ファンの数が競争優位性に影響をもたらす時代。ニッチなマーケットでは、強固なファンを作りリピートしてもらうことが重要です。カーパーツというニッチな分野だからこそ、コアなファンが喜ぶ情報を発信し、顧客のロイヤルティを高めています。
また、昨今のキャンプ、車中泊、バンライフの流行を受け、より多くのユーザーと接触できるよう2019年からInstagramにも取り組んでおり、着々とフォロワー数を伸ばしています。
⑧独自の世界観でファンを魅了し、ユーザーの生活に浸透する「北欧、暮らしの道具店」 (株式会社クラシコム)
- 北欧系のインテリアや日用雑貨を取り扱うECサイト「北欧、暮らしの道具店」
- YouTubeのチャンネル登録者数は50万人を突破
- ECサイト、YouTube、Instagramなどを通して世界観を作り上げ、多くのファンを獲得している
北欧系のインテリアや日用雑貨を取り扱うECサイト「北欧、暮らしの道具店」。ECサイトという枠を超えて独自の世界観を作り上げており、言わずと知れたコンテンツマーケティングの先駆的存在です。
ECサイトの商品紹介ページは、情報の羅列にとどまらず商品を買ったあとの生活が想像できるようなコラムになっています。YouTubeのチャンネル登録者数は企業アカウントとしては異例の50万人を突破。すべてのメディアで商品愛と統一された素敵な世界観が確立されており、ファンを魅了しつづけています。
海外・外資事例2選
海外のコンテンツマーケティングの事例として、次の2社をご紹介します。
⑨市場変化に迅速に対応し、役立つコンテンツを世界中に展開する「Salesforce」
- コロナ禍での環境変化に対し、企業が危機を乗り越えるためのコンテンツ展開をスピード決定
- 専門家と協力しながら、従業員の安全や健康、デジタル化、ワクチン管理についての情報やサービスを世界中に発信
コロナ禍により、企業を取り巻く環境は急速に変化しました。Salesforce(セールスフォース)ではその変化にいち早く対応し、2020年4月には企業が危機を乗り越えるためのコンテンツ「Leading Through Change」の展開を決定。コロナ禍で対応が必要な情報について、ブログや動画、ホワイトペーパーなどを20カ国以上に展開しています。
各業界の専門家やCEOと協力し、従業員の安全や健康、デジタル化、ワクチン管理などについての情報やサービスを発信しています。環境変化に迅速に対応し、顧客に役立つコンテンツを展開した事例です。
⑩地域密着型のビジネスでコンテンツマーケティングを成功させた「Yale Appliance」
- ボストンにある家電販売店Yale Appliance社
- コンテンツマーケティングで広告費を大幅に削減し売上を上げた
- プロ目線での商品比較に特化し、ダウンロード資料「購入ガイド」を中核とした「Hub&Spokeモデル」でコンテンツを展開
ボストンにある備え付け型の家電販売店Yale Appliance社は、2011年ごろからコンテンツマーケティングに取り組みはじめ、広告費用を大幅に削減して売上を高めました。
ポイントは、多数のブランドを取り扱う専門店というポジションを活かし、プロ目線での商品比較に特化したこと。食器洗い乾燥機や冷蔵庫などの備え付け家電は、高額商品であるため吟味したいという強いニーズがあります。そこで、消費者が購入時に気になる点を網羅した「購入ガイド」を、CEO自らが制作にたずさわりダウンロード資料として提供。
「購入ガイド」をコンバージョンの中核(Hub)として、ブログやメールマガジン、SNSを拡散装置(Spoke)とする「Hub&Spokeモデル」でコンテンツを展開しています。
事例に学ぶ成功の秘訣
目先の利益にとらわれずに継続する
コンテンツマーケティングこそ、「継続は力なり」。コンテンツマーケティングは手応えをつかむまで約半年、マネタイズできるまでは1年程度かかるものとして取り組みましょう。
そしてCV数などの直接効果だけではなく、サービスページへの遷移数や指名検索の増加といった間接的効果にも着目してください。長期的な取り組みを前提として、継続できる体制を構築することが最も重要です。
上記で紹介したYale Appliance社は、経営のトップがコンテンツの必要性を理解し、自らがブログや資料の制作に携わっています。コンテンツマーケティングを継続して成果を出すには、経営層や上層部の理解とコミットが必要不可欠といえるでしょう。
オウンドメディアを始めとしたコンテンツマーケティングのメリットは、下記でもくわしく解説しています。実際に取り組む3社の企業様が継続の工夫も語っているので、ぜひご覧ください。
社内でのプレゼンスを高める
オウンドメディアやSNSの存在を社内にアピールしていくことで、コンテンツ制作への協力を得やすくなります。たとえば、コンテンツ企画のアイディアをもらえたり、ライティングに協力してもらえたりなどです。
コンテンツは見込み顧客の集客だけでなく、顧客へのフォローメールなど営業現場でも活用できる場合があります。感謝されると協力を得やすいので、積極的に社内に周知していくとよいでしょう。
「ウチしかできない」を探す
そもそもマーケティングで勝っていくには、他社と差別化し自社のポジションを確立させることが重要です。コンテンツマーケティングにおいても、まったく同じことがいえます。
他社にとって難しいことをやっていくことが差別化になります。情報、視点、体制、熱量など、自社ならではのバリューを考え、アウトプットしていきましょう。
何から強化していけば良いか分からないというWeb担当者さま、マーケターさんは弊社・Faber Company(ファベルカンパニー)に相談してください。
累計1,700社の支援実績をもとに、御社の状況を整理して施策の第一歩を提案します。